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ドワーフの里“ベルクミネラーネ”の坑道採掘依頼

 予知夢を見て目覚めた後にミボットからの相談でスライムの進化実験をする決断をしたから手伝って欲しいと言われた。


 最初こそ、長い時間を掛けてレベルクラウンまで育てたスライムと別れる可能性がある行為に抵抗があったようだ。それでも、どういった葛藤があったか知らないし聞く気も無いが進化させるという方向で決断したようだ。


 町の外、人のいない安全な場所まで移動して実験は始められた。


「進化の仕方は簡単。霊石の欠片……極小さい物で良いんだけど……それをレベルクラウンのスライムに同化させる事」


 霊石は魔道具に使えないような屑石で問題ない。ただ、問題はスライムが好んで摂取する類の物ではないらしい。


「じゃあ、まずは1体。これ、霊石の屑石。スライムに進化の意思があれば、自分で欠片を選ぶらしいから」


 そう話しながらミボットに霊石の屑石を全部渡す。一応、各種1つずつである。


「お願い。進化して欲しいの。霊石を選んで受け入れてほしいの」


 ミボットが訴えるとスライムは彼女の手に乗せられた霊石の屑石から1つ選び……進化した。


「あっ……」


「金霊石を選んだんだね。メタルスライムになったみたいだけど……」


 俺達を襲ってこようとはしない。むしろ、何も変わらない……予想通りだった。


「……良かった……」


 ミボットが安堵して地べたに座り込む。


「おめでとう」


「ありがとう! ……じゃあ、残りのスライムも……」


 進化作業を続けようとした矢先、町から見慣れたツインテールが走って来た。


「サクリさーん!」


「どうした、ヒミカン?」


「それ、嫌! ヒミちゃんって呼んでよ!」


 ……恥ずかしいんだけどなぁ。


「それで?」


「あのね、『邪竜討伐軍』だっけ? その人達、クリスタークへ向けて出発したって!」


「はやっ! ありがとう」


 思った以上に早い。やっぱり船を作っていた時間分だけ先行しちゃうよな。これで王都マサダシュタールや港湾都市プエルトリトスへも行けるようになったけれど……それこそ今は観光くらいしか目的がないような?


「そうだ! えーっと、ミボットさんを訪ねて【細工師】のチットリーゼさんが来たよ?」


 それを聞いて、俺達は進化を一度中断させて船へと戻った。




 船に戻るとミボットを見て寄って来る人物が1人。


 ……でかい……。


 多分、身長は170センチくらい。綺麗な顔に深い灰色の瞳。肩で切り揃えられたサラサラなミディアムボブの白い髪。何より目を惹くのが胸にバスケットボール2つ入っているかのような大きい胸。……これ、男女問わず視線を奪われるのではないだろうか?


「ミボリン! チームに入ったのね?」


 ……はい? こ、声が……可愛い。外見は綺麗なお姉さんなのに、発した声は幼女で違和感がガンガン仕事をしていた。


「うん、そうなの。それで、どうしたの?」


「……ここ、凄いですね! 船の上にお店があるなんて、初めて見ました」


「だよね! あたしも気に入ってる」


 ……ミボットも気に入ってくれているのか。


「えーっと……2人になれる?」


「サクリさんも良い? あたし達のリーダーなの」


「わかった」


「……じゃあ、どうします?」


「聞かれたくない話なら……」


 俺が案内したのは空き店舗の2階。


「ここで良い?」


「ありがとうございます。依頼ですが、金剛鉱を採掘してほしいんです」


「あ~。ということは、ドワーフの坑道?」


 ミボットが理解した上で確認すると、チットリーゼは頷いた。


 ……金剛鉱……つまるところダイヤモンド。イヴァルスフィアにおいてのダイヤモンドはスキル無しでは当然カットするくらいしか加工できないが、スキルがあれば鉄のように加工ができる素材である。


「どういう事?」


「金剛鉱石は基本採れないんですよ。国内で唯一採れるのがドワーフの坑道なんです。ドワーフの坑道にはアンデッドが出るので冒険者に頼むのがセオリー。アンデッド相手ならスライムで倒せるので……」


 ……そういう事か。


「ドワーフに依頼しても良いんですが、ドワーフだと金剛鉱を見つけられない事もあって。でも、ミボリンなら絶対発見するので」


「そうなの?」


 チットリーゼの言った事に驚いて思わずミボットの方を見る。


「あたしのスライムは鉱石探知できますね」


 ……それ、標準スキルじゃないよな? 独自で憶えさせたってことか?


