死神さん、バレる
【錬金術】に必要な才能は数学と化学だった。
しかも、中学生レベルの。
朝陽には難しいだろうが夜一に関しては問題のないレベルであったたため安心して就寝した。
眼が真っ赤になってることを忘れて。
翌日の朝、朝陽は既に出かけた後だった。
テーブルの上にはサッカーボールサイズの巨大なオニギリ。
恐らく昨日話した一人暮らしの件が現実じみていたからであろう、焦って料理を始めた様だ。
しかしながら不味い。
米に対して水の量が多い。
さらに早焚きにでもしたのであろう、べちょべちょで芯がある不思議な食感になっている。
夜一は大きめの鍋に水を入れ顆粒出汁を入れる。
そこにべちょべちょオニギリを入れ煮込んでいく。
………オニギリの中からは具材が入っていた。
昨日残しておいたシャトーブリアンが無惨な形で出てきたのだ。
「成仏してください」
両手を合わせる。
米の芯が無くなったところに味噌を入れる。
少し煮込んで卵を解き入れれば味噌雑炊の完成だ。
残念ながらシャトーブリアンさんの旨みは死んでいるが雑炊としては満足のいく物だった。
今日は裏庭に小さな家庭菜園を作ろうと思っている。
『薬草の種』これがとんでもなく高価だった。
10粒で130,000ポイント。
必死に貯めた小遣いの殆どを昨日1日で注ぎ込んだ。
どうしても元を取らなくてはいけないのだ。
裏庭に出て日当たりがいい場所をスコップで掘り返す。
これを10回程しかやってないのに信じられないほどの体力の減りが。
自分の体力の無さに愕然とした。
結局出来たのは30×30の小さな家庭菜園である。
そこに畝を作り種を植えていく。
上手く育ちます様にと願いをかけて。
夜一は目を閉じて祈っていたから気付いて無いが小さな家庭菜園は淡い光に包まれていた。
「さて、タネも植えたし…ショップで買い物しすぎたから節制しないとな」
軒下で裏庭を見ながらのんびりしてると。
「ただいまぁー!」
と、騒がしい声が聞こえてきた。
「おかえり、どこ行ってたんだ?」
「ダン専の願書だしてきた!」
「なんでだ?」
夜一は不思議に思った。
今の時代ネットでステータスカードの番号を打てば即受付終了なのに…
「なんで? ってダン専に入りたいからだよー。 受付のお姉さんにもしかしたら第一校に入れるかもしれないって言われたよ」
ダンジョン専門高等学校は第1校から第1,000校もあり数字が少ないほどエリートである証となっている。
一学校に100人しか入学できない為、倍率は100倍程あるらしい。
夜一の様に最初から入らないと言うのはこの世界では異端であった。
さらに言えば、ウチの母親も第1校の卒業生らしい。
「お兄ちゃん、オニギリどうだった?」
「非常に不味かった。 お前はシャトーブリアンさんに全力で謝罪しろ」
「そんなぁー。 ってお兄ちゃん目が真っ赤だよ!?」
夜一は完全に失念していた。
そう言えば自分の瞳が真っ赤になっていた事を。
「疲れ目だ」
「そっかー、目薬いる?」
夜一は驚愕した、朝陽をアホだと思っていたが本物のアホとは思っていなかったからだ。
勘違いしてくれるならそのままでも良い。
「いや、目薬はさっきさした」
朝陽を見ると自動的にステータスが現れた。
鏑木朝陽
レベル 2
ランク 24,537,799位
スキル
【聖槍術】
【聖鎧】
【状態異常無効】
称号
【豪運】 運が良くなる
【アホの子】 本能的に危険回避しやすくなる
称号?
