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死神さん、バズる



翌日の朝、朝陽が朝食を作ると言うのを説得して夜一が朝食を作った。


「朝陽、今日の予定は?」

「んー? 特にないよ」

「昨日、母さんから朝陽の武器買う許可もらったからダンジョン街に行くぞ」


ダンジョン街とはダンジョンの周りに出来た施設であり、厳正な審査の元経営している為、ぼったくりも無い。

だが物が良いということは値段も高い。

だからこそ、朝陽1人で行かせることはしない。

今回は母さんのカードだからな…限度額は天井知らずだ。


俺と朝陽は電車に乗りダンジョン街へと着いた。

夜一は初めて来た。


「思ったより活気があるし治安も良さそうだな」


辺りを見る限り和気藹々としており賑わっていた。

朝陽はドヤ顔をしながら説明する。


「ダンジョン街で悪さしたら全ての店で総スカンくらうし悪質なら即逮捕だからね」

「……」


夜一は、どこでも一緒だろと思いながらも朝陽の話を聞いた。


「で、お目当ての武器屋は何処にあるんだ?」

「こっちだよ!」


朝陽は夜一の手を握り走り始めた。

夜一は朝陽の手を引く。


「走るな、迷惑だろ」

「ごめんなさい」


ゆっくりと歩きながらダンジョン街を見ていく。

まるで巨大なモールのようになっていた。

途中、地図があったのでそれを見る。


ダンジョン街はダンジョンを中心にして作られていた。

中心部にはダンジョン協会が門のように作られておりダンジョン街自体が迷路のようになっていた。


「なるほど、スタンピード対策か…出口はこの場所一つのみ」


地図を無意識に指す夜一。


「だが、甘いな…」

「何が甘いんだい?」


夜一は地図のある部分を指した。

そこはダンジョンから最も離れた屋台街とギルド街の間だった。


「ここにモンスターが集まることはない、その前段階で方々に避けるだろうからな」


魔物避けの魔法陣が敷かれているのだ、厄災クラスでない限り先に進む事はない。


「じゃあ、どうすれば良いと思う?」

「ダンジョン協会周囲にギルド街…いや常駐ギルドがあるのがベストだ。 あくまで殲滅ではなく時間稼ぎとしてだが」

「なるほどねぇ、最近スタンピードが起きないから気が緩んでいたのかなぁ」

「……ところでお姉さんは誰?」


目の前には母親と同世代の女性がいた。

隣の朝陽が夜一のパーカーをクイッと引っ張る。


「アルテミスの南武京香(なんぶきょうか)さんだよ!? 今はここのダンジョン協会会長さんだよ!?」

「現役引退したのに覚えてもらえるなんて光栄だね」


京香はニコッと笑う。


「あーすいませんね。 そう言う事じゃ無いんですよ。 僕らは鏑木真理亜の子供なんです」

「真理亜の!?」


アルテミスは母親である鏑木真理亜のかつて所属していたギルドだ。

夜一の件で脱退と同時にギルドは解散したのだ。


「じゃあ、君が夜一君に君が朝陽ちゃんか」

「名前知ってるんですか!?」


朝陽が嬉しそうにぴょんぴょんと跳ねる。


「散々、真理亜に写真を見せつけられてたからね」


夜一は苦笑し


「母がすいません」


と詫びた。


「いや良いよ、先ほどいいアドバイス貰ったし。 スタンピードの原因がわかった時からから各ギルド弛んでるしね」


スタンピードの原因は、魔力の枯渇にあることがわかった。

モンスターは魔力を喰らい存在している。

昔はモンスターを殲滅するのが主流だったが、昨今は適度に狩るのがスタイルだ。


「それで2人はどうしてここに来たんだい?」

「朝陽の武器を買いに」

「…夜一君は? 君からは真理亜の雰囲気を感じる」


真理亜の雰囲気。

母は戦闘スキルは無いが天性の感覚で一般の攻略者すら超える戦闘能力を持っている。


「僕は戦闘系では無いしダンジョンにそれほど興味がないので」

「そうか、残念だ。 武器を買うなら『ドワーフの集い』と言う鍛治ギルドの販売店がオススメだよ。 紹介制になるけど私の名前を出せば入れてくれるはずだよ。 こダンジョン街で私の名前を語る者はいないしね」

「ありがとうございます。 是非、行ってみます」


夜一と朝陽は京香に別れを告げ紹介された『ドワーフの集い』へと来ている。

入口で京香さんの名前を出すと直ぐに中に入れて貰えた。

中は武器の種類ごとに分かれており槍のコーナーへと向かった。


「朝陽、どうだ」


数千万円する槍から数百万の槍を見るも朝陽は首を傾げる。

そして、一角にある槍を握った。


「お兄ちゃんコレだよ」


手に持っているのは新人鍛治士の作品。

夜一は鑑定せずとも業物である事がわかったが鑑定してみた。


無名

制作者 ガンズ

長槍

攻撃力120

耐久力1000/1000

備考 聖なる力を微量ながら帯びている


更に短槍を選ばせる。


無名

制作者 ガンズ

長槍

攻撃力145

耐久力700/700

備考 聖なる力を微量ながら帯びている


先ほどの槍と同じ制作者だこの2本を持ってカウンターに行くと筋肉隆々のオジサンが裏から出てきた。


「嬢ちゃんは【聖槍術】のスキル持ちだな」


夜一が少し体制を変えると、


「悪い、悪い、そう警戒しなすんな。 【聖術】スキルの関係者は少なからず聖なる力を帯びた武器を選ぶんだ」

「で? ギルドマスター本人が出てきた理由は?」


夜一はスキルのことを言われたと同時に鑑定を発動させていた。


秋津村雨(あきつむらさめ)

