第二王女のマミルリーヌにも気に入られて口説かれる
ユーマオロにはとても感謝された。それと同時で戦力差に驚かれていた。……どうも彼は俺がリーダーだから一番強いと思っていたようだ。経験値量が強さというのなら間違いでは無いが、正直に言えば差はない……1ユニットだけ強くしても戦略SRPGは詰むからね。
ネオンとメグルーナの帰還後にユーマオロと合流。その時には俺以外の強さを確認した事で、明日以降の駆除も頼まれた。……もちろん快諾。そもそも経験値稼ぎをする気満々だった。
翌日から船に居るメンバーは営業をしている人を除き、全員で経験値稼ぎをしていた。正直、スーパーレア職は留守番でも構わないと思ったんだけど、ユーマオロの直々の頼みということで、スポンサー様の期待に応えさせて貰った。
ちなみに、ネオン……妖魔は『天職進化の儀』を必要とせず、寝て起きたら【ハイコボルド】に進化していた。しかも成長の過程で犬娘モードだとヒューム語も話せるようになったと聞いて助かった。……獣耳&尻尾は二次元だから許されると思っていたけれど、案外三次元でも許容できる事を学習した。
彼女の他にもユミリアは【アークドワーフ】、アイシアは【暗黒騎士】、カナージャは【浄金騎士】、アスカーナは【聖職者】、アヤメルディは【闘士】、メグルーナは【冥囚騎士】、アリーエルは【ハイニクシス】、マレイゼリンとヒミカンヒルデは【精霊術士】、ナナミルフィアとキョーカロナは【軽戦士】、サユミズキは【槍士】と天職が進化した。
なんだかんだと一週間滞在して経験値を稼いでいる間、ウェイブライト家からの依頼という形で檸檬水晶の回収を引き受けて……自分達のついでに依頼分も回収していた。
今日はその依頼分で集めた檸檬水晶を納品するため、ウェイブライト家へと向かっている。つまり、それはマミルリーヌとも会うという事。
……王女様達、『竜騎幻想』とは違って実物は可愛いんだけど、色々困るから好意を剥き出しにするのは勘弁してほしい……流石に「気付かなかった」ではやり過ごせそうにないんだよね。
「こんなに沢山……ありがとうございました」
充分な量の檸檬水晶を依頼主である町長に見せる。大きな水晶を10個ほど積むと町長と彼に仕える執事も驚いていた。
……どうも、檸檬水晶は安定して入手する事が難しい貴重な石のようだ。カッパー級やシャドウ級の冒険者なら確かにあの温泉地帯は命懸けだろう。
「いえ、石材の採石を許可して頂きありがとうございました」
厳密に言えば、国外の採石に関して許可など不要。でも、国によって整備された場所を使わせて貰っているのだから国外であっても国のモノと認識していた。
「それで、こちらが報酬の……」
数枚の紙を渡される。そこには幾つか薬品の名前と説明が書かれている。
「火薬の作り方と火薬銃の製法です」
……無茶振りはしてみるものだと内心驚きつつも幸運だと思っていた。全てはユーマオロの口添えのおかげでもあるんだけど。
イヴァルスフィアにおいて、前世の世界に比べれば科学は未発達である。理由は魔法があるし、簡単なものなら誰でも使えるから。そういう理由から火薬は存在しなかった。必要としないし、爆破は魔法で事足りるから。
ここからは推測だけど、この火薬を開発したのはサヤカーラだと考えている。火薬銃が良い証拠だ。
イヴァルスフィアには魔銃と魔導銃が存在する。魔銃は引き金を引いた者のMPを消費して攻撃魔法を撃ち出す武器だ。魔導銃は魔石の力を利用した、この世界の一般的な銃である。火薬銃は存在していなかったし、する必要も無かった。
「ありがとうございます」
これを見せれば、俺達でも火薬と火薬銃を製造できる。問題は材料調達くらいか。
「感謝しろよ?」
「ありがとうございます、ユーマオロ様」
本来、それらの製造方法は国宝扱い。国を潤す財源の1つに匹敵する価値があるものだ。
「さて、サクリウス君。今夜は友人として一緒に食事をしたいんだけど、空けてくれるよね?」
これを断る不義理な言葉を俺は持ち合わせていなかった。
日が落ちる少し前に再びウェイブライト家へ来ていた。
当然だが、「友人として食事」なんて真に受けていない。『金を産む卵』を世話になったからという理由で冒険者なんかに渡すわけがない。でも、それをやらせたユーマオロには何か考えがあると思うのが自然だろう。
席に案内され、食事を出されるとユーマオロが食べ始めたのを確認する。
「いただきます」
