↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/77

7-10 来年も一緒に

ある昼食時、ミアはふと、気がかりだったことを思い出した。


「そういえば、来年の選択課程ですけど、皆さんはもう決めているんですか?」


アレクサンダーが顔を上げる。


「まだ決めてなかったのか? 期限はプロムの前日だろ」


「決めてないわけじゃありません。ずっと考えてはいたんですけど、最後のところで迷っていて」


「一年の最初から案内されてたのに」


「だから、一年間考えてたんです」


ミアがむくれると、ジークバルトが笑った。


「俺は騎士科。最初から変わってない」


「ジークは、ほかを選ぶ姿が想像できませんね」


「だろ? 剣術だけじゃなく、護衛や軍事の授業も増えるから楽しみなんだ」


ジークバルトは満足そうに言い、肉を一切れ口へ運んだ。


「僕は政務科。殿下も同じだよ」


トビアスが続けると、アレクサンダーも頷く。


「ああ。領地経営や財政を学ぶからな。俺が選ばないわけにはいかない」


「殿下は座学の成績も伸びましたものね」


セレスティーナが穏やかに言う。


「……お前に言われると、なんだか複雑だな」


「セレスティーナ嬢は、座学も実技もほとんど満点だからね」


トビアスがからかうと、アレクサンダーは眉をひそめた。


「わたくしは、幼い頃から家で教えていただいていただけです」


セレスティーナは平然と魚料理へフォークを入れた。ミアはスープを飲みながら、選択課程のことを考える。


騎士科、魔術科、政務科、家政科。一年次の共通科目は残るものの、二年次からは選んだ課程の授業が増える。五人がいつも同じ教室にいるわけではなくなるのだ。


「家政科って、家を管理する勉強ですよね?」


「それだけじゃないよ。人を招くことや社交も含まれる」


トビアスが説明する。


「屋敷を取り仕切る人だけじゃなく、侍女や執事、侍従を目指す人も選ぶ課程だね。学ぶ内容も、それぞれ違う」


ミアは頷いた。庶民から貴族になって、まだ一年ほど。家政科で学べることは、きっと役に立つ。


「セラ様は、政務科か家政科ですか?」


「いいえ。わたくしは魔術科にいたします」


「魔術科?」


ミアが聞き返すと、アレクサンダーも意外そうにセレスティーナを見た。


「政務や家政は、公爵家でも学んでまいりました。王太子妃としての教育にも含まれておりますから。学院で学ぶなら、ここでしか読めない資料の多い魔術科がよろしいかと」


「資料目当て?」


ジークバルトが笑う。


「実習も楽しみでございます」


セレスティーナは、いつになく素直に付け加えた。その表情を見て、ミアは少し羨ましくなる。セレスティーナには、学びたいものがはっきりしている。


「ミアは魔術科にすると思ってたけど」


トビアスに言われ、ミアは鞄から希望書を取り出した。


「私も、そうしたいとは思っていたんです。でも、聖女の力は普通の魔術と違うでしょう? 魔術科で習ったことが、私の力にも役立つのか分からなくて」


「聖女のお力については、文献も少のうございますからね」


セレスティーナがフォークを置く。


「やっぱり、そうなんですか?」


「はい。だからこそ、学ぶ価値はあると思います」


ミアは希望書へ目を落とした。分からないことが残るのは、どの課程を選んでも同じだ。それなら、ずっと学びたいと思っていた魔術科を選びたい。


「……やっぱり、魔術科にします」


「ミア様もでございますか?」


セレスティーナのすみれ色の瞳が明るくなる。


「はい。セラ様と一緒なら、心強いですから」


「来年もミア様とご一緒できるのでしたら、わたくしはとても幸せでございます」


ふんわりと微笑まれ、ミアも笑顔になった。


「決め手は、セレスティーナがいるからじゃないのか?」


アレクサンダーがからかう。


「それも決め手の一つですけど、ちゃんと考えたんです!」


ミアは頬を膨らませた。


「一年間ずっと、魔術科にしようかなって思っていました。セラ様のお話を聞いて、最後に決められただけです」


「分かった、分かった」


アレクサンダーが笑う。その向かいで、セレスティーナは嬉しそうにミアを見ていた。


「聖女のお力についても、何かお手伝いできないか考えますね」


「嬉しいです。でも、セラ様も無理はしないでくださいね」


「承知しております」


「何かあったら、私にも相談してください」


「はい、ミア様」


二人は希望書を覗き込み、来年の実習について話し始めた。


その様子をしばらく眺めていたアレクサンダーが、ぽつりと言う。


「……俺も、やっぱり魔術科にしようかな」


すぐにトビアスの肘が脇腹に入った。


「殿下。さっき政務科に決めたって言ったよね」


「言った。ちょっと思っただけだ」


ジークバルトが吹き出す。ミアが顔を上げると、アレクサンダーは何でもない顔で食事へ戻った。


セレスティーナは、二年次になってもミアと魔術を学べることがよほど嬉しいらしい。実習で使う資料の話をしながら、普段より早く魚料理を食べ終えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。