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巨躯の重装甲プリンセスは家出を所望されるようです

 予知夢を見た時から「どうやって城に入るのか?」という問題を無視するように城の敷地内にある離宮へ入れてしまった件について、流石にスルーする事もできず。


「待って」


「どうしたの?」


「ヒミカンヒルデは何者なん?」


「え? わたしはわたしだよ?」


 流石にテンプレなお返事が返って来るとは思わず、確かに君は君でしかないよと思いつつ。


「そうでなくて。何故、城の敷地へ顔パスで入れる?」


「んーと、第三王妃様公認の友達? ……っていうので、城の敷地と離宮に入ることは許可されているの。……最初の頃はチェックされていたんだけど、最近は顔を確認するだけで大丈夫になって……」


 ……よく解らないが、引き籠りの娘に宛がう友人のような存在なのかな?


「どうやって選ばれたの?」


「それも良く解らないの。接点は城からピザの注文があって、デリバリーはしていないんだけど、相手が王家だったので最初は材料持っていって街で焼いてから運んだ事があっただけなの」


「そかぁ」


 ピザ配達がキッカケね……本当に偶然か?


「ちなみにドワーフの里……えっと、ベルクミネラーネだけ? そこに入れたのは?」


「ピザ配達したことがあって……」


 ……凄いな、ピザ。


 彼女は扉の前でピタリと止まる。どうやら目的地のようだ。


 コンコン。


 中からメイドさんが扉を開けてくれて、中に入るとよく知る人がいた。全身を鎧で身に包んだ巨躯。

部屋へ入ると同時にメイドさんは事前に指示があったかのように部屋の外へと出て行った。




 ……普通なら圧迫感を感じるんだろうな……なんて思う。俺は違ったけど、普通は第一王女の部屋と認識して入る。その結果、平時の自室で全身鎧に身を包んだ巨躯がお出迎え。その人の立場によっては死を覚悟するのではないだろうか?


 ただ、俺は説明されずともここが第一王女の部屋と気づいたし、あの巨躯がハリボテである事も知っている。


「ようこそ、サクリウス様。急なお声掛けに応じて頂き感謝します」


 意外にも聞こえてきた声は変声機を通した声ではなく、彼女自身の声だった。


「……どうされました?」


 俺のリアクションを不思議に思ったのか尋ねられる。


「いえ。実は呼ばれていた事を今知りました」


「あれ? そうだっけ?」


 何の説明も無く連れて来られたんだが? ……まぁ、俺は途中で察してはいたけど。


「それでは改めまして。わたしはレイアール王国第一王女、カエディステラ=M=グレイハチェットです。こういった立場ですので、本来ならわたしからサクリウス様の元へ赴き、お話を伺うのが常識と心得ていますが叶わず。こうしてお呼びたてする無礼をお許しください」


「冒険者チーム“サクリウスファミリア”リーダーのサクリウス=サイファリオです。どうかお気になさらずに。……それで、何故招かれたのでしょうか?」


「サクリウス様の冒険者としてのご活躍、是非お伺いしたいと思っておりました」


「話……ですか?」


「はい。サクリウス様がどのような動機で冒険者を始めて、どのような志で活動されているのか、是非聞いてみたいと思って……ご迷惑でしたでしょうか?」


「いや、大丈夫ですよ」


 ……問題は、彼女の目的が何なのかって話。ただ、話をさせるためだけに呼び寄せたとは考え難いんだよなぁ。


 とりあえず、探る時間を稼ぐためにこれまでの話を聞かせる。気に入られれば後ろ盾になって貰えるかもしれない。多分、ヒミカンヒルデもそれを狙って俺を連れてきたはずだ。


 話は長く、質問されては答えてと効率の悪い素人の語りなのに、楽しそうに相槌を打つ。……表情では判らないけれど声音に楽しさが表現されているように感じる。……呼び寄せるくらいだから、よほど聞きたかったのかもしれない。


「……とまぁ、こういった経緯でレイアール王国まで来る事になったんですよ」


 ふと、ヒミカンヒルデと目が合うと彼女は何故がサムズアップしてくる……何故だ?




「凄いワクワクする話だったね!」


「そうだね」


 ……ん? あ~、友人だから俺相手と違って言葉が砕いた表現になったんかな?


