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『竜騎幻想』を知らなくともゲーマーは攻略を考える

 熟睡していなかったからなのか、ウトウトしてしまっていた。気付くと眠っていたみたいで、シューリアが起こしに来て目を覚ました。


「おはようございます、サクリウス様。お疲れですか?」


「おはようございます。大丈夫です」


 ……気のせいかシューリアの様子が少し変な気がする。具体的には子供のような接し方から女の子のそれになった気がするんだけど、気のせいだろうか?


 確証はないし直感だけど、そういう好意や悪意には過敏になっちゃうんだよな。ただし口に出すと、ただの自意識過剰なので絶対に言わないように気を付けている。


「サクリウス様の今日のご予定はどうなっていますか? お父様とお母様がお礼の意味も兼ねて食事会を開きたいと言っているのだけど……あっ、今度は非公式ですよ」


 そう話すシューリアは初日にあった時よりは簡素な服だが髪は下していて姫様としてのお洒落はされている。……故に寝起きの姿が若干恥ずかしい。


「一応、街で買い物をして夕飯前には船に戻る予定だから、それまでなら」


「じゃあ、食事会はお昼が良さそうですね。伝えておきます」


 そうは言ったが、彼女は部屋を去る様子がない。おかげで俺の身支度ができない。


「えーっと……」


「あのっ、サクリウス様。昨夜の戦っている姿、とても素敵でした。それで、あの……サクリウス様は姉様達の誰かと結婚をお考えですか?」


 ……直球だなぁ。


「いや、冒険者としての目的を達成するまでは何も考えていないよ」


「それなら……わたしも一緒に冒険者として仲間に加わりたいです」


「そっか。ならまずは家族……王様と王妃様の許可を得ないとね」


 そう言うと、彼女は「わかりました」と答えて勢いよく部屋を出て行ってしまった。




 午前中はマレイゼリン達の荷物運びで終わり、この前と同じ部屋での食事会となった。違いがあるとすれば、運ばれてくる食事がより豪華になり、国王や王妃、王家の者は全員出席しており、一緒に食事はしないモノの宰相や兵団長などの重要人物が同室内にいる。


 これまでは若干広めと感じていた部屋も割と狭く感じられた。


「サクリウス。貴殿の戦闘を直接見させて貰った。見事な戦いぶりだった」


「ありがとうございます」


 非公式という事で、マレイゼリンから作法を気にしなくても良いことを教えて貰い、もちろん国王に対し敬意を払いつつも普通に対応する。……正直、こっちの方が助かった。


 言葉使いに気を使い過ぎて、変な言葉にならずに済む。


「まるで英雄のようだった。冒険者である事が誠に惜しい」


 ……ん?


「そこで、貴殿には娘達の内好きな者を1人与え、王族としての地位と治める土地を与えようと思う」


「畏れながら王様。大変恐縮ではありますが、辞退させて下さい」


「気に入らんか?」


 ……露骨な圧。普段、温厚で優しい王だからこそ、その圧がしっかり明確になった。いや、実際に温厚かは知らんけど、冒険者と共に食事するくらいには温厚だろう。


 少なくとも『竜騎幻想』では温厚で威厳とは無縁な頼りない王様だったよ。


「お父様。それはサクリさんにとって恩賞になりません」


「「わたしも姉様に同意です」」


「何故だ?」


 アヤルンゼールを筆頭に姉妹が俺の代わりに異見する。


「サクリさんは自分の夢のために冒険者となりました。治める土地を与えるという事は、地に縛り付けるも同義。サクリさんの夢を終わらせる事は、恩賞になりません」


「私としては、土地云々よりもお前達が結婚して世帯を持つ事を望んでいるのだが……」


「それも違いますね。お父様は国防の要として“サクリウスファミリア”を欲しています」


 第一王女として、俺達を守ってくれている……その気持ちは俺にも国王にも伝わっていた。




 国王の思惑も理解できなくもない。


 俺の戦っているところを見ているのなら、兵士達の力不足も痛感しているはず。……でも、俺の見立てでは兵士が弱いわけでなくて、アンデッド側が異例の強さだっただけなんだけどね。


 だけど国王という立場からでは、そんな事言っていられんよな。


「うーむ。そうなると、恩賞は何が良いか……」


「お父様。サクリさんには冒険者が貰うような報酬で良いのです」


「……仕方ない。宰相、救国に英雄に相応しい冒険者の報酬を見繕え」


 ……うわぁ、王様の無茶振り……それとも、宰相なら慣れているのか?