レベル847

ランク1985位

スキル

【聖特級鍛治 Max】 鍛治の技能

【品質鑑定】 物の鑑定が使用出来る

【カリスマ】 求心力が高くなる

称号

【『ドワーフの集い』ギルドマスター】 効果なし

【鍛治神の加護】 良作が出来やすくなる


「ふむ、【聖術】使いには相性という物がある。 この嬢ちゃんはガンズと長い付き合いになるだろう…そこで顔合わせをさせたいと思ってな」

「相性ですか…」


夜一は本当のことだろうと確信していた。

何100本とある槍の中からガンズと呼ばれるものの槍を2度も選んだからだ。


「あー、嬢ちゃんと顔合わせさせてもいいか?」

「ええ、構いません」

「おい! ガンズ!店に出ろ」


やってきたのはマッチョな女性だった。

夜一は鑑定する。


ガンズ

レベル59

クラス1,975,326位

スキル

【聖鍛治】レベル3 作った武器に聖属性が付く。

【打撃】 レベル5 打撃に補正が付く

称号

【アホの子】 本能的に危険回避しやすくなる


うん、朝陽と同類だわ。

擬音で会話してるし。


「坊主、あの嬢ちゃんって…」

「互いに苦労しますね」


その言葉でギルド長は理解したようだ。


「おお、そういや自己紹介がまだだったな、ワシは秋津村雨だ。 秋津でも村雨でも好きに呼んでくれ」

「では、秋津さんで。 僕は鏑木夜一、妹は鏑木朝陽です」

「鏑木かぁ…京香の紹介って事は真理亜の嬢ちゃんの子供か?」

「はい」

「たまにはメイスのメンテナンスをしろって伝えておいてくれ」

「あのメイス……」


夜一と朝陽にとって恐怖の象徴だった。

しばかれて回復、しばかれて回復の繰り返し訓練と本人は言ってたがコチラからすると拷問でしかなかった。


「……………伝えておきます」

「やたら間があったな、坊主達も訓練と言う拷問味わった口か?」

「はい」

「アイツは全く。 ん? 坊主ちょっと来てくれ」


秋津に着いて行った先にあるのは2メートル程の柄に刃渡り1メートル程のデスサイズだった。


「えっと何故ここに」

「いや、坊主が来てからコイツが騒いでる」


秋津が綺麗に飾られているデスサイズを指差す。

そのデスサイズを秋津は両手で抱え夜一に差し出す。


「ほら持ってみろ」


そう言ってデスサイズを投げてくる。

咄嗟に手を出して柄を掴む夜一。


「えっ、軽い」


秋津が持っている時はどうみても重そうだったのだが実際は羽根のように軽かった。


「やっぱりか、坊主、その武器はお前専用だ」

「何を言ってるんですか」

「俺には重すぎて振ることもかなわん」

「こんなに軽いのに?」

「そいつはユニーク武器だ。 武器自身が使用者を選ぶんだよ」

「ユニーク武器…」


怨鎌 魂喰らい(ソウルイーター)

ユニーク武器 夜一専用

攻撃力 ーーー

耐久力 ーーー

特性

肉体ではなく魂にダメージを与える。

実体にもダメージを与えることも出来る。

魂を喰らい続けると成長する。


「………エグ過ぎません?」

「鑑定持ちか、エグすぎるな。 価格は、5000万円だ、毎度あり!」

「買うなんて言ってないし! そんな金無いですよ」

「坊主の母ちゃんなら余裕だろ?」

「新手のカツアゲですか?」

「ちげーよ、その鎌怖いんだよ。 夜な夜なカタカタなるしよぉ」


厳つい見た目に対し弱音を吐く秋津。


「そんなヤバそうなもの押し付けようとしないでくださいよ」

「いや、坊主専用になってるしよ。 しゃーねえ、置いてても邪魔だしサービスだ貰っていけ」

「いや、要らないし」


夜一がデスサイズを壁に掛けるとデスサイズから鎖が現れ夜一の体を縛った。


「ほら、所有者を逃さまいとしてるぞ、しかし、絵面がホラーだな」


苦笑いの秋津。

側から見れば輝く赤い目を持った死神にしか見えないのだ。


「…持って帰るしか無いのか。目立つな」


夜一がそう言うと鎖が右腕に絡まりデスサイズは消えた。


「「「「「はっ?」」」」」


夜一、秋津、その場にいた客全員の声が揃った。

夜一がパーカーの右腕袖を捲るとデスサイズのタトゥーが入っていた。


「……出ろ」


夜一はふと呟くと右手にデスサイズが現れる。


「………消えろ」


再びタトゥーに戻る。


「コレ何!?」


滅多に感情が荒れない夜一が叫ぶ。


「いや、ユニーク武器って情報が少ないからな、こう言うこともあるだろ。 うん」

「何、秋津さん1人で納得してるんですか! どうしようコレ」

「だから、サービスでやるって、アレだったらお前の母ちゃんに頼めば何んとかなるだろ」


アレとは呪いの類いの事だ。


「はぁ…、この武器の代金、少しずつですが支払いしますよ」

「別に良いのに、律儀だな」


朝陽の武器を購入して家へと帰った。



しかし、夜一は気付いていなかった。

デスサイズを構えた写真が撮られてネットに晒され、何十万とバズり死神さんと言う渾名が付いたのであった。





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