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旅のお供に加わる官職2名と再会するミューディア

 ミューディアの姿は魔道具を停止させた時点で無くなっていた。……逃げると言っていたけれど、説得は失敗だったのだろうか? それとも、【剣の乙女】じゃないから不可能とか?


「婚約破棄……違うね。婚約すらできなかった……はぁ……ねぇ、ちね……じゃない。サクリウス君。冒険者になって貴方のチームに入るから……わたしを貰ってくれないかな?」


 ……また微妙なニュアンスで……故意か?


「仲間に加わってくれるの? ありがとう。もちろん、仲間は全員大事にする!」


「えっ? ……あ~、うん。不束者ですが、宜しくお願いします」


 ……上手く躱せただろうか?


 多分、サチカーラの好意は婚約しようとした人の裏切りに心を痛めて、その自己防衛のために俺を求めただけだと思うんだよな。……本意じゃないなら、後悔するのは本人だしね。


 とりあえず、今から宿屋を用意して寝るわけにもいかず……サチカーラの好意で屋敷の空き部屋……戦闘した部屋とは別の部屋で休ませて貰った。


 仮眠して、少し遅めの朝。何故か俺に来客があった。


「初めまして。わたしはアイシア様専属のメイド。貴方をスヴァルキュリテ城に招くよう命じられましたので、お迎えにあがりました」


 ……呼ばれたのは俺だけで、拒否権は無いらしい。




 まだ若干眠いながらも、アフタンダーク内の移動だというのに馬車で招待……というより連行される感じでスヴァルキュリテ城へ連れて来られた。


 仲間は全員待機。帰る時に合流すると約束し、王家に逆らうわけにもいかず、一度は逃げた城内へと連れて来られた。


「わぁ、サクリウス様だわ。会えるのをずっとお待ちしておりましたぁ」


 ムギュッと抱きしめられる。


「アイシア姫様。汚いので抱き着かれるとお洋服を汚してしまいます」


「構いません。わたしがしたいから良いのです!」


 ……何故、こんなに好かれた? 人嫌いって設定はどうした?!


「あ、あのぉ……」


「ごめんなさい。ずっとお預けされていた分、目の前に出されたら我慢できなくなってしまいました。お行儀悪いですよね? お嫌いになりましたか?」


「いえ」


 ……「はい」と言えるわけがない。だって、死にたくないし。


「良かったぁ」


 このアイシア=M=クロノワールは、『竜騎幻想』でユイディアと同じくらい人気のNPCである。その人気の理由は寡黙で不愛想、その上人嫌いな性格なのだが、多くの男性に好かれ過ぎて擦れた上に、シスコン義兄の女好きっぷりを見て嫌悪して拗らせた経緯がある。……所謂、「不憫可愛い」という奴である。


 だから尚更、何故俺だけ招かれた上に懐かれているのか謎過ぎて戸惑っていた。




「あのぉ、アイシア姫様」


「なぁに?」


 彼女はとても上機嫌。俺は何故か彼女の部屋に招かれ、椅子に座らされた上に彼女を膝に乗せている。まるで小さな子供のようだ。でも、身長も胸も立派な成人女性だと主張している。


 汚れるからと指摘しても、本人が構わないと言っている以上防ぎようがない。


「俺は今、城に来ている各国の官職達の護衛の仕事の途中です。彼女達が城の用事を終えた後は依頼主の下へ向かわなければなりません」


「そっかぁ……わかった。じゃあ、それまではずっと一緒にいてね?」


 とても可愛らしい声なのに、圧があります。


「わかりました。それで、どういった御用だったのですか?」


「あのね、この前転びそうだった時に受け止めてくれたでしょ? あの時、何故かドキドキしたの。今まで男性に触れられた事は何度もありますし、仕方なく踊った事もあります。それでも、こんな事無かったのです。……それで理由を知りたいの。協力お願いできませんか?」


 ……答え、知っているけど言えないなぁ。


「解決まで付き合える保証はしませんが、時間まででしたら……」


 この方には絶対嫌われるわけにはいかないからな……反動が怖すぎる。




「ありがとう」


「でも、アイシア姫様は人が苦手なのでは?」


 ……直接疑問をぶつける。推測は色々できるけど、本人の中ではどうなっているのか知る必要がある……判断ミスを減らすためにも。


「そうね。嫌い。……あのね、わたしに近づく人って、主に権力目的なの。嫌って言っても近づいて来るの。たまに男の人でエッチな人もいるわ。本当に気持ち悪い……兄は更に無理。理解できない。あれだけ嫌いって言っても喜ぶ兄の気持ちは理解できない……うん、やっぱり男は嫌い」


「ですよね……結論出て良かった……俺は用済みですね」


「ううん。サクリウス様は別です。だって、さっきから逃げようとしていますよね?」


「へ?」


「何故逃げるのですか? 人嫌いですか? それとも女嫌いなのですか?」


「いえいえ。俺は可愛い女性は大好きですよ」


「じゃあ、なんで……はっ! わたし可愛くない? セクシー系はダメですか?」


 ……いやいや、セクシー系じゃないでしょう? って、ツッコミいれられんわ!




