遺跡『金霊王の古祠』は絡繰り仕掛けの迷路だった
山道を移動する。山道がしっかりしていたので馬車で移動ができるけれど、天候が悪くなったらダメになるんだろうな……という程度の整備された道。安心安全とは言えないが、馬車で移動は可能という程度と言えば良いだろうか?
山頂までは続いているか判らない道ではあるけれど、ビジュペの案内のおかげで迷う事無く遺跡『金霊王の古祠』に着く。
「再度確認するけれど、妖魔は出ないんだよね?」
「えぇ。間違いなく、何もでません」
そう言い切られているので間違いないかな。違っても倒せば良いだけ。妖精とヒューム族では認識や敵対勢力が違うなんて可能性は考慮しておいた方が良いだろう。
「ただ、中は絡繰り仕掛けの迷宮となっております。皆様には逸れないように纏まって移動する事をお願いします」
「わかった」
改めて全員に説明と指示を飛ばし、中に入る。最初こそ普通の洞窟だったが妖精界との境目までは普通の洞窟と変わらない事は知っている。
「馬車、大丈夫かな?」
「シオリエルが留守番してくれるし大丈夫でしょ」
カオリアリーゼの不安に対し、アッツミュが軽く返す。考えてみれば、シオリエルの戦闘能力の高さは、もうほとんどの人が知らないんだよな。……地道に訓練したからなぁ……。
留守番しているのはシオリエルだけではない。馬達もリンクルムと意思疎通して危険な時は逃げても戻ってくるように伝えて貰ってあるし、シオリエルの護衛としてウイングライオンも残していった。
当然、アッツミュは残していった事を知っていたのだろう。
「もう直ぐ地下1階への階段です。ここまでは一本道ですので逸れた人はいませんよね? 下に降りてからは気を付けて下さい。最悪出て来られなくなる可能性がありますから」
ビジュペの注意を聞いて、慌てて厳しめにみんなに伝えた。
地下1階に降りた先は部屋だった。それはまるでドワーフの屋敷のような立方体で内装などは無く、ただ正面と左右の壁面に扉があるだけだった。
「ねぇ、コレって……」
ヒカルピナが思わず俺に声を掛ける。
「いや、俺も同じことを考えていたと思う」
そう、転生者である俺達にはこの構造に心当たりがあった。
「そこ、左だよ」
ビジュペの指示に従い、左と扉を開く。他の連中が別の扉を開こうとしたがロックが掛かったようで開かない。
「どうも一ヶ所開けたら他が開かないシステムみたいだね。俺が扉を開けて行くから、他の扉を勝手に開かないように」
最低限の指示を出し、扉の先を見る。
「あ、これ知ってる! 東京駅にもあったよね?」
「オートウォークですね。「動く床」って呼ぶ人もいるらしいですけど」
ナオリンの感想にシャワールが説明する。
「なるほど、一方通行……片道ってことね」
サキマイールも俺と同じことを思ったみたいで彼女に頷くと、先行してオートウォークに乗る。転生者は難なく乗るものの、始めて見る他の連中は恐る恐るタイミングを合わせて乗っている。……確かに乗り慣れていなければそうなるか。
やがて、オートウォークの終わりが見えたのと同時にその先に扉の無い部屋への入り口がある。中に入ると先程の部屋と同じ構造で正面と左右の壁に扉が存在する。多分、この後もずっと同じ構造になるのだろう。……これ、絶対迷子になるよな。
部屋もオートウォークも明るい。天井は蛍光灯の灯りのように思えるが、電気製品が無い世界なので、多分魔法だろうとも思いつつ……金属性以外の魔法が発動している事が謎だった。
「なんか、違う世界に迷い込んだみたいだ」
「そうだね」
マオルクスが同意する。多分、俺の感情に共感できるのは転生者だけだろう。
全員が来るまでは扉を開かない。逸れたら終わりと事前に説明されていたから。
「これ、ガチで敵が居なくて助かったな……居たら地獄だ……全員集まった? 次行くよ」
念のため、レイアーナに〈ハイアナライズ〉をして貰い、部屋に全員揃っている事を確認して貰いながら移動した。
移動ペースは遅いが疲労具合は正直少ない。オートウォークのおかげだろうけど官職メンバーはかなり体力温存できているのではないだろうか?
