男性差別が厳しいとされる王都への護衛を受けた理由
「さて、行こう」
早めの朝食を食べた後、俺達は王都へ向かう。
期間は2泊3日。ベタパイコーロスは主要都市への交通の便はとても良かった。
「では、出発します」
御者はカナエアリィ。クリスタークと比べたらエンカウント率は低いだろうけど、敵が出たら経験値を得られるユニットが戦闘をした方が良い。
今回同行するメンバーは俺、カナエアリィと官職のエルミスリー、アグリシア、ヨシノノア、ミユルシア、アオランレイア、ルリーシュ、ニチリカ、アカリフィカ。あと、官職連中が城で公務をしている間を自由に動くため、ユイディアとアッツミュ、リリアンナを同行させる事にした。【大魔導】と【大司祭】が一緒であれば王都でも安易に咎められないだろう。
以上、13名が王都に馬車1台で向かっている。
ここ最近でニチリカは【学者】、アカリフィカは【魔術士】を賜ったのを皮切りにルリーシュは【戦士】、アオランレイアは【狩人】を賜っていた。
……まさか本当に進化しちゃうとは思わなかったよ。
「こうしてサクリさんと馬車に乗るのは久しぶりですね」
「そうだね」
「……考え事ですか?」
休憩タイミングで俺の隣に座ったユイディアが俺の顔を覗き込む。
「引っかかっている事があってさ」
そう答えた瞬間、みんなの意識がこちらに向けられたのを感じた。会話が止まり、馬車内が静まる。
「……教えて下さい」
……失敗した。不確定要素が絡む事はうっかりでも口にするものじゃない。
「うーん。まだ確信があるわけじゃないんだけど……今回は予知が大きく外れそうな気がするんだ」
「何か予知したんですか?」
「内容は言えないけれどね」
あの中身の無い夢は、逆に実際は『竜騎幻想』通りの過去を辿っていないのではないかと疑っていた。
夢でも見たように、アヤネルヴァを仲間に加えるためには城内にいるアヤネルヴァに声を掛ける必要がある。しかし、男性ユニットを同行させない状態で話しかけなきゃいけないのだけど、俺自身が男である。
一瞬、「詰んだ?」とは思ったが、そもそも詰んでいるなら夢に出てくるわけがない。
考えられるのは、俺の性別に関係なくアヤネルヴァと会話をする事が大事というパターン。状況が変わっている以上、ゲーム内とは違った会話になる可能性もあるわけで。
あと夢にあまり出て来なかったけれど、アヤネルヴァの姉妹の事も気になっている。
動画で知っていた話で、自分が体験した事ではないけれど、実は姉の場合、グッドエンドでも死んでしまう。全てのエンドが死亡エンドだったりする。俺が彼女を仲間に加えない理由はそれが一番の要因で、ハッピーエンド好きの俺としては許容できないユニットなんだよね。
一方、妹はバッドエンドでも生きてはいるけれど、仲間に加えた場合は邪竜王討伐が超ハードスケジュールになる。モタモタしていたらボス戦をする事無くゲームオーバーになる。
……それに、ツンデレやクソガキ属性の素直になれないキャラは総じて好きじゃないんだよな。
個人的好みは置いておくとして、他2人に関しては興味ないのでアヤネルヴァだけを仲間に加えたい。……まぁ、彼女も素直じゃないんだけど……本来の彼女はとても推せるキャラだし。
「サクリさん、こう露骨に悩まれますと気になりますよ?」
「あ~、ごめん。ただ、街や城内の様子によっては苦労しそうでさ」
ユニットの配置違いが一番困る。もうトゥーベントの時のような苦労は避けたい。けれど、同レベルで変更されている可能性があるんだよなぁ。
「そのためにわたし達が付いてきたんですから、安心してください。ね?」
「ん? ……あぁ、そうだね」
いや、ユイディア達が一緒にいても……と一瞬思ったけれど、俺の発言の意味が伝わっていない事を直ぐに理解した。
……確かに、ユイディア達がいれば男性差別や迫害は受けないだろう。多分、そういう意味で彼女は答えたわけで。
「頼りにしているから、よろしく頼むね。ベタパイコーロスより男性差別が酷いらしいから」
「お任せ下さい」
彼女の満足そうな笑顔を見つつ、再び考えに没頭する。
城に着いたら、城でないと出来ない事を優先的にやらなければならない。どうせ、謁見は官職達のみで、俺は城内で待機する事になるだろう。ユイディアやアッツミュ、リリアンナも一緒に動いてくれれば頼もしいが、最悪俺しか入れないケースもある。
……さっさと城内でアヤネルヴァを見つけて、街を見て回れたら良いな……。
うっかり、別の姉妹に声を掛けられてフラグが立ってしまう方が厄介だと考えていた。
陽が沈む前には野営準備を終えて、食事の後に最初の見張り番を引き受ける。
「眠かったら寝ていても大丈夫だからね?」
「いえいえ。折角賜った【狩人】のスキルを有効に使ってみたいじゃないですか」
一緒に見張りをするアオランレイアが焚火を見つめながら答える。
「そういえば、今頃はプラストーロスに着いた頃でしょうか?」
「早ければ……かな」
彼女の主語抜けの問いに答える。
ちなみに、これは『邪竜討伐軍』の話。
つい最近仕入れた話では、現状『邪竜討伐軍』の移動手段は徒歩。流石に全員分乗せるだけの馬車を用意するお金はあっても物が無かったらしい。
