二十七日目
『ううん……』
目を閉じているのにも関わらず、光が見える。フェリシティは眩しくてぽてりと体を反転させた。
そのとき、背中に温もりを感じた。とても寒い朝にはありがたい温もりだ。フェリシティは再び体を反転させ、その温もりに体を押し付け、暖を取った。そうすると、背中にも温もりが現れる。
(あったかい……)
もうずっとこのままでいたい――そう思ったとき、ふと疑問に思う。
自分の部屋で一人寝たはずなのに、どうして温もりを感じるのか。
疑問に感じ、フェリシティは目を開けた。驚きと恥ずかしさで温もりから離れようとするが、その温もりはフェリシティを逃さない。
フェリシティが目を開けて一番最初に見えたのは布だ。それが何なのか、うっすらと理解しながら、そろりそろりと上を見上げるとこちらを見るウィリアムがいた。
「おはよう、フェリシティ」
朝から眩しすぎるほどの笑顔をフェリシティに見せた。それだけでフェリシティはドキドキだ。
(どうしてここに? ……あ!)
フェリシティは昨夜、ウィリアムの部屋で寝たことを思い出した。うとうととしていたのでうろ覚えだが、流星群を見た後、ウィリアムがフェリシティを抱きかかえ、ウィリアムの部屋まで行った。そして、フェリシティはそのままそこで寝たのだろう。
「フェリシティは温かいね。ずっとこうしていたい」
ウィリアムはそう言うと、フェリシティをぎゅーっと抱きしめた。フェリシティは恥ずかしくてジタバタとこの抱擁から逃れようとした。
「……そんなに嫌かい?」
急にウィリアムがフェリシティを抱く力を緩め、悲しそうに呟いた。
「それならもう抱きしめたりしないからね」
ウィリアムはフェリシティを少し距離の開いた場所に置いた。
フェリシティは何故だが胸が痛くて苦しくなった。この抱擁から逃れたかったはずなのに、いざなくなると辛くなる。
また、もう抱きしめないとはどういうことだろうか。二度としないということだろうか。それは涙が出るほど悲しい。我慢しないと涙が溢れてしまう。
「アンナを呼んでくるからね」
ウィリアムはベッドから降り、扉の方に向かった。フェリシティから離れていくその様子がウィリアムが二度とフェリシティのところに来ないようにも感じられた。
(そんなの嫌……!)
体が勝手にウィリアムの方に向かった。離れてほしくなくて、その腕で抱きしめてほしくて、フェリシティは急いで向かった。そして、ぎゅっとウィリアムの足を掴み、行かないでと目で伝える。
(これから抱擁から逃げたりしないから……)
そのときは自分がただのうさぎのように振る舞わなければいけないことも忘れて、必死に目で懇願した。
「……僕から離れたくないと思ってくれているのかい?」
嬉しそうに弾んだ声でウィリアムは言った。そして、フェリシティの頬をそっと撫でた。そうすると、フェリシティはその手に頬を擦り付ける。
「良かった。本当に良かった」
ウィリアムはフェリシティを抱き上げた。やっぱりフェリシティはこの腕の中が一番好きだ。
もうウィリアムなしでは生きられない。あれほど家に帰りたかったのに、今はもう帰りたくないとすら思ってしまっていた。




