田舎育ちの純朴少女【風水士】リナイセム=シルヴァレール
「落ち着いて。さぁ、あなたが賜った新たな天職は?」
「はい、【風水士】です。わたしは村の自警団で働きたいと思いますが、叶わなければ冒険者になりたいと考えています」
今日の予知夢はリナイセムのようだ。
リナイセム=シルヴァレール。身長152センチで童顔巨乳のロリ声美少女。ツーサイドアップの尻に届く灰色の髪、深い灰色の大きな瞳。公式に出てくるメインキャラクターの1人で主に男性人気のあるユニットなのだが、ユニットの強さ的な意味ではなく、二次創作的な人気である。
実際、俺も推しの1人ではあるのだが……それは『竜騎幻想』のユニットとしての話。予知夢に出てきたという事は仲間に加わるのだと思うが、個人的には複雑な気分だった。
……彼女こそ、遠くから幸せな事を確認できるだけで良い推しナンバー1なのだから。できれば、現実とゲームは違う人格のユニットであってほしい。
視界が暗転して彼女の家の中に移動していた。
「それじゃあ、お父さん、お母さん。行くね」
「寂しくなるわね」
「……仕方ないさ。仕事をさせて貰えないなら……」
そう、彼女は【風水士】として村の自警団に入った。しかし、自警団の女性陣には無視をされ、男性陣は誰が彼女とペアになって仕事をするか争っていた。
そんな事が彼女の入団から1週間続き……団長から辞めて欲しいと言われてしまった。
「今度こそ、人の役に立てるような小さな英雄になってくる!」
彼女はそれだけ言って笑顔で玄関へ向かう。
「いってらっしゃい」
「無茶はしないように」
「いってきます!」
彼女はそう言うとフードを目深に被り、そっと扉を開ける。そのまま知り合いに遭わないように祈りながら村の外へ向かう。
「一番守りたかったのは、お父さんとお母さんなのにな……」
そう小さくぼやきながら村を出た。
新しい場所での生活に希望を膨らませていたが、彼女の普通は何処でも得られなかった。
視界が暗転して、次のシーンはクエスト内の過去回想イベントのようだ。
「お父さんは村で唯一の美容師。お母さんはシナンス教の教会の治癒師。けしてお金持ちでは無かったけれど、普通の家に生まれ、普通に育った」
……初見こそ「そーなんだ」的な感じで眺めていたが、今では「何処がやねん!」ってツッコミを入れるべき台詞だ。
普通というのは親や周りの環境に与えられるモノだと理解した瞬間でもあったなぁ。
「パパぁ、髪の毛やってー」
「おいで」
幼い頃はパパっ子だったリナイセムは父親にベッタリ。元々甘えん坊なのもあったかもしれないが、母親が教会にいるのでお勤めが終わるまで家に居ない事も大きいのだと思う。でも、それは父親が自分の家で働いているのだから当然の結果であり、母親だってなるべく家に居るように努力していた……と思う。描写ないけれど、そんなスタッフの発言があったと思う。……もしかしたら二次創作の内容と混ざっているかもしれない。
リナイセムが大きくなって7歳になると1人で教会へ向かうようになった。
「いらっしゃい。リナちゃん、頑張ったご褒美にお菓子食べようか?」
「わーい♪」
彼女は母親だけでなく、教会に勤めている人達からも人気で、礼儀や勉強を学んだ報酬としてお菓子を貰い、それを持って近くの林に行って運動したり、身体を鍛えたりしていた。
「リナちゃん、遊ぼう!」
「うん!」
村外れの林は魔獣どころか野獣も居ない安全な場所で子供達の遊び場になっている。安全と言っても襲撃されないだけなので怪我はしないように子供達はここで危険な事を学んでいた。
「ただいま~!」
「「おかえりなさい」」
暗くなるまで外で遊び、帰って来ると両親が優しく迎えてくれる。この世界の戦うユニット達の中では屈指な普通の家庭で育っていた。
更に月日が過ぎてリナイセムも10歳になった。
「お父さん、この服どう? 変?」
「いや、可愛いよ」
そう言いながら、父親は彼女の髪を直し、服選びのアドバイスもする。この年齢になると、内面は母親そっくりになり、外見は父親のアドバイスを参考にするようになっていた。幼い頃は男の子のように動きやすさを重視し、朝整えて貰った髪もぐちゃぐちゃになる程遊んでいた彼女も今は行儀正しく優しい、正義感の強い少女へと成長していた。
……しかし、それが彼女の悲劇の始まりになるとは家族の誰も思っていなかった。
視界が暗転して別のクエストのイベントアニメーションが始まった。
「はい、お爺さん。依頼の食料品とお釣りです。確認して下さい」
「あ~、ありがとうね。……うん、大丈夫。全部あったよ。また頼むよ」
「はーい!」
アイアン級冒険者になった彼女は仲間を集う事もどこかのチームに入る事もなくソロ活動をしている。そして、リナイセム自身こういった活動が向いていると自己分析していた。
リナイセムはアイアン級でも仕事に困る事はなく、小銭を稼いでいた。……ただ、ソロ活動で有名になってもチームに誘われないわけではなかった。
「リナイセム、俺達と一緒に活動しないか? チームに入って欲しい」
「ごめんなさい」
何度誘われても断る。誘ってきた男もこれで3回目だったかもしれない。これまで一度もチームに入った事は無い。それは自分を誘う連中から邪な感情を感じているから。