「サクリさんにも、カエディステラ姫のこれまでを話してみない? きっと、サクリさんは姫様の話、聞きたいと思うよ」


「……そんな面白い話ではないですよ」


「そんな事ないよ。……ね?」


 俺は首を縦にブンブン振る。……ヒミカンヒルデのそういった行動には何かの意図があるはず……多分。


「もし、つまらなかったとしても苦情は受け付けませんからね?」


 それに俺は頷く。……いや、辛い話なのは知っているから。


「実は、わたし、平民出身なんですよ。わたしの実父は平民なのだそうです。産後間もない母を実父から奪って、母は第三王妃になったそうです」


「よくご無事でしたね?」


「母が国王の妻になる事を承諾するために出した条件は2つ。1つはわたしの身の安全と不自由のない暮らしの保証と確認。もう1つが実父の命の保証と確認です。なので、定期的によく母はわたしに会いに来ます。恐らく実父も何らかの方法で生存を確認しているのだと思います」


「実父さんは姫様に会いに来ないの?」


「来ないですね。やはり、産まれて直ぐに離れたらしいので娘だと言われても困るというのが実情でしょう。それは仕方ない事だと思っています」


 ヒミカンヒルデが心配そうに姫様を見つめる。ただ、どんな表情かは当然判らない。


「わたしは命と不自由ない暮らしを保障されています。ですが、禁じれている事もあるんです。例えば、わたしから母に会いに行く事や離宮以外の建物へ向かう事。代わりに欲しいものは言えば与えて貰えますし、用事があれば母を呼んでも頂けます」


 ……所々違うけれど、概ね『竜騎幻想』の状況と一緒かなという印象だった。




「じゃあ、普段はここで?」


「そうですね。離宮から出る理由がないですし」


「物心ついた頃にはここに?」


「いいえ。8歳まではお母様と一緒でした。8歳の誕生日の時に初めて王様と会って……ここで暮らすように言われたんです」


 ……あ~、8歳からなんだ……。


「国王様は8歳になったわたしを見て、『醜い』と。お母様の話によると国王様は今までお母様の部屋に来た事は無く、呼びつけるだけだったそうです。ですが、急に来た事でわたしと鉢合わせし……この時に初めて知ったんです。国王様はわたしが嫌いだと」


 なんか悪かったかな。でも、これで『竜騎幻想』と同じようにシナリオは進んでいると確認できた。


「その日の内にわたしは城から出る事になったのですが、お母様との約束があるのです。ですから、城の敷地からわたしを出すわけにいかない。そこで離宮をわたしの部屋としたのです」


「……じゃあ、外に出ようと思えば出られる?」


「難しいと思います。禁じられてはいません。ですが、わたしの身に何かあればお母様は直ぐに国王様と別れると言っています。ですから、絶対死なせないためにも敷地からは出さないのではないかと思います……建前はですけどね」


「実はね、姫様は既に何度か城の外へ出ているの。ただ、ちゃんとした手続きをしているわけじゃなくて、こっそり抜け出す形だけどね」


 ……なるほどなぁ。


「サクリウス様の人となりは解りました。……実はお願いがあるのです」


 どうやらここからが姫様の本題のようだ。




 穏やかな歓談という雰囲気だったのだが、明らかに変わった。少なくともヒミカンヒルデの露骨な緊張感から彼女は内容を知っているのだろう。


「お願いとは?」


「……わたしを仲間に入れて頂けないでしょうか?」


 ……うん、想定内。予知夢見ていたからね。だからこそ、迂闊に了承できないわけで。


「我々は大陸中を回るチームです。仲間に入ると国外に行く事になりますよ?」


「存じております。わたしの目的の1つは国外へ行く事です」


 実はこれが俺達にとっては大問題だ。カナディアラやユッカンヒルデの時と同じで一国の姫君が外交以外の要件で国外へ行く。多分、俺達が『邪竜討伐軍』であれば問題は無かったかもしれない……国王公認だから。しかし、俺達はただの冒険者。当然国王が公認するわけがない。


「国王が了承はしていないですよね?」


「しないですね。ただ、お母様からは了承を得ています。むしろ推奨されているくらいで」


「どういう事でしょうか?」


「簡単な話です。わたしは成人しています。ですから、どちらにせよ離宮で暮らせる時間は長くない。望まぬ婚姻をさせられるくらいなら、自分が選んだ道を進みたいだけです。もし、引き受けて下さるのなら、サクリウス様がお困りの後ろ盾の件、お引き受けしますよ?」


 予知夢から彼女が仲間になる事は確定……なら、このリスクは引き受けろって事か。




 正直、後ろ盾になってくれる分には助かるし、今更一国を敵に回すなんて事はまだ太刀打ちこそできないものの、既に追われる身なので変わらない。それでも、即答できない理由はあるわけで。


「もちろん、国内で活動する際にわたしが王女である事は知られるわけにいきませんが、事前に必要な紹介状を用意しておけば問題ないでしょう?」


 ……もう、絶対入れる気満々だけれども、そうはいかんのよ。


「姫様。俺は入って頂いて構わない……いや、むしろ助かるまでありますが、ウチのチームは立場関係なく全員の了承を得ないといけないんですよ」


 多分了承される事も伝えつつ、それでもメンバー全員の賛同を得るため保留した。

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