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霊事警察 ~霊が見える刑事と、霊が怖すぎる刑事が挑む怪事件~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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42/43

突入

警視庁には、表に出ない部署が存在する。

様々な凶悪事件に対し霊的アプローチを用いた捜査を行う――刑事部 霊事課 通称 霊事警察。

捜査一課の刑事・八神恭史郎は、ある日、霊が見える刑事「本条ひなた」とコンビを組まされる。

だが八神は、極度の怖がりだった。

人面犬事件、猟奇殺人、犯罪組織の暗躍

そして都市の闇で進む謎の薬物実験。

人間の犯罪と怪異が交差する事件に、凸凹コンビの捜査が始まる。


 ※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。



 ガラスが割れる音が部屋に響いたと同時に八神が叫んだ。「本条!」


 その瞬間、耳をつんざくほどの爆発音と閃光が周辺を埋め尽くしていく。


 誰かの悲鳴や叫びすら消し去っていくほどの圧倒的な感覚刺激の中、八神の拘束が解かれる。

「目標、確保」

「正面クリア」

「後方クリア」


 耳がキンキンいう中で、誰かに引っ張られながら連れてこられる。

「お二人とも無事でよかった!」


 そこには特殊装備を身に着けた2名が安堵したように見守ってくれていた。

 素早く拘束を解いてくれたことと、目を瞑っていたおかげで回復が早くすんだ。

「SAT 来てくれて助かった!」

「これもハル、カズ、良輔の3人組のおかげです。

 彼らはがんばって樹里さんのサポートで施設内の爆弾を全て回収してくれましたよ」


「あいつら! やりがったな」

 八神は満面の笑みでひなたとハイタッチをする。


 すると銃撃音が聴こえてくる。

「我々はヘリボーンで、鬼塚捜査一課長や機動捜査隊、SATの別班は地上から突入を開始していますが、敵の抵抗が思ったよりも激しいので我々はここで足止めに入ります。八神さんこれを」


 別の隊員が差し出したのは、奪われたCOMBAT MASTERが入ったバックがあった。


「首謀者と思われる奴らは傭兵風の男が引きずっていったので奥にいるはずです。

 八神さん、任せました」


「君らも無理はしないでくれ」

 隊長とグータッチをした八神は、ひなたと共に奥へと向かう。


「防御陣形」

「4名拘束完了」

「増援HK416確認」


 ヘリボーンで天窓を割って突入した4名のSAT隊員たちは、八神とひなたを救助するとすぐにスタングレネードで見当識を失った久世の手下たち4名を結束バンドで拘束。


 流れるような手際でテーブルや椅子を倒してバリケードを構築していく。

 相当の練度と連携であることは確かだった。


 MP5Fを構え、迫ってくる足音に対応すべく拘束した久世の手下たちを射線上から移動させていく。

 彼らが警官たる矜持ある行動を見守るのは、SATが設置したカメラをチェックする西園寺刑事部長や墨田管理官たちだった。

 ・

 ・

 ・

「西園寺刑事部長、これはいったいどういうことなのか、説明はしてもらえるのだろうね?」

 墨田はのっぺりとした坊主頭で、印象としては肉体派の機動隊員のような顔つきをしているが、これでも警察官僚としては上位に位置する。

 臨時の捜査本部として会議室で指揮を執っていた西園寺刑事部長らに対し、墨田管理官は取り巻きの警察庁の職員や見慣れない顔の刑事たちを連れて現れた。


「御覧の通りです」

「私は命令したはずだ。目撃情報が多発している近隣の県に捜査員を派遣するようにと。それがどうしてスカイリングでこのような暴挙に出ているのか?」


「暴挙? 彼らは八神、本条両名を拘束していました。さらに爆弾を施設に設置して脅迫までしていました。

 これはテロと断定しても良いほどの大事件のはずですが?」


「私が言っているのは命令無視に関わる件だ。


 刑事の1人や2人、拘束されたぐらいで過敏に反応するとは愚かすぎる。

 あいつらが暴走してあちらの警備の手を焼かせただけかもしれないだろう!

 すぐに全員に撤収命令を出したまえ」


「拒否します」

「貴様、警察組織において命令を拒否するか? それとなぜ警備部所属のSATが私の了解もなく出動している? 安藤警備部長!」


 西園寺刑事部長の隣に並んでいる男は身長190cm越えの大男で、小柄な墨田管理官を見降ろす形になっていた。


「これは異なことをおっしゃる。

 警察官が拘束されシリアルキラー:レイダーに命を狙われているのです。あの最上階にヘリボーンできるのは我がSATしかおりません。

 もしや管理官は八神たちを見殺しにしろとおっしゃっているのですか?

 ならば、見殺しにしろ と命令なさればよい」


「おい、こいつらを逮捕しろ。命令に不服従は厳罰に処罰されなければならん!」

 西園寺刑事部長は毅然と反論する。


「それは命令に妥当性がある場合のみ、でしょう。

 今回、管理官は警察として明らかに妥当性を欠く命令をされている。


 仲間を見殺しにしろ?

 市民を守るための苦汁の決断であるならば、やむを得ない場合もあるでしょう。

 しかし今回は違う!