料理が提供されるまでに関わった全ての存在に感謝の言葉を軽い気持ちで示してから周囲に倣って料理を口に運んだ。
「それにしても、俺はサクリウス君が一番強いからチームを率いているのだと思ったが……強いからではなくて、君が優れているのは戦術指揮や士気向上だったんだな。まさか、マレイゼリンがこんな短期間で【精霊術士】になるとは思わなかった……」
「本当に、凄かったです」
ユーマオロの誉め言葉にマミルリーヌも同意する。ただ、俺的にはゲーム攻略をベースに修正したものであって、別に俺が優れているわけではない。知っていれば誰でもできる事。俺じゃなくとも『竜騎幻想』を知る転生者なら誰でも……まぁ、アドバンテージがある事自体は否定しないけど。
「……なぁ、サクリウス君。“サクリウスファミリア”の拠点をアダマスオーロに置かないか?」
「えっ?」
この席を囲むのは俺とユーマオロだけではない。マミルリーヌやサヤカーラ、他にも一緒にいた執事やメイド、サヤカーラの家族も同席している。
「すみません。大陸を巡る旅をするのは子供の頃から抱いた夢。……応じるのは難しいです」
答えつつも「これが目的か」と、火薬銃製造方法の代価が高いモノについた。
「そこを考えてくれないか? 冒険者を辞めろとは言っていない。俺に力を貸してほしいんだ。定期的に国外へ遠征して貰っても構わない。……そうだ。もしアダマスオーロを拠点にしてくれるのなら、マミルリーヌを嫁にしても良い。俺の義弟にならないか?」
「……その、断ったら失礼な提案を辞めて下さい、ユーマオロ様」
いつものノリでツッコミ入れそうになるのを耐えながら、そう返すのが精一杯で。いきなり名前を出されて困りそうな話なのに、予想通りマミルリーヌは嫌じゃないと笑顔でアピール。
……そう、俺の運が良いわけがない。だから、この甘言っぽい何かを承諾したら最悪な事態が発生する事は目に見えていた。
「うーん。やっぱりマレイゼリンの方が良いか?」
「いやいやいや……あっ、すみません。俺、他国の王家の方々からもアプローチされている身なので、目的である大陸を巡る旅に満足した時、愛してくれている人を嫁にするって密かに決めているんです。だから……」
「なるほど。兄様、諦めましょう。サクリウス様はアダマスオーロ内に収まる人ではないようです。……ですので、彼が夢に満足するまで、冒険者となり傍で見守りたいと思います」
「……おい」
ユーマオロは思惑をマミルリーヌが解りつつ台無しにした事に思わずツッコミを入れていた。
「そもそも、マレイゼリンの抜け駆けが気に入りません。リョーコロン、共に行くわよ」
「はい、マミルリーヌ様」
……何て言うか、マレイゼリンが入れたのだから断られるわけがないと言わんばかりだが、俺の返事は聞かないのね。
困ってユーマオロに視線を向けると、彼は腹を抱えて笑っていた。
「いやいや。一国の姫様が冒険者なんて、命の安売りをしてはダメですよ」
「それ、マレイゼリンにも言った?」
「……いえ」
厳密にはマレイゼリンは予知夢を見ていたから仲間になるんだろうなって諦めがあったんだよな。だけど、それが故にマミルリーヌに強く無理って言えないんだよなぁ。
……言ったら女難的により厳しそうだし。
「じゃあ、良いよね?」
「そういう言い方されてしまうと俺としては拒否できないですけど、チームに入るなら他のメンバー全員にも許可を得ないと駄目ですよ」
「それ、マレイゼリンは……?」
「もちろん、全員に聞いて了承されています」
「……なら、仕方ないわね」
この問答の間、ユーマオロは笑い続けている。
「ユーマオロ様。笑い過ぎですよ?」
「……ゴメンゴメン。笑い過ぎて涙出た……あまりにもマミルリーヌが必死で……」
思わずマミルリーヌが怒って叩きに行ったが、彼は何処か羨ましそうなのが気になった。
豪華な夕飯を食べ終えて満足のはずなのだが、精神的には疲れていた。
「さて、楽しい食事も終わった事だし……」
ユーマオロは自分の執事にアイコンタクトをすると、霊銀貨15枚を俺に差し出した。
「報酬だ。結構長い時間拘束したので色を付けておいた」
「……ありがとうございます」
流石にメグミアンヌの許可を得ているとはいえ、依頼主を拘束しすぎだろう。
「それじゃあ、明日にでも撤収します。マミルリーヌ様はちゃんと国王の許可を得て下さい」
部屋を出て、屋敷から外へ向かうところでサヤカーラが待っていた。
最初は「見送りかな」なんて思っていた。
「あの、サクリウス様。もしかして、貴方は転生者じゃないですか?」
