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採掘専門冒険者【魔獣操士】ミボット=アルスーラ

「落ち着いて。さぁ、あなたが賜った新たな天職は?」


「【獣操士】です。……冒険者になろうと思います」


 ……見て直ぐに判る。会ったばかりだしな。


 尻に届く淡い青色の髪に160センチくらいの高めの身長。桜色の瞳をした整った顔立ちの美少女。彼女の名はミボット=アルスーラ。成人したばかりだからこそ【獣操士】となっているが、【剣の乙女】が彼女を仲間にする時は既に【魔獣操士】になっている。


 視界が暗転して別のシーンに変わるが、内容はオープニングの続きだった。


「おかえりなさい、ミボット」


「ただいま」


「どうでしたか?」


「【獣操士】を賜りました。今までお世話になりました」


 場所は孤児院。何故判るかというと、例によって使いまわしの教会画像だから。


 ナッツリブア大陸では、未成年は養われる義務がある。……そう、権利ではない。それは子供が親の保護対象である事は当たり前として、国の資源でもあるという考え方からである。


 だが、それはあくまで子供が対象である。親を亡くして孤児でも国が面倒を見てくれる資源である子供達は成人すると独立を強制される。


 子供は総じて国の資源ではあるのだが、大人は国にとって有用かどうかは努力次第である。スキルがない【学鍛童】という天職の子供達は1人で生きていく事は基本的には不可能と考えられているのに対し、成人した大人は天職を賜った時点でスキルとそれに纏わる知識を得ている事で自分の力で生きていく事が可能。よって、孤児院は成人した瞬間出なければならない。


「【獣操士】ですか。仕事は何をする予定ですか?」


「冒険者です」


「また危険な道を……無謀な事はせずに、たまには顔を出して下さいね」


 成人したばかりのミボットは良く言えば明るく元気な性格だった。悪戯好きで外で走り回るのが大好きな子供っぽい性格で、見た目が清楚な美少女だったためギャップが魅力という印象だったんだよな。


 視界が暗転し、場面が変わる。……そういえば、ミボットのオープニングは場面転換が多かったっけ。


 今度は村外れの森の中。ミボットが1人歩いているとガサガサっと木が揺れたかと思ったら大きな茶色の熊が現れる。


「長い事待たせたね」


「ガウッ!」


 そう言って彼女に熊が頬擦りして、ミボットはその勢いに転ぶ。


「あはは、力強いよ」


「ガウ?」


 彼女は上半身を起こして熊を見る。


「あたしね、【獣操士】になったんだ。相棒になってくれる?」


「ガウ」


 こうして、ミボットの最初の相棒は熊になった。見ての通り、熊とは以前より仲が良く、その時点で【獣操士】の素養が既にあったのだと思う。


 再び視界が暗転し、今度は冒険者の店の中での話。クエストボードで依頼を吟味中。


「やぁ、1人? わたし達、冒険者でチーム組んでいるんだけど仲間を募集しているの」


 声を掛けられたミボットは彼女達の冒険者チームに入る。それが運命の分岐点だった。




 視界が暗転し、もうオープニングは終わったのだと理解する。関連クエストで必ずある過去イベントムービーが始まる。


「わたしの両親は、ゴブリン達によって殺された」


 ゲーム画面と違い、アニメーションだから割とショッキングな内容となっていた。レイアール王国内の山麓の手前にある小さな村。今は無い彼女の故郷。


「何があったのか今となっては原因が判らないけど、判っている事は村がゴブリン達によって蹂躙されたという事実」


 ゲームのシナリオだから違和感を持たなかったけれど、今思うと不自然なんだよな。ゴブリンというのは臆病な妖魔である。それこそ、家畜を襲うとか作物を盗むとかがメインであり、山に入らなければ人目を基本的に避ける。……例外があるとすれば、比較的山に近い場所で何も武装をしておらず1人で移動していたら、ゴブリンの集団に襲われる可能性はある。……ただ、地元民であれば常識であって、そんな危険行為を犯す者はいない。


