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062 : なにやってるんだ俺!

待ての勇者と急ぎの姫騎士


062 : なにやってるんだ俺!





 俺は煩悶していた。


 ビアンカとカリーナのことだ。


 二人は父親のことをトゥルクビルトだと思っているが、奴の正体は工藤甚一だ。俺同様に令和の日本からこちらに飛ばされてきた。ただ、俺よりも二十数年前の時代に飛ばされたものだから、こっちの世界で歳を食った。冒険の旅に失敗しパーティーの女性と結婚、ズィッヒャーブルグの街で見世物小屋を生業にして、二人の娘を育てた。それがビアンカとカリーナ。工藤は女神によって裏返しにされた年齢操作魔法で娘たちを大人にして冒険の旅に出させてしまった。


 直接は語らないけど、おそらく母親は不遇なんだ。


 あの姉妹、ズィッヒャー川では幻影魔法を駆使して冒険者たちの足止めをした。冒険の旅が過酷だということを知っているからな。父親がとっくに先に進んでることも知らずに、父親に思いとどまってほしい一心で。


 それが、年齢操作魔法で大人になると、今度は真逆に魔王討伐の旅に出てきやがった。


 大人の体と、自分たちの魔法スキルがあれば、あるいはと思った……やっぱり冒険者の血か……でも、あいつの本性は工藤甚一、ピュアな冒険者であるはずもない。


 フンメルは、あの姉妹に『がんばれ、僕が付いているから』と励まして加護を与えた。


 あのフンメルは韜晦してポンコツに見せかけているけど勇者の星、冒険者の神。シュプルーデの河原じゃ尼さん「聖者フンメル様の墓所を探しているのです」って目を輝かせていたもんな。しかし、なんせ一万年前の勇者、ちょっといかがわしい。ひょっとしたら、ほんとうのポンコツになり果てているのかもしれない。


 だとしたら、分かったような笑顔で見送るんじゃなくて、止めるべきだったか。


 いかん、思考が悪い方向にループしかけている。


 ……ウカウカと三十路に足を突っ込んでしまったのは、この、なにかにつけて「待て」と思ってしまう臆病さなのかもしれない。


「スグル!」


「え?」


「さっきから何を考えているんだ、エマが心配しているぞ」


「スグルさま……」


「あの姉妹にも言っただろう、北の旅は過酷なんだ、気を抜いては……!?」


 ビュビュン!


 黒いものがものすごい速さで地面を擦って後ろに飛んでいく!


 ウ!


 頬が切れて流れた血が口に入る。


「セイレーンでございます!」


 言いながらロッドを向け、石礫を発射するエマ。


 くそ、エマを守るポジションにいたのに、なにをしているスグル!


 パシ!


 自分で自分の頬を打って、周囲を警戒。


 こういう場合、往々にして初撃はフェイント、ニ撃目以降に主力が居る!


 ズガ! ドガ! ビシ!


 三発食らわして、やっと後続の一匹をやっつける!


 視界の端に、すでに三匹をやっつけたヒルデ、自力で一匹を追い払ったエマの姿が見えた!


 くそ、なにやってるんだ俺!


 


 ☆彡 主な登場人物


・鈴木 すずきすぐる    三十路目前のフリーター

・ブリュンヒルデ         ブァルキリーの戦乙女

・エマ              バンシーのメイド

・女神(甲と乙)         異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち

・ハンス・バウマン        ズィッヒャーブルグのギルドマスター

・フンメル            西の墓地に葬られている一万年前の勇者

・カルマ             フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い

・トルクビルト(工藤甚一)    ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)

・シャイロック          ヴェニスの商人

・秀を取り巻く人々        先輩  アキ(園田亜妃) 田中

・魔物たち            謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物

 

  

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