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夜間の王都強襲と強さも大事だが数も必要と思い知る

 とりあえず、ニチリカを含め17人呼んでいた。しかし、その算段は甘かったと即痛感する。


「何だ、これ……」


 大規模戦闘は何度か経験していた。アンデッドが集落に襲撃を仕掛ける事も知っている。『竜騎幻想』には存在しない戦闘を何度も経験し、レベルや人数が思っていたのと違う事も1度や2度ではない。……それでも思わず口から洩れてしまう程に驚いていた。


 ……そりゃ、長引くわ……。


 外壁の外側は見渡す限りのアンデッドの群れ。しかも、ヒューム系のスケルトンやゾンビに紛れてジャイアント系やセルケティオ系、魔人族のモノもあった。


 ……何となく見覚えがあるし、何より臭い。


 数は多すぎて把握できず、1000体くらい居るのではないだろうか? ……知らんけど。


「とりあえず、自然発生ではない事は理解した。増援を呼ぶ。……というか、呼ばないと全滅するわ、こんなん!」


 いくら敵が弱いとはいえ、数の暴力には勝てない。それは戦略SRPGでの基本。……あっ、ノーダメ戦闘は除く。


「もう時間的に今日の営業は終わっているだろ……エスパフ、《望郷への門(フェアリー・ゲート)》! ミナは船に一度戻って戦闘要員を居るだけ引っ張って来て」


 ミナコールに呼ばれてゲートを潜って来たメンバーはオートマタ、未成年を除くほぼ全員だった。官職メンバーも来てくれて、流石に俺も把握できない数だった。


「うわぁ……」


 誰の声か判らないが、目の前に広がる惨状に引いているのが伝わる。……気持ちは解る。


「サクリさん、ドワーフの地下坑道の時みたいに戦うのがベストですかね?」


 久しぶりに俺と戦うものだからアッツミュが若干楽しそうに尋ねてきた。テンションが高いのは戦闘においては好都合なので問題ないが、不謹慎な気はする。


「そうなるとは思うけれど、全員少し待ってね」


「サクリさん、あたしは機材のセッティングを始めます」


「わかった」


 イクミコットに了承すると、彼女はアヤサフェールとミナコールを連れて外壁の上へと登って行く。


 ちなみに何をするかは知っている。以前より何度か実験を重ねて失敗を繰り返していた。もちろん、最近成功した事も体験している。……できれば誰も真似をしない事を祈る。


「戦況をどう見る?」


「とても拙いですね。兵士が負傷して行動不能になる速度が早過ぎます」


 数の暴力は怖い。それは現実でも一緒だ。それに、アンデッドの強さは生前の能力に依存する。国の兵士も数名は強い者がいるだろう。でも、大半が低レベルの【戦士】なのは、どの国でも一緒。1対1なら戦えても、5体くらいから一斉攻撃されたら防ぎようが無い。


「サクリさん、準備できましたよ!」


 イクミコットの合図で参戦する為に近くの兵へ伝言を頼んだ。




「後退だ!」


 あちこちから指示が聞こえて、兵士達がこちらへ戻って来る。


「よし、行こう。作戦通りに」


 出撃ユニット数が18を超えていて、随時指示をする事ができない。そこで、予め待っている間に指示をしておいた。


 すると、頭上から音楽が大音量で鳴り響く。その音に合わせてアイナッツとミハーナルの歌が流れる。


 これがイクミコットの用意していた機材。その内容はスピーカー、アンプ、マイクと録音した演奏を流す装置。戦闘における演奏は歌の補助扱いなので生演奏じゃなくても良いという仕様の穴を突いた発明。……レッツアレーナで実験した音響機材一式だ。


 でも、これにより音が届く範囲が広がり、歌の影響下に入ることができる。転生者にとっては馴染みの光景でも、生粋のイヴァルスフィア民であれば驚く事間違いない。


 兵士達が下がるのと入れ替わるように魔法使いが前にでる。【大魔導】のアッツミュとユーリンチェルが呪文詠唱を開始し、サティシヤ、ハルチェルカ、カナディアラ、サオリスローゼ、ソラナディア、リナイセム、カナージャ、アイシアが鎧状になった精霊を身に纏う。


 マオルクスは既に参加できるタロットが無いそうで……いや、多分違うな。同タロットの再使用時間は実際長いのかもしれないが、奥の手で残したいのかもしれない。


 ……それに多分、充分な火力だとは思う。


「「「《聖浄天(ホーリー)霊魂救済翼(サルベージョン)》」」」


 聖属性超広域殲滅級魔法の三連撃。詠唱はアッツミュとユーリンチェルだけだが、カナージャもタイミングを合わせて撃っていた。


 もちろん、他のメンバーも別属性だが超広域殲滅級魔法を放つ。その瞬間、攻撃範囲に居たアンデッドの大群は一撃で倒しきっていた。


 超広域殲滅級魔法は本来、そこまでの攻撃力は無い。せいぜい重傷を負わせる程度。ただ、今回は既に兵士達が交戦した個体だったり、そもそもステータス差がありすぎて耐えられなかったりで、凄く派手な状況になっていた。