「はい、少々外します」


 そう言って、部屋から出て行く。宰相が執事を連れて戻ってきたのは30分後だった。……思ったよりもかなり早い。


「独断でこのような品にさせて頂きました。よろしいでしょうか?」


 国王が執事の運んできた財宝の数々をチェックする。


「ふむ。金も別に用意を。金額は……正規の“サクリウスファミリア”の全員を雇った際に必要な額を用意するように」


「畏まりました」


 ……それ、凄い額になるんだが? でも、大事な娘への餞別のようなモノか。


 彼等の考える「冒険者の報酬」として頂いた恩賞の品は、かなり大きな霊石各種と『拳仙皆伝の書』という、本来『邪竜討伐軍』が入手するはずのアイテム。


 そして、それ等の中に『竜騎幻想』には存在するが、プレイヤーが所持する事のできないアイテムを見つけてしまった。


「畏れながら、王様。この度、大量のアンデッドが襲撃してきた原因はコレです」


 “霊珠の錆杖”……ゲーム上ではアンデッドを統べる冥王の代行者専用装備だった。




 “霊珠の錆杖”がアンデッドを引き寄せる。その事実を知って破壊しようと国王は思っていたようだが、それを止めて俺が受け取った。……もしかしたら、これもナンス様の意図かもしれないし。


 現金も10億ナンス……霊銀貨1000枚という超高額臨時収入を得て出国前に自分の買い物をしようと街を散策していた。


「そこのお兄さん」


 背後からロリ声で呼ばれて、子供かと思って振り向いたら成人女性だった。ちなみに成人女性と断定した理由は、150センチは間違いなく超えている身長と胸のサイズ。大きすぎるサイズを見慣れた俺だけど、目の前の女性が子供ではないサイズな事くらいは理解できた。


 童顔に藤色の瞳……特殊色だ。それに長い黒髪は高い位置で団子状に纏められていた。


「お兄さんはアンデッドと戦った冒険者でしょ? ちょっと付いて来て」


 可愛いからと言って油断ならない。可愛すぎる女とか綺麗すぎる女は詐欺師の可能性も充分あるから。……まぁ、殺される程強いとは思っていないけれど。


 人の居ない裏路地に連れ込まれる。


「わたしの名はヒカレクリス=ウィジェッタ。18歳」


 そう言って冒険者カードを見せる。……アイアン級か。


「戦闘している様子、外壁から見ていたの。お願い、仲間に入れて」


「何故俺達のチームに?」


「わたしもユニーク職なの。何回かチームを組んだけど、馴染む事が出来なくて困っていて」


 ……おや? それが本当なら、アダマスオーロには随分ユニーク職の方々が居るようだ。




「確かにユニーク職持ちは良くも悪くも特別視されるね。……ところで、貴女は転生者?」


 誰も聞いていない場所。その可能性が高いから回りくどい事をせずに聞いてみる。


「それも一緒でしょ? お互い様よ」


 ……はい?!


 彼女のリアクションは俺の想定外だった。


「まさかと思うけれど、俺の反応を見て言葉を選んでいたり?」


「いえ、違うけど……確かにそう考えちゃうか。わたしは日本人。意味が解らなければ終わり」


「トンネル事故で死んで転生?」


「そう。……それも一緒なのね。わたしはエムというプロのeスポーツ選手だったの」


「……マジか。ドエム先輩なら歓迎するよ。俺は後輩の知念だよ」


「えぇ、知念なの?!」


 俺の前世を知ると彼女は抱き着いてきた。彼女の前世は銭形影夢(えむ)という高校時代1歳上の先輩でeスポ部の部長だった。部活違いで直接接点は無かったけれど、お互い存在は知っていた。


 ちなみにどうして俺が彼女に知られているかは知らん。やたらと部活にスカウトされた記憶しかない。でもゲームの上手い先輩であれば、ユニーク職で無双しても不思議ではなかった。


「俺以外に先輩をドエム先輩って呼ばないでしょ?」


「確かに……っていうか、その呼び方は止めてね」


「ヒカレクリスだよね? ヒカチで良い?」


「許そう。……で、仲間に加わって良いのよね?」


 この間、彼女は俺に抱き着いて離さない……この癖は俺にノーと言わせない前世からの癖だ。


「あとでヒカチの天職について教えて下さいね」


「うん。でも、あの戦い方で転生者だろうとは思っていたけれど、知念とは思わなかったよ」


 ……ベヒーモスの「必要な人材は積極的に仲間へ加わろうとする」という言葉を実感した。

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