官職達を迎えに行ったタイミングで受けたクエスト
「アフタンダークに戻る」
朝食時に言う。このタイミングなのは全員が話を聞いているからだ。
「アオランレイアさん達が帰る日まではまだ日数があるんじゃ?」
「あるね。でも、依頼を1つ受けたいんだ」
クレアカリンの疑問は尤もだった。
「依頼……?」
「うん。だから、今回はあと5人連れて行きたいんだ」
そう言った瞬間、数名が席を立って身を乗り出す。
「いや、ゴメン。アピールして貰って申し訳ないけど、もう連れて行きたい人は決まってる」
すると、その数名はおとなしく自分の席に戻って行った。
周囲を見回して目的の人物を見つける。
「マナティ、サーヤン、カナディ、ユッキー、それとアヤカンは俺と一緒に来て欲しい。受ける予定の依頼にマナティ、カナディ、ユッキーは必須なんだ。このメンバーは、もう全員レベル9らしいし、今回の依頼でクラウンになるかもしれないから」
さっさとレア職はスーパーレア職に進化して貰って、死なないようにして貰いたい。
「何か、聞いているとこれから受ける依頼について既に内容を知っているような口ぶりだけど……」
「サクリ君は全部判ってるよ」
「ですねぇ」
「むしろ、自分から依頼を受けるってことは予知夢を見たからだろうし」
「そうじゃなかったら、絶対にわたしを連れて行くだろうしね」
サキマイール、ヒカルピナ、ナオリン、マオルクスの4人が当たり前のように理解を示してくれた。……いやぁ、心強い。
「皆さん、凄いです」
シャワールも驚く理解力。……多分口にはしないけど、古株ほどお約束になっているんだろうなぁ。
「そんな訳で力借りたいんだけど、大丈夫?」
「それは良いんだけど、わたし達で良いの? もっと強いメンバーの方が……」
サヤカレットが心配そうに尋ねるが、俺はその問いに対し首を横に振る。
「心配しなくても大丈夫。俺の予想通りなら既に戦力差はあるから。問題はそこじゃない」
「何か問題があるの?」
「問題という程ではないけれど、深夜0時で丁度新月になるまでにアフタンダークに行って、依頼を受けて、戦闘に備えたい……だから、朝食を食べたら即出発したい」
次の0時新月は正確に4日後。急いで移動してギリギリだ。
朝食を急いで食べ終えると、馬車2台で出発する。理由は帰りに官職を迎えに行く事を考えると馬車1台で10人くらいが定員と考えて1台じゃ足りたい。
アヤカシアとユキサーラが御者を務め、俺達は急ぎアフタンダークに向けて出発した。
急いで移動した事で馬には少し無理をさせてしまったが、何とか出発して3日目の午後にはアフタンダークへと到着した。……ホント、誰にも襲われる事なく平穏に移動するだけなら無理させる必要無かったんだけどねぇ。
「ユッキー、悪いけど警戒頼む」
「オッケー」
移動中に気付いたんだよね。女性5人中4人が王族。……人選ミスったか?
前回歩いて、だいたい道が『竜騎幻想』と変わらないと確かめている。だから、行くべき冒険者の店も同じ場所にあるだろう。
カッパー級冒険者の店“新月の亡霊”亭。王都には4つ冒険者の店があるが他の国の王都と違う大きなポイントは、アフタンダークにはアイアン級冒険者の店が無い。現実ではどういった理由だかは知らないが、『竜騎幻想』の設定では治安が悪すぎてチームも組めない冒険者は田舎で頑張れって事らしい。
「入るよ。他の店と雰囲気違うから注意して」
店内はとても薄暗かった。流石に夕飯前という事で店は賑わっていたが、客層はあまり良いと言えない。品の無い荒くれ者や不気味なゴロツキ……自分でも似たり寄ったりとは思ったが職種的には微妙に違うらしい。
「おいおい、子供が来る場所じゃねぇぞ? さっさと帰りな」
「女ばかり連れてハーレム気取りかもしれんが、もっと良い女連れて来いよ!」
酒が入っているからなのか、下卑た笑いを浮かべて馬鹿にしてくる。……こうなる事は事前に話しておいたので、全員動揺する事なく最低限警戒しながら店の奥へ向かう。俺は最短で依頼書を張り出しているボードを眺め、『王族令嬢護衛』の依頼書を見つけると引っぺがしてカウンターに持っていく。
店の主も人相が悪く、強面で俺達をジロジロと見ている。
「この依頼を受けたい。それとこれがカード」