「よし、いくよっ!」


 その瞬間、前衛部隊が前に出る。


 流石に3段階進化したメンバーは余裕で、囲まれる事と範囲魔法だけ気を付ければ負ける事はない。それにかすり傷程度であれば、その場ですぐ回復する。


 BGMのように流れるフローティラス姉妹の歌がHP回復とMP回復になっていて、超広域殲滅級魔法を撃ってMPカツカツになったメンバーもジワジワとMPが回復してきている。


「タロット武装……《太陽》!」


 マオルクスがコスプレ変身する。……あっ、今使用したって事はリキャストも長いから超広域殲滅級魔法に加わらなかったのでは?


 そんな事を思っている間にマオルクスの変身が完了する。


 SF世界の女性軍服のような上着とミニスカート、オーバーニーの黒タイツにブーツ。普段はハーフアップにされた金髪も高い位置でのポニーテールに変わり、腕にはショットガンを持っている……これは俺でも知っている。


「なるほど、『フルメタル・ウイング』のリーナか」


「そそ。だからね……こんなのも使えるの」


 何処から出してきたのか、彼女はロケットランチャーを構えてアンデッドの群れの中に打ち込むと派手な爆発を起こす。


「……エグいな」


 ファンタジー世界にロケランは反則だと思うよ……。




 3段階進化のメンバーがガンガン戦っている中、俺は2段階進化のメンバーをニチリカによって繋いで貰っていた。


 メンバーは俺、ニチリカ、アヤネルヴァ、モエロイーズ、リコットロン、ヒナミイシャ、チカリーナ、シオングリット、アリーエル、マレイゼリン、サユミズキ、マミルリーヌ、リョーコロン、アヤルンゼール、ユイリーナ、マリアキラとサユリシア、エミリンフェール。


「サユリン、エミリンも参戦してくれると思わなかったよ」


「だって、これ撃ちたいじゃん!」


 そう言って、俺に見せたのは聖属性の魔銃。


 ちなみにサユリシアの天職【司術官】は【魔術士】のようなものである。似て非なるモノって感じなのだが。初めて話を聞いた時、ゲームのキャラにしたら仕様上は名称が違うだけって認識だった。……もちろん、現実だと話は変わる。


 魔術は初級のモノしか使えない。だが、精霊魔法も初級のモノだけ使える。そして強化や付与、神聖、死霊……あらゆる系統の術を初級だけ使える。ただ使えるだけじゃない。初級しか使えない代わりに色々できるエリート官職だ。


 ……っていっても、知ったのはサユリシアに教わってからなのだが。


 それとエミリンフェールの天職【巡察官】は主に追跡、捕縛、調査、尋問系のスキルを持っていて、遠隔攻撃のスキルもある。だから、魔銃も扱えるけれどダメージバフはない感じだ。


 ……何故詳しいか? 【巡察官】はイーベルロマにも来ていたから。


「そろそろ良いかな? 俺達は討ち漏らしたアンデッドを討伐していくよ」


 ただのゾンビやスケルトンは超広域殲滅級魔法でほとんど倒されていて、地面には魔石が転がっていた。生き残っているのは生前ハイ種だったりアーク種だったりの上位の存在。


「あれ?」


「どうしたの?」


 アヤネルヴァが反射的に言ってしまった独り言を聞いていた。


「あ~……ゾンビやスケルトンってさ、基本生者に向かって行く性質なんだよね」


 ゾンビ映画でよく見る光景。死者は生者に群がり、仲間に引き入れる。それが基本行動だ。


「生前の思想によって若干の個体差はあるのは知っているけれど……」


 そう言って目の前を指し示す。彼女もそれを追うように視線を向ける。


 アンデッドは街を目指している……これは異常な事。


 アンデッドは生者に群がる。目の前の冒険者や兵士ではなくて街を目指す。これがどれだけ異常な事か……故意にアンデッドが何者かによって出現させている事は推測済みではあったけれど、全部が支配下に入っているとなると話はだいぶ変わって来る。


「……意味が解った。でも、これは可能なの?」


「普通は不可能です」


 アヤネルヴァの問いにサユミズキが短く答える。


「……みんな、絶対通すな!」


 既にヒカルピナに指示して街への進入は阻止しているが、嫌な予感しかしなかった。




 暫く挙動を見ていた結果、行動パターンが見えて来た。


 アンデッドは北から来る。発生源はまだ不明。……ただ、探っても無意味だろう。根拠は人為的なモノの可能性が高く、相手も無警戒でアンデッドを召喚し続ける馬鹿じゃないから。


