ビジュペとの別れと適性を得て進化した天職【傀儡士】
合流するべくフェアリークイーンの所へ向かっているが、その歩みは遅い。内心ではむしろ立ち止まって考えたい気持ちでいっぱいだった。
……だって、オートマタ達が少女だと認識するなら、彼女達といる事で女難が発動する事を意味するから。……いや、今更女難フラグが乱立しようと死線を反復横跳びする環境はもう変わらないわけだけど。
それでも止まらず歩いているので、たいした距離もない状況から直ぐに合流した。
「御前様、お待ちしていました。ご紹介します。わたくしの上官にあたりますフェアリークイーンです」
……上官とな?
現状に意識が強引に戻された感じに思わず笑ってしまいそうな頬の緩みを気合で引き締める。
「初めまして。サクリウス=サイファリオです」
「ようこそ、サクリウス様。わたくしが金のフェアリークイーンです。ビジュペがお世話になりました」
ビジュペを大人にしたような印象の女性。灰色の髪と瞳、そして同じ灰色の飛行機の翼のような翅。ガントレットやグリーブには推進装置や武装が付いているように見える。
「御前様、早速契約を致しましょう!」
その乗り気の姿勢が彼女らしくなく、違和感があるような気がした。
「ビジュペはどうして俺と契約をしたいの?」
毎度思う素朴な疑問。次期フェアリークイーンを狙っているようには思えない。純愛と呼べるような親交を深めるような特別な事もしていない。それぞれ理由はありそうだが、これまでのコミュニケーションで心当たりが無かった。
「……そうですね。何も最初から契約したいと思って近づいたわけではありません。もちろん、契約に関しては意識していましたが、契約しないという選択もありました。だから、ずっと見ていました」
お互い様ではあるけれど、確かに彼女は他の妖精達と比べて自主的に動くという事を極端にしない子ではあった。こちらがお願いすると迷わず動いてくれる子でもあったんだけど。
「最初は雌好きの軟弱な雄なのだと思っていました。ヒューム族の雄は繁殖の事ばかり考えている生物だという偏見もありました。ですが、それは本当に偏見だと思い知りました」
「……まぁ、どんな種族にも個体差はあるよな」
なんていうか、そういう男が居ないと断言できないのも事実だけど、大半がそうだと断定されるのも不服だったりする。
「御前様は異性の色香に惑わされる事なく、自分の方針を曲げないところに惚れたのです」
そう話すと、フェアリークイーンから薬品を受け取り、周囲と自身の掌に魔法陣を描き始める。
「御前様、両の掌を胸の前に」
自身の掌を俺の掌に重ねてキスをすると彼女の身体が光り輝き、プリュメリアに進化した。
「進化おめでとう、ビジュペ。サクリウス様は何か質問ございますか?」
……アレの正体判るかな? メタルガングを襲った半機半獣の正体……。
「知っていたら教えて欲しい。レイアール王国内で魔石すら残らない異質な獣がヒューム族の集落を襲っている。アレの正体についてご存知ありませんか?」
「……申し訳ないですけど、知っている事は少ないです。獣の姿は借り物で、獣の遺体を利用しているにすぎません」
少しは知っているならヒントにはなるか。
「……という事はアンデット?」
「いえ、本体は歯車のようなモノなのです。魔石が残らなかったのは、本体を倒していないから魔石も現れないということです」
確かに野獣は倒しても魔石は無い。でも、肉や皮は残るはずなんだよな。
「その歯車のようなモノは魔人族?」
「わかりません。生物かですらも不明です。ただ、前にエクスマキナ様に聞いた話では、歯車は召喚された存在。名前は『パラサイトギア』。魔人族では無いそうです」
「……という事は召喚主が居るという事?」
「そういう事になりますが、わたくし達は召喚した者の詳細を把握していません。ただ、召喚した者はヒューム族です」
……マジか。もしかして冥職持ちか?
その召喚している奴もヤバイけれど、何も判らないと有効な対策は講じられないな。
「問題は、『パラサイトギア』が襲っているのはヒューム族だけじゃないという事なんですよ」
「どういう事?」
「『パラサイトギア』は魔人族も攻撃しているのです」
……はい?
「ビジュペから話を聞きましたが、魔人族との戦闘はサクリウス様側から仕掛けたのですよね?」
「ですね」
「では、レイアール王国に入ってから襲われましたか?」
……あ~。言われてみれば、今までは不意打ちというか急襲というか、こっちが後手に回る事が多かったかも?
