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クリスタークの王都から比較的近い港町ポーンブラ

 セイントゥス島を出て約8時間。普段の航海に比べれば若干遅めではあるが、それは小型船に合わせて航海しているのだから……と言いたいところだが、小型船とは言っても結構早いので、多分この船以外のどんな船でもそれくらい掛かるのかもしれない。


 陸が見えて来て、そこが港町ポーンブラである事は判っていた。今回の移動は手探りでは無いからね。


「そろそろ行ってきます!」


 ユールオリンデはそう言うと海に向かってダイブする。その後に鞄を受け取ると器用に岸まで鞄を濡らさないように海を移動する。……流石、人魚。


 小型船は専用の桟橋に船を停泊させるとユールオリンデと合流。小型船の中で着替えたのか服を着た人の姿になると、アヤサフェールと共に双眼鏡でも姿が確認できなくなった。


 ちなみに双眼鏡はチットリーゼによる作品である。


 海上で様子を見る事30分くらいで許可が下り、俺達はポーンブラに停泊する事ができた。


 直ぐにユールオリンデとアヤサフェールが甲板まで上がって来ると、手短に注意事項の説明をアヤサフェールが始めた。


「えっと、皆さん船から降りたいとは思うけれど、あと少しだけ我慢して下さい。お店の営業もちょっとだけ。まず町長に営業許可を得ないとダメなので。許可を得たら最初の内はわたしが居れば大丈夫。それで、町長のところに挨拶へ行くんだけど……メンバーはどうします? 全員では流石にダメだから」


 ……それはそう。


「町長宅は結構大きなお屋敷? それとも普通の家?」


「大きい屋敷だよ。王族の家だし」


「なるほどね。じゃあ、俺とリリアンナ、それとマナティルカとイクミコット。あとは冒険者の登録とカードを発行したいからカナージャ達セイントゥス出身の成人全員かな?」


「大所帯だね……うーん、じゃあナッツリブア冒険者支援組合を先に行こうか?」


 アヤサフェールの提案に頷いた。




「いきなり行って大丈夫なの?」


「大丈夫。友達が働いているから」


 通常、ゴールド級冒険者は特に紹介状など無くとも好待遇で対応して貰える。それはナッツリブア冒険者支援組合だけでなく、各種冒険者の店でも同じ。……普通なら。


 ここはクリスターク王国。国内最高の治安の良さとはいえ、町の外から来た人間は警戒されるとアヤサフェールからは教わっている。


 ゴールド級冒険者でも、こういった事情からコネは大事。……結局、後ろ盾の大きさが全てである。


「いらっしゃいませ……アーさんが来るなんて珍しい。知り合い?」


 尋ねられると彼女は頷く。


「冒険者の登録とカード発行、あと俺のチームへの所属登録をお願いしたい」


 そう言って、自分の冒険者カードを提示する。


「はい。……って、ゴールド級ですか?!」


「サクリウス=サイファリオです。暫く世話になります」


「しょ、少々お待ちください」


 6人分の登録用紙を持ってきて、記入を開始する。


「アーさんも登録しちゃいな?」


「いいの?」


「今更約束は破らないでしょ? そのためにイクミコットを連れてきたんだし。報酬の前払いでも構わないよね?」


「いいですよ。彼女は裏切らないでしょ」


「……と言う事で、アヤサフェールさんの分の登録をお願いします」


「はい。アーさん、良かったね!」


 そう言いながら、アヤサフェールの分の登録用紙を友人の受付は用意し、彼女も記入を開始した。


「ありがとう。やっと、自分のやりたい事ができるよ」


「アーさんのお友達も許可を得たら船上で店を営業するから、休みの時にでも友人と遊びに来てよ」


「マジで凄いよ。見ているだけでも楽しいから、絶対行った方が良い。今日中に許可を得るからさ」


 俺に続いてアヤサフェールも記入しながら、店の宣伝に貢献してくれた。




 本当に速やかに冒険者カードが発行された。それがゴールド級冒険者の手続きだったからなのか、アヤサフェールの友人が手続きをしてくれたからなのかは判らない。


 セイントゥス島出身のメンバーは船に戻り、俺とアヤサフェールを含む5人は彼女の実家へ案内された。


「ただいま。お父さん、ちょっと良い?」


「ん? おかえり。……お客さんかい?」


 アヤサフェールが実家と言って連れてきた場所は普通の一軒家。ちなみに店は別に存在し、アヤサフェールは店で暮らしている事も聞いていた。


「お父さんの作った楽器について話を聞きたいって」


「わかった。……初めまして、話というのは?」


「初めまして。あたしはイクミコット=フィリアス。ゴールド級冒険者チーム“サクリウスファミリア”所属の【機工師】です。アヤサフェールさんの所持していた楽器がお父様によって作られたと聞きまして。製造過程とか見せて頂けたらと……」


