フェアリークイーンも困惑するユーマオロの周辺事情
マレイゼリンは今頃、オレイアスから契約してほしいと頼まれているだろう。
話の流れは毎度一緒。そしてオレイアスの申し出を受けるのも本人の自由で、こちらから指示するものではない。アドバイスという名で誘導はできるかもしれないけれど、干渉した時点でそれはもう推しじゃない気がするんだよな。
……多分、推し活は応援であって要望の押し付けではない。異論は認める。
綺麗事を並べたが、採石場でのアイシアの戦闘を見た以上は影響を受けているだろう。
そして、マレイゼリン以外の連中はベヒーモスから依頼について説明されている事だろう。あの説明は本来なら全員が聞いておいて欲しいモノではある。
「さぁ、こちらですよ」
ランファスに連れられて、フェアリークイーンの部屋へと入る。
「お待ちしておりした。さぁ、遠慮されずにこちらへ」
深い黄色の瞳、股上まであるハーフアップにされた淡い黄色の髪。透き通るような白い肌。そして背にある黄色い砂の翅。それだけ聞けばランファスと一緒。でも、クイーンの身長は140センチあり、スタイル抜群な七頭身の美女である。
「初めまして。わたしが土のフェアリークイーンです。聞きたい事は色々あるとは思いますが……まずは契約かしら?」
その一言でランファスとの契約を結ぶ準備を始めた。……もう契約を結ぶ事に色々考えるのを辞めた。
これまでと同じ手続きを経てランファスと無事に契約を結んだけど、意外な事にランファスもプリュメリアに進化した。
「やっぱり驚いちゃいましたね。土妖精はみんな世話好きで一途なんですよ」
一途と言えば聞こえは良いが、ただの依存気質なのではないかと進化の仕方に不安を覚えた。
放置していても好感度が上がる。相手が人ならば恐怖でしかない。愛情とは育てるものだ。一方的に搾取されるものでも押し付けられるものでもない。本当の愛情は見返りを求めないものという言葉もあるけれど、そんなのは綺麗事だ。……求めるものに個人差はあるが満足する対価があるから成立している。
だから無料ほど怖いモノはないし、契約で進化したランファスも依存気質ではないかと疑った。愛情はゼロから一緒に育てないと大事なモノにはなりえない。
……恋人でもペットでも従業員でも何でも、完成品を無料同然で貰って大切とは思えないのが正常な人である。
だからこそランファスの進化に怖いモノを感じたが、よく考えれば彼女は妖精なんだよな。
価値観が違うのだから、理解できないとしても充分ありえる話である。
「質問。アダマスオーロ王国第一王子にとって本来サヤカーラ……ウェイブライト家令嬢はただの婚約者で、モモニウレーラ……アダマスオーロ国王の専属執事の娘は初恋の幼馴染みってだけだった。間違いない?」
多分、この質問でどんな意図があるのか彼女は理解してくれるだろう。
「そのようです。実は気になってベヒーモス様に確認して貰った事があります。ですが、彼女達の天職はどうも本来予定されていたものとは別のものを与えられたようです」
「別のもの?」
「どうもその2人の天職は女神によって色々試されていたみたいです。ですが、強力すぎると悪用され、弱すぎると本人を死なせてしまう。難しいバランスだったみたいです」
……あ~、俺と同じか。
あの2人は転生者である。よって、折角生まれ変わらせたのだから人生を謳歌してほしいと考えている。でも、『竜騎幻想』のストーリー的に死ぬ運命が彼女達を待っている。だったら、そんな運命を背負っているキャラじゃなくて別のモブキャラにすれば良いのに……って思うのだが多分、彼女達の要望が反映されているのだろう。……って、あれ?
「あの、そういう事なら現状のアダマスオーロの歪みは?」
「少なくとも2人の所為ではないです。彼女達は生存するための最低限しか改変していません」
……なるほど。いや、そこは納得したけれど、それならメインストーリーがムッチミラの手によって速やかに実行されなかったのは何故だ?
「そうなると、一番の異常だと感じた火薬銃の製造に関してはたいした歪みじゃないと?」
「いえ、あれは正直ダメです」
……ん?
