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盗賊系最推し【盗賊】ミューディア=クロシェイド

「落ち着いて。さぁ、あなたが賜った新たな天職は?」


「【盗賊】です。女神ナンス様に素敵な天職を賜り感謝致します(……なんてね)」


 彼女は澄ました表情を維持しつつ、丁重に頭を下げて外へ出る。


 彼女の名はミューディア=クロシェイド。身長は156センチ、年齢は同じ歳。股上まである艶やかな明るい黒髪に茶色い瞳、整った顔立ちの美少女だが、一番の特徴はおっとりとした口調の萌え声。常時お淑やかな口調なのだが天職的に殺伐とした台詞が多い。それなのに「よいお天気ですね」くらいの調子で話す。


 戦闘中と日常での会話内容のギャップと同じ調子で話すのが彼女の魅力。とても人気の高い盗賊系最推しユニットだ。


 ちなみに彼女が自分の天職を言った後、希望職種を言わなかったのは自分が既に殺し屋である事を言ったら大騒ぎになってしまうから。


 ……あー、ミューたんを仲間にできる時期か。


 予知夢を見ながら、クリスタークに来てから月齢をチェックしていなかった事に気付く。


 視界が暗転し、イベントアニメーションの続きが始まった。


「ただいま」


「何処に行っていた?」


 場所は判らないが、偉そうな男がソファーに深く腰を掛け、明るい内からワインを飲んでいた。部屋には高そうな調度品がいっぱいで、如何にも金持ちですと言わんばかりの部屋だった。


「成人したから『天職進化の儀』を受けに行ってきたの。やっぱり【盗賊】だったわ」


「馬鹿野郎、勝手な事をしてんじゃねーよ!」


 近くにあった空のグラスを手に取ると男はミューディアに投げつける。しかし、それを彼女は表情を変える事無く、最小限の動きで躱す。


「ボス、わたしは野郎じゃないですよ?」


「やかましい!」


 さらに怒鳴り散らす。


「誰のおかげでメシが食えると思ってる? お前は余計な事をせず、黙って言う事を聞いていれば良いんだよ! どうせ、人殺ししかできないんだ。……わかったか?」


「うん、よく判った。あのね、少し前にスカウトされたんだ。……だから、そっちに行くね」


 彼女がそう告げた瞬間、ボスと呼ばれた男の頭部は身体から切り離されていた。


「……ごめんね。人殺し以外に何もできなくて」




 視界が暗転してオープニングアニメーションは終わり、彼女関連クエストの過去のイベントに変わった。


 場所は何処かの木造の小屋。多分、村だと思うけれど場所は明言されていない。隙間風の音が聞こえ、小屋の主である男女の服装も粗末なものだった。


 コンコン。


「はい」


 女性が扉を開けると武装した女性が入って来た。


「お前さん達が買取り希望のクロシェイドさんで間違いない?」


「はい」


 返事をしたのは男性。


「ブツは?」


「この子です。名をミューディアと申します」


 当時、ミューディアは4歳。両親との3人家族。何処にでもいるような女の子だった。


「そうか」


「ミューたん、このお姉さんと一緒にお出掛けできるかな?」


「うん!」


 男性がミューディアに話すと、彼女は元気よく頷く。


「じゃあ、貰っていくよ」


「……あのお金を……」


 女性がそう言った瞬間、お姉さんと呼ばれた方の武装した女性は男女を一瞬で殺害した。


「……えっ?」


 ミューディアが血を流しながら倒れる両親を見て、状況が理解できないで立ち尽くしていると、不意に腕を引かれた。


「行くよ」


 よく理解できないまま、ミューディアは武装したお姉さんと共に家を出る。……クリスターク王国では昔からよくある話。


 視界が暗転し、何処かの小屋。ただし、元々の自分の家よりは立派なログハウス。


「……うぅ……疲れた……」


「さぁ、支度しないと飯は食えない。さっさと準備しないと日が暮れるよ」


 ミューディアは両親を殺したお姉さんと共に居た。彼女はミューディアに生活するのに必要な知識や技術、トレーニングから戦闘まで教えていた。


 ……初見の時は、何処かに売られるんじゃないかと思ったんだよな……。


「師匠、料理できました」


「どれ……んまいっ! よくできたな」


 10歳になるまで彼女の下で生活に必要な知識、戦闘に必要な技術を学び、元々才能があったが11歳になった頃には既に立派な殺し屋に育っていた。


 そんなミューディアの殺し屋デビューは、師匠の殺害だった。




 ゲーム画面上でミューディアによる暗殺シーンが早送りで流れる。……これは夢だからじゃなくて、実際もそんな感じのイベントがあったはず。


 ナレーションでミューディアは雇い主に大切にされていると感じている間は忠誠を尽くし、雑に扱われていると感じると雇い主を殺害する。14歳になった頃に付けられた彼女の通り名は“渇愛”。彼女はとにかく愛情に飢えていると噂が広まっている。


「ボス、今日もお仕事終わらせたよ~」


 ミューディアはアジトにあるボスの部屋を訪ねる。


「そっか。おつかれさん」


 ボスと呼ばれた彼はゴソゴソと金の入った袋を棚から取り出す。


「ほれ、今回の報酬」


「確認しないの?」


「もちろん、確認済みだ」


「さすがボス~」


 報酬を渡したボスは図面を広げたり、メモを見たりしている。


「……」


「ん? どうした?」


「さすがボス~……とわたしは言った」


「ん? あぁ、ありがとよ。話はそれだけか? 悪いが調べ物があるんだ」


「……そう」


 彼女の表情からスッと笑顔が消えて、黙って部屋から出ていく。


 ……まぁ、所詮は噂。本当に飢えているかどうかは知らない。でも、客観的にはそう見えなくもない。


「……んぐっ!」


 ボスと呼ばれた男が飲みかけの飲み物を飲む。すると、急に首を押さえる。


 苦しそうにもがき、口と鼻、目から血が溢れる。


「がっ……なっ……んで……」


 彼は飲み物を零し、そのまま机に突っ伏す。


「……わたし、報酬目的でボスに従っていたわけじゃないの。ごめんね」


 姿は無く、声だけが聞こえる。……多分、演出的に扉の外からだろうか?


