魔人族の動きが不気味な件とドワーフが渡した報酬の違和
動けない間、リナイセムには沢山質問された。……無理も無いかな……だって、メディスの進化する瞬間を見られてしまったのだから。
幸いなのは、召喚した妖精は姿を見る事ができても会話は妖精語故に判らない事。
「しかし、強かったな……人と変わらぬ姿の魔人族……」
「サクリさん。ご報告できずにごめんなさい。サクリさんが相手した方は魔人族のホムンクルスです。ソレ等は人の姿で人の言葉を話しますが、人ではない別の生き物です」
「……あ~、やっぱり。魔人族に身体を乗っ取られたヒューム族かもと少しは考えたけれど、ヒューム族じゃなくて良かったかな」
レイアーナが俺の一言で仕事を出来ていなかった事に気付いて謝る。
「いや、仕方ない。レイアーナも必死だっただろうし」
「サクリさんは、このマリオンの集団でホムンクルスは何を企んでいたと思います?」
「ん……判るのは、狙われたのは記憶や知識といった類のモノだろうね。マリオンがヒューム族の頭部を奪っても、成り済ませる程の技術は無いと思えたから」
「……知識を奪って何をしたかったのか……解らないですね……」
「ここ一ヶ所だけで行われていたなら良いけれど、他に拠点があったら今回みたいに偶然掘り当てない限り見つからないわけで……どうなることか……」
レイアーナが解らないなら、俺も含めて誰も解るとは思えないし、答えも出ないだろう。
「……よし。そろそろ撤収するか。撃ち漏らしや戦利品の拾い損ねは無いね?」
完全に回復した俺達は生存者や死亡者の遺体と共に地上へと向かうべく立ち上がった。
帰り道はかなりざわついていた。
特にマリリシャとユウキュアは超広域殲滅級魔法を初めて見て興奮しているのかもしれない。
もちろん、2人だけでなく、普段移動中の敵を倒す程度の生産職のメンバーは今回の戦闘を見て色々思うところがあったのかもしれない。
「あのっ」
帰り道。俺の元へ来たのはリナイセムで追いつくと隣を歩き始める。
「ん?」
「わたし、リナイセム=シルヴァレールです、皆さんの仲間に入れて貰えないでしょうか?」
……とまぁ、あの戦闘に魅入られたのは仲間だけでなく。
「俺はサクリウス=サイファリオ。ウチのチームに入るには全員の同意が必要ではあるんだけど、その前に何故入りたいと思ったのか聞いていい?」
とりあえず、テンプレート。私情から入って欲しくないな……とも、予知夢で見たから入って良いとも言わず。
「一番の理由はサクリウスさんの反応です」
「反応?」
……いや、解るけれど……。
「わたし、男性……ううん、グイグイ迫って来るタイプの男性が苦手なんです。だけど、サクリウスさんは程々の距離感で、かなり新鮮だったので、仲間に加わるならここだって思ったんです」
……でしょうね。
「あっ、仲間を募集しているの? それならあたしも入りたい! 理由は自分で作って自分で販売したいから!」
……おぅ……まさかチットリーゼさんまで仲間入り希望とは……いや、予想できたか。
帰りは魔法を使い一瞬で……とは考えた。結論としては定員オーバーなために断念せざるを得ない状況で、全員歩いて帰るという選択になった。
リナイセムもチットリーゼも帰ってから留守番組も含めて全員に確認した後に結論を出す事はちゃんと伝えてある。
そんなわけで、長時間かけて上に登ってきて、坑道を出るとベルクミネラーネへ向かう。
「うーん……大丈夫かね?」
「判りません」
俺の問いにユミリアは質問の意図を理解しつつ答える。
ドワーフは頑丈で重症であっても生存者は多かった。だが、かなり前に連れて来られたドワーフは当然亡くなっていた。それを見たベルクミネラーネのドワーフ達が何を思うか?