 民間人が命掛けで爆弾を確保し、たった今爆発物処理班が命を懸けて処理に当たっているのです! 

 墨田! 警察官を舐めるな!」


「こ、この、上司に対する態度がなっていないようだ。お前を刑事部長から解任する、速やかに逮捕せよ!」


 だがその場にいた警官や刑事たちの中で動く者はいない。

「どうなっている!」


 その時だった。会議室のドアが開き、ぞろぞろと入ってくる男たちがいた。

「お前らは!? まさか」

「警視庁公安部です。墨田管理官、あなたには情報漏洩、収賄、犯人隠避、違法薬物の流通などの容疑がかかっています。同行願います」


「こ、公安ごときが! 私は与党幹事長の派閥にいるのだぞ!」

 すると八神と顔馴染みの松村が一歩前に出る。


「安心してください。

 経産省の御堂審議官から与党幹部へ今回の経緯は既に説明されているそうです。

 天海IRリゾートからあなたに相当な額の金額が流れていることを、補助金の不正な流れを追っていた御堂審議官が突き止め我々に情報を提供してくれました。

 つまり、証拠が揃っていて 詰みです。


 それと、八神達を見殺しにしようとした件についても、徹底的に追求させてもらう!」


 墨田はこの時、部屋にいた人間全てが自分の敵になったことを本能で理解した。

 皆の目が怒りに燃えている。身内を売ろうとした奴を警察が許すはずがない。


 肩を落して連行される墨田を見送ることもなく、西園寺刑事部長たちは速やかに現場で戦う警官たちの状況把握につとめるのだった。


 ◇


 後ろで銃撃戦が開始されたことを知った八神とひなたは奥のドアを開けると、待ち構えていたSAFEの警備たちがGLOCKで一斉に迎撃してきた。


 ドア付近に命中し、木片を撒き散らしていく。明確な殺意がそこにあった。

 2人はさっと隠れるが、八神は指を3本ひなたに見せる。 

 3,2,1 ちょうど銃撃が止んだタイミングで八神が飛び出した。

 ダブルタップを3回 ドアを出て右方向にスライディングしながら、警備たちの待機室にいた4人のうち3人の右肩、手首などに2発ずつ命中させてしまった。


「ぐぎゃ!」「うぎゃ!」「うあわ!」

 そのまま滑り込んで物陰に隠れるその刹那、ひなたはSIG P365で慎重に狙いを定め、撃ち尽くして弾倉を交換しようとしている警備の体に向けて2発を命中させた。


 思わず、八神の脳内で「キーン!」 という効果音が流れた気がした。

「っ!」 

 声にならない悲鳴をあげて気絶する警備。


 急ぎ倒れている男たちにSATから受け取った結束バンドで拘束していく2人。

 最後の1人は、股間を抑えながら泡を吹いていた。


「お前、鬼だな」

「それほどでも♪」


 軽く身震いしながら八神は落ちていたGLOCKのスライドカバーを抜きとり放り投げていく。

 さらに弾倉をスポーツバッグへとしまい奥の扉へ向かう。


 これは後続のSATを守るために必要な行為であり、八神たちもまた追撃を避けるために必須のアクションではあった。

 それにしても、非殺傷性ゴム弾とはいえひなたはよく撃てたと感心する。


「よく撃った」

「股間狙ったら冷静に撃てたんですよ てへ」

「こ、こわっ」


 このエリアは、リング上層部、最上階にある円形ホールの入り口にあたる。


 周囲を照らすリングの明かりが中央の白い円形ドームを不気味に照らしている。

 自動ドアを開けるとそこは白く無機質なホールであり、受付用のカウンターに人はいない。

 その時だった。微かなレバー音を耳にした八神はひなたの肩を抱き寄せ床に伏せると、一気にカウンターの陰に隠れる。


 フルオート射撃が頭上を駆け抜ける。

「おっと、中々すばしっこいねぇ」

 あの傭兵風の男だ。浅黒い肌をした男であり、あのスタングレネードを予期して耳と目を塞ぐ機転が利く男。

「警察だ! 武器を捨てて投降しろ!」

「なんか新鮮だぜ。素直に警察って名乗ってくれる相手は。

 ところでよ、そこにべっぴんな刑事さんいるだろ?

 天城って奴があんたに用があるって言ってたから通してやる、お前らから見て左の自動ドアをくぐっていけ」


 罠の可能性について2人はつい目線を合わせる。

「まあべっぴんって言ってるから、審美眼は確かね」

「余裕あるなお前は」


「おい、嘘じゃねえよほら、俺も身を隠してるだろ? 俺はそっちのCOMBAT MASTER持ちの刑事に用がある。

 お前を生きたまま、あのモンスターの前に連れて行かねえといけねえからな。

 だからお嬢ちゃんは邪魔ってわけ、ほらさっさといけ」


「行ってきます」

「分かった。だが忘れるなよ、お前は警察官だ。俺の相棒の刑事だ。いいな?」

「なんか分かった気がします」


 軽く敬礼したひなたは、堂々と歩いて自動ドアに入って行く。

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