 そんなゴブリンが村を襲撃した。何かあったのかもしれない。……いや、これはゲームとして作られたフィクションだから、そこまで考えられていないかもしれないが。


「……いい? 何があっても人の声が聞こえるまで出て来てはダメ。人の声の場合、内容を聞いて悪い人だと気付いた時には出ないようにね」


 そう言って、女性が彼女を地下の収納庫に閉じ込める。


「ママ?」


「……愛しているわ、ミボット」


 視界が暗転する。場所は変わって先程の孤児院。アニメーションでは無くて、ゲーム画面。


「それでは宜しくお願いします」


「はい、お預かりします」


 国の兵士らしき人物が幼いミボットを孤児院に連れてきたところのようだ。孤児院の方はミボットを前に屈んで目線を合わせる。


「こんにちは。お名前は言えるかな?」


「ミボット=アルスーラ」


「年齢は?」


「5歳」


「うん、賢いのね。偉いわ……私はここでみんなのママ代わりをしているオリエンコ=ラミアスっていうの。仲良くしましょうね」


 ニコッと微笑むと、ミボットも少し微笑み安堵を見せた。


 この場所を特定できない孤児院も山の近くにあるようで、レイアール王国の村のテンプレなのかもしれない。……画像使いまわしは基本だからな。


「さぁ、中に入りましょう。今日から一緒に暮らす家族を紹介するわ」


「うん」


 ここで視界が暗転する。実際はもう少し長かった気もするんだけど、必要なところ以外は見せない予知夢の方針のようだ。


 今度はどうやら近所の森の中のようだ。前のシーンはカットされているようで一瞬なんのイベントだったか思い出せなかったが、ミボットが森の中という事で思い出せた。


 村に馴染んだミボット。孤児院内でも上手くやっていたのだが、孤児院内で1人になるのは不可能に近いと理解した彼女は1人で森に入っていた。


 一般的には森は奥へ行かなければ安全。そういった知識は幼い頃から本当の両親に教えられていて気を付けながら歩いていた。


「……えっ?!」


 ミボットが目撃したのは熊だった。何かに襲われて絶命している熊の死骸。これを見た瞬間、彼女は周りを見回す。


 その後、ゆっくりと警戒しながら熊に近づく。その理由は……」


「きゅ~ん」


 その熊の傍にいた子熊。放置したら間違いなく死ぬだろうソレを彼女は放置できなかった。


「グゥゥゥ」


 ミボットが近付くと子熊は威嚇する。それでも、彼女は放置することができず、その子熊を保護した。小さすぎる事を幸いに犬とでも言って誤魔化せると考えていたようだった。




 視界が暗転する。別のクエストのイベントアニメーション。


 場所はレイアール王国の北東、国境の外側の森……通称『シャドウ樹海』。日中はオーク、夜間はアンデッドが溢れる樹海で多分今の俺達ですら危険だと思える場所だ。


「用心して進みましょう。多分、この先にある」


 チームリーダーの女性。職業は【盗賊】のようだ。ミボットに声を掛けた人でパーティを引率するように先頭を歩く。


 メンバーは他に【戦士】の男性、【狩人】の男性、【学者】の男性、【修道士】の女性とミボット。ミボット以外は何度か冒険していて彼女自身は初陣だったはずだ。


 相棒は熊。それと荷運び用の馬。2匹とも【獣操士】になる前から仲が良く、特に馬はかなり鍛えていて軍用馬としても通用する程になっていた。熊もすっかり大人になり、特別鍛えていないものの、基本的に戦闘力が高い。


