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超広域殲滅級魔法とリエストスとメディスの進化

 明らかにそこだけ「壁が崩れました」的な穴があり、その先に黒曜石なのか深層岩なのか、影鉱石なのか、それとも知らない鉱石かもしれないが、とにかく黒い物体で砦が作られていた。


 こんな地下深くに大きすぎる空洞、そしてその中にある巨大な砦。どうやって生み出されたのか謎な場所。そして数えきれないくらいのマネキン。


「……これは流石に……正攻法で攻撃したら死人が出るな……」


 思わずボヤく。


「敵は魔人族のマリオン。数は500以上で数えきれません!」


 理不尽な数のあまり怒り気味にレイアーナが報告する。


「一応、弱点は火属性です。頭部のあるマリオンは強いです。気を付けて下さい」


 ……これは切り札を切るしかないかな……。


「マオ、アッチュ、サティ、ハル。4人は超広域殲滅級魔法でいっきに数を減らすよ。みんなはアッチュの詠唱にタイミングを合わせて」


 超広域殲滅級魔法とは、魔法による大量破壊。……ゲーム的に言えば『MAP兵器』。1回であれば魔法耐性のある魔人族なら耐えられる個体もあるかもしれないが4連弾なら効くに違いない。


「4人が攻撃し終えた後に俺が最後に攻撃して、その後は前衛部隊が攻撃してほしいんだけど、重要なのは生存者の確保と保護。生きている人の現在地はレイアに確認して。……ちなみにアイツ等は生存者を奪われたくないと考えるだろうから、乱戦に自信が無ければ避けて」


 ……こう言えば少なくとも2人は生存者確保に向かうはず。


「あと、大事な事。ここからはノーマル職のメンバーは留守番だ。生存者を保護したら治療や安全確保お願いします」


 流石に魔人族とノーマル職は戦わせるわけにいかない。……即死する。


「最後に、サキチ。俺達のMP回復頼む……それでは準備は良いか?」


 全員を確認する。視界範囲外で待ってほしい人がいれば手なり声なりあげるだろうが、全員が沈黙していた。




「タロット武装……《魔術師》!」


 マオルクスの姿が黒魔術士風のコスプレ姿に変身する。


 アッツミュが呪文の詠唱を開始する。詠唱内容から光属性の超広域殲滅級魔法だろう。魔術士系の魔法は威力が高い程詠唱時間が長くなる。……とはいえ、馬鹿丁寧に詠唱しているわけでは無い。活舌良ければ早口で詠唱したって発動はするわけで。


 一方、マオルクスも呪文を詠唱しているが多分火属性……少なくとも『竜騎幻想』世界の詠唱ではないだろう。……多分、別作品……違う世界の魔法。


「〈邪霊の魂装〉」


「〈光霊の魂装〉」


 サティシヤとハルチェルカがスキルを使用し、精霊が鎧状になり纏う。精霊界でもなく、精霊魔法を使えるわけでもないのに、その形が目視できた。


 詠唱が止まる。


「《光粒子熱(リフレクト・)線反射閃(ルミナリオン)》!」


「……爆ぜろ! 《炎魔超級爆炎殺》!!」


「《邪霊王終(ファイナル・テ)末乱心呪(ンプテーション)》!」


「《光霊王極(リフレクト・)光翼撃破(ルミナリオン)》!」


 耳を塞ぎたくなるような爆発音が多分地下59階層全体に響いたと思う。


 本来、1人で放つ超広域殲滅級魔法でも戦況をひっくり返す超必殺技レベル。それを4人同時に放ったのだから魔人族であってもひとたまりも無いはずだ。


 ……ゲームならそこまでの火力ではないけれど、現実は違う。それに俺の予想が当たっていれば……外れても良いけどね……。


 ガチャガチャガチャガチャ


 顔無しマリオン達が迫って来る。……まぁ、デスヨネ。


「ヴィエル、アイルゥ」


 呼ぶと2人のプリュメリアが召喚される。何も言わないのは俺が何をしようとしているか気づいているから。


「〈ミックスレイド〉……ブリザードエンド」


 『ブリザードエンド』とは〈ミックスレイド〉を使用する際に事前打ち合わせした合言葉。


 指示した瞬間ヴィエルとアイルゥが魔法を発動させ、迫りくるマリオンを凍らせて砕く。結構な範囲攻撃ではあるのだが、超広域殲滅級魔法に比べればかなり狭い範囲の魔法。でも、威力は同程度だろう。




 ヴィエルとアイルゥが消えた瞬間、2人と2匹が飛び出す。ヨークォットとアオルッティ、ローリングコヨーテとワイルドヘアだった。


「4人はサキチの傍で休んで」


 ……多分、MPのほとんどを消費したはず。


 急いでヨークォット達の方へ走ると、見覚えのある人を発見した。


 ……居た、リナイセムだ!


