068 : げんこつ山のたぬきさん
待ての勇者と急ぎの姫騎士
068 : げんこつ山のたぬきさん
四人の旅になった。
俺(スグル・剣士) ヒルデ(戦乙女、オーディンの姫騎士) エマ(家事妖精) ギギ(セイレーンの幼女)
ギギは北欧神ロキの力で人間になったが、中身は魔獣セイレーン、本人も人間になろうと努力している様子なんだが、どうやっていいか分からず、黙々とエマの横にくっついている。
「お歌でも唄おうか(^^)?」
エマが目をへの字にして提案。
「お歌?」
「セイレーンの特技は歌うことなのよ、でしょ?」
「でも、しょれは人を引きよしぇて、食べてしまうためなんらよ……」
「食べちゃっていいのよ(^▽^)」
「ええ!?」
「「(◎▢◎)」」
すごいことを言うので、俺もヒルデもビックリした。
「人は生きていると辛かったり寂しかったりするの、その寂しさや辛さを食べてしまえばいいのよ」
「ツラしゃ? サミシしゃ?」
「うん、お胸がイタイイタイになって、穴が開いたみたいになって、涙ポロポロになる……」
「う、うん……(٭°̧̧̧꒳°̧̧̧٭)」
親姉妹と別れたことが思い出されたのか唇を嚙みしめるギギ。
「そういうのを食べちゃえば、あとにホンノリ甘みが出てくる。その甘みは、きっとおいしいと思うわよ」
「しょうなの? れも、ギギ、お歌知りゃないよ」
「教えてあげる」
「エマが?」
「うん、簡単な歌だから、すぐに覚えられるよ」
「うん」
ギギもその気になって、エマが口ずさんだのは意表をつく童謡だった。
げんこつ山のたぬきさん おっぱい呑んでねんねして だっこしておんぶして また明日♪
二度繰り返してやると、ギギも覚えて唄いだした。
げんこちゅやまのたぬきしゃん♪ おっぱいのんれ ねんねして……(^^♪
回らない舌だけど、楽しそうに歌って、なんか胸に迫ってくるものがある。
そうだ、日本人なら誰でも幼い日に耳にした、そして歌った童歌だ。俺も、保育所で習って、いつのまにか手遊びといっしょに覚えたんだ。
げんこちゅやまのたぬきしゃん♪ おっぱいのんれ ねんねして……(^^♪
チラッと振り向いてみると、エマと手遊びしてやがる。
「これね、最初に『セッセッセーノヨイヨイヨイ♪』って、こうやるんだよ……」
歩きながら器用に教えるエマ。
「シェッシェーノヨイヨイヨイ♪」
エマは家事妖精だけど、きっとスキルの中には子守とかも入ってるんだろうな。
見ると、最後尾のヒルデも薄く微笑んでいる。
「じょーずじょーず(^^)」
「えへへ」
「どう、おいしかったぁ?」
「うん! しゃいしょ、ちょっとしゅっぱいとからいだけじょ、しゅぐにあまくなった!」
「うんうん」
気が付くと、俺もいっしょに歌っていて、ヒルデはいっしょに歌いこそしなかったが、知らないうちに襲ってきた魔獣を五匹もやっつけていた(^^;)。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神(甲と乙) 異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト(工藤甚一) ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・シャイロック ヴェニスの商人
・ロキ 荒れ野の神(ヒルデの義理の叔父) シギュン(妻)
・秀を取り巻く人々 先輩 アキ(園田亜妃) 田中
・魔物たち 謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物 セイレーン(半鳥半人) ギギとクク(元セイレーンの姉妹)




