061 : 再びのビアンカとカリーナ
待ての勇者と急ぎの姫騎士
061 : 再びのビアンカとカリーナ
「あ!?」「冒険者のお姉ちゃんたち!」
不覚にも先に気づかれてしまった。
「え、やっぱり、あなたたちなの(⊙▢⊙)!?」
訝しむよりも先にエマが懐かしさいっぱいに叫んでしまった。
「き、きさまら、ビアンカとカリーナなのか( ºΔº 〣)!?」
「おわ(๑д๑)?」
ヒルデは驚きながらも怪しみ、俺はプチゲシュタルト崩壊してしまった。
ふたりは確かに幻影魔術師トゥルクビルトの娘ビアンカ・カリーナの顔をしているんだけど、首から下は二十歳前後! 高校ダンス部の現役と先輩って感じだ!
「アハハ」「そりゃビックリするよね」
「なにがあった!? お前らと分かれて、まだ何か月もたっていないぞ!」
「アハハ……」
「わたしが言うよ」
姉のビアンカが半歩前に出た。
「夢にお父さんが現れて、こう言ったの……」
カリーナが指を振るとトゥルクビルトの映像が現れた。
『ちょっと、この世界を留守にしなくちゃいけなくなったんだ。二人のところに戻れなくてごめん。そこで……あ、実は、お父さん年齢操作魔法を使ってしまったんだ。女神が出てきて、強制解呪されたんだけど、術はまだ生きている。年寄りを若くする魔法だったけど、強制解呪したんで、術は裏返しになっている。つまり、こんど掛けたら年を取ってしまう。強制解呪で効力は落ちているけど、ちょうど二人を大人にしてあげられる。お父さん、何もしてあげられないけど、これで二人を自活できる年齢にしてあげられる。ダメな父親だったけど、大人になって、なんとか頑張っておくれ。それじゃ、お母さんをたのんだよ……』
「そうだったんですね」
エマがしみじみとカリーナの手を取った。
「でも、あなたたち、どうして冒険者に?」
「そうだ、ズィッヒャー川では、さんざん冒険者の邪魔をしていたではないか」
「わたしも妹も、体は大きくなったけど、スキルは幻影魔法と多少の冒険者スキルしかないから……」
「冒険者の旅は過酷だぞ、特に北部地方は」
「大丈夫!」
カリーナが胸をそらせた。
「他のスキルは未熟だけど、魔法と冒険者スキルは年相応に伸びてるから!」
「魔法と冒険者スキルは小さなころから身についていて、身体の成長にシンクロしているみたいなんです。大丈夫、過信はしません。だから、ここへのルートも安全なシュタイル峠を通ってきましたから」
「お母さんは?」
「ギルドに頼んできました。あ、商人ギルドですよ。お父さん保険をかけてくれていたんでいちおうの面倒はみてくれます。魔王をやっつけて、魔王は無理でも、そこそこの魔族をやっつけて賞金を取りに行きます!」
「ます!」
姉妹でけなげにガッツポーズ。
「そうか、俺たちも北に進む。何かあったら使い魔でも飛ばして知らせてこい」
「「はい、ありがとうございます!」」
「じゃあ、あたしたち先に進みます。みなさんにも女神さまのご加護があらんことを!」
「ああ、おまえたちにもな!」
ここにきて女神さまのご加護なんて祈ったことも挨拶したこともないけど、あいつらにこそ、もしあるとしたらだけど、神さまとか女神さまとかの加護あれかしと思ったぜ。
と思ったらカリーナが戻ってきた。
「実は、夢に勇者フンメル様が出てきて『がんばれ、僕が付いているから』って言ってくれたんです!」
そう言うと、希望半分怖れ半分の、でも俺にはできない笑顔を残してお姉ちゃんのところに戻って行った。
最後に、もう一度ペコリと挨拶を残していく姉妹。
ゆるやかなカーブを曲がって見えなくなるまで見送って、俺たちも前に進んだ。
☆彡 主な登場人物
・鈴木 秀 三十路目前のフリーター
・ブリュンヒルデ ブァルキリーの戦乙女
・エマ バンシーのメイド
・女神(甲と乙) 異世界転生の境に立つ正体不明の女神たち
・ハンス・バウマン ズィッヒャーブルグのギルドマスター
・フンメル 西の墓地に葬られている一万年前の勇者
・カルマ フンメルとパーティーを組んでいたエルフの魔法使い
・トルクビルト(工藤甚一) ズィッヒャーブルグの幻影魔法士(娘:ビアンカ、カリーナ)
・シャイロック ヴェニスの商人
・秀を取り巻く人々 先輩 アキ(園田亜妃) 田中
・魔物たち 謎かけ魔物 リーツセル(Rätsel) ガイストターレン シュプルーデ川の魔物 樹叢の魔物