「生存者を運ぶ。援護頼む」


 後から駆け付けた連中に頼み、マリオンの相手を頼み、俺はまだ息のある人達を運ぶ。……残念ながら、ほぼ死骸ではあるんだけど。


「ユイ!」


「そこに寝かせて下さい」


 ユイディアが順次回復していく。とはいえ、リナイセムは多分ユイディアでは回復できない。何故なら、生きてはいるものの四肢を切断されているから。多分、抵抗する際に動けないように切断されたのだろう。


 マリオンの目的は拉致した者の頭部。しかも生きている頭部だ。そう思わせる根拠があって、マリオンの存在しないはずの首の上、明らかに別の頭部が乗っているから。


 一方ドワーフは〈山の加護〉のおかげで超強靭になっていて、四肢切断ができなかったのだろう。気絶したまま転がっていた。……ドワーフ達はすぐに回復するだろう。


 ……〈サイコヒール〉。


 リナイセムの治療を始める。手足が何処にあるか判らないから復元回復。結構な時間とMPを持っていかれる。


 しばらく回復に集中して手足の復元も完了し、もう少しで全快できると思った矢先、突然激しい音がして、それが何者かの攻撃をヒカルピナが弾いた音だと理解した。


 攻撃主を見て、明らかにマリオンと違うソレに正直このタイミングかと悪態を吐きたくなる。


 ……まずい……回復しながらとはいえ、MP大分減ったぞ?




「ピカ、大丈夫?」


「厳しい」


 咄嗟に結界を張ったようだが、それも難なく割る。……つまり、上位魔人族。根拠はサクラ神社でのイカ魔人ことクラーケン。スキュラでは結界を潰せなかったからな。


「悪い、ビジュペ。力を貸して」


 弾丸を得体の知れないソレに飛ばすものの、全部避けていて当たらない。


「ルーチェ」


 ルーチェも返事をする前に光の矢を飛ばすが避けなくともダメージを受けた様子が無い。


 ……光熱でも無理……最悪はサイコブラスト……正直、MP残量的に良い選択とは思えない。


 ……〈テレポート〉。


 背後に回り込み大剣で殴ってみたが……効いていない。そのまま蹴り飛ばされた。


「ングッ!!」


 ドンッと壁に叩きつけられ、肺の中の空気を強制排出される。


 カツッ。


 足元に転がるリエストスが視界に入り、何も考えずに問答無用で装備する。


[攻撃してください]


 見た目はデカいこのガントレット。手を入れると中だけがキュッと締まりフィットする。もちろん、指先どころか手首くらいまでしか俺の腕は入ってないだろうけど……。


 地面を殴ってソレに急加速で突っ込み、ソレの頭部を鷲掴みにする。


「炎神・プロミネンス・グラスプ!!」


「……そんな攻撃き……きか……んなっ……!!!」


 幸いにも俺を舐めてくれていたおかげで、ソレは一瞬で爆散した。




[ユニット名:サクリウス=サイファリオの全ての情報を獲得しました。これよりリエストスの最適化を開始いたします]


 恒例のメッセージが脳内で流れた後、リエストスは溶けるように消えていく。


 ……うっ、ヤバイ……HPもMPもギリギリ……一撃で瀕死って、リエストス無かったら死んでたか?


 お陰様で何とか自力でフラフラしながらもサキマイールの元へ移動する。


「メディス」


 治療で忙しいユイディアを気遣って、自分のHPはメディスに治して貰う。


「ありがと、メディス……そこにいるリナイセムの治療も頼む」


「……うん」


 妖精召喚はMP消費するけれど、妖精が使う魔法にMPを消費せずに済むのは助かる。


 あとはサキマイールによるMP回復の恩恵を得るだけ……。


「……これで……とりあえず助けられた命は回復できるかな……」


 残念なのは、ヒューム族はほとんど既に死亡していた事。多分斬首がドワーフと比べて簡単だったからだろう。


「……ケホッ……あのっ……ありがとうございました」


 リナイセムの意識が回復したのを確認して、俺は安心して身動きを諦めた。


「ちょっと、大丈夫?」


 メディスがリナイセムを心配しているのかと思ったら、俺だった。


「全快するまでジッとしていることを勧めます……」


 ……あー、リエストスを使った反動なのか身体が重くて動かない。


 リナイセムに答えた後、メディスに大丈夫と伝えようと思ったら、


「無理! 大好きだから心配は当然するし、無茶しないで!」


 そう言って涙した瞬間、メディスはプルームがプリュメリアに進化した。


「えっ? 進化?!」


 進化した本人が驚いていたが、多分素直に気持ちを表したからと推察した。

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