失敗作の最終審判(0章-3)
何があったのか それは僕には分からない
ほんの三十分前までは全ては平和だったはずなんだ
街外れの森の中、数十年前に閉じた炭鉱で僕は10年ぶりに中学の時の同級生と待ち合わせをしていた
夕方の5時を過ぎ、日没まで1時間となった時だった
突然周りの木々が溶け始めた
何が起きたかはわからなかったが僕は反射的に炭鉱に逃げた
何もない大地を1人の人間が歩く
液体の様に溶けた、ビル街だった場所を
木々が生い茂り、鳥達の囀りが聞こえた森だった場所を
まるで最初から何もなかったかの様に還った大地を1人の人間が歩く
果たしてそれは人間なのだろうか?
街だった場所にも 森だった場所にも 不定形のモノが溢れている
元々生物だった残骸だろうか? 今は元の形が分からぬほどの不定形に変わり果てている
僕はふと前を見た
光だ 光が見えた
光と共に1人の男が入ってきた
男は聞き取れない言語で何かを喋ってる
僕は困惑した素振りを見せると男は焦った様に後ろを向いた
もう一度こちらを向いてはっきりとした日本語で話しかけた
「よくぞ我が能力から逃れたな 人の子よ 貴様は我が眷属にするには勿体無い」と
僕は男が言ってることが理解できなかった
しかしそれを考える間もなくその男は次の行動に移った
それに気づいた時には僕の意識はどんどん遠のいて行った
男が何かを独り言の様に話している
だが、聞き取れない言語であり、遠のく意識の中で聞き取れるはずもなく僕は深い眠りに落ちた
炭鉱から1人の男が出てくる
夕焼けの太陽を見つめる様に彼は西に向かって歩いてゆく
まるで正確な方位がわかるかの様に 彼は太陽の落ちる軌道に沿って東に向かって歩いてゆく
彼が通った後には何も残らない
まるで最初から何もなかったかの様に
まるで最初から何も居なかったかの様に
一日が経ち 彼は再びこの大地に戻ってきた
そして天に向かって飛んでいった
彼が過ぎ去った後の地球には
草の一本も
蚊の1匹も
建物の1つも 何も残っていなかった
最初から何もなかったかの様に
地球を夕焼け色に染めて