「ただ、カッパー級くらいの報酬しか用意できなくて……だからミボリンに……」


「なるほど……」


 ミボットに意思の確認をすると、彼女は頷く。


「わかった。じゃあ、カッパー級という事でミボットを含めて6人で採掘に行く感じで良い?」


「はい、お願いします」


 ドワーフの里……ベルクミネラーネをちゃんと見られるチャンスかもしれない。メンバー4人、誰を連れて行くべきか……多分、みんな希望するだろうなぁ……。




「……何か済まん」


「大丈夫ですよ」


 翌日。ベルクミネラーネへ出発する事になったのだが、結局ほぼ全員で向かう事になってしまった。とは言え、店は休みにしたとしても留守番は必要。そこでユカルナ達オートマタに留守番を頼んで今に至るといった感じでチットリーゼに対し大変恐縮していた。


 ……そりゃ、見たいよな……異種族であるドワーフの里。


 この前は一瞬で通り過ぎたベルクミネラーネ。そこまでは馬で2時間。今回は大人数なので馬車3台で3時間かけて移動。……ドワーフ達、驚かなければ良いけど。


 山を刳り貫かれたトンネル。重そうな鉄格子の門。その前にドワーフの男女が4人。そこにチットリーゼが近付く。


「ラリホー」


「ラリホー」


 一瞬何かと思ったが、ドワーフ語の挨拶だと思い出す。この前会ったドワーフの娘はヒューム語話していたけれど、考えてみればそっちが変なんだよな。


「わたしは【彫金師】のチットリーゼ。他はわたしが雇った冒険者。これが許可証」


 ヒューム語でチットリーゼは許可証を見せると、直ぐに了承される。


「ようこそ、ベルクミネラーネへ。お仕事お疲れ様だね!」


 ドワーフ達が笑顔で中に入れてくれる様子を見て、問題ないのかと少し安心する。


 洞窟内は何かで補強されているようで、綺麗に整えられていた。光源も魔法の光が煌々と中を照らしていて、暗視能力のない種族でも不自由のない生活ができそうだった。


「ラリホー」


「ラリホー」


 ドワーフ達は気さくですれ違うだけで挨拶をしてくれる。里内を見るとドワーフ以外の人種もチラホラ見える。それでも入るのに許可証が必要なのは無目的な人達は歓迎していないって意味なのだろう。


「ねぇ、大勢で見て回るのも混雑の要因になると思うから一時解散しておかない?」


「そうね。里から勝手にでない範囲で自由行動とします! ただ、ミボットさんとリリア、ユイさんとサキさんは一緒に行動してね」


 ユミウルカの提案にクレアカリンが同意し、みんなに指示を出す。


 クレアカリンが残るように指示したメンバーは、今回坑道に護衛として行くメンバーだ。彼女の心積もりでは、多分坑道へ出発する際にすぐ集合できる保証がないからという理由で同行を指示したのだろう。

 里内を見て回っていたらドワーフの男性が近付いてきた。


「ラリホー。チットさん、族長呼んでいる。皆さんも是非」


 チットリーゼは了承して、俺達は一緒にドワーフの族長の屋敷へと案内された。




 ドワーフの屋敷は完結に言うと金属の箱だった。とても冷えるのではないかと思うが微妙に温かい。多分壁の中に熱源があるのかもしれない。


「ラリホー。急な呼び立てに応じて貰い申し訳ない」


「どうしました?」


 少々緊張した面持ちのチットリーゼは話を促す。


「実は、チットリーゼさんではなく、貴女が連れている冒険者の方々にお願いがあるのです」


「俺達にですか?」


 彼は頷くと、背後を振り返る。すると、黙って座っていた女性……いや少女か? が、立ち上がって俺達に頭を下げて笑顔を向けた。


「ラリホー。わたしは族長の娘で、カナリアと申します」


 身長は140センチくらいだろうか? ドワーフ女性平均身長が140センチと言われているので、概ねそれくらい。桜色の瞳に背丈より長い金髪が特徴の少女だった。


「ヒューム族の皆様はご存知ないかもしれませんが、我々は山の地下に巨大な坑道を有しています。山から得た鉱石という資源を他の種族の方々に販売する事で生活しているのですが、何故か地下坑道にはアンデットが出現します。ドワーフの坑夫であれば自ら撃退できるのですが、他種族の利用も増えまして。……それが原因とは言い切れませんが……山の地下に得体の知れない生物の巣を掘り当ててしまったのです。数が軍団と呼べるほどに多い上に、驚く程強く、ドワーフ達も逃げ帰って来る程です。……その謎生物の駆除を魔物退治のプロである冒険者の皆様で引き受けて頂けないでしょうか?」