提示した瞬間、酒場が一瞬にして静まり返った。
「……ゴールド? 何故こんなところに……いや、失礼した。少々お待ちを」
多分、俺が出した冒険者カードをガン見していたのだろう。6人連れているからカッパー級と思ったに違いない。
黙ったのには理由があり、俺達には簡単に想像がついた。
ゴールド級冒険者というのは、3アラ……つまり54人以上いるチームだ。それでも、大人数いるだけなら別にどうと言う事はないのだろう。しかし、その54人以上の中にウルトラレア職が3人以上いなければならない。……多分、こっちの方が周囲を黙らせた原因だろう。
カッパー級冒険者からすれば化け物集団って事だ。
ちなみにカッパー級は冒険者が6人以上いれば良いだけのチームだ。普通はこんな店に何故ゴールド級が来たのかって思うのが普通。……『竜騎幻想』では【剣の乙女】は冒険者ではないので驚かれないが、『邪竜討伐軍』と知られた段階で同じく静まるという演出がある。
「お待たせして済みません。やっと確認が取れました。確かに依頼を発注致します。こちらはその依頼の紹介状です。前金は依頼主様が依頼を正式にされた時に頂けるようになってます。フラクタル家の場所はご存知でしょうか?」
「知ってます」
「そうですか。ではお気をつけて」
店を出るために振り返ると、一斉に常連の冒険者達が顔を背ける。……確かに力が全ての国だけあって、子供呼ばわりしていた連中が明らかに怯んでいた。
「……世話になりました」
店主に一言だけ告げて、俺達は颯爽と“新月の亡霊”亭を出た。
もうすぐ日も沈む。そんな時間だというのにフラクタル家の門番は訪れた冒険者を追い返さずに話を繋いでくれた。それだけでも驚く事ではあるのだが、屋敷の中に招いてくれた。
俺達6人は応接間に通され、待つこと数分。
「依頼を受けて下さると言うのは皆様でしょうか?」
入って来て直ぐに発せられた言葉を聞いて、俺達は慌てて立ち上がった。
執事やメイドと共に現れたのは見た目が華やかな美少女……まさにお嬢様だった。そして、内心そんなお嬢様に見惚れなかった俺は、随分免疫が付いたのだと冷静に思ってしまった。
160センチオーバーのヒューム女性としては高めな身長、フリルを多くあしらった白いワンピースに淡めの青緑色のイヤリングやネックレス、ベルト等のアクセサリー類。何より目を惹くのがピンク色の瞳と膝まである髪。ただ、この大陸に多くいる桜色ではなく鮮やかな桃色。その色はユーリンチェルの髪以外で見たことが無かった。
……護衛対象のフラクタル家の令嬢って、『竜騎幻想』ではモブお嬢様だったよな?
モブお嬢様。所謂キャラデザイン使いまわしの量産型という奴である。
「はい、俺達はゴールド級冒険者チーム“サクリウスファミリア”。俺はリーダーをしているサクリウス=サイファリオです」
「ゴールド級ですか?!」
……驚くのも無理はない。カッパー級の依頼だしね。でも、ずっと放置されていたのは、カッパー級には荷が重い依頼だったからだ。
驚く彼女に俺は冒険者カードを提示する。
「確認しました。受けようと思って頂きありがとうございます。わたしは、フラクタル家の娘でサチカーラ=M=フラクタルと申します。これから報酬と依頼内容をお伝えしますが、あの……無理と判断されたら断って頂いて大丈夫ですので」
彼女は申し訳なさそうに一度深々と頭を下げるとソファーに腰掛ける。俺達も彼女に勧められて腰掛けた。
「報酬ですが、カッパー級ですので6000ナンスになります。依頼内容は依頼書通り護衛です。ですが、襲撃する者は判っていて、犯人確保に国も動いては下さっています。そして、わたしの命を狙っている犯人の名は“渇愛”ミューディアです。ですので……」
「大丈夫ですよ」
……知ってたし。むしろ、ミューディア目的ですらある。
「その、何故ゴールド級の皆様が、わたしの依頼を受けて頂く事になったのでしょうか?」
「え? パッと依頼書を見比べて、この依頼が難易度厳しめでカッパー級冒険者には荷が重いと思ったので」
……予知夢で見たからとか、ミューディアが推しだからとか、絶対言えないよな。
「ゴールド級でも、6人では厳しいのでは? あの“渇愛”ミューディアですよ?」
「大丈夫ですよ」
同じ答えを返す。……こんなやり取りあったっけ?
