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金のプルーム『ビジュペ』とカエディステラの秘密

「話は伺っています。もちろん、自ら頭を下げてお願いするべきなのですが、わたしが城の敷地内から出れば出る程に発覚する確率……つまるところ、出られなくなる可能性が上がります。ですので……」


「事情は理解しました。大丈夫ですよ……多分了承されるとは思いますが、確かにダメになる可能性が無くはない。ですので、俺が聞きに行きます。……そういう事で戻りますね」


 そう言って後ろを向く。そして、思わず動きが止まった。


 ……多分、アレはアレだな。


 背後にあった調度品。飾られた高級品の数々の中に紛れて全長40センチ程の二頭身人形のようなモノがあった。多分プルーム……断言できないのは、胸、腕、足は鎧だと思われるモノを装着していて、背中には飛行機の翼のような透過性の高い灰色の翅が生えていた。髪も瞳も灰色で前世の二頭身フィギュアを思い出す。


 彼女は、俺と目が合うと飛び立ち、俺の視認しつつ室内の高い場所を旋回し、そんな彼女を視線で追っていると、彼女はスポっと俺のローブに付いているフードに入った。


「どうしたの?」


「ん? ……あ~、何でもない」


 どうやら俺の想像は正しかったようで、ソレは彼女達に見えていない。つまり、間違いなくプルームなわけで。


「それでは、お邪魔しました」


 そう告げて頭を軽く下げると、退室しようとした。




「ちょっ、待って!」


「ん?」


「……今から帰るつもり? 馬も無理させているし、今日は泊って行こうよ」


「え? あ~……」


 そうか、ヒミカンヒルデが居るのか。帰るだけなら一瞬なのだが……。いや、一緒に〈リコール〉してしまえば船に一瞬で到着するけど、ユニーク職だとバレてしまう。


「そっか、時間と馬の問題か……解った。じゃあ、宿を探しに……」


「あの、サクリウス様。幸い離宮には部屋が沢山余っております。以前からヒミちゃん達が遊びに来ては泊っていますので、部屋の用意はあります。ですので、是非泊って下さい」


 ……普通、冒険者を城に泊めるというのはありえない話で、戸惑うだけなのだがヒミカンヒルデが既に何度も泊っているなら問題ないのかもしれない。


「本当に宜しいのでしょうか?」


「えぇ、是非お泊り下さい」


 そう答えるとメイドを呼び、俺達の部屋を用意するように指示をする。


「大変恐縮です」


「サクリウス様は他国を回って、この待遇が破格だとご存知なのですね。ですが、どうかお気にならさずに。先程話した通り、わたしが何をしようと離宮内である限り咎められる事はありません。むしろ、こんな夜遅くに帰したら、わたしの印象が悪くなってしまいます」


 ……印象が悪く?


「サクリさん。実は外って魔獣や妖魔、アンデッド以外にも正体不明な脅威に襲われていて危険なの。だから、夜間強行して町に帰るのは危ないの」


「わかった。……お世話になります」


 カエディステラ姫に頭を下げつつも、正体不明の脅威の方が気になっていた。




 メイドさんの案内で、個室へと案内される。その際にもヒミカンヒルデから一緒の部屋で過ごそうと提案されたが丁重にお断りした。


 多分、彼女的には俺が女性を苦手としていて安全だし、1人で部屋にいるのは寂しいからという単純な理由だったかもしれない。俺にしてみれば、相手は未成年なのに成人女性基準で背が高くてスタイルも良く、無防備。そんな女がウロウロしていたら精神衛生上よろしくない。


 そして、何もしなくても俺の女難フラグは成立する。ただでさえ面倒事は増え続けるのだから、回避できるモノは回避したい。


 部屋に入った俺は一息吐こうとした矢先、フードからプルームらしき者が飛び出て、目の前にあるテーブルに降り立つとその場で正座して三つ指付いて頭を下げた。


「……ご無礼しました、御前様。わたくしは金のプルームでビジュペと申します。何なりとお申し付け下さいませ」


 その美しくも丁寧な所作に脳裏を掠めた言葉は「児童虐待」の四文字。


「頭を上げて。正座も無理しなくて良いからね。えっと、金霊王の古祠への案内が目的かな?」


「はい、ただ暫しお時間を頂きたく……時間調整が難航しておりますので」


 頭を上げて丁寧で簡潔に答える。声、幼く可愛らしいのに……凛としておられる。


「なるべく早めに教えて貰えると助かるかな。それと、その装備は脱着可能?」


「はい、外しますか?」


「うん。屋内にいる時は外してくれると助かるかな」


 だって、寝る時絶対股間に入って来るんだろ? ……明らかに痛そうじゃん。




「……サクリウス様。お食事の用意ができました」


 部屋を出ようとすると、ビジュペが立ち上がる。


「お供致します」


 俺の返事を待たずにフードの中に収まる。そのまま部屋を出るとメイドさんが待っていた。


「ご案内致します」


「ありがとうございます」


 メイドさんの後ろを付いて行くが、丁寧な案内の本来の目的は多分、俺が勝手にウロウロしないようにするためなのかもしれない。


 食堂にはカエディステラ姫とヒミカンヒルデが座っていて、2人分の食事が既に用意されていた。空いている席に案内され椅子を引いてくれたので、そこに座る。……姫の食事だけは無い。多分、俺のせいで。


「どうぞ、召し上がって下さい」


「いただきまーす!」


 慣れているのか、ヒミカンヒルデは食べ始めるものの、俺は気が引けてしまう。料理に手を付けられず困っているとそれに気づいたヒミカンヒルデは、


「サクリさん、大丈夫。姫様も食べているから」


 ……まさか、あの鎧の内部に食事が用意されているのか?