それよりもレベルだ。
「朝陽、ダンジョンに行ったな?」
「行ってないよ!? 何言ってるのかなぁーヒューヒュー」
「嘘が下手くそだな。 そもそも、母さんに許可もらったのか?」
「貰ってないよ?」
「そうか、今日の夜には帰って来るから怒られな」
「へ? 帰ってくるの? なんで私知らないよ!?」
朝陽は超がつくほどの機械音痴なのだ。
スマホは持っているが使いこなせてない為、母親からの連絡は夜一に行くようになっている。
夜一は焦る朝陽を横目に自分の能力のことを母親に相談すべきかどうするべきか考えていた。
より過保護になりそうなのでカラコン入れて黙っとく事にした。
「朝陽、昨日言ってた勝負でもするか?」
「私の力みせてやるわ、むふっふっふ」
朝陽はレベル上がってるから明らかに調子に乗ってる。
夜一は木製の十字槍を朝陽に渡した。
「ハンデとして俺も槍でやる、掛かってこい」
掌をクイックイッと動かすと朝陽が突撃してきた。
真っ直ぐ来たので半身で躱し背中を十字槍で突く。
「痛っ!」
「ほらほら。隙だらけだぞ」
夜一は朝陽の脛や胴を狙い澄ましたように突いていく。
「少しは手加減してよーアザだらけになっちゃう」
「死にさえしなければ母さんが治してくれるぞっと」
朝陽が出した突きに合わせるように突きを放ち槍を止める。
「それ、夜まで痛いじゃん!」
「よく気づいたなっと」
夜一は、朝陽の槍を十字槍に絡ませ弾く。
そして槍先を朝陽の首元に持って行き、
「終わり」
と、一言だけ呟いた夜一は完全不燃焼だった。
「うーん、イマイチだったな。 朝陽、スキル使って良いいぞ」
「負けても言い訳にしないでよね【聖鎧】」
再度、槍を構え直した2人槍を撃ち合いながら夜一が衝撃的なことを言う。
「朝陽、気付いてるか? 俺、対戦始まってから右脚は一歩も動いてないぞー」
「えっ、ホント? うぐぐぐ、喰らえ連続突き!」
夜一はその全ての突きを相対して防ぐ。
「はぁ、朝陽槍は突きだけが攻撃方法じゃ無いぞ」
夜一が一気にしゃがみこみ朝陽のすねに槍の斬撃を与える。
「突けば槍、払えば薙刀、打てば鈍器ってね…聞こえてないか」
朝陽は立ったまま気絶していた。
最後の石突の攻撃が見事にクリーンヒットしたのだ。
スキルと言えど鍛えて無ければないと変わらないか…朝陽を縁側に寝かせて冷えたタオルを被せる。
その間に夜一はカラコンを購入し装着した。
「少し色味がアレだが大丈夫だろう。 しかし、朝陽の【聖槍術】だったか十字槍では発動してなかったように思えるな。 母さんに頼んで朝陽の武器でも頼むか…」
それから朝陽が目覚めたのは夜になってからだ。
母親に回復を施して貰った。
「夜一は怪我してないのね?」
「朝陽は良くも悪くも猪突猛進タイプだから回避しやすいんだよ、煽りに弱いしね」
「レベル上がったのにお兄ちゃんに勝てないのが納得できない! どう見ても雑魚ポジションのキャラでしょ!」
「朝陽、レベル上がったと言うのはどう言うこと? ダンジョンに入るには私の許可が必要って言ってあるわよね?」
朝陽を見た後夜一にも視線を向ける真理亜。
「俺は一切関与してない」
「でもお兄ちゃんレベル上がったの知ったじゃん」
「お前のテンション見てたら予想くらいつく」
「夜一は関与してないわね…朝陽ちゃん久しぶりにトレーニングしましょうか」
「い、いやだぁぁぁ」
真理亜は嫌がる朝陽を担いで裏庭に。
俺は、夕ご飯の準備だ。 いつも通りにホットプレートを置きたねを置き豚肉天かすを乗せる。
それをひっくり返り返して大阪お好み焼きの完成だ、あとはそばを焼き薄い生地に大量のキャベツの線切りを乗せる。
そして別に焼いた目玉焼きの上に返してソースをダクダクに塗って広島お好み焼きの完成。
「母さん、朝陽ご飯できたぞ」
お肌ツヤツヤの母親と全身ボロボロの妹が現れた。やり過ぎではないかと思ったが口にせず食事を始める事に。
「お好み焼きうまうま」
母親に砕かれたハートは既に復活しているようだ。
我が妹ながら単純な。
家族の会話は他愛のない物だった。食事が終わり就寝の支度をしているとコンコンとドアが叩かれた。
ドアを開くとそこにいたのは母さんだった。
「どうしたの?」
「それはこっちのセリフ。 夜一あなた魔眼を手に入れたわね…鑑定系ね」
「うん、まあ。 【ショップ】スキルのレベルアップ報酬でね。 あとは即日配達くらい」
「そう…じゃあ、私行くわね」
「仕事頑張って」
「ええ」
真理亜は夜一の部屋を出て行った。
「これって魔眼って言うんだ…厨二ぽいな」
夜一はカラコンを外して左眼を隠してみた。
「うん、ないな…」