 ……しかし、入った場所が悪かった。


「つ、強くないか?」


「囲まれなければどうと言うことは無いわ」


 途切れない戦闘を続けながら【狩人】と【学者】が周囲を警戒している中、日没が近付いて来る。


「限界ね……こんなに数が多いなんて……それを倒したら戻りましょう」


 リーダーも夜が危険な事を知っているようで日が落ちきる前に樹海から脱出しようとする。


「行きましょう!」


 倒したオークの魔石を回収する余裕も無く、ダッシュで来た道を戻る。だが、当然絡まれるのだが、可能な限り逃げて樹海の外を目指す。


「ミボット、お願い。その熊で逃げる時間を稼いで」


「……えっ?」


「お願い」


 ……ミボットはリーダーの指示で時間稼ぎをするように指示をする。死んじゃダメだと言い聞かせて。


「ありがとう。さあ、急いで!」


 熊の無事が気になる中、リーダーに引っ張られて樹海の外へ向かう。


 まだ途中ではあるけれど、視界が暗転する。次のシーンはもう町に帰って来ていた。冒険者の店でのイベントアニメーションの内容だ。


「入って貰って間もないのに申し訳ないけれど、ミボット……チームから抜けて欲しいの」


「な、何で?」


「一番大きいのは実力差ね。もちろん、知ってて誘ったのだから悪いのはわたしなのだけど、このままだと貴女の命はもちろん、自分達の命も危うくしてしまう。……本当にごめんなさい」


 ミボットは逃げる過程で熊と馬を失った。【獣操士】としての相棒を全て失っていた。その上でチームをクビになったら何も無くなってしまう。


 ……でも、客観的に考えればリーダーの判断は正しい。


 結局、彼女はチームを抜けた。ただ、ミボット自身に落ち度がないため、充分な和解金が支払われた。……でも、彼女の生きたい気持ちは地に落ちていた。


 翌日、ミボットは単身で森に来ていた。死ぬ覚悟で熊と馬を弔うため。……結論を言えば辿り着く事すら不可能だった。


「……わたし、この後どうしたら……」


 樹海からの帰り。森を出るところでミボットは鞄の中にスライムが入っていた事に気付いた。




 視界が暗転して、次のシーンは俺も良く知るオーアホージャの冒険者の店。そこにミボットは居た。


「こんにちは。ミボットさんですよね? わたしは※※※※。貴女を探していました。是非、仲間になっていただけませんか?」


 【剣の乙女】による勧誘。しかし、ここでは絶対に断られる。


「ごめんなさい。あたしの相棒は見ての通り、スライムなの」


「そ、そうですか……」


 それで会話が終わってしまう。


 仲間になりそうなのに仲間にできないパターンの会話イベントである。


「あの、スライムでも……」


「ご存知だと思いますが、スライムは戦闘において無力です。申し訳ありませんが、貴女達の力になれそうにないんです」


 もう一度話しかけた結果、この会話が永遠に繰り返される。


 別のクエストで見えてくる話ではあるけど、ミボットは現在『採掘専業冒険者』としてソロ活動をしている。


 あの日、鞄に入っていた1匹のスライム。そいつはミボットに懐いていた。【魔獣操士】ではなくとも魔獣を手懐けられる可能性はある。ただ、難易度は高く適性がないと難しいと言われている。ミボットの場合は偶然、自分にはスライムを扱う適性が高いと知ったわけで、気分は複雑だった。何故なら、スライムは最弱の魔獣だから。


 それでも、スライムを使役してできる事を研究した結果、土を掘る、鍵を開ける。罠を無視する、壁や天井を這う等、戦闘以外の使い道を発見していた。


 結果、彼女はソロ活動で採掘業を請け負っていた。もちろん、彼女が行くのは安全な坑道ではなくて危険な魔獣などが居る坑道。スライムの敵探知能力で遭遇する事なく安全に採掘作業をしている。


 視界が暗転し、再び冒険者の店。現れたモブキャラでどのシーンか理解した。


「あの、採掘で有名なミボットさんですよね? わたしを仲間にして頂けませんか?」


 見た目がモブってことは多分、成人したばかりの人だろう。冒険者であれば、冒険者の見た目のキャラが現れるから。


「ごめんなさい。誰も仲間に誘うつもりは無いし、誘われるつもりもないの。他を当たって下さい」


 何度目かのお誘いを断る。


 最初で最後のチーム入り。あの日のショックは今も引き摺っていて、誰かと行動する事には抵抗があった。それでも護衛依頼とかなら頑張るが、仲間に入るのは拒否反応が出てしまう。


