三十三日目
今フェリシティは応接室にいた。そして、目の前には動物が嫌いなはずのウィリアムの幼なじみ――キャサリンがいる。
「大丈夫ですの? その子が風邪だと聞いたので飛んできましたのよ」
キャサリンは口元を扇で隠しながら言った。
「すっかり元気になったよ」
ウィリアムがフェリシティを撫でながら伝えた。
「そうですの」
そういえば、キャサリンはウィリアムのことを好きだと言っていなかっただろうか。そして、両家の両親は二人の結婚を視野に入れていたはずだ。
ウィリアム邸に滞在して一ヶ月ほど、彼女のことはここで三回見た。一回目は「汚らわしい」と言った日、二回目は庭園で泣いていた日、三回目は今日だ。
これほど頻繁に会うのは二人がすでに婚約者だからだろうか。
フェリシティの胸がズキズキとした。昨日のこともあって、苦しくて辛かったので、傷に塩をまかれたようだ。
こんな苦しい思いをするくらいなら恋心をなくしたいとも思うことがある。しかし、ウィリアムはフェリシティを甘やかし、愛してくれているようなのだ。
ウィリアムはフェリシティが獣人だと知らないはずだ。だからフェリシティはきっと愛玩動物なのだろう。
その事実がまたフェリシティの胸を抉った。諦めたいけど諦められないこの恋をどうすればいいのだろうか。
「こちらがわたくしからのお見舞い品ですわ」
キャサリンはそう言うと、使用人に持たせていた箱を目の前の机の上に置いた。恐らく入っているものは高級品だろうが、箱まで豪華とは。
「開けてみてくださいませ」
ウィリアムは箱の中を開けた。中にはうさぎ用のポンチョだ。
「これならフェリシティも温かいだろう。早速着させてみてもいいかい?」
「ええ、どうぞ」
ウィリアムはフェリシティにポンチョを着せた。そのポンチョは肌触りが良く、まるでベッドの中にいるようだ。
「ああ、とても似合っているよ」
ウィリアムはフェリシティの頬を撫でた。フェリシティは褒められるのが嬉しくて、その手に自身の頬を擦り付けた。
一方でキャサリンは一切フェリシティに近付こうとしなかった。腹の中を打ち明けてからキャサリンはフェリシティに心を開いたように思えたが、やはりまだ触ったり、近付いたりするのは無理なのだろう。
ただその顔は嬉しそうに笑っている気がする。扇で隠れて分からないが。
「ではわたくしは失礼しますわ」
ウィリアムのことを好きなキャサリン――という印象でしかなかったが、フェリシティの中では優しくて美しいキャサリンという風に変わっていたのだった。
おまけ
キャサリン「あのうさぎも使えるわね。今後もウィリアム様とわたくしのために利用しないとね」
侍女「……お嬢様、顔がにやけておいでですよ」
キャサリン「わたくしとしたことが……!」
侍女「フェリシティ様はかわいかったですものね」
キャサリン「そんなことなくてよ!」
キャサリンはそう言ったものの、長年キャサリンに仕える侍女はキャサリンが楽しくしていたことを見抜いていた。
キャサリン(この調子で動物嫌いを治していきましょう、お嬢様)
はたしてキャサリンが動物嫌いを治すのはいつのことになるだろうか。




