古祠の攻略も終わり、後は転生者の勧誘をどうする?
学んだ事がある。
物質界と妖精界。異なる世界なのに拠点へと直接転送したというのは異例であって、空のフェアリークイーンだから出来た事だと思う。同じ事をエスパフは出来るのかと尋ねたけど、無理と教えて貰ったので特殊なのだと思う。……まぁ、それで気付いた事実ではあるんだけど。
古祠から出た後は《望郷への門》にて全員が船に帰還。体力が普通に余っていた俺は気になっていたモノセロスに会いに行くと、疲れているはずのカナエアリィとリンクルムが厩舎で世話をしていた。
すると、影からスルッとシャドウメイデンが出て来て、自分の寝床へ戻る。……多分、空腹だから飯をくれって事なのだと思う……知らんけど。
「カナエル、大丈夫?」
「大丈夫……とは言い難いですね、流石にヘトヘトです。でも、恩人ならぬ恩馬ですからね。感謝の気持ちを示す意味でも、ちゃんとお世話したいんです」
あの時は関心が無かったからちゃんと見なかったが、こうして見ると白、黒、黄、赤と4頭とも立派なモノセロスだ。……ちゃんとおとなしくしているが結構な迫力だ。
「カナエルさん、誰かを選んで欲しいそうですよ」
「ん……じゃあ、君が相棒になってくれる? ……名前はそうね……メガネリス……どう?」
そう話しながら赤いモノセロスを撫でると、受け入れているのか満足そうにも見えた。
遺跡『土霊王の古祠』では連戦な上に戦闘しているメンバーは3名のみ。レベル1からのスタートというわけではなかったので、無事に3人ともレベルクラウンに達していた。
帰って来た翌日には本調子にまだなっていないものの、『天職進化の儀』を行って貰った。
「サクリさん。【双剣士】を賜りました」
「おめでとう」
ゆっくり近づいて来るユイリーナ。その理由は間違いなく筋肉痛だろう。俺は他人のステータスを確認する事はできないけれど、きっと筋力が1上がっているに違いない。
「ありがとうございます」
彼女が【双剣士】に進化するのは想定内。……問題はその後の話。
「サクリさ~ん。わたしも【魔道士】に進化しちゃった」
そう言って、背後からハグをされる。……当然ながら近づいて来るのも声の主も誰か知っていたけれど、逆らったら面倒なので彼女に限らず受け入れる事にしている。……そう、これは世の男にとっては贅沢なのだと言い聞かせて。
「アヤルンもおめでとう」
アヤルンゼールも進化するとは思っていたけれど、そうか……【魔道士】のルートに入ったか。なら瞳の色から察して【大魔導】までは確定かな?
「わたしも【ハイジャイアント】になったよ」
マリアキラの報告により、3人全員が進化したようだ。
「サクリさん。わたしは進化できませんでした」
そう言ってきたのはニチリカ。アイナッツ、ミハーナル、マユシェに続き4人目の失敗。もちろん、他の【職審官】に頼む事ができるけれどユニット以外は油断できないと思い知った。
冒険者になりたての頃とは違って資金が潤沢で設備や装備も整い、メンテナンスにも苦労しない。消耗品も自由に使える。こんな状況だからこそレベル上げは格下乱獲が効率良い。それはどんなジャンルのゲームでも一緒だと思う……多分ね。
チーム内のレア職は一部例外を除き不在となり、遺跡『土霊王の古祠』も攻略を終えた事で、そろそろイグニファイ王国へ向かう準備を始めるべきだと判断した。もちろん、推しの中でも主戦力の1人を誘ってからだが。……彼女の居ない状態の中、女性ユニット縛りで攻略は無理だろ……。
「アオッチ。職人達に近々出航するから、それまでに仕入れは完了するように伝えて」
「はい、解りました。それで、サクリさんは?」
本人は認めていないけれど、アオランレイアは拗ねていた。多分、ニチリカがレベルクラウンに到達したから。……つまり、自分よりニチリカの方が俺と同行する事が多いからという事なのだろう。
確かに、ニチリカのスキルは戦略上必須だからなぁ。
「俺は……王都かな」
出国を決意した以上、そろそろ決断しなければならない。
「気は進まないけどね」
サヤカーラとモモニウレーラのどちらをスカウトするべきか……それが悩みの種だった。
古祠に行く前から2人を仲間に加えた場合について結構真剣に考えていた。
モモニウレーラはユニーク職【杯の乙女】。彼女の神器は使い方によってはヒーラー系の最高峰になる可能性を秘めている。
最初は俺の妄想ではあったけれど、レッツアレーナで彼女を求められた理由を考えると現実味を帯びてくる。
……もしかしたら、【薬研師】が作る薬品の全てを生み出す事はもちろん、前世の世界で存在していた物質も呼び出せるんじゃないか?
