闇のフェアリークイーンが語る新しい宰相の支配欲
契約作業やこれまでの経緯を説明して貰っている間に俺はダクネスと共にフェアリークイーンの元へ先に向かっていた。
「みんな待ってなくて平気?」
「大丈夫。ミナとかユミとか他の古祠を経験している奴等が一緒だから」
「そっか」
……ダクネスの元気が無い。別れの時が近付いているからかな。
そんな会話をしている間にフェアリークイーンがいる区画に着く。
「いらっしゃい、サクリウス様。お待ちしてましたよぉ」
……オゥ……。
黒い瞳に股上まである黒髪。透き通るような白い肌。背にはダクネスと同じ蝙蝠の翼のような翅。ビキニの水着のような露出が激しすぎる服。それだけならダクネスと一緒なのだが、身長が140センチくらいで8頭身の巨乳美女が立っていた。
前世だったら悩殺されていた。……ある意味、最近の風呂で免疫が付いていた。
「あたしが、闇のフェアリークイーンです。よろしくね♪」
スッと俺に近づくと腕にくっついて耳元で甘く囁く。
免疫のあった俺は冷静に……「あー、ダクネスの動きって、彼女を真似たのか……」と分析していた。
「は、はい。宜しくお願いします」
免疫があるとはいえ、迫る色気に若干は怯んでいた。
「それでお話したいと思うのですが、その前に……ダクネスとの契約をして頂けませんか?」
「わかりました」
以前は、『何故?』とか『相手の気持ちを』とか思っていたけれど、これまでの説明で回避する方が失礼と学んだし、相手が嫌なら断るだろうと全部受け入れるつもりで了承している。もちろん、だからといってダクネスが嫌と思っているわけでもない。これだけ判り易い好意をぶつけてくれたなら応えるのが男という生き物である。
……ただ、本当にこれで良いのか? とは思うけれどね。でも、自分の常識を相手に押し付けるのも違うし。譲れるものは譲る。譲れないものは譲らないで良いかな……と。
そんな事を考えている間に契約の手続きは進む。掌に模様を描いた後、ダクネスと掌を合わせてキスをする。もちろん、キスの前にダクネスは呪文を唱えているが、毎度の如く何を言っているのかは判らない。
契約を終えると、ダクネスがプリュメリアに進化していた。
「進化おめでとう」
「ありがとう、サクリ様」
そう言って、再び抱き着いて来る。……彼女の過度なスキンシップも慣れてしまった。けれど、慣れたが故に悪い気はしない。身長が20センチ程伸び、3頭身になった彼女だが、それでも幼児な感じしかしない。
「これからもよろしくね」
……密かに進化を意識してコミュニケーションしていた事は内緒だ。
まだ誰も来る気配がないので、話し辛い内容から聞いて行く。
「それで、クイーン。スキアーオスクリタに魔人族のフォモルが現れた事は知っていますか?」
「もちろん」
「俺から言わせると違和感だらけで。何のために、あの町に出現したかご存知ですか?」
いくら考えても判らない謎の1つ。ヒュームの生活に詳しい彼女なら何か知っているのではないかと尋ねてみる。
「サクリ様を襲っている魔人族とは別の思惑で動いている……所謂『別件』という奴ですね」
「別件……ですか」
「町に現れた理由は、呼んだ者が居るから。……多分、大事にはならないはずですよ」
……本当に?
「何を目的に?」
「魔人族を使役するのに支払われる対価は決まっています……使役する者の命です。では、呼び出した者は命を対価にしてまで成し遂げたい事は限られています」
「……復讐?」
「……かもしれませんね。どちらにせよ、サクリ様を狙ったものでは無く、単なる事故だったと考えるべきと思いますよ」
だから、俺達を倒せないと判断した時点で逃げたという事なのだろうか?
「そうですか……では次ですね。『竜滅隊』に関して、国が邪竜王討伐を進めた理由は?」
「宰相の采配ですね」
……でしょうね。俺も出る杭を打っただけとは思っている。
「『竜滅隊』に選ばれたユニーク職持ちは転生者だったと思います。彼等はそれほど国に対して反抗的だったのでしょうか?」
……例えば勘違いして、『俺、最強』と慢心して国家転覆を企てそうな勢いだったとか?
「そんな事は無かったと思いますよ。実際、何パターンかの未来があったそうですし。『竜滅隊』が存在しない未来もあったみたいですよ?」
「そうなんですね」
……としか言えん。史実では存在しないだろ、『竜滅隊』。……いや、史実とは違うか。『竜騎幻想』の話だな。
「何が違うんだろう?」
「さぁ? あたしには『竜滅隊』が存在しない未来もあった……としか聞いてないので」
当然、クラウディもヒュームの1個体に拘って追っていないだろうし。
……まさか、【勇者】の行動によって……?
