『邪竜討伐軍』が通った場所はエンカウントが少ない
休憩時間も終わり、未知の地下4階を歩く。……なんて言い方すると大袈裟かもしれない。そもそも、未知のエリアなんて過去に何度もあったし。それを言い出したら町や街の様子なんて全く同じだった事は無い。
恐らくここが最下層で、このエリアに目的の品の目撃証言があったということらしい。なので、ここからは歩き回って敵を排除しつつ探して回ると言う作業になる。
「サクリウスさんのチームって、どういった活動をしているのですか?」
……そう言えば、説明していなかったな。俺が転生者と知っていう理由だけで入ってくれたんだっけ。
「簡単に説明するとナッツリブア大陸を巡る感じかな」
……まだ、上位精霊による依頼の話は早いかな。いずれ一緒に古祠へ行く事になるだろうし。
「船で大陸を巡る旅……素敵ですね!」
「楽しい事もあるけど、大変なことも結構あるよ。それで、2人はどんな活動をしていたの?」
先に話し始めたのはシャワールの方だった。
「わたしは冒険者になって即オーアホージャで1人暮らししながらソロ活動をしようとしたんですけど、直ぐに今の用心棒の仕事を頼まれて、アズミーナさんに半年くらい雇われていました」
「実際にソロで活動は?」
「していないですね」
見る限り強そうで、すぐ仲間に誘われそうなものだけど。
「初めは弱かったんです。わたしの天職【刀術士】は刀でないとスキルが発動しないものばかり。刀を手に入れられるまでシャムシールを使っていたのですが、やっぱりスキルは発動せず……自己流の剣術で対応していたのですが、スキル無しでは危険で……」
「そりゃそうだ」
スキルが使えないというのは【学鍛童】と一緒。厳密には全てが使えないわけではないだろうから違うけど、天職とは系統の違う職業に就いたようなもの。
「それで、途方に暮れていた時にアズミーナさんに刀作ろうかって持ち掛けられて」
「何故、アズミーナさんはシャワールさんが刀を必要としている事を知っているの?」
「実は、誕生日が近くて同じ日に『天職進化の儀』をして貰ったんです。だから、わたしの天職を知っていたのだと思います」
「……なるほど」
出会って刀を作って貰ったタイミングで護衛依頼……確かに他の仕事は出来ないか。
その後、ミボットの話を聞いたけど、幸いにも『竜騎幻想』と内容が変わらなかった。ただ、まだチームから捨てられて2ヶ月くらいしか経過していないと聞いて驚きはしたが。
あまり楽しい話題でもないので、早々に打ち切らせて貰った。完全に立ち直ったとは限らないし、仮に本人が「平気」と言っても本心か虚勢かも判断できない。
「ねぇ、ミボットさん。考えたんだけど、進化したスライムは使役できないって話だったよね?」
「ですね。基本的に魔獣も友好的か中立的なモノであれば相棒になってくれるかもなんですが、敵対的な魔獣に関してはチャンスがありません」
進化したスライムが変更される特徴の1つとして、人に対し中立から敵対的になる。つまり、問答無用で常時攻撃してくる。ただ、臆病な事は変わらないので、仲間にしようと思うと逃げてしまう。
「それなんだけど、既に使役済みでレベルクラウンのスライムを進化させれば、進化後のスライムも使役状態になっているんじゃないかな?」
根拠はプルーム。俺は契約後に進化して本人の人格が変わらないことを確認している。つまり、使役して懐いているスライムは進化後も懐いている可能性が高いのではないだろうか?
「試してみないと判りませんが……それ以前に進化する条件が判らないですよ。あたしのスライム、既にレベルクラウンの子が数匹いるけど、進化する様子がないですから」
「進化する手段を知っているよ」
「本当ですか?」
俺がそれを知っているのは偶然。何故なら『竜騎幻想』には無い仕様だから。というか正式に可能であれば、ミボットの評価がこんなに低いわけがない。つまるところ、ゲームと現実の差というヤツだ。
「うん。ただ、話した通り進化した後でも使役されている状態だと思うのは推論であって確証があるわけじゃない。でも、もし可能であれば状況は随分変わるかもね」
俺が知ったキッカケというのが、イーベルロマで剣術の鍛錬をしていた頃に偶然スライムが進化する様子を見る機会があった。それを倒して練習相手に丁度良いと思って、色々与えてみたものの法則があることに気づいた。
「それはどうやって……」
「それを言っても良いんだけど、ここだと危ないから。この説明は終わった後にでも」
スライムが強くなる。その可能性を聞いてしまったら試してみたくなるのが人情だろう。だが、ここで試されても困る。敵対的だった場合は余計な手間が増えてしまう。
「もしかして、食べるモノに影響がありますか?」
スライムは環境に適応するために、食事が進化の影響するのではないかと。でも、それは残念ながら違った。
「食事が影響を及ぼすなら、ミボットさんのスライムも何かしらに進化していると思うよ?」
「……ですよね」
そんな雑談をしていたら、俺は自分の目を疑った。
……地下4階があった時点で驚いたのに、更に下り階段だと?
