三十一日目
(朝……?)
昨日の苦しさが嘘かのようにすっきりと目覚めた。頭痛はしない。また、息苦しさも熱もない。医者が処方した薬が効いたようだ。
(……あ!)
フェリシティが横を見ると、ウィリアムがベッドに臥せっていた。どうやらフェリシティはウィリアムのベッドを独り占めしていたようだ。
(ウィリアム様、ありがとうございます)
きっとウィリアムは一晩中フェリシティを看病していたのだろう。そのおかげか、フェリシティの体調は回復した。
感謝の言葉を心の中で呟いていると、ウィリアムがパチリと目を覚ました。
「フェリシティ!? もう起きても大丈夫なのかい?」
フェリシティがベッドの上にちょこんと座っている様子を見て、ウィリアムは焦ったように声を出した。もう熱は引いたのか、苦しくないのか心配なのだろう。
「熱は……ないみたいだね」
ウィリアムはフェリシティに触れて熱の有無を確認した。
それにフェリシティは頬を赤くした。昨日、熱にうなされている中、フェリシティはウィリアムに恋していると認めた。そのためか、ウィリアムに触れられるのが恥ずかしいのだ。今までは平気だったのに。
「今日はベッドから離れてはいけないからね」
そんなフェリシティをお構いなしにウィリアムはフェリシティの頭を撫でた。壊れ物を扱うようにとても優しく。
(雪がまだ積もっているから遊びたかったのに)
フェリシティは違うことを考えることで、激しく鳴る心臓の音を治めようとした。しかし、ウィリアムのことを考えちゃいけないと思うほど考えてしまい、一向に治まる気配はなかった。
「りんごはどうだい?」
ウィリアムはフェリシティのことを甲斐甲斐しく世話した。ご飯のときは食べさせた。もう医者にも大丈夫だと言われたのにも関わらず、ウィリアムはずっとフェリシティの側にいる。
「はい、あーん」
食べさせてくれるのは嬉しい。それだけ大事にしてもらえている気がするからだ。ただ、恥ずかしいのだ。羞恥心で蕩けてしまいそうだ。
「食べないのかい?」
ウィリアムは悲しそうに眉を下げた。そんな悲しそうな顔をされれば、胸が締め付けられる。そんな顔をさせたくないと思ってしまう。
フェリシティは使用人たちに見守られながら、りんごを食べさせてもらった。
(このりんごはとってもおいしい)
そう思うことで、現実逃避をしようとした。しかし、次から次へとりんごが差し出され、そんなことをしている暇もなくなってしまった。
食べ終わる頃にはりんごでお腹いっぱいだったが、違う意味でもいっぱいになってしまったのだった。
おまけ
(今日は寒いわ。雪が降っているからかな?)
フェリシティは寒気でぶるりと体が震えた。そのとき――
「寒いのかい?」
ウィリアムがフェリシティを抱き上げ、自身の腕の中にすっぽりと収めた。
人肌で体が温かくなるのと同時に全身が熱くなってしまったとさ。




