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072 : ゴーレム戦 ・2

待ての勇者と急ぎの姫騎士


072 : ゴーレム戦 ・2





 グゴ グゴゴゴゴゴ ゴッゴーーーン!


 振り返る余裕はないが、音だけで分かった。


 地中に居た親指が地上に出てきたんだ! 


 グゴーーーーーーーー!


「振り向かずに走れ!」


 ヒルデが叫ぶ、戦えば勝てたとしても相応の犠牲が出る。げんこつ山の冒険者たちに死者は出ていない。いま出現した親指はゴーレムのボスに違いなく、無傷では済まないだろうからな。


 グオォォォォォォォォォォ


 え? 音が小さくなった……目の端に捉えると、親指は俺たちの左側を大きく迂回して正面に出ようとしている。


 親指は華奢な上半身の下に長くて豊かなフレアースカートを履いている。遠目には天女の裳裾のようにヒラヒラしているけど、あれは岩石でできている。下手に近づいて煽られたら長大な岩の壁にブチ当てられて、生身の人間は削られ切り刻まれてバラバラになってしまうだろう。


 グゥィン


 俺たちの上空に差し掛かると、上下逆さまになってフレアースカートを円盤のように広げた。真ん中には逆さまになった親指が俺たちを見下ろしている。なんだか巨大な傘を開いて壮大な意地悪をされているような……いや、これは攻撃の準備姿勢だ!


 ブワ


 逆さまのまま手を広げると、フレアースカートの全面が小刻みに振動する。


 ビビビビ


「散れ!」


 ザザザザザザザザザザザ!


 みんなが散るのとスカートから猛烈な量の石礫が落ちてくるのが同時だった。


 ビビビビビビビビビビビ!


 猛烈な数と勢いの石礫、まるでクラスター爆弾だ!


 ヒルデの指示が早かったので、直撃を食らった者は少なかった。たとえ、コンマ五秒でも余裕があれば防御魔法も使える、反撃もできる。


 ビシ ガチガチ ガチガチ ビシビシ ピシュ! パシュ! ガチガチ ビシ プシュ! ガチガチ


 防御魔法や得物で弾かれ打ち返される音、近くを飛び過ぎていく音! まるで石礫の暴風雨だ!


 シュプルーデ川を渡ってここまで来た冒険者たち。みすみすやられることはないが、親指はその動きに追随して、いや、先を読んで追いかけてくる。多少のフェイントをかけても、それを察知してすばやく向きを変える。いまは持ちこたえているが、疲れて動きが鈍ってきたら各個撃破されてしまう。


「ビアンカ! 空を飛べるものを率いて親指の上に出ろ! カリーナは下から! 飛び道具と遠距離魔法で攻撃しろ! けして近づくな!」


「「分かった!」」


 姉妹揃って返事をすると上下に別れた冒険者たちが親指の上と下から攻撃を加える。


 シュボン


 五六人が上、逆さになった親指の下半身に回ると、フレアースカートはチューリップの蕾のように閉じてしまう。


 カキカキカキカキカキ! カキカキカキカキカキ! カキカキカキカキカキ!


「き、効かない!」


 閉じたスカートは開いているときの倍ほどの抵抗力があって、ビアンカたちの攻撃をことごとく弾き返してしまう。


「怯むな、続けろ! カリーナ、奴の髪の毛を集中的に攻めろ!」


 奴の上半身、特に首から上は、長い髪の毛がバリアーになって、なかなか有効にならないんだ。


 それなら、いっそ髪の毛に集中攻撃とヒルデは判断した。


 ピシ パシ ピシパシ パシ ピシ ピシパシピシ…………


 魔法や礫が逆流した雨粒のように奴の髪に命中する。


 ブィン ブイーーン! ピシパシピシパシピシピシパシピシピシパシピシ!


 高速旋回する髪に容赦なく礫と魔法が命中し、線香花火のような火花が散る。


 ウィン


 フレアースカートの半分がバナナの皮のように剥けて頭を保護する。下半身は残りのスカートが瞬間にすぼんで、まるで巨大な殻付き落花生のようになった。


 ウィン


 落花生が小さく身をよじる。たまらずに逃げようとしているんだ。


「逃がすな! 下半身を集中して攻めろ!」


 戦乙女は攻撃の手を緩めない。手負いのまま逃がしては、きっと恨みを倍増して、いずれ立ち向かってくるだろうしな。ここでとどめを刺した方がいい。


 ギギ


 ギギの怯えた声がする。


 親と姉が倒された時のことが蘇るのか、ボロボロな冒険者たちが痛ましいのか、幼い神経が耐えられないのは確かだ。抱きしめるエマの手に力がこもる。


「風魔法を使える者はここに! 他の者は攻撃を続けろ!」


 四人の魔導士がヒルデの元に集まる。


「落花生の上の方、やつの下半身に集中して風攻撃。スグルはトイレ魔法で水を出せ、トルネード式でな!」


「了解!」


「エマは、ギギを守ってやれ!」


「はい!」


「撃て!」


 バビューーーーーーーーン!!


 ヒルデを入れて五人分の風魔法と俺のトルネード水流が落花生を強襲する!


 ブッシャッシャーーーン!!


 風と水流が激しく命中、数秒で落花生の殻が吹き飛ぶと、スカートを失った親指が逆さまのまま、ゆっくりと墜ちてくる。


 なんだか、アキバのショーウィンドウで見かけたドール素体のようだ……。




 ☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神(甲と乙)         異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト(工藤甚一)    ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・シャイロック          ヴェニスの商人

・ロキ              荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)

・秀を取り巻く人々        先輩  アキ(園田亜妃) 田中

・魔物たち            謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹) げんこつ山のゴーレム 


  

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