……もしかしたら、亡くなったドワーフのご家族からは非難される可能性も……。
「おかえりー!!」
「ありがとう、ヒューム族の勇者たち!」
……うん、杞憂だった。ユミリアもいるのにドワーフ達は俺達を歓迎してくれた。多分、あの助けたドワーフが先に戻って伝えてくれたのだと思う。
助かったドワーフ達は迎えに来た家族と生還を喜ぶ一方、やはり亡くなったドワーフ達の遺族は悲しみに涙する。
「……“サクリウスファミリア”の皆様。族長がお待ちです。屋敷までご案内します」
迎えのドワーフはやはりユミリアを見ず、俺達にそう告げると先を歩き始めた。
「同胞を助けて頂き、ありがとうございました」
族長とカナリアが深々と頭を下げる。
屋敷へは俺、クレアカリン、リリアンナ、ユミリア、チットリーゼ、リナイセムの6人で入り、現在に至っている。
「それで、あの得体の知れない生き物は何を目的で我々を攻撃したのでしょう?」
「あれは魔人族。目的は頭部。厳密にはその頭部に眠る記憶ですね。何か情報を得ようとしたのかもしれませんが、それで何をしたいのかまでは解りませんでした」
リリアンナが答える。
「そうですか。でも、その魔人族は全滅したと聞いています。これはお約束のお礼です」
そう言って、霊銀貨35枚……3500万ナンスを目の前に積む。
「それと、不足分はこちらを収めて下さい」
そう言って差し出したのは黒銀制のプレート。そこには有効期限が無期限となっているベルクミネラーネと坑道への入里許可証だった。
「それと、これはこちらからのお願いになってしまうのですが、ユミリアをそこのサクリウス様に貰って頂けないでしょうか? その方が娘も幸せになれると思うのです」
「は?」
……反射的に断ろうとしたが、彼女のここでの扱いを知っていたので断る事が出来なかった。
船へ帰る道中も俺の判断は正しいのか自問自答していて、気付けは船に着いていた。
同行者全員が疲れているかもしれないが、広間に集める。
「まず、ユミリア。あえてみんなの前で確認するけれど、こんな状況になって後悔していない? 嫌なら気を使わず自分の好きな生き方を……」
「何故ですか? わたしにとっては仲良くしてくれる人達がいっぱいで最高です。……もしかして、わたしみたいなドワーフじゃダメでしたか?」
……まぁ、本人が良いなら良いんだけど。
「俺達、あんな奴等を相手にしているんだよ? 戦える?」
彼女は頷くかと思ったが、何故かドヤ顔でサムズアップしてきた。
「えーっと……ついでみたいな言い方になるけど……他にも2名、チーム入り希望者がいるんだ。リナイセムさんとチットリーゼさん、こっちへ」
2人を呼んで、俺に話した内容と全く同じ事情を説明させて、反対する人を確認したんだけど、やっぱり全員が賛成したので、3人全員チーム入りが確定した。
「さて、3人とも了承は得たわけだが、最後に……俺達は大陸を巡る冒険者。この国も用事が終われば出ていく事になるけれど……大丈夫? 故郷に未練はない?」
3人とも頷く。ユミリアに至っては再びサムズアップしかけて、他の2人を見て止めていた。
「わかった。今からは客人ではなくて仲間として扱う。良いね?」
3人とも笑顔で快諾する。……しかし、ユミリアを思うと心が痛く、チットリーゼに関しては気持ちが理解できなかったんだよな。
流石に疲れていたので、風呂に入った後は早めに爆睡した。我ながら眠りは深かったと思う。
「朝だよ、起きて」
……久しぶりの感覚だった。完全に油断していたというのもある。目を開けると初めて見る……いや、語弊がある。見たことがあるような顔をした少女が全裸で俺の腰に跨っていた。
「何して……」
抗議しようとするも唇に指を宛がわれる。
……最近、股間への違和感はビジュペが入っている事があって慣れてしまっていたが、こんな展開は久しぶりだった。
「リエストスだね?」
「そうだよ、主人」
視界に入る情報はまず全裸である。童顔に二重で大き目な深い赤色の瞳。そして、淡い赤色の長い髪。最低でも座高より長いのは確定。この顔に似た架空の人物を俺は知っている。『炎髪爆拳のアグリ』の主人公の幼馴染み、宮楼月愛だ。声も似ている。
「まず、そこを降りて服を着ようか?」
「何で? あたしの事、好きじゃない?」
気づくと、いつも股間で寝ているビジュペはベッドの横に転がって寒そうにしている。
「そうじゃない。不意打ちはダメだと言っている」
……まぁ、正々堂々でも許さんけど。
「……バカ! アホ! 信じられない! 女の子に恥かかすとか男として終わってる! 無能なの? 枯れてるの? 紳士ぶってるつもり?! ただ度胸無いだけじゃない……ひどいよ」
言うだけ言うとボロボロと涙を零し、部屋から出て行った……全裸で……あれ? 俺、やばくないか?
……はぁ……。
「んっ……御前様、おはようございます。昨晩の内に古祠で待っていると連絡がありました」
「解った。急いで来いって?」
「いえ……それより、わたくしは何故ここに?」
「さぁ?」
……多分リエストスがやったのだろうけど、犯行を俺は見ていない。
「さて、じゃあ起きますか……部屋を出たくはないけど」
絶対、問題が発生しているんだろうな……と思いつつ身支度を整えて甲板に上がる。丁度そのタイミングでアオランレイア達が帰って来た。
「ただいま戻りました、サクリさん。まずはご紹介しますね!」
そういってアオランレイアはまず、1人の女性を俺の前に連れてくる。
「彼女は新たな同行者となるルリーシュさんです。彼女の乗船許可を下さい」
「レイアール王国を代表して同行する事になりました、【守防官】ルリーシュ=クラリーレイです! よろしくお願いします!」
重そうなフルプレートアーマーを着て、タワーシールドを背負う彼女は茶色の瞳で……なんと、尻まである銀髪だった。……きっと都会出身で銀髪差別を受けなかったんだな。
「初めまして。チームのリーダーでサクリウス=サイファリオです。乗船を許可します」
「ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
簡単に挨拶を終えたところで、
「俺からも話がある。みんなも聞いて欲しい」
大きな声で呼びかけると作業中の連中も手を止めてこちらを見る。
「昨夜の内に連絡があって、遺跡『金霊王の古祠』へ向かう。メンバーはノーマル職以外で向かうから準備しておくように」
「サクリさん、わたし達も一緒に行きたいです。彼女に問題を正しく理解して貰うには直接聞いて頂くのが良いかと」
……なるほど、自分もソラナディア達のように直接上位精霊から話を聞きたいって事ね。
俺はアオランレイアの提案を了承し、一部のノーマル職のメンバーの同行を許可した。
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