 食事中、ビジュペはフードから顔を出し、周囲を警戒して落ち着きが無かった。ただし、俺に一切話しかける事無く、無言で長い時間待機していたので、元々無口なタイプなのかもしれないと感じていた。


 その周囲警戒状態は部屋に戻ってきても変わらず、窓の外や扉の向こうを頻りに警戒しているので、見ているこっちが落ち着かない。


「ビジュペ、落ち着いて。建物内は安全だ」


「……申し訳ありません。これはわたくしの性分ですので」


 ……軍人さんかな? 俺を『御前様』と呼ぶくらいだから古風な方かと思ったが違うようだ。


「ビジュペ、一瞬だけ席を外す。直ぐ戻るから」


「お供します」


「大丈夫。ここに居て」


 俺は短剣に〈マーク〉して妥当な高さの場所に置き、船へ〈リコール〉する。眠ってしまったら〈マーク〉が解けてしまうので、みんなへ現状を報告しに戻った。




「ただいま」


「おかえりなさいませ、御前様」


「……えーっと……その御前様って呼び方を変える事は?」


「ダメでしょうか? できれば変えたくないと考えております。一番しっくりきますので。ダメであった場合は、「ご主人様」と呼ぶように言われているのですが……」


 赤面する彼女に申し訳なく……どうせ誰も妖精語は判らないし聞こえないと言い聞かせた。




 翌朝、股間で寝ているビジュペを見て、「あぁ、武装解除を指示して良かった」と心から思いつつ、朝食を頂いて2人で離宮を出た。


「とりあえず、町に戻ろう」


「街を見て行かなくて良いの?」


「ん~、また来ることになるかもだし大丈夫」


 ……むしろ、『邪竜討伐軍』と鉢合わせする方が拙い。


「……」


 馬を取りに街の入り口近くの厩舎へ向かう途中、見覚えのあるサリット被った少女が現れた。




「お待たせ、ヒミちゃん」


「待ってたよ、エディスちゃん」


「観光するの?」


「ううん。直ぐに戻らなきゃなんだって」


「そっかぁ、わかった。じゃあ、馬だね?」


 あ~、そうか。彼女がカエディステラ姫か。


 予知夢で姫の本体がサリットを被り続けている事は知っていた。そして、船で会った時は声をあまり聞かなかったし、そもそも一国の姫が簡単に会いに来るとも思っておらず。でも、この状況で声を聞き比べできる状況であれば、流石に間違えない。


「なるほど、エディスさんがカエディステラ姫だったんですね」


「シーッ!」


 ヒミカンヒルデが慌てて自分の口元に人差し指を立てて警告する。


「サクリウス様、実はわたしの正体を知るのは今までヒミちゃんだけなのです。この事はイクミンもユミリアさんも知りません。多分、わたしの正体は知らない人が多い方が良いのです」


 ……それも理解できる。


 カエディステラ姫は離宮に住んでいて、中では不自由ない生活が保障されている。逆に言うと国王の意思は離宮から出るなという意味だと思われる。多分、期限は第三王妃が亡くなるまで。だけど、こうしてこっそり城の敷地から抜け出している。国王からすれば、勝手に抜け出した姫が城の敷地外で殺害されたとしても、彼に責任は無いだろう。


「ですので、サクリウス様もわたしの事はエディスとお呼び下さいね。あと、わたしの事を姫と呼ばないようにお願いします……わたしの正体を秘密にする事に協力して下さい」


「お願い、サクリさん」


 ……無関係の人達に秘密にする事は俺も同意ではあるが、仲間に隠すことは抵抗があった。


「うーん。そうだな……秘密にしたい事情も察する事ができる。それでも、仲間に嘘を吐くのはダメだ。無関係者に言うのは論外として、直接エディスさんが何者なのかと問われた時、信頼関係の問題から正直に事実を伝える方が良いと思う」


 もし、嘘を吐いて隠したのなら、バレた時の覚悟は必要だ。どんな事情でも、信頼喪失は免れない。


「俺ができる妥協は、聞かれない限り言わないって事だな。実は自国に追われている姫君が既に俺達の仲間に存在している。彼女達は自分の正体を隠していない」


 それを聞いたカエディステラは、少し考えた後に俺の妥協案を承諾してくれた。




 その日は再び馬に魔道具を装着して頑張って走って貰い、再び5時間オーバーを走って貰った。もし休むタイミングを誤れば潰してしまいそうな走らせ方だが、ヒミカンヒルデ的には慣れているようだった。


 夜になって全員が集まって。


「彼女はエディス。天職は【戦士】。俺達の後ろ盾問題を解決してくれた。彼女を仲間に招いても良いと思っている。反対する人はいる?」


 ……反応なしと。


「そういう訳で、今日からエディスも仲間入りだ。冒険者カードは作ってある?」


 彼女は黙って頷く。……多分、今日のために準備をしていたのだろう。彼女にとっての壮大な家出計画が始動した。

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尚、5日間連続投稿1日目+明日も5回投稿します!

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