「……食事はゆっくりしたい……」
彼女は意地で冒険者の店で食事をしている。それは冒険者であるというプライドから。自分が原因でトラブルが発生した場合、対応できるのは冒険者の店くらいしかないとも考えていた。
「ご馳走様!」
今は王都マサダシュタールで活動している彼女だが、午後からの仕事のために予約されていた依頼主の元へ向かおうとしていた。
「君、ちょっと待って」
「はい?」
「……名前は?」
「わたしは冒険者のリナイセム=シルヴァレール。貴方は?」
「僕はレイアール国第一王子のマモルフ=T=グレイハチェット。今夜は僕のために空けてほしい。ダメだろうか?」
「……申し訳ございません、王子様。大変光栄なお誘いではありますが、わたしは冒険者。国民のために尽くしたいと考えています」
「……そうか……また誘わせて貰うよ。ちなみに階級は?」
「アイアンです」
……その日の夜にはマサダシュタールを出る。王子が何の目的なのかは気づいていたから。
リナイセム関連のクエストは全て彼女のモテエピソードだ。第一王子にアプローチされたのを皮切りに第二王子にも言い寄られる。その結果、第一王子の婚約者には敵視され、第二王子の婚約者は婚約破棄される。
王子達だけでなく、第一王子の婚約者が用意した富豪の独身男性とかも彼女に言い寄り、断ってもしつこく付き纏い、男尊女卑社会、魔法使い系を差別する国民性から速攻で逃げ続けるというコミカルというかラブコメと呼ぶには滑稽なストーリーになっている。
再び視界が暗転し、見えた景色に俺は驚いた。……このパターンは初めてではないだろうか?
「……なんで……」
リナイセムはマサダシュタールに来ていた。視界には人の気配が無い。暴れている魔獣やアンデッドの類も居ない。生活音が全く聞こえない。
ゆっくりとリナイセムは街の中を歩いて行く。建物は崩れ、壁や道には黒ずんだ血の跡が残っている。埋葬されたからなのか、アンデッドになったからなのか判らないが、死骸も全く無かった。
「……誰か……」
彼女はハルトエルツ城へ向けて走っていく。
……これは、リナイセムのバッドエンドのエンディングだ。
城にも誰もいない。国王、王妃、王子達、王女達。騎士団の人達もいない。王都は完全に廃墟と化していた。
……そして、エンドロールが流れ始める。
ちなみに、ノーマルエンドは第二王子に求婚されるが、彼女は断固拒否。彼女は自分を守るために国外に逃げるという話。
問題なのはグッドエンド。それが何故か第一王子と結ばれて王妃として幸せになりましたという話になっている。だけど、俺はそれが彼女にとって幸せなのかと思ってしまい、納得できなかったのは憶えていた。
視界が暗転して、別の景色が見えたことで目が覚めていない事に驚きつつ、エンディングの先がある事に動揺していた。
「こんにちは」
【剣の乙女】がリナイセムに話しかけてきた。それを見て、時間が少し戻っているのかと理解した。その証拠に視界に複数の選択肢が現れる。
そしてカーソルが『仲間に誘う』を選ぶ。
「ごめんなさい。わたしは大陸を救うことが国や生まれ故郷を守ることに繋がることは解るのですが、身の程は理解していますので辞退します」
以降、何度話しかけても『仲間に誘う』の選択肢は現れない。
何処の街や町にでも現れる彼女だけど、仲間にする方法は何故かミボットを仲間にする必要があるんだよね。
ミボットが出撃したランダムエンカウントによる戦闘の際、レイアール国内限定で稀にリナイセムがゲスト参戦する。その時にミボットをリナイセムに話しかけさせると仲間に加わるという面倒な手順が必要になる。
彼女を仲間に加えるためには、ミボットを仲間にする必要があって、その分の所持ユニット枠が必要になる。現実と違って『竜騎幻想』では仲間の数には上限があり、ミボットも弱い。しかも【風水士】。正直、彼女を仲間に加える人は少なく放置される事が多いらしい。
仲間にしなくても、仲間にしても報われない。それがリナイセムの運命だと知った時、物語として残酷すぎだろうと悲しくなり……それを思い出した時、目が覚めた。
リナイセムは【風水士】なため、かなり需要は低い。そもそも、ここまでの攻略で既に【風水士】は沢山いるし、【精霊術士】もいる状況で枠を割いてまで【風水士】を入れるメリットがほぼ無い。
強いて言うならばリナイセムの初期武器はショットガン。前世の現実と違ってダメージは低いが遠隔攻撃で筋力の影響を受けないダメージが与えられるので、その分強いという事なのだが、そのために彼女を仲間に入れる手間が報われるかというと疑問だったりする。
俺にとって一番の問題は、ゲームのストーリーだから笑って見ていられた事として、彼女を仲間にするとレイアールの王子達に睨まれて不遇な扱いになるという事。明らかに多くの女難フラグを背負っているようなユニットを仲間に加えると思うと胃が痛い。
ちなみに彼女は大器晩成型で結論として強ユニットになるが、条件が不遇過ぎるんだよな。
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