国王との公式謁見と王子の引き抜きを牽制する転生者
「召喚命令?」
念話による通信を終えた後、まずは一番事情に詳しそうなアヤルンゼールに話を聞いて貰おうと思ったところ、マレイゼリンとマミルリーヌに途中で会い、無関係ではない事から3人で彼女の元に行き、話を切り出した。
「うん、今さっきね」
場所は地下2階の通路。アヤルンゼールの部屋の前。……実は部屋の中での会話は若干狭いし、聞かれて困る人もいないので部屋に入る必要はない。
「どう思う?」
率直に意見を求める。
そもそも、ゴールド級以上の冒険者はその規模の大きさから滞在している際に多くのメリットを得る代わりに国からの要請を拒否できないという暗黙のルールがある。
国側だって、何のメリットもないのに冒険者を優遇する理由は無いしね。
「うーん……多分国の抱える重大な問題の内2つを解消したサクリさん達の功績が大きいので、国王として関与しないわけにはいかなかったのと、結果としてマレイとユーマの命を救ったのだから、父親としても直接礼を言いたいのかも?」
「……だよね」
俺も同じ考えだった。それならば何の心配も要らないとは思う。
「うーん……サクリさん。わたしも行くわ」
「「わたしも」」
俺の言語化できない心の引っかかりを3人も感じたのかもしれない。正直、3人の申し出は助かった。
「助かる。王都に着いたらゲートを開くから、明日はそれに備えて準備をしておいて」
……内心は召喚命令に関係なく、出国する前に家族へ挨拶しておいた方が良いのではないかという気遣いも半分あるんだけど、言葉にすると余計なお世話の可能性も無くはないので黙って置く。
一応、正式な召喚命令なので他にもアオランレイアにも伝えて翌日に備えて貰い、翌日朝食後にはシャドウメイデンに乗って単身、王都エレツテーレに向かう。
この方法、便利過ぎて主流になりつつある。こんなに便利なら、もっと早く試すべきだったと悔やむ程だ。
15時過ぎには王都に到着し、城の少し手前でゲートを開きマレイゼリン達を呼び寄せた。
ゲート経由で来たのは想定と違い、普段の冒険者姿だった姫様達3名と専属メイドの3人、アオランレイアとミナコール。……何故ミナコールまで来たのかと言うと、自分達では持ち出せなかった私物を運んでもらう為らしい。
……ダメとは言わんけれど、最小限の荷物にするべきでは?
とはいえ、今後はしばらく会えなくなるわけで。野暮な事は口にせず、姫様達のおかげで門番のチェックもスルーで中へと入る。
本来は馬車で城内入り口に止めて貰うのが一般的なのだろうけど、俺だけで敷地内に入り、ゲートを開いたら門番が立つ意味もないし、下手したら不審者扱いだし。
……やはり、原則は同じ人数で敷地に入り、同じ人数で出て行く。これが常識だろう。
考えてみれば当然だけど、王室では俺が思った以上に早く城へ来た事に対応の準備は整っておらず、結果として初めて来た時にみんなと会った部屋へと案内された。
「いらっしゃい、サクリウス様」
そう言って入ってきたのはシューリア。それに続いてシューイチェスタ、ユーマオロ、サヤカーラ、モモニウレーラと続く。
「姉さん達も準備を」
「今から?」
シューリアの言葉に驚きつつも、入れ替わるように6人が退室していった。
「サクリウス君、この方は冥職関連で動いている方だったよね? そちらの方は?」
ユーマオロに尋ねられ、咄嗟に答えようとした。
「改めまして。わたしは冥職調査のアックアイル代表でアオランレイア=K=ブルーローズと申します。そして、もう1人はわたし達の仲間、【拾救師】のミナコール=ブルートンでございます」
……と、アオランレイア自ら自己紹介をしてしまった。
「そうか、アックアイルのブルーローズ……王家に近しい方々でしたか」
「はい。幼い頃に1度お会いした事もあるんですよ?」
そう笑顔で話す。……いつもの幼い感じではなくて、完璧な王族の者という対応だった。
「そうでしたか。失礼しました」
憶えていないようだが無理も無い。3つも離れている……今の3歳差はたいした事ないが、年齢1桁代の頃の3歳差は大きすぎる。ましてや他国の王子様と王妃候補。本人達が無自覚でも周囲が距離をとらせるだろう。
「実はこれから父……国王が非公式ながらお会いになるそうです。召喚した側なのに準備が整っておらず申し訳ないと申していました」
「とんでもない。そもそも連絡した翌日に来るとは思いませんからね。それにわたし達のリーダーは公式の場が苦手なのです」
アオランレイアが言うただの事実に苦笑しつつ、非公式がありがたいと思っていた時期が俺にもあった。
……何故なら、あれから家臣の方々が頑張って公式の場を用意してしまったのだから。
日が沈む少し前。準備が整う頃には俺達も着替えを終えて、ガチガチに緊張しながら謁見の間を歩く。別に初めて入るわけではないけれど、これまでと違うのは最前列正面にいる事。……前方に誰もいないから作法を確認する手段がない。
「冒険者サクリウス。話は聞いている……恩人に礼儀を正すような真似はしない。まずは、マレイゼリンを始めとして、私の子供達の命を救ってくれた事。それに難しいジャイアント族との交渉にも多く貢献したと聞いている。本当にありがとう」
「勿体なき言葉、ありがとうございます」
作法は確かに知らない。間違って覚えている事も多々ある自覚はある。苦手意識もある。相手にも許されているとはいえ、傍若無人に振る舞って良い相手ではない。
正しく覚える気はないが、可能な限りうろ覚えな礼儀を尽くす。
「今回の国を長い事困らせていた2つの問題を解決に導いた功績を称えて、国外の者ではあるが特別に恩賞を与えようと考えている」
……恩賞?
