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ハズレ判定から始まったチート魔術士生活  作者: 篠浦 知螺


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苦労人ジョーは、足止めされる(後編)

※今回も近藤目線の話です。


 思っていた通りに俺たちはラストックで足止めを食らうことになった。

 宿泊場所はオーランド商店の宿舎を提供してもらえたし、食事も提供してもらっているが、とにかくやる事が無い。


「ジョー、俺ら街を見て回ろうと思っているんだが、一緒に行くか?」


 新旧コンビに誘われて、少し考えた後で一緒に出掛けることにした。 こいつらだけで外に出すと、騒ぎを起こさないか心配だったからだ。


「馬鹿言うなよ、俺たちだって昔とは違うんだぞ。なっ、達也」

「そうそう、八木も居ないしな」


 確かに、トラブルの根源である八木が居ないのは好材料だが、二人だけでも十分に危ない事には変わりはない。

 それでも冒険者として経験を積んで、以前よりは上手く立ち回るようにはなっているようだ。


「鷹山は行かないのか?」

「俺はいい……出歩くと金使うからな」


 鷹山は、今や一家四人を支える大黒柱でもある。

 一応、義母のフローチェさんには管理人としての費用を払っているから、いくらかの収入にはなっているはずだが、それでも将来を考えると蓄えを増やしておきたいのだろう。


 日本だと、医療保険とか、生命保険とか、学資保険とか、色々と備える手立てはあるが、ヴォルザードでは個人の蓄えで備えるしかないのだ。


「そっか、分かった」


 鷹山に留守番を頼み、エウリコさんには街道が通れるようになったか見て来ると言って宿舎を出た。

 ラストックの街並みは、今まさに発展している最中の新しい街並みだ。


 街の中心部は綺麗に整備されているが、少し裏に入ればあちこちで工事が続いている。

 街全体が活気に溢れているのだが、それでも、どこか不安な空気のようなものを感じるのは、ドラゴンの飛来で街道が止められているからだろう。


 街をブラつきながら、和樹が話を切り出した。


「実は俺、ラストックの街にもっと反感っていうか、恨みみたいな物を感じると思ってたんだけど、なんか全然そういうが無いんだよなぁ……」

「あぁ、分かる分かる、なにせここでの扱いは悪かったからなぁ……でも、そもそも街に出た事が無かったからな」

「でも、二人は先に抜け出せたじゃないか」

「まぁな、でも最初の五人に選ばれた時は、内心結構ビビってたんだぜ」

「だよな、俺と和樹、八木と……あと凸凹か。あいつら、今なにしてのかな?」

「もう高校生だろう、受験に失敗してなきゃ」


 日本に戻った同級生たちは、もう受験を終えて高校生をやっているはずだ。

 異世界で魔法を使いながら暮らすなんて、他では絶対に体験できないからヴォルザードに残ったが、果たして正解だったのか……ちょっと二人に聞いてみた。


「日本に戻った方が良かったと思ってる?」

「いや、それは無い」

「無いな」


 意外にも二人とも即答だった。


「何て言うか、厳しいって感じる時もあるけど、生きてる実感は絶対にこっちの方があると思う」

「だよな、日本にいたら、命懸けで戦う場面なんて無いだろう」

「それは確かにそうだな」


 新旧コンビの言う通り、日本に居たら何かを殺すという体験は殆ど無いだろう。

 魚を釣って、自分で捌いて食べれば命を奪うことになるが、それは一方的に殺しているだけで、こちらが死ぬ心配はほぼ無い。


 猟銃の免許を取得して、クマやイノシシを撃つなら命の危険を感じるかもしれないが、東京で暮らしていたら、そうした機会は得られないだろう。

 魔物を殺し、素材を剥ぎ取り、魔石を取り出し、それを売って生計を立てる、そんな暮らしとは無縁だ。


「でもよぉ、日本は安全だけど、戦争やってる国に生まれていたら、命懸けで戦わなきゃいけなかったんだろうな」

「そういう暮らしはしたくねぇな……」


 これについても新旧コンビに全面的に賛成だ。

 人と人が殺し合う生活は、出来ればしたくない。


 俺たちも山賊に襲われれば返り討ちにして、時には命も奪うけど、少なくとも生活の場まで戦いに巻き込まれることは無い。

 爆撃の音で眠れない夜を過ごす……なんて経験はしたくないし、そうした状況で生きていると実感したくない。


「でも、ドラゴン次第で魔物の大量発生とか起きるんじゃないのか?」

