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ハズレ判定から始まったチート魔術士生活  作者: 篠浦 知螺


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1012/1015

ドラゴン

 存在の次元が違っています。

 こちらの世界に召喚されて、ロックオーガとか、サラマンダーとか、グリフォンとか、ギガースとか、色々とヤバい魔物を目にしてきましたが、ドラゴンは格が違っています。


 南の大陸に飛来したドラゴンは、大陸で一番高い山の頂に陣取り、周囲を見下ろしています。

 その山の中腹には、グリフォンの営巣地があって、何頭ものグリフォンが頂を睨みつけています。


 どちらの心境も想像するしかありませんが、ドラゴンは自分が暮らすのに適しているか、日当たりや風通し、水場の有無などを気にしているだけで、グリフォンの存在など気にしていないように見えます。

 一方のグリフォンは、ドラゴンの存在をバリバリに意識していますね。


 まぁ、元々そこに暮らしている者と、他所からフラっと立ち寄った者では考えが異なるのは当然でしょうが、それを差し引いても存在感が違いすぎます。


「ヤバいね……」

『そうですな、こんなに近くでドラゴンを見るとは思っておりませんでしたが、これほどとは……』


 ドラゴンの大きさは、パッと見でジェット旅客機ぐらいのサイズに見えます。

 体から発せられる魔力が凄すぎて、攻撃が通る気がしません。


「ラインハルト、過去にドラゴンが討伐されたことはあるの?」

『神話の英雄がドラゴンを倒したという話は伝わっていますが、信憑性は薄いですな』

「それ以外で、たとえば冒険者が討伐したとか、騎士が倒したとかいう話は無いの?」

『正確な記録として残されている討伐例はございませんな』

「あぁ、そうなのか……でも、そうだよねぇ、あれは倒せる気がしないよ」


 サラマンダーとかは、光属性の攻撃魔術とか、闇の盾で体内に侵入しての攻撃とかで倒せましたが、ドラゴンには全然通用する気がしません。

 試しに、ちょっと体の中を覗いてやろうとしましたが、全く侵入できません。


 たぶん、体の中の魔力の密度とかが段違いなのでしょう。

 これがヴォルザードに舞い降りたら……なんて考えたら、ぞっとしてしまいます。


 ひたすら攻撃を加えて、居心地の悪い場所だと思わせて、追い払うしかなさそうです。

 ドラゴンを眷属に……なんて、ちょっとだけ考えましたが無理ですね。


「ラインハルト、このドラゴンは何で引っ越してきたんだろう?」

『さて、見たところ縄張り争いに負けたような感じもしませんし、若いドラゴンなのか成熟したドラゴンなのかも分からないので、何とも言えませんな』

「ここに巣を作ったら、ここで繁殖を始めたりするのかな?」

『居場所と定めたのであれば、ゆくゆくは、そうなる可能性がありますな』


 遠目で観察していると、ドラゴンは実に美しい生き物です。

 鱗とか艶っ艶ですし、巨大な目玉は吸い込まれそうです。


「ドラゴンって、この星に何頭ぐらい居るんだろう?」

『正確な数は誰にも分からないでしょうが、十頭前後ではないかと言われていますな』

「物凄く希少な生き物なのは間違いないね」

『そうですな、もし増え続けるような事になれば、人間の暮らしは成り立たなくなるでしょうな』


 そうなのです、ドラゴンは存在が問題ではなくて、人間の営みへの影響が問題なのです。

 ここにドラゴンが住み着いても、ヴォルザードやラストックに影響が出なければ、手出しする必要はありません。


 ですが、街の存続が危ぶまれるような事態が起こるのであれば、それこそ死に物狂いで対策するしかないでしょう。


「このまま、大人しくしていてくれれば良いんだけど……」

『そうですな、むやみに暴れて魔物の大移動を誘発するような事だけはしないでもらいたいですな』


 山の頂付近から周囲を見下ろしていたドラゴンは、確認を終えたのか俯せになって目を閉じました。

 どこからかは分かりませんが、長距離飛行を終えて、一眠りといったところでしょう。


 暫く動きそうもないので、ヴォルザードに戻ろうかと思っていたら、山の中腹が騒がしくなりました。


「ギャァァァァ!」

「クェェェェェ!」


 声の主はグリフォンで、なにやら仲間同士で揉めているように見えます。

 そのうちの一頭が飛び立ち、ぐんぐん高度を上げていきました。


 飛び立ったグリフォンは、円を描くように飛びながら高度を上げてゆき、山の頂よりも高く飛び上がりました。


「まさか、ドラゴンを襲うつもりなのか?」

『あの動きは、そのまさかだと思われますぞ』


 グリフォンの狩りは、遥か上空から急降下して鋭い爪で掴みかかるパターンです。