本来、恩賞は国に仕える騎士や兵士に与えられる物であって、冒険者……ましてや国外の者に与えるものではない。だから、特別なのだと思う。
「しかし、近年に前例が無い事。さて、何が良いか……」
チラッと宰相を見る。……露骨に困っているな……。
「畏れながら国王様。大変恐縮ではありますが、辞退をさせて頂けないでしょうか」
「理由は?」
一瞬で空気が重くなる。周囲も静かになる。王様の問いかけは特に怒りは含まれてはいないが、先程までの歓迎されている感が消えた。
……多分、答えによっては怒らせてしまう。
「一番の理由は既にユーマオロ王子から依頼に対する報酬を頂き、完結しているからです」
こういう時は正直に話した方が良い。適当な誤魔化しや前言撤回など優柔不断な反応は逆鱗に触れる可能性が高い……多分。
「それにジャイアント族の里レッツアレーナでの件ですが、確かに皆様を守りました。ですが、それは冒険者であれば普通の事です。ユーマオロ王子達の護衛の最中でしたので報酬も頂いていますし、ジャイアント族の皆様からも礼を頂いています。これ以上は過分というものです」
「なるほど」
多分納得してくれたのか、先程のような空気の重さは無くなった気がした。
「理由は理解した。だが、納得はしていない」
……何となく、国王にも何か企みがあったのではないか?
国王の言葉を聞きながら、何となく勘がそう告げた。
世の中「無料ほど怖いモノは無い」という。国王がそれを感じて警戒しているのか、それとも俺に恩を売って何かをさせようとしているのか? ……知らんけど。
「さて、どうしたものか……」
国王は再び考え始める。
「国王、提案があります」
「発言を許す」
悩んでいる国王を見かねたのかユーマオロが助け舟を出した形になるのか?
「既にご存知と思われますが、“サクリウスファミリア”は大陸を巡る……特定の土地に留まらない冒険者チームです」
……そうそう。一番役立つのは金ではあるけれど、下手に金を受け取って良いように利用されるのは勘弁してほしい。
「これまでは国に所属する兵士でした。ですから、昇進や賞与で良かったのですが、昇進は無理ですし、賞与も……ゴールド級冒険者の報酬を考えると、それ以上の額を人数分支払うのは、国外の者が国内の者より高額を受け取る形になってしまう。……ですから、お金以外で彼等が必要としているモノを与えるのが喜ばれると思うのです。そこで提案致します。冒険者として必要なのは強き仲間だと思うのです。そこで私が彼等のチームに加わりたいと考えています」
……コイツ、とんでもない事を言ったな……。
「国王様、発言をお許しください」
許可を求めたのはサヤカーラ。
「ユーマオロ様、お考えを改めて下さい。貴方はわたしの婚約者であり、このアダマスオーロ王国の次期国王なのです。冒険者のような命を売るような職業、何かあったら国を揺るがす惨事になります」
……尤もな意見。ユーマオロが旅立っては少なくとも2人は困るだろうしね。
結局、結論はでないまま今夜は泊っていくよう指示されてしまった。
食事は謁見が終了する迄には用意されていた。場所は最初に通された部屋。
早々に堅苦しい服装は着替えて、料理をご馳走になる。……改めて、アオランレイアとミナコールを連れて来て良かったと心から思った。
……こんな心細い状況に1人で食事なんて絶対に嫌だからな。
ちなみに姫様達は居ない。多分、出国間近という事から報告がてら親子だけで食事をしているのだと思う。それを邪魔するほど野暮じゃない。
ふと、視界の隅……外が光った気がした。
「サクリさん、今の……」
……どうやら気のせいでは無いようだ。
「戦闘でしょうか?」
ミナコールが不安そうに尋ねる。
「戦闘ですね。アンデッド相手に王国兵が戦っているようです」
アオランレイアが答える。……まぁ、よくある事だ。
アンデッドは生前同族だった者達の集落を襲う傾向にある。大きな集落ほど多くのアンデッドが襲撃してくる。逆を言えば人口の少ない小さな村は極端にアンデッドの数は少ない。……当然ながら『竜騎幻想』には存在しない、ナッツリブア大陸の常識だ。
食事も終わり、3人で寛いでいたが戦闘は続いていた。……長すぎないか?
「サクリウスさん!」
部屋にシューイチェスタが慌てて駆け込んできた。
「兄さん達がピンチです。力を貸してください」
……多分、彼の独断なのだろうけど……確かに戦闘の長さが気になっていたので了承した。
街の北側、外壁の広場。本来であれば宿屋を利用しない旅人や商人、冒険者などがテントや携帯用コテージなどを使ってキャンプのように宿泊をしている。しかし、今は負傷した兵士で埋め尽くされていた。
「サクリさん、お願いします。国を守るために力を貸してください」
アヤルンゼールの声に反応すると、彼女と共に王女達が一緒に来て一斉に頭を下げる。事情を説明する事無いまま頭を下げるという事は一刻の猶予もないと言う事。
本来なら王家の人間がたかがアンデッド退治に対応する事なんてありえない。報告から察するとユーマオロも既に戦闘中に違いない。
「判った。詳しい戦況を教えてほしい」
戦況を聞いた俺は、必要な人材を呼び寄せるべく船へのゲートを開いた。
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