「ダメって?」
「サクリウスさんはご存知だと思いますが、火薬銃なるものはイヴァルスフィアに存在しないはずの武器です。その武器はサクリウスさんの前世の世界では殺傷能力の高い武器だったと記憶しています」
俺の名は記憶を共有しているランファスから聞いている事は推察できる。いや、聞いているのではなくてヒューム族では不可能な知識の共有化みたいな事ができるのかもしれない。
「詳しいですね?」
「ランファスから聞いていますから。そちらの世界の技術だという事は報告された時点で気付いていました。もちろん、イヴァルスフィアの住人に対してはサクリウスさんの世界でのような殺傷力は期待できないでしょう。それでも、使い方次第だと思います」
シーナッツとの話で想像できていた。成人男性の転移者である【勇者】レベル1の身体能力は赤ちゃんと変わらない。……つまり、地球の人間とイヴァルスフィアのヒューム族では基本的な身体能力が大きく違うという事。
怪我はさせられるかもしれないが……という感じか?
「そして、想像できると思いますが銃は精密機械。魔導銃の技術を流用したとしても1年くらいで完成できるでしょうか?」
「それは……無理ですね」
そう、彼女達は16歳。長めに考えても記憶に目覚めて1年未満なんだよな。つまり、2人が直接的に火薬銃の製造や設計に関わっていない証明にもなったというわけだ。
「そうなると、疑問は誰が火薬銃の製造を始めたかって話だけど……多分、判るか」
フェアリークイーンに聞くほどの話じゃない。多分マミルリーヌに聞いても判るだろう。
「じゃあ、次の質問。レッツアレーナが妖魔と魔人族の群れに襲撃されたのは知っていますよね?」
「もちろん」
「統率がとれていた……それなら主犯がいると思うんだけど、首謀者は誰?」
現状考えられるのは二択。邪竜王を助ける為に魔王が仕掛けた。もしくは、アダマスオーロ国民の内の誰かによる個人的な恨み。
後者だったら解決は楽だと考えているけれど……高確率で前者なんだよな。根拠は現れた魔人族の強さ。絶対にヒューム族では対価を支払いきれない……それこそ生贄でも用意しない限り不可能だろう。
「心配しなくても搦め手ではなく、普通に魔王が仕掛けたモノでサクリウスさんが狙いですよ」
「じゃあ、魔王が直接?」
「いえいえ。女神側に【剣の乙女】や【勇者】、サクリウスさんがいるように、魔王側にも協力者がいるんですよ」
……だと思います。デンドロムでのネクロマンサーやレイアールのパラサイトギア等怪しい存在は数名いるようだし。
「サクリさん、お待たせしました」
「お疲れ」
次の疑問を口にしようと思ったが、説明を聞き終えた仲間達がフラフラしながらも合流した。
みんなが来た為に話は中座し、フェアリークイーンから改めて挨拶がされた。
「お疲れですよね。どうぞ、お座り下さい」
ベヒーモスが用意した石のベンチと同じものが出現し、全員がそこに腰を下ろす。それを合図に俺は質問を続ける。
「じゃあ、続きです。第一王子は初対面時に手合わせこそしましたが、男性にしては珍しく好意的に接して貰えたと感じています。それには特別な事情があるのでしょうか?」
「そんな難しい事情じゃないですよ。恐らく複数の女性の気持ちに挟まれる親近感からではないでしょうか?」
「うーん」
……本当に?
確かにユーマオロは想い人がいるから、モテているように見える男に対して嫉妬するような事はないし、何か思惑があるようにも見えない。でも、疑いたくなる程に俺に対して友好的な男というのは皆無だったんだよね。
実際は2人の内どちらを選ぶか悩んでいるユーマオロと、恋愛したくても命と引き換えにしなければならない俺とは立場が違う訳で、彼の勘違いだろうと無理矢理納得する事にした。
「さて、俺以外に何か聞きたい事がある人いる?」
……まぁ、居ないだろうな。聞きたい事も何も急な質問コーナーに準備している人なんていない訳で。フェアリークイーンも客は俺単体と認識しているだろうし。
「じゃあ、撤収しようか?」
「最後にわたしからアドバイスです。先程も話しましたが魔王側にもサクリウスさんのような運命を知る敵が存在しています。彼等はもう動き出していますよ」
……確かに、「女神ができる事は魔王もできる」って言っていたっけ。
フェアリークイーンに外まで転送して貰い、遺跡から撤収した。
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