しかし、不思議な事に依頼したサチカーラさんだけが俺の反応に困惑していた。
「どうかしましたか?」
「……その、本当に……あの“渇愛”ミューディアですよ? 死んじゃいますよ?」
……そこか。
「もし、無理しているのなら気にせず断って大丈夫ですよ? きっと冒険者じゃない何者かが助け……いえ、きっと何とかなりますから」
……何とかなる? いや、それ以前に冒険者じゃない何者って……??
「なるほど。誰か力を貸して頂ける方に心当たりが?」
「いえ、そういう訳ではないのですが……」
明らかに対応がおかしい。
「失礼ですけど、冒険者への依頼書って結構長いこと出していましたよね?」
「そうですね」
「先程も言いましたが、カッパー級の冒険者には荷が重い。サチカーラさんが話すように“渇愛”ミューディアは冒険者になったばかりの新米では厳しい相手です。彼女の手口を知らないと難しいでしょう。……だから、あの冒険者の店に依頼書を出したのには別の意図がある」
「……」
反応を確認する。俺が視線を向けると彼女はそれを避けた。
「1つはそもそも自分が狙われているという事を周知……もしくは、特定の誰かに知らせる事が目的だったパターン」
「え?」
「その場合、そもそも“渇愛”ミューディアに狙われているというのは嘘という事になる」
……まぁ、そんなわけないんだけどね。
「それは違います。わたしが狙われているのは本当で証拠もあります」
彼女はメイドに視線を向けると、別の部屋から何かを持ってきて、それを彼女に渡す。
「こちらを見て下さい。殺害予告です」
「殺害予告?」
……そんなのあったっけ? まぁ、ゲーム内であれば真偽を疑う事もできずに話は進んでしまうんだけど。
確かに殺害予告のようだけど、ミューディアが出したかどうかは判らない。でも、誰かに狙われている事だけは、殺害予告から判る。
「そんな風にわたしが疑われるのは心外です。ですので、正直に言います。確かに特定の誰かに知らせるための依頼書です。冒険者は信用できませんので」
……それで、「何者かが助けてくれる」なんて言ったわけか。
「随分、雰囲気が変わられたようだけど、どうしてそんなに冒険者を毛嫌いするのですか?」
「え?」
受ける気満々だった俺達を拒否する雰囲気だった空気がマナティルカの発言で変わった。
「お久しぶりですね、サチカーラ様」
サチカーラさんはマナティルカをしばらくジッと見ていたが、彼女も思い出したようだ。
「もしかして、マナティルカ様ですか?」
「はい。お互い最後にあったのは幼い頃ですので、直ぐには判らなかったですね」
……いや、マナティルカはフラクタル家に来る事を判っていたのだからサチカーラさんの事を判っていただろうに。本人に伝えられなくとも俺くらいには彼女を知っていた事くらい教えてほしかったな。
「何故、マナティルカ様が冒険者に?」
「色々あったんですよ。それで、わたし達であれば信用問題も解決されませんか? それとも何か事情があるのでしょうか?」
「……」
……あれ? 露骨に困っている?
「参考まで申しますと、こちらのサヤカレット様はレイアール王国第二王女、そして、こちらのカナディアラ様はデンドロム王国第一王女、それにアヤカシアさんもグアンリヒト王国の王族です。……充分信用に足るメンバーだと思います」
「待って。……そんな一国の姫様方が何故冒険者に?」
「……色々あったのです」
……まぁ、理解に困るよね。俺もサチカーラさんの立場なら理解が追いつかない。
「これじゃあ、まるで……いえ、判りました。皆様にお願いします」
……「これじゃあ、まるで……」?
彼女の発言から何か隠されている事が気になりつつも依頼を受けられた事に安堵した。
護衛体制に関して、打ち合わせを王族の方々が進めている。まぁ、彼女が信頼できるのは王族の方々であって冒険者ではない以上、仕方ない。……同じ部屋で話しているわけで誰が話を進めようが状況は変わらない。
「……何はともあれ、間に合って良かった。ユッキー、今夜が勝負だから」
「わかった。……っていうか、本当に凄いね」
……何が? と問う間も無く。
「ねぇ、サクリさん。今、軽く〈アナライズ〉で周囲に怪しい人物が居ないか確認してみたんだけどさ……」
何事かと思ったが、どうもサヤカレットの様子がおかしい。
「サチカーラ様、ユニーク職持ちなんですけど」
「確かにわたしの天職はユニーク職【封監士】ですけど……それが何か?」
……まさか、あのモブ令嬢が転生者なのかよ。
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