 そして、そのアンデッドは徒歩……移動速度は種族によって違うけれど、飛行系のアンデッドはいない。


 不思議なものでゴースト系のアンデッドも居るには居るのだが、不思議と上空を飛ぶという真似をしない。……飛べないのかもしれないが、事実は誰にも判らん。


 アンデッド達は街を目指す。その途中で殴られたら殴り返す。だが、殴り返した後に反撃されなければ街を目指して移動を再開する。……つまり、足止めには攻撃し続けるしかない。


 だから、ハイ種以上になると一撃必殺のような真似ができずに討ち損じが迫って来る形になっている。


 ……目的が街の陥落に設定しているからか?


 パンッ!


 火薬の匂い。アークセルケティオだったゾンビの眉間に弾丸を撃ち込まれると、一撃で灰になって崩れ、魔石だけが残される。


 思考がそれで中断される。撃ったのはマミルリーヌだった。


「凄いな……アンデッド相手に一撃か……」


「ううん。ミナミル……じゃない、ミナミンから貰った『聖銀弾(ディバイン)』のおかげ」


 【祈祷師】ミナミルテによる聖水で清めた銀の弾丸。あのシナンス教大神殿が使っていた弾丸と同じモノだ。


 よく見ると、他のメンバーも聖水を武器に掛けて対アンデッドの効果を上げている。……俺だけが持ってない感じか?


 とはいえ、働かないのは拙い。丁度数も増えて来たし、ここで大量に減らしておくか。


「エスパフ、ランファス……〈ミックスレイド〉……メテオバースト!」


 隕石……ではない。だが、上空から大量の大岩の弾丸が降り注ぎ死体を圧し潰していく。もちろん、味方を巻き込まないように隙間に打ち込んだ攻撃。


 ……教訓。広範囲攻撃は撃てば良いというものではない。


 若干周囲に怒られつつも捌き切れないアンデッドの大群を掃除して、これで落ち着くと思った矢先、周囲が影に覆われた。


「多分、これが切り札かな?」


[あれは……冥竜カースドブラッディドラゴンです!]


 ニチリカの報告を念話で聞いている間に降りてきた……アンデッドのドラゴンが。




 ……拙いな。


 ドラゴンは強い。生前の強さに依存する事からアンデッドであっても同等以上の強さである事は間違いない。


 そして、俺は身をもって知っている。ドラゴンと互角に戦ったオークロードのレベルクラウンがユニーク職の総攻撃でやっと倒したという事実がある事を。


「サクリさん、みんなを下げさせて」


「わたしも手伝います!」


 ドラゴンの前に立ち塞がったのは、アミュアルナとカナージャ。


[みんな、2人の邪魔になるから下がって]


 念話でリンクされたメンバー全員に指示を飛ばす。


 ……早急に最短で倒さないと被害が広がる。


[弱点は?]


[打撃と火と光と聖属性です]


 ……良かった。アンデッドと一緒だわ。


「アミュタ、カニャ、3人で速攻倒すよ」


「「オッケー」」


「ユカリッサ! ……〈エンゲージ〉」


 呼んで直ぐに身に纏う。全力を使わないように注意しながら間合いを詰める。


 カナージャが牽制ついでに《聖精の咬牙(クリア・シュート)》を撃ち、翼を撃ち落とす間に、ユカリッサが生み出す光粒子の刃(フォトン・ブレード)によって尻尾を断ち切る。


「せーのっ!!」


 アミュアルナは氣力で高く跳び上がると、明らかに軌道変化して急角度急加速でカースドブラッディドラゴンの頭を跳び蹴りで仕留める。……頭、吹っ飛んだよ……。


 ……物騒な蹴りだ……そんな事を考えているとも知らず、アミュアルナは喜んでいた。




「お疲れ。魔石は抜いておくから、他を掃除してきてくれると助かる」


「「了解です」」


 ……みんな元気だ。


「ユカリッサ、〈セパレート〉」


「まだ、全然戦えるよ?」


 分離したユカリッサは心配そうに俺を見る。


「大丈夫。もう雑魚だけだから……でも、後方で待機していて。まだドラが来るかもしれん」


「オッケー、主人マスター


 伸縮自在で斬って良し、突いて良しの光粒子の刃は使い勝手が良い。


 ……それにしても、アンデッドのドラゴンまで使って首謀者は何がしたかったのか?


[みんな、次のドラが来るまで続きを頼む]


 指示を出しながらも何が目的なのか気になっていた。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿5日目+本日中にあと3回投稿します!

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