「あの、アイシア様は可愛いですよ」


「じゃあ、何で逃げるの?」


「……それは俺が冒険者だから。不敬過ぎるじゃないですか」


「そういうものなの?」


 ……ふぅ、助かった。


「そういうものです」


 俺の膝の上に座っているものだから逃げる事もできない。……多分、それも彼女の計算の内なのだろう。マジで焦った。


「アイシア様、サクリウス様の依頼人の方々が仕事を終えたようです」


「仕方ないわね……あのぉ、今夜も来てくださいませんか?」


 俺は丁重に「仕事がありますので」とお断りした。




 城を出た俺はアオランレイア達と共にフラクタル家経由で、アフタンダークを出る。


「サクリウス君がお城に行っている間に説得しておきました。これで両親公認の冒険者です」


 ……本当か? 何かサチカーラが強引に決断したような気もするんだけど……。


「ところで、サクリ君と一緒にいた女の子って、誰?」


 そのエルミスリーの問いに俺は驚く顔を想像しつつ、「アイシア姫だよ」と答えた。




 アフタンダークを出て直ぐ。とりあえず、街の中よりは外の方が見通し良く安全……なんて皮肉な話を聞きながら、今更見知らぬ顔が2人も増えている事に気付いた。


「あっ、紹介するね。こちらはクリスタークから派遣されたニチリカさん」


「初めまして。【見術官】のニチリカ=ハーベルです。お世話になります」


「それで、そちらがアカリフィカさん」


「はぅ……は、初め……まして……そのぉ……【書写官】のアカリフィカです、ごめんなさい」


「はい? えーっと……大丈夫ですか? 俺は護衛を任された冒険者のサクリウスです」


 女児のような風貌のニチリカさんと常時怯えているアカリフィカさんに困惑していた。


 2人は既に冒険者登録していて、アイアン級の冒険者カードを所持していた。そこに至るまでも色々事情があったようだけど。


 ニチリカ=ハーベル。身長152センチ。カナディアラより背は高いだけの見た目女児だが2歳年上のようだ。


 初めて見た俺と同じ飴色の瞳。茶色の髪は股上まであり、ハーフアップツインテールにしている。声も俺好みのロリ声で……言われなきゃ年上とは判らない。


 【見術官】というのは、主に遠距離通話系のスキルを使用する官職系天職なのだが、実はもっと色々できるらしい。


 そしてもう1人がアカリフィカ=オパルドゥリン。彼女は身長162センチと高めの身長ではあるが年齢は同じ歳。こう言っては何だが、年齢が逆と言われても俺は信じる。


 尻に届く明るい黒髪。少し俯くと目が隠れるくらい長い前髪。彼女がそこまで前髪を伸ばしているのは、彼女の瞳の色が銀色だからだろう。彼女の目を見ると露骨に視線を逸らされ困った表情をする。……でも、男女問わず彼女の見え難い瞳を見るより胸に視線誘導はされてしまうと思う。ムチッとした太腿も魅力的で彼女の意思に反して注目されそうではある。


「馬車の中では話せなかったけれど……」


 そう切り出したのはアオランレイア。


 2泊3日かけてボーンブラに戻って来た俺達。夕飯時に彼女から声を掛けられて2人きりで報告を兼ねた食事をしていた。


「実はね。ニチリカさんはあの『竜滅隊』の唯一の生き残り。貴重な人材を見殺しにした無能として国から追放同然で派遣された人なの」


 ……そうだよなぁ。貴重で有用な【見術官】を外に放出するなんて考えられんのよ。


「それとアカリフィカさんは仕事ができる子なんだけどコミュニケーション能力皆無で銀眼差別をされて虐められていたの。それで、クビ同然で派遣させられた人なのよ」


 ……納得。あんな臆病な子が冒険者と行動なんて志願したとは思えなかったからなぁ。




 翌朝。意識が半覚醒すると目を開ける前から布団の中に誰か入ってきて添い寝しているのに気付いた。……あれほど添い寝禁止と言っといたのに。


「……って、誰だ?」


 身体が温かい事からオートマタではない事に気付いて目が覚める。


「おはよう、ダーリン。ちゃんと殺し屋辞めてきたの。……冒険者の事、色々教えて?」


「ミューディア?」


 感触的に判る。彼女は全裸だ。……つまり、顔以外見たら負け。


「と、とりあえず冒険者としてチームに入ってくれるなら俺は嬉しい。まずは許可を得ないと」


 彼女にさっさと服を着させ、完全に目が覚めた俺は身支度をして朝食のために甲板へ向かうと既に全員が朝食準備を始めていた。


「はい、注目。準備中申し訳ない。……まず、サチカーラさん。彼女は俺の特別スカウト枠だ。だから問答無用で加入させる。それと、今隣にいるミューディア。彼女も仲間に招きたい。反対な人いる?」


 ……誰も居ない。まぁ、そうだよな。


「ねぇ、女性ばかりなのね……全員、ダーリンの女?」


「その呼び方止める。大事な家族のようなものかな。ミューディアも一緒に家族を守ってくれると嬉しい」


 そんな俺のやり取りをサチカーラは複雑な表情で見ている事には気付いていた。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、書き溜めていた文章は全て投稿完了となります。

再び10万文字くらい書き溜めた後に続きの第36話からの投稿予定です。

次の投稿は12月に投稿しますので、お待ち頂けたら幸いです!

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― 新着の感想 ―
お疲れ様でした、いろいろ面白かった! 特に主人公の女難の呪詛、シーナッツとナンス様の苦労(個人的にポンコツ疑惑ある)そしてタリルマーヤ、別の世界線ですけど、主人公との関係夫婦まで持ってかれるのはある…
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