……おぅ、そっちから話題をふってくれるとは。何て答えようか悩んでいると、別の部屋に引き込まれた。
「やっぱり、そうなんですね?」
「そうです」
「……貴方は何者?」
「それを確認するなら、サヤカーラ様から答えるべきではないですか?」
こちらは貴女が転生者である事は見抜いている……というニュアンスは無事伝わったようだ。
「そうですね。確かにそれは失礼でした」
主要NPCの1人、サヤカーラ=S=ウェイブライト。桜色の瞳と股上まである同色の髪。それだけであれば、モブなお嬢様系NPCと変わらない。160センチを超える身長はNPCでは判らないからね。……でも、その美しさはNPCの枠を超えている事は俺の偏見的に判っていた。……物語的に言えばNPCは主役を際立たせる駒。意味や役割は存在するが、主役を食いかねない程の美しい容姿はデザイン的にNGだろう。
「わたしは日本という国でアイドルという仕事をしていた雪泉愛音。年齢は当時も16歳で……」
「……『トライトーン』の?」
「ご存知でしたか。という事は同郷ですね」
その聞き方という事は、あの事故で亡くなった人が転生してきている事をまだ知らないという事か。……まぁ、普通は知ったからといって何かあるわけでもない。
それに『トライトーン』はシャワール……彩華ちゃんが所属していた3人組アイドルグループで、愛音はセンターだ。俺が知らないわけがない。
「そうですね。俺は知念朔理。当時は18歳。ただの進学を控えた高校生。じゃあ、仕事の移動中にトンネル事故に巻き込まれたって感じかな?」
「そうです。何故判ったんですか?」
……それはシャワールに聞いたから……とはまだ言わない方が良いんだよなぁ。
シャワールが言うには、『トライトーン』での活動は良いモノでは無かったらしい。カメラの前やファンの前では仲良しアイドルグループで楽しそうにしている風に演出していたけれど、実際は仕事としての割り切った関係だったらしい。……当然、仲が悪いとかって話もない。仲が悪いと仕事でのクオリティが下がる可能性があるから、関係するスタッフさんも含めた関係値の管理もプロとして徹底していたらしい。
「トンネル事故が原因というのが転生者共通みたいですよ。俺もそうですし」
「そうなんですね」
……前世を知ったら、余計誘い難くなったんだが……どうしよ?
「雪泉愛音ちゃんと言えばゲームやアニメにも詳しいイメージだけど、『竜騎幻想』は?」
「貴方も知っているのね。わたしはゲームそのものをプレイした事はないけれど、動画では見た事あるし、どんな物語なのかも概ね把握しているわ」
嬉しそうだった表情が深刻なモノに変わる彼女を見て、理解している事を悟った。
「じゃあ、サヤカーラというキャラの運命も?」
その問いに頷いて答える。
「わたしは所謂『悪役令嬢ポジ』。ユーマオロ王子と結婚できなければ、死亡フラグが立って死んでしまう。ただ、乙女ゲーと違って捨てられる運命が既定路線ではないという救いはある」
そう、一応どっちになるかは【剣の乙女】の選択次第となっているが……。
「一応、転生悪役令嬢モノの定番な我儘や横暴の類を辞めて愛されるように努力をしながらフラグ回避の準備はしているけれど、『竜騎幻想』は乙女ゲーじゃないから……」
こればかりは俺も命に係わる事だから迂闊な事は言えなかった。
サヤカーラの話を聞いて、アダマスオーロの物語の歪みが彼女によるものなら仕方ないという判断をした。歪みは最小限だと思うし、動機も抗って当然と思えるものだったから。
……誰だって死ぬ事が判っていて回避可能なものなら抗うだろって話。
「死なないために家を出ていく事は考えない?」
「わたしが死んでも、出て行っても、両親からすれば居なくなるのは一緒でしょう? わたしの【道化師】という天職は戦う事には不向きだけれど、死なないためのフラグ回避には有効みたいなの。……別に勇ましく魔獣と戦いたいわけでもないし、両親に育ててくれた事に報いるためにも逃げるわけにいかない」
……そりゃ、前世の記憶があるからって、今の人生が偽りになるわけでもないからな。例えこの世界が、ゲームの世界だとしても。
「そっか。確かにただ生き残る事だけが目的じゃなければ、今の抗い方が最善なのかもな」
これだけ要因が揃えば、俺の中で彼女を誘うという可能性はかなり低くなっていた。
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