「じゃあ、次の話。宰相が殺されて、新しい宰相になった事は把握してますか?」
「もちろん」
「……どう思います?」
精霊や妖精が彼を問題にしているかどうか? それが気になっていた。
「正直、判断に迷っているの」
「迷ってる?」
「判断が難しくて、クラウディ様からも監視対象として指示されてはいるけれど……そこまでヒューム族の事に詳しいわけではないし……」
……いや、詳しくても腹の内は解らんだろうよ。
「ただ、解っている事は、どんな未来であっても彼は父親である宰相を殺しているの」
正直、それだけでは判断するのは難しいだろうなという事は理解した。
「お待たせしました」
ニチリカを筆頭に仲間達と合流する。……まぁ、聞かれて困る質問は既に終わっている。
「お疲れ。チームが抱えている大きな依頼について理解してくれたなら良かった」
全員の表情を見る限り、ミューディア以外は複雑な表情をしていた。
……ヒューム族最強の敵役が既に殺されて、更に強い宰相に変わったのが最悪だった。
みんなが戻ってきて会話は一旦止めたけど、新しい宰相の目的は何だろうか?
定番の目的として考えられるのはクリスターク王国の乗っ取り。ただ、何のために乗っ取ろうとしているのだろうか?
……シンプルに財力と権力、不自由のない暮らしのためかもしれないけれど。
ただ、気になるのは分岐する全ての未来において、必ず新しい宰相が本来の宰相を殺して、その地位に就いているという話。
それと『竜滅隊』。殺すより、手駒として飼った方が武力掌握は簡単だと思うんだけど。
「話を戻して……仮に目的をクリスターク王国の掌握だとして、『竜滅隊』を設立して全滅させた事は判ったんだけど、手駒にするという選択は無かったのかな? 全ての未来で『竜滅隊』を設立したわけじゃないんでしょ?」
……自分で言って何だけど、ユニーク職って他の天職と比べたら強いスキルが結構あると思うんだよね。もちろん、万能で無敵なわけじゃないんだけど工夫次第で脳筋でない限り狡い立ち回りが可能なはず。
「そうですね。手駒にしようとする未来もあったそうですが、その者は選ばなかったそうですよ。……厳密には失敗したというべきでしょうか」
「まぁ、考えますよね。でも、強力な武力を武力で対抗したって無意味ですからね。力尽くで従える事は難しい。もしくは、交渉の時点で決裂したか?」
……まぁ、『竜滅隊』に志願するくらいだから正義感が強い人だったのかもしれない。もしくは前世の記憶を思い出して尚、英雄願望に引っ張られたか。……平和が一番だと思うんだけどねぇ。
「新しい宰相と呼ばれるヒューム族の雄が高確率で手懐けられなかった『竜滅隊』のメンバーを邪魔に思っていた事だけは確かですね」
事情は良く判らないが、邪魔な事は確定で……でも毎回排除していたわけじゃないからグレー判定って事? ……よく判らない。
「さて、サクリウス様とお別れするのは寂しいのですが、そろそろお時間です」
「沢山の情報、教えて頂きありがとうございました」
深々と頭を下げようとしたが、ダクネスにハグをされ、そのままキスまでされた。
「あまり呼んでくれないと拗ねるからね? 愛情注いで……ちゃんと応えるから」
「うん。よろしくね」
最後に改めてフェアリークイーンに頭を下げると、足から地面に呑み込まれていく。
「え?」
「キャッ!」
メンバーも同様なのか慌てるが、フェアリークイーンは笑顔で手を振る。
抗おうと努力したが、地の底に呑み込まれた先は、遺跡『闇霊王の古祠』の外だった。
ちょっとした恐怖体験と共に遺跡を脱出した俺達はコテージに向けて帰る。……そう、帰りは焦ってないから、ゆっくりとアラクネ族を倒しながら崖の上を目指す。……ちゃんと道が整備されているので、崖登りとはならず安心だ。……狭いけどね。
「サクリさん。改めて、国の代表としての仕事を優先する事にはなりますが、チームに所属したいと思います。手続きは他の方と同様で構いませんので、入れて頂けませんか?」
「あっ、わたしもお願いします」
ニチリカから申し込まれ、アカリフィカもそれに便乗する。……他の官職の連中と違って城から厄介払いされた身だからな……。
俺は2人の申し出を了承する。……正直、【見術官】のスキルは相性が良すぎた。
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