ふと、右手が繋がれる。繋いできたのはマオルクスだが、子供の姿だからか振り払うには躊躇された。……中身は同世代と判っているんだけどね。
「移動多いんだから、元の姿に戻れば?」
「元の姿じゃ手を繋げないじゃない」
……うーん。まぁ、子供だと女難の心配が無いからだと思うけど、拒否反応が出ないんだよな。
「そういえば新しい天職って、どんな事できる?」
「【錘占術士】ができる事は基本、ダウジングができる事だよ」
そう言って、彼女の右手からペンデュラムが現れる。
「それ、神器?」
「うん。ピカちゃんと同じ」
そう言って、ペンデュラムが消える。
「ただ、スキルだから本当のダウジングより正確に正しい事を指し示す事ができるの。あとは、ペンデュラムを使ってロープ代わりや、武器として近接戦闘も可能だよ」
……自在に動く鎖か。フィクションでは何度か見かけた事あるけれど、実際に使用者が現れるとか……ユニーク職は何でもありだよなぁ。
「カノンの糸のようなものか」
「うん。強度や耐久性的な意味ではカノンちゃんの糸よりは低いと思うけど、似たような事はできると思う。ただ、このペンデュラムの凄いところから命じればオートで追尾してくれるところなの」
「いや、いくらオートでも叩き落されれば……」
「妨害行為を勝手に避けるとしたら? 攻撃力が低くても凄いと思わない?」
……なるほど。どんな天職だろうともユニーク職というだけはあるということか。
転職の話をしている間もマオルクスは俺の右手を離さない。……もしかしたら彼女も習慣になっているのではないか? ……なんて愚問を考えていた。
割と俺も気が抜けていたのかもしれない。
「サクリウスさん」
「はい?」
思考の世界から現実に意識を引き戻される。
「ちょっとお尋ねしたい事があるのですが……」
声を掛けてきたのはルリーシュさん。
「何でしょう?」
彼女が俺の隣に並ぶと、気を使ったのかマオルクスは俺の右手を離して後ろに下がる。
「サクリウスさんはチームのリーダーですよね?」
「そうです」
「なら、このチームが女性ばかりなのはサクリさんの意向ですか?」
「いや。むしろ女性陣の意向ですね」
「……ですよね。嫌じゃないですか?」
……ん? てっきりハーレム願望を探られていると思ったんだけど、違うのか?
「多くの女性に囲まれるというのは苦手ですね。でも、仲間は別です」
「それは良かった。何となくですが、サクリさんが女性を求めているというよりは女性がサクリさんを必要としているように見えたので、振り回されているのではないかって心配したんですよ」
「多分、振り回さないように女性陣が気を使ってくれているのかも」
……ルリーシュさんって面白い考え方をするな……女性視点なら男が多くの女性に囲まれてチヤホヤされていたら、さぞ気分が良いだろうと考えると思うんだけどな。
「俺からも聞いていいですか? ……その、何で俺が女性陣に振り回されていると思ったんですか?」
同性であれば気づくかもしれない。……ただ、可哀想というよりは羨ましいとかムカつくとか、そういった感情になるだろうけど。しかも、彼女はそれに気づいただけではなく、心配してくれている。
「お風呂の件ですよ」
「あ~」
「それで思ったんです。サクリさんって同性愛者なんじゃなかって……」
……おいっ!
「それは無い。俺は可愛い女性が大好きですよ」
「……ごめんなさい。だったら、女の子を避けすぎでは?」
さて、どうやって説明したら良いやら……事実を並べて信じて貰えるとも思えないし……。
「仕方ないのよ。誰でも命は大事でしょ?」
問いに返事をしたのは俺でなく後ろにいたマオルクスだった。
「命?」
「そう。彼、呪われているのよ。自分から積極的に女性と関わろうとすると命を狙われるの」
マオルクスの返答にルリーシュはもちろん信じている感じでは無かった。
「信じられない気持ちは解る。……わたしもそうだったし。でも、理屈じゃなくて現実にこれまで何度も死ぬ寸前まで追い詰められているの」
「何故、冒険者に……」
「それも、同じ理由らしいよ」
思わず本気で言っているのか確かめたくてルリーシュは周囲に答えを求めるも、近くにいる連中からマオルクスが正しいと言われてしまっていた。
「御前様。そろそろ最下層に到着します」
「案内ありがとう。……ビジュペが案内してくれなかったらと思うとゾッとする……」
戦闘が無くピクニック気分で来たけれど、案内無しだったら辿り着けなかったかもしれない。
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