 ドラゴンが気付いていない時ならまだしも、先程の声を聞いて目を覚まし、上空を舞うグリフォンを視線の先に捉えています。


『来ますぞ、ケント様!』


 グリフォンは急旋回を掛けた直後に翼を畳み、ドラゴン目掛けて一直線に急降下してきます。

 対するドラゴンは、ゆっくりと体を起こすと、大きく息を吸い込みました。


 急降下してきたグリフォンが、パッと翼を広げ、前脚の鋭い爪で掴み掛かろうとした時でした。


「ゴアァァァァァ!」


 咆哮と共に放たれたブレスが直撃すると、グリフォンは羽毛と血飛沫、細切れにされた肉片、骨片へと姿を変えて、山裾へと降り注いでいきました。


「やっべぇ……何なの、あの威力……」

『これほどとは……驚きましたな……』


 ロックオーガを高笑いしながら撲殺するラインハルトも、ドラゴンのブレスには度肝を抜かれたようです。

 一緒に見物に来ていたコボルト隊も、尻尾を股に挟んで震えています。


 ドラゴンは、まさに天災と呼ぶのが相応しい存在のようです。


「とりあえず、ヴォルザードに戻ろう……」

『これは、何か対策を講じないとなりませんな』

「そうだけど……対策のしようが無い気がするよ」


 それでも、僕一人では思い付かない事も、周りの人に相談すれば、何か良い考えが浮かぶかもしれません。

 ヴォルザードに戻り、ギルドのクラウスさんの執務室に顔を出しました。


「ケントです、戻りました」

「おぅ、随分と時間が掛かったじゃねぇか、何かあったのか?」

「野営地の他にラストックを治めているヴィンセント・グライスナーさんにも伝えて、その後で実物を拝んできました」

「南の大陸に居つきやがったのか?」

「このまま住み着くかどうかは分かりませんが、一番高い山の頂にいます」


 クラウスさんは、一つ大きな溜息をついた後で、僕の目を見て訊ねました。


「ケント、そいつがヴォルザードを襲った場合、倒せるか?」

「無理です。これまで見てきた魔物とは格が違いすぎます」

「即答かよ。降ってくる星を砕いたお前なら、何か方法があるんじゃねぇのか?」

「そうですねぇ……ただ、本当に格が違い過ぎるんですよ」


 戻ってくる直前に目撃した、グリフォンを一蹴したブレスの威力を話すと、クラウスさんの顔色が変わりました。


「グリフォンを一撃で肉片に変えただと……あいつらは風の魔力を纏っているから、ちょっとやそっとの攻撃じゃ通らないんだよな? それを粉々だと、冗談にも程があるぞ」

「僕も自分の目で見たのに、起きたまま夢でも見ているのかと思いました」

「とんでもねぇ奴が現れやがったな。とりあえず、監視を続けてくれ」

「はい、監視は継続していますし、何か異変があったらすぐ知らせるように言ってあります」

「よし、それでいい。動きがあったら、すぐに知らせてくれ」

「分かりました。ところでクラウスさん、もしドラゴンがヴォルザードに飛来したら、どうしますか?」


 帰って来るまでの間に、ずっと考え得ていた問い掛けをしてました。


「そんなもの、死に物狂いで追い払うしかねぇだろう」

「でも、普通の攻撃は通らないと思いますよ」

「だったら、大魔筒を使うしかないのだろう」

「大魔筒……」

「何を呆けやがる、お前が持ち帰った物じゃねぇか」

「そうでした」


 エルマネアから持ち帰った魔筒と大魔筒の研究を、クラウスさんは継続させていたそうです。


「ドラゴンに通用するかどうか、そいつは実際に撃ち込んでみないと分からないが、追い払うための嫌がらせぐらいになるんじゃねぇか?」

「そうですね、発射の際に大きな音も出ますし、脅しには使えるかもしませんね」

「魔筒はドラゴンにとっても初めて見る武器だろう、音でビビって逃げてくれれば助かるんだがな」


 実際にドラゴンの姿を間近で見た人間と、話でしか聞いていない人間の認識の差だとは思う。

 だが、クラウスさんが恐れ知らずで、対策を考える手を止めないのは心強い。


 愛する人たちと、愛する街を守るため、僕も僕に出来ることをやり続けよう。


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― 新着の感想 ―
ドラゴンの魔法防御、感知能力如何によるけど、闇魔法ショットで狙撃、ケントの送還で断裂、口や体内に直接劇毒やアルコール入れて弱らせてから倒す、とかが出来るかどうかだな。
最近は、ファンタジーモンスターの筆頭と言えるドラゴンも1山いくらで狩られる作品が多い中、こうしてどうやっても勝ち目がない絶対的な存在といて描かれるのは珍しい。 このまま、当作品においては究極の生命体の…
↓ある程度いい状態の死体と魔石が残っていないと眷属化できなかった気がします
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