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三十五日目



(暇……)


 フェリシティは久しぶりに暇な時間を過ごしていた。何だかんだ言って何かが一日に一回あり、なくてもウィリアムがいれば楽しく過ごせていた。


 しかし今日はウィリアムが急遽国王に呼ばれた。だから久しぶりに一人、いや一匹なのである。


『アンナとこうやって話すのも久しぶりな気がする』


 獣人と人間のハーフである世話係のアンナと話すのは何日ぶりだろう。近頃はウィリアムと一緒にいる時間が増えたり、もう一人の世話係であるアイラもいたりして話せなかった。


 どうやらアイラは結婚するようで、今日は婚約者と逢瀬を重ねている。


 アイラのことを考えていると、ふと疑問に思う。


『アンナは結婚しないの?』


 アンナはフェリシティより十も年上で二十六歳だ。アンナは平民なので女性の結婚適齢期だ。しかし、アンナが結婚する気配はない。


「結婚……ですか。そういうフェリシティ様ももうすぐ結婚しないといけませんね」


 貴族の女性の結婚適齢期は十七から二十だ。十六で結婚するというのはないわけではない。


 フェリシティの両親は恋愛結婚を勧めているが、そうとばかり言っていられないのが貴族だ。好きな人がいても結婚できるとは限らない。だからと言って一生結婚しないということはできない。


 貴族令嬢である以上、結婚は義務なのだ。


 アンナよりもフェリシティの方が深刻な問題である。


 フェリシティには好きな人がいるが、その人には恋愛対象、いや人とすら思われていない。そうなればフェリシティに残された道は獣人だと明かして好きになってもらい、どうにかして身分差を乗り越えて結婚するか、家のためになる獣人と結婚するしかない。


 実はもう少しでフェリシティの兄が結婚する。なので余計に両親はフェリシティに恋愛結婚を勧めるのだ。


 母は事の重大さに気付いたものの、フェリシティがウィリアムと結婚することをまだ諦めきれていない。


『……今のままじゃ結婚できないかも』


 ウィリアムのペットのまま結婚すれば人間としての生活と獣としての生活を両立させなければならない。それは現実的に見て不可能なことである。


 フェリシティは自身の結婚について頭を悩ませた。結局いい考えは思いつかなかった。





 半ば結婚について考えることを諦めかけていた晩餐で衝撃なことを聞かされた。


(ウィリアム様が視察に行く……?)


 明日から一週間ほどウィリアムは視察に行くようだ。フェリシティのことは置いていくようで、一週間ウィリアムに会えない。


 フェリシティはその日、落ち込んでしまって食事が喉を通らなかった。それを見て心配したウィリアムが医者まで呼んだのは言うまでもない。




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