旧友との再会を導いた、女神ナンス様の定めた運命
予定より早く無事にポーンブラへ帰って来られた。何処にも寄り道する事なく船に向かうとみんなが出迎えてくれた。
「おかえ……り」
デジャブだろうか? 笑顔で出迎えてくれたみんなだったが、直ぐに真顔になってしまった。
「シオチ、お風呂って今入れる状態?」
「はい、大丈夫ですよ」
「……というわけで、6人とも風呂に入る。あ~……でも、ナナミルフィアはみんなで優しく洗ってあげて。それと、全員湯船に浸かる前に洗う事。いいね?」
「「「「「「畏まりました」」」」」」
全員の返事が揃う。シオリエルの案内で風呂場へ向かう。
「フカチ。生産済みのもので良いんだけど、まずは5人の希望を聞いて服を見繕って欲しい。会計は俺が払う。それと、ナナミルフィア……白髪の子は呪いで奇形化されていて普通の服が着られない。風呂から出たらサキチに解呪して貰うから、その後に彼女の分も服を見てあげてほしい」
「じゃあ、聞いて来るね」
フカネーゼはみんなを追いかけて風呂場へと向かう。
……これは、彼女達が風呂から出てくる前に説明が必要だと周囲の視線で認識した。
俺が帰って来たと聞きつけて甲板に上がって来た仲間達。事情説明はあの子達が風呂に入っている今だと判断した。
「今日連れてきた6人は女神ナンス様からの指示だよ。彼女達は奴隷として売られていた。あの子達の内5人は未成年で、俺が未成年の内は面倒を見る予定だ」
「でも、サクリ君。もういっぱい未成年が……」
「他の子達は俺だけが面倒を見ているわけじゃないからね。ただ、今回の子達5人は俺の都合らしいから俺が責任持つつもり。それでサキチ、奴隷契約されているから解呪をお願いしたんだ。あとナナミルフィアはそれと別に呪詛に掛かっているようだから……」
「はいはい。ナンス様が直接声を掛けるわけがないんだから、多分あの教皇の指示なんでしょうけど……確かに奴隷として何処ぞの誰かに買われるくらいなら、サクリ君が面倒を見た方が見張る目もあって安全だわ」
……あれ? 俺って信用されていない感じ?
サキマイールの口振りに若干凹みつつも、戻って来られる前に説明を終える使命感から話を続ける。
「本人の意思が重要で、未成年であっても俺達は魔人族と戦うチームだからさ。もし怖いので船から降りたいって言われても、応じるつもりだよ。クリスタークでなければ未成年でも何とかなるかもしれないからね」
「そっか……まぁ、無理強いしないなら、わたしは反対しないし協力するよ」
幸いにもそう思ってくれたのはサキマイールだけじゃなく、話を聞いた全員が賛同してくれた。……まぁ、成人するまでの数ヶ月、甘える事もあるかもしれない。
話が終わったタイミングで、6人が戻ってきて……ギリギリ聞かれずに間に合った。
「お風呂、ありがとうございました……って、貴女、アキラテナ? どうしてここに?!」
「えっ、ア、アヤカシアさん?!」
……でしょうね。そしてお約束通りに事が進むなら、アヤカシアはまだまだ驚き続ける。
「あの、そちらはハルチェルカさん? ……それにユッカンヒルデ姫? ……サオリスローゼ姫もご無事だったんですか?! サヤカレット姫まで……このチームはいったい……」
……うん、お約束通り驚いてくれたわけで。
「アヤカシアさんこそ、その髪……確か長いのは苦手だって言ってましたよね?」
「うん。奴隷商に売られる際にちょっとね……」
「切ります? ハサミもあるし、髪を切るスキルを持った方もいますよ?」
「ううん。試しに長いままで……」
……似合っているから、できれば切らないで欲しいな……本人には言わないけど。
「わたしの髪の事よりも、皆さん、何故生きて?」
「アヤカシアさんと同じです。全員、サクリさんに助けて頂いたんです」
サオリスローゼが答える。……確かに彼女は俺達が居なければ死んでたな。
「改めてサクリウス様。わたしをチームに入れて頂けませんか? 一生、わたしの全てを捧げ貴方を守ります」
大層な宣言に若干困りつつも、全員が賛同して彼女も正式に仲間入りした。
改めてアヤカシアが面識のない方々に対しても自己紹介をすると、残りの5人も自己紹介をする。
「あの、エリーシラさん。テイルナルってファミリーネーム……もしかして、イーベルロマに住んでいた事ない?」
「ありますよ、メアお姉ちゃんですよね?」
「あっ、やっぱりエリーちゃん!」
2人は喜んでハグをしている。
「メアも知っていたの?」
「うん。お父さんやお母さんには見るんじゃないって言われていたんだけど、見るなって言われたら見たくなるでしょ?」
「……確かに」
思わず苦笑する。……そう考えたらサティシヤの事もメアリヤッカに相談しても良かったかもしれないな。
「俺の事もそうだけど、当時6歳だったエリーシラがメアを憶えていた事には驚いたよ」