 ……これは正規の依頼だよな。チラッとチットリーゼを見る。先に依頼を受けたのは彼女だから、判断を任せようと思っていた。


「大体の問題は自分達で回復するドワーフの族長様からの直々の依頼。多分、わたしの依頼にも影響が出てしまいます。なので、わたしの依頼を取り下げるつもりは無いですけど、その謎生物駆除をするかの判断はサクリさん達に任せますよ」


 ……ふむ。今度はリリアンナを見る。


「あのっ、正式な冒険者への依頼と判断して宜しいのでしょうか? わたし達はシルバー級冒険者。1人あたり100万ナンスの報酬になりますよ? 総額だと最低3500万ナンスになりますが……?」


「構いません。里が壊滅するかもしれないという危機と比べれば安いものです。ただし、成功報酬のみとさせて頂きます。念のため、案内兼見届けという形で妹を付けます」


 こうして、急遽総勢で挑む本格的な依頼を受けることになったが、謎生物とは何だろう?




 カナリアと名乗ったドワーフに付いて行く。異常に長い髪は引き摺って歩くのかと思ったが、彼女は鞄を背負い、その中に髪を丁寧に入れていく。……まぁ、そうだよな。


 ちなみに男性は長い髭を引き摺らないように屋外では首に巻いている。


 カナリアは屋敷を出て、すぐ横にある穴を塞いで扉を付けただけのような場所へ来ると、その扉をノックして返事が聞こえてくる前に勝手に開けた。


「ユミリア、仕事よ」


「カナリア……わかったわ」


 ユミリアは俺と目があって、彼女は俺に気付いたが視線を逸らす。何か意図があると感じて、正解かどうか判らないが、とりあえず何も気づかないフリをした。


「仕事は地下59階層坑道へ案内する事。すれ違う坑夫達に里へ戻るように伝える事」


 ユミリアは頷くと身支度を始める。


「それでは皆様、宜しくお願いします。どうぞご無事で……」


 そう言って先に屋敷へと戻っていく。……判った事は2つ。1つは〈山の加護〉のあるドワーフが勝てないと判断する程の強い謎生物が相手である事。もう1つがユミリアとカナリアは姉妹であり、仲がとても悪く、ユミリアの立場はとても弱いということ。


「驚きました。サクリさん達がここに来ているとは思いもしませんでした」


「俺も驚いたよ。ユミリアさんが族長の娘だったなんて」


「ただ、血縁があるだけですよ」


 そう答える彼女の声には寂しさが表れていた。


「すぐ出発できますか?」


「いや、里に来てはいるけど観光している連中を呼び集めないとだな」


「じゃあ、支度を終えたら来てください。同行したい所ですがご迷惑が掛かるので……」


 彼女の言葉の意味が解らなかったが、とりあえず手分けしてノーマル職以外を呼び集めた。




 ほぼ全員……何故か生産職のメンバーまで集まってしまった。例外は未成年組だけ留守番。


「それじゃあ、出発しましょう。多分、わたしに行くように言って来たということは、猶予がない程に危険な状況ということなので」


「……うん?」


 いや、危険な状況なのは想像できたけど、それとユミリアの何の関係があるのだろうか?


 ユミリアは頭部以外フルプレートアーマー姿。頭は身長よりもかなり長い灰色の髪を大きな団子状に纏めている。前回船に来た時と同じ髪型だ。


「色々聞きたい事あると思いますが、坑道へ向かう途中で話しましょう」


 そう言って巨大なツルハシを担いで先を歩き始める。その瞬間、賑やかだったベルクミネラーネの人達が静まって逃げるように離れていく。


 それも気になったが、俺はユミリアの後ろ姿を見て、腰が細い事にギャップを感じていた。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿3日目+本日中にあと3回投稿します!

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