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王子と婚約者と幼馴染みはただの三角関係な筈だった

 手合わせ後、ユーマオロの態度が凄く友好的になった。もちろん、『竜騎幻想』にそんなシーンはない。それも主人公が女性で、俺が男だから発生した事なのかもと思っている。


 彼は3歳年上だけど、技量差を認めて年下の俺を称賛してくれる器の大きい人だった。


「ユーマオロ様」


 執事が部屋に入って来る。先程、木剣を持ってきた男性で彼に近づくと耳元で何かを囁く。すると、王子は露骨に嫌そうな表情をした。


「わかった。仕方ない……」


 俺の話を上機嫌で聞いていたユーマオロの機嫌が判り易いくらい悪くなっていた。


「すまない、サクリウス君。呼ばれてしまって……不本意だけど、ここで失礼するよ」


 ……さっきまで「殿」呼びだったのに、「君」呼び……距離、近づいたのか?


「あっ、そうそう。最後に俺の細やかな自慢を聞いてくれ。実は、サヤカーラとモモニウレーラの2人、天職がユニーク職なんだ。……珍しいだろ?」


 ……おっ、おぅ?!


「冒険者としては興味あるだろ? 話してみるといいよ。それじゃあ! ……2人とも、頼む」


 最後はサヤカーラとモモニウレーラの2人に意味深な頼み方をして部屋を出て行った。


 ちなみに、彼は俺がユニーク職の人達を探している事は当然知らない。なら、何故そんな話をしたのか?


 理由は別に含みがあるモノではなく、単純に冒険者の階級の最高位の1つ手前。アダマン級になるためにはユニーク職の在籍が条件にあるからなんだよね。




 そんな事よりも。多分ユーマオロの意図とは大きく違うだろうけど、気になっているのは2人がユニーク職持ちだという事。


 さっき思い出した通り『竜騎幻想』において、2人はただのイベント用NPCだ。ユニットではないし、ゲストで戦闘に参戦するわけでもない。だから、天職は設定されていない。しかし、現実的に考えるとイヴァルスフィアに生きるヒューム族は漏れなく天職を賜る。


 ……でも、それがユニーク職とは思わんって。それに、ユニーク職という事は転生者だという事になる。……いや、あくまで可能性か。これまでが全員転生者だっただけだし、絶対にそうとは断言できない。……だけど、確認は必要だよなぁ……。


[サクリさん、今どちらですか?]


 ニチリカからの念話。多分、午前中にはみんな城から出たのに俺だけ戻らない事を心配したのだと思う。


[まだ城の中だよ。王子王女達に捉まって帰れない]


[どうしますか?]


 何について聞いているか定かではないが、言わんとしている事は伝わった。


[王都を見て回るならコテージを使って泊って良いと思う。帰っても構わないし]


 ……俺ひとりなら宿屋に泊まっても問題ない。


 今回も帰還用の消耗品『リターンクリスタル』を持ってきていて、乗ってきた馬車もヒナミイシャに小さくして貰って持ち帰る事が決まっていた。


 高価な『リターンクリスタル』も材料を手に入れられるようになった事と、生産できる職人がいるから使えるんだけどね。


[そうですか。一応、コテージ展開しておきましたので船に戻る際には教えて下さい]


[わかった。ありがとう]


 正直、そろそろ撤収を考えていたのに2人の事が気になってしまった。




 1人を除く全員が俺を見ていた。


 多分、念話をしていたのには気付かれていないとは思う。でも、ユーマオロの残した言葉によって俺が誰に話し掛けるのか注目されている……多分、そういった理由だと思う。


 ちなみに、見ていなかったのはサヤカーラ。露骨に顔を背けられている。


「あの……」


 話しかけてきたのはモモニウレーラだった。


「興味ありますか? わたしのユニーク職」


「もちろん」


 ……大した度胸だと思った。だって、王子王女が注目している場で、王族でもない平民の彼女が声を掛けてきたんだから。……まぁ、俺も平民ではあるけれど。


「わたしのユニーク職は【杯の乙女】というんです」


 ……ん? 聞いた事がないのはもちろんだけど……まるで【剣の乙女】と同系統の天職に聞こえるんだが?


「どんな事ができるのですか?」


「神器による杯を召喚して、液体や粉状、粒状の物質を生み出すスキルです」


「それは量的には?」


「MPを消費するので無尽蔵には出せません。今はトータルで樽一杯だしたら終わりですね」


 ……? 一応、生産系に分類されるのか? 間接的には戦闘に利用できるかもだけど、直接的な攻撃力は無さそう?




 それよりも、ユニーク職である事を堂々と言っている。つまり、この国ではユニーク職に対してリスクやペナルティ、デメリットは無いと言う事だろうか?


 アダマスオーロ王国内でのユニーク職の在り方を考察していると、嫌そうにサヤカーラも近づいてきた。


「……はぁ。ユーマオロ王子の指示だし、誰かに聞いても判る話だから伝えるけれど、わたしの天職は【道化師】よ」


 ……はい? 道化師って、あのピエロの事だよな?


 ちなみに『竜騎幻想』の世界にサーカスは存在しない。俺の知る限りで『マイニングビルダー物語』にも存在しない。『ヴァルキリー サガ』は知らないけれど……イヴァルスフィアで17年間生きて来て、サーカスの存在を聞いた事も無かった。


「あの、【道化師】って?」


「そうね、耳慣れない職業ですからね。……わたしにできる事は、人を集める。注目させる。情報を拡散させる。感情を支配する。変装をする……ってところでしょうか」


 全部話したとは思っていないけれど、間違いなくピエロだ。


「アダマスオーロ王国ではユニーク職を賜った者に対して何らかの義務が発生しますか?」


「義務? 特に国からは……ただ、一部から嫉妬されたり、利用されたりはあるかも……」


 天職情報がオープンな事は理解したが、あえて俺に知らせた意図が判らなかった。




 ……さて、どうやって転生者の事を尋ねようか?


