表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
39/61

ウィリアム

ウィリアム視点です。





「モンロン男爵家を調査せよ」


 国王の声が嫌なくらい、部屋中に響き渡った。


 今日は月に一度の今月の予定を決める会議が行われている。ウィリアムは将来三大公爵の一人になるため、この会議に参加していた。


 いつも通り予定を計画し、会議もお開きになるとき、三大公爵の一人であるミッチェル公爵が口を開いた。


「モンロン男爵家が獣人である可能性があります」


 ミッチェル公爵は大の獣人嫌いで過激派だ。


 この貴族社会には三つの派閥がある。一つはミッチェル公爵率いる過激派だ。過激派は獣人反対で獣人が奴隷になることを当たり前だと思っている。そのため、貴族や平民に紛れ込む獣人を洗いざらいにしている。


 二つ目はウィリアムの祖父であるオルコット公爵率いる革新派だ。種族で差別するのは良くないと考え、積極的に獣人を貴族社会や政治に取り入れていこうと考えている。もちろん、獣人の奴隷を解放するような運動も行っている。


 革新派はまだ数が少なく、“変人の集まり”と言われることが多々ある。


 その二つのどちらにも当てはまらないのが中立派である。獣人に好意的な人も悪意的な人もいる。過激派ではないが過激派に近い中立派は多い。


「ほう。証拠はあるのか」


 中立派の国王は貴族社会に獣人がいても良いという考えを持っている。しかし、まだ過激派が多い中、獣人の味方はしづらい。


「ええ。モンロン男爵家の人間が獣人になるところを見た人がいるのです」


「そうか。しかし、それだけでは不確かだ。其奴が嘘をついているかもしれないしな」


「もちろん、それは分かっております。ですから、調査する権利を与えていただきたいのです」


 ミッチェル公爵の言葉に国王は考えるような仕草をした。


「ふむ……。モンロン男爵家が獣人であれば大変なことだ。これは正確に調べなければならない。ゆえに三大公爵に命じる。モンロン男爵家を調査せよ」


 三大公爵――ミッチェル公爵、オルコット公爵、ポラック公爵はそれぞれが過激派、革新派、中立派である。そのため、それぞれの立場から調査させることができる。そうすることによって、誰かが嘘をついているということを妨げる。


「かしこまりました」


 三人はそれぞれがそれぞれの思惑を持って、そう返事をした。




 そんなことがあった翌週、ウィリアムはうさぎを見つけた。


 うさぎはウィリアムの家の敷地内に倒れており、かすり傷が見つかった。どうやら、森の中を駆けてきたようだ。


 とりあえずうさぎを保護した。うさぎを自身のベッドに寝かせたとき、紋章が書かれたペンダントが視界に入った。


「これは――」


 そこには先週話題になったモンロン男爵の紋章があった。


 ウィリアムはすぐに人をモンロン男爵邸に送ったが、モンロン男爵らはパーティーで出かけていた。うさぎのことで話があるので、何時になってもいいから連絡がほしいということだけを伝えた。

  

 一時間も経たないうちにモンロン男爵と夫人が慌ててやって来た。ウィリアムがうさぎを見せると二人とも驚いた顔をした。


「私の家でうさぎが飼えなくなってしまいましたの。ですから、厚かましいお願いではございますが引き取ってもらえませんか?」


 夫人が目を輝かせて、何かに憧れるようにそう言った。その隣で男爵の顔を青ざめていた。


 ウィリアムはこれはチャンスだと思った。ミッチェル公爵よりも近くでモンロン男爵家を調べることができる。


 獣人でないことが分かれば、すぐに国王に伝えることができる。逆に獣人であれば、近くにいる方が獣人でないという証拠を捏造しやすい。


「いいのですか? 実はうさぎを飼いたいと思っていたところなんです」


「ええ、ええ。もちろんです。お願いします」


 夫人は子どものようにはしゃいだ。それとは対照的に男爵は青を通り越して白になってしまっている。しかし、彼はこの状況をうまく抜ける方法が思いつかず、承諾しなければいけなかった。


 こうして、ウィリアムとうさぎの生活が始まった。


 ウィリアムは十六歳のときにペットを飼っていたが、実はそれが獣人だった。夜な夜な襲われそうになったことがあるので、夜はほとんど眠らず、フェリシティを監視するために一緒のベッドで寝た。


 最初の頃、フェリシティが逃げ出したのも獣人だと調べるためにそう仕向けた。しかし、アンナという使用人がいたので、確実な証拠は掴めなかった。


 その後も意地悪をしたのは獣人かどうか調査するためだ。ただ、意地悪をしたときのフェリシティが可愛いと思ってしまったのは仕方ない。


 すぐに祖父に報告して、今後の計画を立てなければいけないことは分かっていた。だが、どうしてもできなかった。


 この生活を手放したくなかったからだろうか。


 全身で好きだと言われているようで、その気になるなというのも無理がある。


 人の姿のフェリシティと話したのはそれほど多くない。それにも関わらず、ウィリアムは心を奪われてしまった。


 “うさぎの姿なら”とやっていた行動がウィリアムを落とすとはフェリシティも夢にも思っていないだろう。そもそも、フェリシティはウィリアムに獣人だとバレていないと思っているのだから。


「いつになったら僕に本当の姿を見せてくれるのかな」


 フェリシティが寝ているときにそう呟いてしまうのは、愛が溢れてしまっているからかもしれない。


 

最後は二十六日目と繋がってます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