「何、ここ?」
ミボットの第一声。発言から、この場所の存在を知らなかったようだ。俺も当然ながら知らない。……でも。
「地下5階? いや、ただの部屋?」
そう、今までと違い少し広い部屋。天井はとても高く全体が石のブロックで整えられていた。太い石柱が並び天井を支え、神殿のように見えなくもないが、かなり古いものなのか、ブロックが部分的に割れていたり、抜けていたりと損傷が見て取れた。
「……多分、ここが噂にあった最下層ね……みんな、お願い」
ミボットの一言で服の中から現れるスライム達が壁へと向けて一斉に散っていく。
「このエリアには魔獣やゴブリンはいないみたいだね」
警戒も何も、部屋全体が見渡せる。多少死角はあるけれど、何人かで手分けすれば死角がない状態にできる。
「ねぇ、多分探しているのって、これ?」
ユキサーラが階段の裏で発見した。確認するべくシャワールとミボットも彼女の元へと向かう。
「……うん、これだと思います」
「ですね。夜影鉱……こんなにいっぱい……」
パッと見て黒曜石のように見えるが、黒曜石よりは青っぽく、金色の粒が混ざっているように見える。
「珍しい石?」
「そうですね。お金を出しても買えない鉱石です」
俺の問いにミボットが淡々と答える。
「この鉱石、面倒な特徴があって、不純物を含む鉱石の状態だと脆くてすぐ砕けるのに断面は酸化して屑鉱石になってしまう。なので、傷つけずに丁寧に扱う必要があるんですよ」
「そういう事ならスライムだったら土だけ排除して傷つけずに鉱石を剥がせるってわけか」
とてもツルハシ等で採掘なんてできない。彼女がスライムの動きを注視していた理由が良くわかった。
「他にも貴重な鉱石を見つけたので採取しておきますね」
「ありがとうございます」
夜影鉱以外はこちらで回収して良い契約になっている。ミボットの申し出は俺達への報酬として回収するという優しさだった。……本来なら自分達で発見し採掘するべきだから。
採掘をほぼ終えた俺達。……何故、こんなに貴重な鉱石の山が放置されていたのかと考えたが、『邪竜討伐軍』がこの部屋の主を倒したのではないかと考えた。だから、手付かずだったのだろう。……鉱石に詳しい人で、採掘技術がある人、そしてここまで辿り着くことができる人という狭い条件に初めてミボットが適応したのだろう。
「ねぇ、これ……」
鉱石に見えるただの石を抜いた先に空間が広がっているのを再びユキサーラが発見した。
「ん~、行ってくるか。穴を広げるのも良いかもしれないけど……変なモンが出て来て逃げる際に道を作りたくないから」
そう言って、俺は〈テレポート〉で穴の向こう側へと移動する。
「ちょっと見てくる」
出た場所は廊下のようで、道沿いに進む。その先にあったのは24畳程度の部屋。そして見覚えのある空間……ただ、異質なのは10体いる石像。その中央には……どう見てもアレ。
俺が部屋に入った瞬間、その石像が動き出した。
「……多分、ガーゴイルだな」
根拠は前世のゲーム知識。確証は無い。
でも、蝙蝠の翼を持ったゴブリンの姿はまさにガーゴイルではないだろうか?
「ビジュペ、頼んで良い?」
「了解しました……ターゲット確認、攻撃を開始します」
ズダダダダダダダ!!!!
金属弾がまるでマシンガンを撃ちまくっているように放出され、目標を穴だらけにする。
「排除完了です。敵影ありません」
「ありがとう、ビジュペ。それにしても凄い火力だな」
「それは……相手が魔法生物だったので相性が良かったからです。金属性の魔法は魔法解除の追加効果が発生するのでゴーレム類は抵抗できなければ即死になるかと」
……声が可愛いのにリアクションが軍隊の兵士なんだよな……。
「あとは、コレだよな……」
コレは、どう見ても神器だった。
「どうかされました?」
「いや、弾の痕がさ」
……無い。あれだけ激しく乱射していて、当たった弾は別として、壁に当たっただろう弾の痕や、撃ち出された弾本体も見当たらない。
「当然無いですよ、魔法ですから」
金属性の魔法というのがよく解らないがそういうモノなのだろう。
問題の神器に触れる前にガーゴイルの魔石を回収する。ゴーレムには魔石がないのにガーゴイルにはあるのかと驚きつつ、部屋でやるべき最後の作業が残る。
「……仕方ない、触るか」
見た目は大きな赤い一対のガントレットだった。……どう考えてもサイズ感がバグってる。元の所有者は巨人族だったのではないのだろうか?
グラスビットの胴体のようなサイズのガントレットに触れる。
[種族確認……適正確認……思考同期成功。これにより所有権が正式にユニット名『サクリウス=サイファリオ』へ移行されました。適応を開始します。個体名を変更して下さい]
最近、触る前からこれが神器だって判るようになったんだよな。
名前は……赤いガントレット……赤だから火属性……
「名前はリエストス」
[名称変更を確認。今、この時より名称を“灼炎の赤掌”リエストスに変更されます。よろしいですか?]
「はい」
……こうして、また1つ神器が増えてしまった。既に覚悟はしているけどね。
廊下を逆に辿り、別の部屋にて『金竜晶』を拾う。
「おかえりなさい……サクリさん、拾ってしまったのですね」
ユイディアが戻って来た俺を見て流石にウンザリした表情を見せる。
「ほら、無視できないし……」
「わあ、それ何ですか?」
シャワールが物珍しさからガントレットに触れる。
好奇心丸出しの3人以外、嫌なモノを見てしまったと言わんばかりの表情をしていた。
「帰ろうか? アキラテナさんも限界だろうし」
……こうやって神器を拾っては女の子になっていくけど、何時武器として使えるようになるのだろうか?
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