「そうかそうか。そういう事なら、好きに見ていくと良い。私としては興味を持ってくれただけでも嬉しいと言うものだよ。……なかなか興味を持って貰えないからねぇ」


 2人が話している間、俺達は楽器を見せて貰う。けれど、楽器群に違和感があった。


「これはドラムナックル。拳具なんだけど、装備して殴ると太鼓を叩いたような音がでるの。それで、こっちは4弦だけの低音リュートでベースという名前らしいの。そっちは6弦のリュートでギターって言う楽器」


 ……これって形状や動力に違いはあるけれど、前世の世界の楽器だよな?


 他にも、アコーディオンとか鉄琴、スピーカーやアンプ、マイクまであった。見た目は違ってもアヤサフェールからの機能説明を聞いていると、そうとしか思えない。


「そろそろ時間だね。町長宅に……」


「サクリさん、すみません。あたし、ここに残って良いですか? 全てが興味深くて……」


 想定取りイクミコットを置いて、気になりつつも4人で町長宅へと向かう事になった。




「ここが町長宅?」


「そうですよ」


 ……王族の屋敷? 小さくない?


 多分、アヤサフェールに違和感がないのは国から出たことが無いからだろう。ただ、目の前にある屋敷は3階建ての大きめの家とその家があと3軒建てるのが精一杯の庭だった。


 いや、普通の民家と比べれば大きい屋敷だというのは解る。でも、これまで見て来た小さな城じゃないかと思えるような建物に国立公園なんじゃないかと思える程に広い庭と比べると、とても庶民的だった。


 ちょっと成功している商家の屋敷と言われても俺はきっと疑わない。そして、似た感想を他のメンバーも思っているようだった。


「……マナティルカ?」


 多分、中から俺達が来るのを見ていたのだろう。慌てて外へ出てきた町長夫妻は駆け寄るとマナティルカをガン見している。


「えっ? お父様、お母様?」


 ……はい?


 何故マナティルカの両親が町長に……と一瞬戸惑い、直ぐに事情を理解した。


「なるほど、新しい宰相か……」


「みたいですね」


 俺が思わず呟いた独り言をリリアンナは聞いていた。


 中に招き入れられ、営業許可は直ぐに得られ、許可証も直ぐ発行して貰えた。


「改めて、娘と会う機会を頂いてありがとう。滞在中は喜んで協力させて貰うよ」


「サクリさん。ここに泊まっても宜しいですか?」


 当然と言わんばかりに許可をして、要件の住んだ俺達は早々に屋敷から撤収した。




 翌日から甲板で店の営業は開始された。……客入りは微妙である。初日だし、宣伝もしていない。来たのはアヤサフェールの友人が数名といったところで、どちらかというと船を降りて出かけたいところだろう。


「只今戻りました」


 お昼前にマナティルカが戻ってきたのだが、ご両親も連れてきた。


「娘が世話になっています。マナティルカの父です」


「母です」


 仲間全員を甲板へ集めると2人が深々と頭を下げる。


「こちらこそ、お世話になっています。それで、今日はどうしてこちらに?」


「娘が世話になっている方々に直接お会いしたかった事と、交流のお手伝いをしようかと。さぁ、リリアンナさんとサクリウスさん。あとクレアカリンさんという方もご一緒に」


 ……多分、マナティルカからサブリーダーの名前は聞き出したんだろうな。


 町長は冒険者支援組合と銀行、3つある冒険者の店を案内して俺達を紹介してくれた。挨拶周りの成果なのか、少しずつ船上への来客は増えて、当然チームの面々も町を自由に歩いても警戒されなくなった。


 レベル上げのための仕事の依頼を受けたり、近くにある鉱山や山林で資材を調達したりして少しずつではあるが確実に信頼を積み上げていた。




 ポーンブラで活動をして1週間。町の人達にも顔が知られてきて交流が進んだ頃。


「サクリさん。そろそろ国王様に会うため、王都に行きたいの。普段ならわたし達で行くところなのだけど、今回は護衛をして貰えないかな?」


 アオランレイアからのお願い。まぁ、俺達の仕事は彼女達の護衛。普段なら返り討ちにするから要らないというところをあえてお願いしてきたわけで。……理由も察する事ができる。


「わかった。王都までは馬車で3日だよね? なら、俺1人でも充分かな?」


 ……個人的に、治安の悪さを体感していない場所に女性連中を連れて行きたくなかった。


「うん。お願いします」


 翌朝早朝、俺は官職メンバーの護衛要員としてアフタンダークへ向けて共に出発した。

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