「そうですか……」


 モブは残念そうに帰っていく。入れ違いに別のキャラが来る。


「君は採掘専業冒険者のミボットかい? 依頼をしたいんだが……」


「お話、お伺いします」


 こうして、彼女は洞窟『ゴブリンロードの巣穴』に向かい、助けられた事で仲間になる。




 ……目が覚めた。股間で寝ているビジュペを起こさないように大体の時刻を確認する……思ったよりはゆっくり寝ていたようだ。ただ、起きる時間にはまだ早い。


 『竜騎幻想』の仕様では、スライムは最弱の魔獣である。その使役適正が高いからといってミボットの戦力は高くなる事は無い。……使役されたとしてもスライムはスライムである。


 スライムのレベルは上がるのが早い。ただ、レベルクラウンのスライムでも弱い。ただ、それはゲームの仕様のせいだと言っても過言じゃない。ターン制ストラテジー故に1回攻撃して1回防御する。実際の戦闘とは全然違う故に単純なスライムの戦闘力が攻撃力になってしまうため、攻撃力の低いスライムは弱いということになる。


 もちろん、適性が高いのがスライムというだけで、ミボットは他の魔獣を使役できる可能性がある。スライムに比べて可能性は低く、扱い難くなるかもしれないが。


 そういった事情でミボットの使用人気は極めて低い。それでも俺が推しと言い切るのは、単純に可愛いからである。綺麗な容姿、人懐こく甘えん坊な性格、そして可愛い声。それだけで応援したくなるというもの。……ただ、俺でも彼女を強くする事は出来なかった。もちろん、色々試してみてはいたけれどね。


 彼女を戦場に送り出して生還させる方法。それはスライム以外の魔獣を使役する事。ただ、適正であるスライム以外は運である。俺の場合は1度、マグレで魔獣ウイングライオンと魔獣ホーンパンサーを仲間にする事ができたおかげで戦場を生き残ることができた。しかし、一度だけ。極めて戦闘力の高い魔獣を仲間にする事は難しく、結果待機メンバーになってしまう。


 実際、ミボットの使用率は結構低いらしい。彼女が仲間に加わる可能性は高いのだが、直ぐに戦力外になってしまい、知っていて最初から仲間に加えないように動くか加えた後に生贄として利用するか……そんな運用している人が多数のようだ。


 その根拠として、動画配信にミボットのグッドエンドは無い。それだけでなく、ノーマルエンドもない。あるのはバッドエンドのみ。


 バッドエンドは生存しているだけで辿り着くエンド。内容は邪竜王を討伐後に軍が解散となって、孤独に戻った彼女は寂しさを痛感し、意思に反して涙が零れてしまうという。……まぁ、物語の重さ的には思った程は悪くないエンドとなっている。


 ちなみに、俺個人はノーマルエンドもグッドエンドも回収している。ノーマルエンドは関連クエストをやるだけで見る事ができる。




 ……とまぁ、ここまでがあくまでゲーム『竜騎幻想』の話。


 実は、イーベルロマの森で修行している時にスライムに遭遇していた。【学鍛童】にとってスライムは丁度良い相手。倒せない代わりに倒される事も無いし、簡単に逃げ切れる。素晴らしい訓練相手なんだよね。


 そんな、スライム。『竜騎幻想』とは大きく違う点が1つ。……なんとスライム、進化します。ただし、世間一般では進化条件が判っていません。


 判らんのかい! ……ってツッコミが入りそうではあるが、判らないなら判らないで進化済みのスライムを使役すれば良い。要はスライム類であれば良いって話で。上位種のスライムは普通に強い。物理無効、状態異常無効はスライム族固有能力だし、上位種になると種類に応じて有効な攻撃手段や特殊能力を得ている。敵として現れたなら逃げの一手ではあったけど、仲間なら心強いのではないだろうか?


「おはようございます、主人マスター。そろそろお時間です」


「おはよう、サヤーチカ。今、起きる」


 股間からビジュペを摘まみだしつつ……ミボットの強くなる可能性にワクワクしていた。

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尚、5日間連続投稿2日目+本日中にあと3回投稿します!

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翌日、ミボットは単身で森に来ていた。死ぬ覚悟で熊と牛を弔うため。 牛 > 馬
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