「どうなんだ? 前に国分がもう起きない……みたいなことを言ってなかったか?」

「そうそう、南の大陸との間をどうとかって言ってたよな」

「あぁ、そう言えば、そうだった……」


 以前、国分から地続きだった南の大陸を切り離したと聞いた。

 いくら地続きの部分が狭いと言っても、そこを切り離した言ってのけるのは国分ぐらいのものだろう。


「でも、その切り離した部分って、俺たちが訓練を受けていた所よりもずっと南なんだろう? だったら、街道からそこまでに暮らしている魔物が一度に押し寄せてきたら……」

「やめろよ、ジョー。縁起でもないこと言うなよな」

「そうだぜ、ラストックはヴォルザードと違って川しか無いんだからさ」


 新旧コンビの言う通り、ラストックにはヴォルザードのような城壁は無い。

 魔の森との間には川が流れているが、泳ぎが上手い魔物は渡って来られるらしい。


「でも魔物が来たら、あそこに立て籠もるんだろう?」


 俺が指差す先には、高い城壁に囲まれた一角がある。


「あそこはなぁ……」

「魔物に食われるよりはマシだけど、あんまり行きたくはないな」


 高い城壁に囲まれた一角こそは、俺たちが訓練を強制されていた駐屯地だ。

 オーランド商店の商店主デルリッツさんが、現在の領主と会うために同行したが、あそこに閉じ込められるのは、俺も勘弁してもらいたい。


 街の端まで歩いて、川に架かる橋を見張っている兵士に、いつになったら通れるようになるか聞いてみたが、全く見通しが立たないという話だった。

 ドラゴンが飛来したという話は聞いているが、それ以後、どうなっているのか兵士も分からないそうだ。


「国分の奴は、なにをモサこいてんだ?」

「さっさと討伐しちまえばいいのに……」


 新旧コンビの気持も分かるが、国分には国分の事情があるのだろう。


「まぁ、俺らじゃどうにもならないし、待つしかないだろう。街の中心に行って、何か食うか」

「ジョーのおごりか?」

「なんでだよ! お前ら稼いでんだろう」

「いやいや、こういう場合はリーダーが……」

「都合の良い時だけリーダーにすんな」

「てか、俺は騒音被害の賠償をしてもらってないからな」

「そうそう、あれは酷かったからなぁ……」

「いや、達也には迷惑かけてないだろう」

「何言ってんだよ、俺だって防音室を作るの手伝わされたんだからな」

「そうか……というか、和樹は防音室のおかげで気兼ねなくヒメアと過ごせてるんだから、別にいいじゃないか」

「そういう問題じゃねぇだろう。そんなこと言ってると、録音して聞かせるぞ」

「女が居るやつが、ケチケチしてんじゃねぇ」


 結局、良く分からない理由で押し切られて、揚げパンを奢らされてしまった。


「ラストックって。街は新しいけど狭いよな」

「しゃーねぇんじゃねぇの、作り直してる最中だし」


 和樹の言う通り、ラストックはヴォルザードの第一地区よりも狭い。

 ざっと見た感じで四分の一程度の面積しかない。


 元々、開拓地の中にある街で、そんなに栄えていなかった。

 その上、洪水で殆どが流されてしまったから発展途上なのだ。


「今のうちに土地を買っておけば、後で値上がりするんじゃね?」

「てか、別宅を建てて、現地妻を囲うってのは?」

「いや、俺はヒメアが居るから……」

「かぁ、これだからリア充は……爆発しろ!」

「ははっ、発散できているから、爆発する心配も要らないんだな」

「クソが……」


 和樹にだけ彼女が出来て、一時はどうなるかと心配したが、まぁ何とかなっているようだが……いい加減、達也にも相手が出来てもらいたい所だ。

 というか、こいつらのストレスが溜まらないうちに、早いところ街道を通れるようにしてくれよ……国分。


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― 新着の感想 ―
とゆうかこのパーティ冒険者の実態がつつぬけなギルド受付嬢からアプローチ受けてんだから財産自体はかなり持ってんだろうけど。 ケントと日本政府の仲が悪い現状カンタンなライフハック的なもんでも稼げるし日本円…
日本国は賠償金を受け取って一部でも当事者たちに還元してるはず。 残った者たちには支給されなかったのだろうか? 老後の資金ぐらいはあるんじゃないかな。
八木ですら異世界あるあるで稼いでいるんだから、何か異世界あるあるででかく稼げそうだけどな
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