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沈黙のストライカー  作者: ムーミンの丸焼き
アストン・ヴィラ4年目

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157/161

パブロ――深化


---


アルゼンチンU20代表の試合だった。


相手はブラジルU20だった。


---


キックオフ直後だった。


パブロがボールを受けた。ブラジルのMFがすぐに寄せてきた。


速かった。でも——遅かった。


ヴィラで毎週当たっているプレスと比べると、一歩遅かった。その一歩の間に、パブロはもう前を向いていた。


右サイドに選手が走り込んでいた。出した。


チャンスになった。


パブロは走りながら思った。


プレスが来るのがわかる。どこから来るかがわかる。だからかわせる。


---


前半二十分だった。


パブロがボールを受けた。


ブラジルのMFが前に来た。速かった。


パブロは体を入れ替えてプレスをかわした。前を向いた。


右サイドに選手が走り込んでいた。


でもパブロはそちらを見なかった。


左のFWが動き始めていた。まだ誰も気づいていなかった。


出した。


左のFWが受けた。GKと一対一になった。


ゴールに入った。


一対〇。


---


三十四分だった。


ブラジルがボールを持った。パブロが前からプレスをかけた。


相手のMFがボールを持った瞬間、パブロは右足を出した。


奪った。


そのまま前を向いた。DFが二枚いた。


パブロは右に仕掛けた。一枚が食いついた。


切り返した。左足で抜いた。


もう一枚が来た。パブロは止まらなかった。体をぶつけて押しのけた。


GKと一対一になった。


右隅に蹴り込んだ。


二対〇。


チームメイトが走ってきた。「お前やばいな!」


パブロは笑った。


---


ハーフタイムだった。


左のFWがパブロのところへ来た。「あのパス、なんで俺が動いてるのわかった?顔上げる前だったぞ」


「体の向きが変わったから」とパブロは言った。「一歩動く前に、もう体の向きが変わってた。そっちに出せると思った」


「そんなの見えるのか」


「見えた。ていうか、これ練習してたから」


左のFWはしばらくパブロを見た。「プレミア、そんなやつばかりいるのか」


「一人だけいる」とパブロは言った。「俺のチームの先輩なんだけど、毎試合後に一緒に映像見ながらあの場面どうすればよかったって話すんだよ。最初は全然わからなかったけど、続けてたら見えるようになってきて。今日のパスもその感覚だった」


左のFWはしばらくパブロを見た。「プレミアってそんな話するのか」


「その人だけだと思う」パブロは笑った。「他の選手には聞いたことない」


---


後半だった。


パブロは自由だった。


ブラジルのMFが寄せてきた。パブロは一歩で外した。


また寄せてきた。また外した。


二枚で囲んできた。


パブロは下がった。引きつけた。スペースが生まれた。右のFWへ出した。


シュートが入った。


三対〇。


パブロはグラウンドを見渡した。


ここでは自分が一番うまい、とパブロは思った。


それが誇らしいのではなかった。


ヴィラで積み上げてきたものが、ここで使えている。それだけだった。


---


試合はそのまま三対〇で終わった。


パブロは一ゴール二アシストだった。


---


帰国してヴィラに戻った日だった。


練習後、パブロはロジャーズの横に来た。


「ロジャーズさん、一つ聞いていいですか」


「何だ」


「ロジャーズさんがボールを受けるとき、どのタイミングでDFラインが上がりますか」


ロジャーズは少し驚いた顔をした。「なんでそんな事を聞くんだ?」


「アルゼンチンで試合してたとき、DFラインが動くタイミングを見てたら、もっと早く動き出せた場面があって。ヴィラで同じことができないか試したくて」


ロジャーズはしばらくパブロを見た。「俺が前を向いた瞬間に上がる。それがこのチームのルールだ」


「じゃあ俺が動き出すのもその瞬間でいいですか」


「お前が動いてくれると助かる」ロジャーズは言った。「俺がパスコースを探す前に、お前が動いてるとパスが出しやすい」


「わかりました。明日試してみます」


パブロは頷いた。


---


翌日の練習だった。


ロジャーズがボールを持った。前を向いた。


パブロがその瞬間に動き出した。


ロジャーズが顔を上げた。


パブロが見えた。


出した。


パブロが受けた。ワンタッチで前を向いた。


ニコラスが走り込んでいた。出した。


ニコラスがゴールを流し込んだ。


練習だった。でもロジャーズは少し間を置いた。


「アルゼンチンで何かあったか」


「ありました」とパブロは言った。「ロジャーズさんに話してみたかったんです」


ロジャーズは笑った。「帰ってきたら絶対聞かせろって言っただろ」


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その夜だった。


パブロはニコラスにメッセージを送った。


「今日の練習、ロジャーズさんとの連携試しました。うまくいきました」


返信が来た。


「見てた」


パブロは少し笑った。


「アルゼンチンで、体の向きを読む話をチームメイトにしたら、プレミアにそんなやつがいるのかって驚かれました。俺もヴィラに来るまで知らなかったのに」


しばらくして返信が来た。


「俺がやってるのを見て、お前が自分でできるようにした。それがすごいんだ」


パブロは画面を見た。


ヴィラに戻ってきた。でも前とは違った。アルゼンチンで見えたものがあった。それをここで使える。


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