「いいえ」
「先程エクスマキナ様のところに現れたブレイズビー。実は大群で襲撃する予定だったそうですが、『パラサイトギア』の攻撃に遭って1匹になったそうです。サクリウス様はレイアール王国の未来をご存知と聞きました。ですから、今はそれ等とは戦わない方が良いでしょう」
……つまり、手を出すなって事か……彼女の助言に対し、頷いて答えた。
俺はやるべき事の変更を言われるわけもなく、何も変わらないと判った事で用件は済んでいた。ただ、『パラサイトギア』に手を出すなと言われるとは思わなかったけれど。
……まぁ、レイアールはシナリオ進行の仕方によって亡国寸前まで追い詰められるからなぁ。
ポフッ。
「御前様、お世話になりました」
プリュメリアに進化したビジュペが俺の胸に飛び込んできた。身長が20センチほど伸びた三頭身の彼女はとても軽い。きっと、別れの挨拶だろう。
「呼んで頂ければ何時でも駆け付けます」
「必要になったら遠慮なく……いや。必要無くとも呼ばせて貰うよ。頼りにしている」
俺達は撤収を指示し、フェアリークイーンに挨拶をして古祠を出る旨を伝えたが、毎度のように出口へ飛ばしては貰えなかった。
入ってきた道を逆に辿り、あの迷路を自力で抜けなければならないのかと困っていたが、直ぐにビジュペが俺達に追いついて来た。
「申し訳ありません、御前様。帰り道の案内を忘れておりました。……何処までも真っ直ぐ進んで下さい。罠で地下1階へ降りた所に飛ばされます。あとは上に行って戻るだけです」
……半信半疑で真っ直ぐ進むと本当にあっさりと古祠から出る事が出来てしまった。
帰り道は『パラサイトギア』と遭遇する事が無かった。メタルガングもあれから襲撃される事も無かったようで、帰り道はオークやゴブリン等を相手する事はあったが厳しい戦闘をする事は無く、オーアホージャに無事到着した。
帰った夜に食事や風呂を済ませた後、ユカルナを呼んだ。
「なぁ、何故『適正』の詳細を黙っていた?」
「適正について聞いたんですか?」
頷くと、彼女は今にも密着するくらいに近づいたかと思うと何故か俺に抱き着いて来た。
以前なら払いのけるのが基本だった。だけど、知ってしまったがために躊躇われていた。
「……そうですか、正しく理解して頂けたんですね? なら、説明しますね。わたし達神器は主人もご存知の通り大きすぎる力です。主人にとって不本意な使われ方……例えば、盗られたとか悪戯半分で借りようとしたとか。そういった事故を防ぐ為、セーフティ機能があるんです。つまり、起動は主人でないとできません」
……それは尤もな対策だ。あんな危険なモノを誤用された日には危なすぎる。
「これが表向きの理由です。ただの武器であれば淡々と適正を与えるだけで良かったのだと思います。ですが、女神ナンス様から人格を頂いた事で登録行為が恥ずかしかったんです。それでも、最初にわたし達が裸で迫ったのは使って欲しいという本能なんですよ」
「具体的に何をすれば良い?」
「適性の登録には主人の唾液を頂ければ大丈夫です。ですが、わたし達の力は空っぽの状態ですので、主人からMPを頂きたいのです」
……微妙に言葉を濁しているので、何をするか想像ができた。
「MPの譲渡はどうすれば良い?」
「主人は寝ていてくれれば大丈夫ですよ」
……笑顔なのに目が笑っていない。聞くなって事だろうな。
「全てを理解していないが、何となく一緒に寝たがる理由は解った。ならば、条件がある。次の日に早朝出発の日はベッドに入ってこない事と補給は寝る前にして終わったらベッドから出る事。……他の神器達にも言っておいて」
ユカルナは腕を俺の首に絡ませて引き寄せると俺の指示に返事する事なくキスをした。
翌日、何か大切なモノを失った気がしつつ朝食を食べているとエルミスリーが食べ終わったら部屋に来るように言われて……何を言われるのかビクビクしていたが……。
「……【傀儡士】?」
『天職進化の儀』をして貰い、初めて聞く天職を賜った。もちろん俺がって話じゃなくて、エルミスリーが初めて聞く天職なんだとさ。
「まぁ、ユニーク職ね。それは間違いない……というか、オリジナルかもしれないわ」
スキルの内容を考えて、オートマタ使い専用の職業なのだと理解した。
流石に疲れたという事で、しばらく休みという事になった。もちろん、完全な休みでは無くて生産職メンバーの手伝いをする事は前提ではあるけど。
心配していた風呂問題も不思議と誰も入ってこない……と言いたかったが、ユミリアとカエディステラだけは入って来るんだよな……。
「さぁ、主人。寝る前に今夜はわたしが頂きますよ」
サヤーチカが全裸でベッドに入って来る。
「恥ずかしいので、じっとしていて下さい。……大丈夫。直ぐに終わらせますからね」
……何故だろう……怖いんだけど……。
こうして毎晩、いろいろ失いつつもオートマタ達は戦力として数えられるようになった。
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