そして、メアリヤッカも成長した彼女をすぐにエリーシラと判った事にも驚いた。
「再開の感動のところを悪いけれど、そろそろ解呪しちゃうよ?」
「お願いします」
メアリヤッカを解放したエリーシラは他の5人のところに集まる。
「それじゃ、始めるよ」
サキマイールが何やら呪文を詠唱始める。
彼女曰く、解呪の魔法はそれほど大変ではないらしい。ただ、俺の〈サイコヒール〉と同じく集中が必要なようで、身動きができなくなるそうだ。
「ふぅ、奴隷契約の解呪は完了だよ。あとはナナミルフィアさんだっけ? の呪いの解呪ね」
……あ~、いっぺんに解呪とかできないんだ……それは大変だ。
少し申し訳ないと思いつつ、あとで何かご馳走でもするか……なんて考えていたら、ナナミルフィアの容姿が少しずつ、本来のモノへと変化していった。
「一応、呪詛は解呪したけれど……ナナミルフィアさん、その脚……」
ナナミルフィアの姿はほぼ本来の姿に戻った。ただ、彼女の膝から下が切断されていた。
「大丈夫。後は俺が……〈サイコヒール〉!」
彼女の膝から下が再生され、無事にナナミルフィア本来の美しさを取り戻す事が出来た。
身体の傷も完全に消え、彼女は何度も「ありがとう」と涙を流して礼を言い続けた。
ナナミルフィアにも服を与えられ、俺は早々に背を向ける。……最近、感覚が狂ってて危ない。女性の裸を見慣れてしまった事が原因だろう……何とも思わない……直ぐに相手は別との考えに至ってくれたおかげでセーフだと思うけど……セーフだよな?
「これで全員自由になった。おめでとう」
てっきり喜んでいると思った。でも、未成年の5人に笑顔はない。
……まぁ、その想定もしていたけれどね。
奴隷という大義名分が無くなって不安になっているのだろう。
「さて、説明がてら今後について話しておくね。俺達“サクリウスファミリア”は、このナッツリブア大陸を時計回りで巡っている。クリスターク王国での活動後はアスパラオウム王国、アダマスオーロ王国、イグニファイ王国、サンドルローム王国と経由して、グアンリヒト王国に行く。俺達は冒険者だから原則無料で働かないし、正義の味方もしない。正規の料金を払ってくれれば黒いものも白という事もある。更に言えば困っているから助けてという声をスルーする事もある。例外は……戦闘を終えた怪我人の救助。それは冒険者としての矜持だからね。それを見捨てたら見捨てられる覚悟もしなければならない。……って事なんだけど、アヤカシアさんは、出来そう?」
「できます。もう王国兵ではないのですから」
……とりあえず安心。
「今なら国に帰るという選択もあるよ?」
「チームの方針なら王国には行きますが……城にも実家にも汚名を返上するまで帰れません。もちろん『邪竜討伐軍』にも……そして、それが難しい事は判っているんです」
「……そっか」
彼女は王族。自分だけの問題じゃなく、家の事もあるのだろう。もしかしたら、もう戻らない覚悟をしているのかもしれない。
「わかった。じゃあ、これから頼りにするよ。他の細かい事は周りのメンバーから聞いて。女性だけで共有されているルールもあるかもしれないし」
……多分あるんだろうな。だって、仲間入りの打診について「リーダーに最初に声を掛けなかった者は全員アウト」なんてルール知らなかったし。
「それと、俺から伝えるけれど未成年な彼女達には帰る家が無い。そして、このクリスタークでは孤児院の利用が難しい子達ばかりなんだ。だから、彼女達が成人するまでは俺が保護するから。女神ナンス様曰く、彼女達にも役割があるらしい。……それを信じる」
……言っていたのはシーナッツだけどな。しかも仲間勧誘のフラグキャラである事は内緒だ。
「もちろん、成人した後も冒険者として残りたいというなら、その時にちゃんと話を聞くから」
「「「「「わたし達、お手伝いも頑張ります!」」」」」
もう、何でもするって聞いちゃったからね。彼女達の覚悟は受け止めないと。
「……おいしい。これを毎日食べられるんですか?」
夕飯に感動する6人。……感動するよね、解るよ。……いや、もしかしたら俺が思っている以上に粗末な食事だった可能性もあるんだよな……。
「お腹いっぱい食べて良い。明日からはお手伝いを頑張るだけでその権利を得られる」
ここでは平民の娘も王族のお嬢様も未成年の子は自ら真剣に手伝いをしている。
シーナッツから聞いた話。この6人は【剣の乙女】であるムッチミラや名も知らない転移者である【勇者】が本来助けるべき人だったらしい。
……犠牲者を救う……か。嬉しそうに食事する彼女達を眺めつつ、俺の冒険者になった目的を思い出しながら、最初に思い描いていたのと違う現状を苦笑するしかなかった。
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