 暗転して別のシーン。街を歩く彼女だったが、声を掛けられる。……彼女は有名人だった。




 何度か視界が暗転し、スカウトされ、雇い主を殺し……を繰り返す。“渇愛”という通り名と共に有名なのにそれでも何故かスカウトされ続ける。


 理由は彼女の容姿にある。未成年の少女。しかも愛嬌があり、強そうに見えない。だから、多くの殺し屋達は使い捨ての手駒として使って、歯向かえば処分するだけと考える。


 ……普通、弱くない事くらい経歴を調べれば判るだろうに。


 再び視界が暗転する。そこは、ミューディアが敵として現れるクエスト『闇夜の襲撃者』で戦場となるフラクタル家令嬢の寝室。……実際はそんな事ないはずなんだけど、マップではそれなりに広いんだよな。


 【剣の乙女】を含む出撃ユニット6体制限のミニバトル。充分に育成していれば負ける事はないんだけど、ミューディアを仲間に入れるにはちょっとしたコツがいる。


 部屋の中にはミューディアを含む7体の敵が現れる。ミューディア以外の6体は攻撃力こそないものの、回避率が高い上に武器に麻痺毒が塗られている。そして、ミューディア本人の武器は遅効性の致死毒が塗られていて、攻撃が当たった後に解毒して貰わないと死亡する。


 『竜騎幻想』には死者を復活させるシステムが無い。よって、本来であれば【修道士】系の解毒魔法が使えるユニットか、解毒アイテムが必要だ。


 戦闘が始まるけれど、これもやっぱり俺がプレイヤーではないらしく、戦闘に苦戦しているようだった。……普通にやると解毒が忙しいんだよな。


 ミューディアを仲間にしないならば、充分に力技だけで突破する事ができる。けれど、仲間にする場合は話が変わる。


 ……ミューディアを仲間にする条件は、彼女以外の敵を全滅させた上で、彼女を説得する。説得するユニットは何でも良いらしいけれど、誰で説得したかによって難易度が違うらしい。


 それで、厄介なのが部屋の外……屋外にも2体ほど敵がいる。初見でそれに気づかないと6体のモブを倒したのに仲間にできない……なんてオチがある。


「ねぇ、仲間になって欲しい。殺し屋を辞めて冒険者になって。……それとも殺し屋が好き?」


 【剣の乙女】の問いに彼女は武器を捨て、両手を上げる。


「降参。逃げられそうにないし、仲間になってあげる……あとで合流するね!」


 そう言って、窓から外へ脱出してしまう。




 ……目が覚めた。例によって少し早めの朝だ。


 ミューディアは性格的に愛嬌のある女の子で相手をすると懐くキャラだ。逆に構ってあげないと機嫌がどんどん悪くなり、気付くとチームから離脱している。一発アウトで即終了って事はないけれど、たまにランダム発生するイベントで彼女の相手をする事が結構大事。何故なら彼女は可愛いだけでなくて、多分【盗賊】系の最強キャラだから。装備やステータス次第では順位が入れ替わる事もあるけれど、純粋なキャラパワーならミューディアは最強。故に多くのプレイヤーが手間を掛けて仲間に加えている。


 エンディング3パターンも既に発見されて動画にもアップされている。


 グッドエンドは、復活した古巣の組織で犠牲者だった人達が解放されて幸せになっているのを確認した後にランダムで選ばれた男性ユニットと結婚している。


 ノーマルエンドは、復活した古巣の組織を壊滅させた後、【剣の乙女】達と合流し、彼女の故郷に行って永遠の友情を育む。


 バッドエンドは邪竜王を討伐した後に『邪竜討伐軍』から忽然と消える。彼女は仲間達に何も告げずに復活した古巣の組織に向かい、仲間に加わる。その際に条件として新たに『邪竜討伐軍』に参加した者とその家族は殺させない事を加え、再び人殺しの道を歩む。


 起き上がる。そして、窓へと向かう。


「おはようございます、主人。まだ時間は少々早いかと思いますが……」


「知ってる。目が覚めたんだよね」


 窓の外……まだ暗い空を見る。


「月、まだ時間があるか……? サヤーチカ、0時に新月を迎えるのって何日後?」


 ミューディアを仲間にするためのクエストは新月にならないと話が進まないんだよね。


「新月ですか? ……3~4日後だと思いますが……」


「割と時間がないな……」


 アオランレイア達を迎えに行くのには少し早いかもしれないが、クエストを消化した後に行けば丁度良いかもしれない。


 ミューディアを仲間にするには、戦闘中に彼女以外を全滅させる必要がある。で、外の2人をよく忘れる。……部屋で1人になった時点でミューディアは逃げようとするが、外の2人を倒す前に彼女を逃がすと、実はその外の2人によって殺害されてしまう。


 だからこそ、上手く逃がさないように戦わなければいけない。


 何度も『竜騎幻想』をやり直したけれど、これまでのプレイでミューディアを仲間にしないという選択は一度もしたことがなかった。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿5日目+本日中にあと4回投稿します!

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