 流石に、ユニーク職の事はオープンでも転生者に関しては黙っている可能性は高い。


「サクリウス様。他のお話もお伺いしたいです」


 シューリアが期待の眼差しを向ける。……そういえば、彼女は英雄願望が強くて英雄譚も好んだっけ。それにより、他の姫様達も俺に注目する。


 判っている事は、彼女達……どちらか1人でも部屋の外へ連れ出す事は不可能だ。


 バンッ!


「まだ居るな? 2人ともありがとう」


 どうしようか悩んでいると、ユーマオロが戻ってきた。しかし、彼の表情は用事を片付けて来た人の表情には見えなかった。


「何かありましたか?」


「いやぁ……いや、いずれ頼ると思うから詳しい事が判るまで待ってくれ」


 ユーマオロは偶然か故意か判らないが、不安を口にした。




 結局、適当な事は話せないという事で詳しい話は聞き出せず、時間も遅くなったと言う事で解散となった。……気になったのは全員が不満そうだった事。


 それはそれで気になるけれど、それとは別にモモニウレーラと特にサヤカーラは高確率で転生者だと思う。根拠は【道化師】なんて天職の経験はこの世界では得られないから。


 せめてニチリカが同席していて2人と念話が可能だったらとは一瞬だけ思ったけれど、後の祭りだと人通りの無い夜道で1人、気付けば苦笑していた。




 コテージに戻って久しぶりの1人風呂。厳密にはランファスも一緒だが……超落ち着く。


 ……情報過多過ぎる……。


 元々『竜騎幻想』においてアダマスオーロ王国内で発生する有名な連続クエストで、婚約者と初恋の人、王子はどちらを選ぶのかという話。


 本来は王子を仲間に迎える事でクエストが発生し、幼馴染みが選ばれなかった場合は失恋が原因で失踪し、王子は闇落ちして国を滅亡へと導いてしまう。


 そして、婚約者が選ばれなかった場合は町が1つ壊滅し、王子を諦めない婚約者を邪魔に思って、うっかり事故死させてしまう。


 ……そう。どっちを選んでも王子の好感度は下がるのだが、選ばれた方が王子を支えて立ち直る物語でもある。




 翌日。帰るのは何時でも可能という事で、王都を観光する。


 他の連中は昨日の内に帰った人が半分、残りも午前中の内に帰る。俺は折角だからNPCの配置確認も兼ねてアイアン級の冒険者の店に昼食目的で入った。


「こんちは。食事だけなんだけど大丈夫?」


「おう、いらっしゃい」


 ……昼飯時なのに客は3人か。


 しかし、1人に見覚えがあった。


「あれ? 確かコボルドに襲われていた……?」


「あっ、強い冒険者さん」


 マレイゼリン達と冒険者チームを組んでいた内の1人。深い藍色の瞳と淡い藍色の髪を耳の上あたりで団子にしている女の子。低身長童顔ロリボだったので憶えていた。


「1人? 他の仲間は?」


「……解散になりました……本当にどうしよ……」


 とりあえず、同じテーブルを囲んで食事しながら話を聞く流れになってしまった。


「わたし、キョーカロナって言います。16歳でまだ冒険者になったばかりなんですよ。実は近所のお兄さんがリーダーで……あの人、結婚するのでチーム抜けたんですよ。そしたら、【魔術士】の子と【狩人】がカップルになっていて……槍使いの【戦士】と【風水士】もチーム抜けるって言うし……気まずくて解散になっちゃって……」


 ……まぁ、よく聞く話だよな。チームが3人で自分とカップルでは居心地悪すぎる。


「ねぇ、お兄さん。一緒に組みません? チーム組んでいるなら、仲間に入れてくださいよ」


 【戦士】なら他でもやれそうではあるけれど……正直、彼女は強くなりそうとは思った。


「うーん。俺は大陸を巡るタイプの冒険者なんだけど、国外に行ける?」


「お兄さんと一緒なら!」


「強敵多いけれど、強くなるための向上心は?」


「それはある!」


 ……それは……か。


「じゃあ、仲間に聞いて了承を得られたら仲間に入れてあげる。俺はゴールド級冒険者チーム“サクリウスファミリア”のリーダーでサクリウス=サイファリオ。検討を祈る」


 ……多分、彼女は仲間に迎えられる事になるだろうが、俺の肩書に対して既に怯んでいた。




 結局、チーム入りを志願した少女、キョーカロナ=リルラーダはスエロランドへ一緒に戻って確認した結果、仲間に加わる事となった。


 思っていたのと違う人だったが、本命のマレイゼリンも近日には仲間に加わるだろう。


 ……それにしても、2人の転生者……どうしたものか……。


 基本的に俺は転生者を見つけたら仲間にスカウトする。それが上位精霊達からの依頼達成に必要な戦力強化と認識している。でも、上位精霊達の言っているのは「可能な限り」という話だと認識している。……実質全員誘うのは不可能だろうしね。


 厄介なのは2人ともアダマスオーロ王国の未来を定める役割の主要NPCという事。しかもユニークだが非戦闘系天職という事もあって、誘っても危険なだけではないかと思ってしまう。


 何より2人も一度にユニーク職が見つかってしまった事にも正直困惑していた。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿1日目+明日も5回投稿します!

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