俺達が利用している馬車は特注の大き目な幌付き荷馬車であり、通常の馬車は10人も乗ればギチギチとなる。荷物も考えれば10人乗りは不可能で、数がその分必要となるわけで。
馬車が一台もない事はないだろうけど、荷物のみ載せていて、人は歩いて移動している可能性が高い。……だから、休憩少な目で早ければプラストーロスに着いている可能性はあった。
どちらにせよ、『邪竜討伐軍』はアダマスオーロ王国へ向かっている事は間違いない。
「厳しい道ですよね」
「砂漠が邪魔しているからね」
アスパラオウム王国とアダマスオーロ王国の間を砂漠が隔てている。どんなに魔法技術が発達した世界でも砂漠の横断は難しい。……出来なくは無いが、砂漠はジャイアント族のエリア。見つかって殺されても許可無く入ったのなら文句は言えない。
そんな砂漠の南側には細い乾燥地帯が存在している。そこが比較的安全に国境を超える陸路になっていた。……結構長くて移動は大変らしい。
ちなみに北側はそのまま砂浜を経由して海と繋がっている。砂浜なら歩いても文句は言われる筋合い無いが、馬車は走らせられない。
「船、手に入って良かったですよね」
「そうだね」
俺達は船が手に入って良かったが、『邪竜討伐軍』はかなり厳しそうだ。
……そういえば、アスパラオウムでは『竜騎幻想』通りであれば強制的に女性ユニットが加わったはずだが、あのムッチミラは受け入れたのだろうか? ……入っていたら気の毒に。
移動は嘘のように順調で……本来はこれが普通なんだよな。
日も沈み、2回目の野営。今度はカナエアリィが俺と見張り番をする。
「あの、お隣宜しいですか?」
「もちろん、いいよ」
火を囲んで対面で喋ると、どうしても声が大きくなる。起こしてしまうと悪いからという彼女の心配り。
……本来なら推しの1人と2人きりなのだからドキドキしても良いのだが……残念な事に慣れてしまった……少し悲しい。推しユニットに囲まれた生活も考えモノだ。
「あの、伺いたい事があるんです……何故、サクリさん達は『邪竜討伐軍』を追いかけるの?」
俺が全てを回っている訳では無いが、チームの誰かは『邪竜討伐軍』が攻略した後のダンジョンに入り、死亡者の痕跡や罠に囚われている人を探して貰っている。
……もちろん、理不尽な罠がある場合は俺も行くけれど。
彼女は、その話を誰かに移動中のネタとして聞いたのかもしれない。
「キッカケはハルチェルカかな」
流石に推しユニットの現在地を把握する為とは言えない。よって嘘ではない別の話をする。
「『邪竜討伐軍』に見捨てられたハルチェルカを保護した。それ以来、助かる命を見捨てたくないから、こっそり救出している。……堂々とやっていると強制的に仲間入りさせられちゃうかもしれんからね。正義の味方は性格的に無理だから」
別に悪人なわけじゃないけれど、知らない赤の他人のために張れる無償の命は無い。
「あっ……思い出した」
「何を?」
「この国にも理不尽な罠のある遺跡があったよ」
……近い内に見に行かなければ。運が良ければ助けられ……あっ!
「最速でもこれ終わった後になるか……急がないと」
思い出した。強制追加ユニットの中にアヤネルヴァとは別の推しが居る事を。
3日目昼過ぎに王都オムパイタツィーに着いた。流石に王都だけあって衛兵に身分確認をされたが、各王の紹介状とゴールド級冒険者の肩書は有効ですんなりと通して貰った。
馬車ごと街に入り、そのまま城へと目指す。
「……おぅ、やっぱりユイディアとアッツミュにも来て貰って正解だわ」
「ちょっと変ですよね」
……良かった。女性から見ても異常に見える景色だったようだ。
客観的に見て女性が目立つ。むしろ男性が極端に少ない。居ない訳ではない。女性同伴なのはベタパイコーロスと一緒なのだが、連れている男性が筋骨隆々な大男かモデルのような美青年ばかり。衛兵すら女性しか見かけない。
本当に経済を女性が回していて、男性は労働が難しい環境なのだろう。
しかし、俺は知っていた。別にこれは誰かが改変したわけでなく、『竜騎幻想』でも同じ設定だったから。……いや、違うか。
「これは俺が思っていた以上だな」
「確かにこれを見たらベタパイコーロスは男性に優しい町かもしれないですね」
思わず漏らした言葉にアオランレイアが同意してくれる。
「サクリさん、気付きました? 街で仕事をしていない人達の中で男性を連れている女性は全員何らかの魔法使いのようですよ」
「……マジか……」
言われてみれば、魔導書所持者や修道服に身を包んだ人ばかりに見えた。
「まるでアクセサリーね」
アッツミュがボヤく。
「自分はモテますってアピールしているみたい」
アグリシアも呆れている。
……まぁ、連れ歩く異性はアクセサリーと考えている人種って前世にも居たよな……。
「でも、アクセサリーか。俺にはペットに見えていたよ」
「似たようなものですよ」
ニチリカも同じ意見のようだ。
……うーん。状況によっては単独行動しようかと思っていたけれど、思っていた以上に現実的ではないようだ。
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