このようにチームに入れば有能なユニットとなりそうな彼女だが、性格面には問題がある。
彼女の前世は主にゲーム系の配信者で有名なヴァーチャルアイドル。彼女の『ツッコミいれたくなる可愛い攻略動画』は、あまりゲーム配信を見ない俺でも知る知名度。……でも、彼女の本性がヒロイン補正を信じる煽り系ゲーマーとは思わなかった。……知らんけど。
そう思った根拠は直接話した際にユーマオロの幼馴染みポジションで惚れられている事を自覚している事。転生者バレした俺に対し「おつもちょでした♪」なんて配信〆と会話の強制終了をかけた挨拶は俺を馬鹿にするための他の人には通じない煽りでしかない。
仮にユーマオロ王子の指示で来る事になっても、仲良くやっていける気がしなかった。
一方、サヤカーラの天職【道化師】は【話術士】系上位天職なのではないかと推察している。確かに戦闘面でスキルは役立たずかもしれないが、彼女自身の努力で武術は体得しているし、銃の扱いもできると聞いた。
しかし、彼女の本領発揮は交渉や調査……それだけなら【話術士】でもできるけれど、上位と位置付けるなら、それ以上の事ができる可能性もあるんだよね。
天職の有用性は別として、彼女はアダマスオーロ王国第一王子の婚約者……つまり、未来の王妃というわけで。そして、『竜騎幻想』通りに運命が定まったならば、彼女は死んでしまう事が確定している。
……正直、死んでしまうくらいならば助けてあげたい気持ちはある。
そうなった場合、問題はシャワールとの関係。彼女自身は俺の判断に従うとは言ってくれたけど、前世の彼女を知っているからこそチームへの貢献度も考慮すると誘えるわけがない。
両方誘わなかった場合、高確率でユーマオロの妻に慣れなかった方は死ぬ。しかし、2人とも王妃になる事に固執していて、誘ったところで勝負から降りる事はないだろう。
しかし、モモニウレーラの素の性格とサヤカーラとシャワールの関係を知っている為、どちらも誘いたくなかった。
ユーマオロも結婚という決断を年齢的にも迫られているだろう。……多分ね。
出航に向けて準備は始まったが、結構な時間が掛かっていた。
その間はメンバーと交流して信頼度を上げるべく交流を深める。移動時間を短縮できた分、そのくらいの時間的な余裕はあった。
最近はマリアキラも加わった風呂場。亜人種はヒューム族の男に羞恥心的な抵抗が無いとは聞いたけれど、女子率が増えた俺の風呂時間、比較的抵抗の無い女子が少しずつ増えていた。
……俺専用の風呂、欲しいな……なんて思いつつ、部屋に戻ると見慣れない少女がいた。……心当たりはある。彼女は身体的特徴からオートマタ、藍色の髪からミカコラプスだろう。
「おかえりなさい、主人」
俺が入ってきた事に気付いて、彼女は立ち上がって俺にお辞儀をする。
「ミカコラプスだね?」
「はい、そうです」
他のオートマタと同じ140センチの身長。童顔に深い藍色の瞳。腰まである淡い藍色の髪はハーフアップツインテールにして、元気溢れる感じのカワボだった。
彼女の容姿は当然ながら直ぐに何が元ネタか判った。
魔王に滅ぼされる寸前の世界。人類の生き残りを賭けて開発された兵器である人工生命体の少女。そのメインヒロインの姿が元ネタだ。
少し前のアニメで、タイトルは確か『インテリジェンス・ラヴァー』。
「改めまして、“嵐狂の藍牙”ミカコラプスです。主人の為なら身の回りのお世話、何でもしちゃいますよ!」
そう言って彼女は力こぶを作る。
「お、おぅ」
中身はもちろん違うようで……儚い感じのダウナー系美少女だったんだけど……逞しい感じの美少女さんだ。
「……主人。そこは「な、何でも?!」って聞き返してゲスな笑いを浮かべるところですよ?」
「しないわ!」
……無知な子への警告以外でそんな返しをした事がないわ!
「ところで主人。よろしかったらMPを分けて頂けないでしょうか?」
ミカコラプスからのお願いは予測の範囲である。……今は風呂上りで後は寝るだけ。まぁ、問題ないって言えば問題ないんだが……。
「分けるのは構わないが……その前に風呂へ行く事を勧める」
「わたし、臭いですか?」
「自信があるなら構わないが……」
そう言うと、彼女はそそくさと風呂場の場所を聞いて部屋を出て行ってしまった。
翌朝。朝食を食べ終えてイクミコットと打ち合わせをしていると、緊急の呼び出しという事で急いで会議室へ向かう。
「どうした?」
会議室には先に通信用の水晶とニチリカの姿。その水晶には知らぬ人が映っていた。
「サクリさん、グランダイナ勤務の【見術官】です」
「城の?」
「サクリウス=サイファリオ様で間違いありませんか? ……お伝えします。国王様からの召喚命令が出ております。至急、登城して下さい。正式な要請ですので、準備をお願いします」
……あれ? もしかして姫様3人も連れ去ってしまったから恨まれたのだろうか?
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