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霊事警察 ~霊が見える刑事と、霊が怖すぎる刑事が挑む怪事件~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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再会

警視庁には、表に出ない部署が存在する。

様々な凶悪事件に対し霊的アプローチを用いた捜査を行う――刑事部 霊事課 通称 霊事警察。

捜査一課の刑事・八神恭史郎は、ある日、霊が見える刑事「本条ひなた」とコンビを組まされる。

だが八神は、極度の怖がりだった。

人面犬事件、猟奇殺人、犯罪組織の暗躍

そして都市の闇で進む謎の薬物実験。

人間の犯罪と怪異が交差する事件に、凸凹コンビの捜査が始まる。


 ※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。



 そこは大理石調の格式高そうな床と、オフィスというよりも宗教施設的な印象すら感じる負フロアになっている。


 正面廊下から向かったのは大会議室のような部屋。

 そして中には、神式の祭壇と10名ほどの人間が豪華な椅子に座って八神達を待っていたようだ。


「御足労をかけましたな、警視庁の八神警部補、そして本条巡査部長」


 明らかに異常事態。さきほどの警備たちは入り口を塞ぐように立ちはだかっている。


「なあに気にしないでくれ。それよりも不審者情報について質問したい」

 その言葉を聞き、参列者たちが耐えきれずに吹き出し始める。

「ほら笑い始めたじゃん」

「本当だ」


 それはやがて爆笑へと変わり、奥に座っていた60代中盤に見える男性が立ち上がり手を上げる。


「君らをわざわざお呼びしたのは、不審者捜査の件ではないのだ。

 色々と試してもらったのだがね、どうにもうまく行かない。


 本人もかなり苛立っていてね、なぜなのか。

 どうしてなのか?


 そこで我々が分析したところ、過去の失敗が原因であるとの結論に至ったのだ」


「八神さん、このジジイ何言ってんの? ボケちゃったの? 大丈夫おじいちゃん? 夕ご飯さっき食べたでしょ?」


 こういう煽りをさせたらひなたの右に出る者はいない。


 激昂した連中が怒鳴り始めるが、老人が手を上げて制止した。


「中々に肝が座っていてよい。自己紹介が遅れたね、私は久世道隆《くぜみちたか》。

 天海グループというケチな会社のCEOをしている」


 天海グループCEO 久世道隆。このスカイリングの計画発案者であり、SAFE関連企業のトップと言ってもよい人物だ。


「まずは銃を渡してもらおうか」

 警備担当者たちが銃を構え、1人が手をむけてきた。


 5人全員が拳銃を構えている。

 しかもGLOCK45 最新のクロスオーバーモデル。

 かなり資金力のある組織であることから、練度もそこそこと推測ができる。

 奴らの体格的にもかなりの腕前。


「本条、抵抗するな」

「ちっ」


 銃を突きつけられながら、八神のホルスターからCOMBAT MASTERが、ひなたのホルスターからはSIG P365が奪われてしまう。


「おい、こいつSTI のCOMBAT MASTERなんて装備してるのか」

 さすがに驚きを隠せていないようだ。


「おい、お前、私のお尻触ったろ? 触ったやろ?」

「さ、触ってなんかいない!」


「いーや触ってたわ。この変態が」

「触ってなにって言ってるだっ! おごっ!」


 ひなたのストレートが警備の鼻中にヒットする。

「舐めんなボケが」

「お嬢さん、そこまでにしてもらおう」


 久世の一言で警備たちが八神の荷物や拳銃、そしてコートまで持ち去っていく。


「さて、話を続けよう。

 君らを、正確を期すならば、我々が求めていたのは八神君、君なのだ」


「うっわ! どっち? 受け? 攻め? 八神さんの総受けなんて見たくない!」


「おい誰かその女を黙らせろ!」

 ひなたの口にハンカチが巻かれ、もごもご文句を言っている。


「ごほん……話を戻そう。


 我々が求めていた。いや彼が求めていたのは君なのだよ」


「話が長い。早くしろジジイ」

「まったく最近の警察は品がない。


 お呼びしろ」


 部下の男が連絡をすると、しばらくしてから現れた人物がいる。


「黒フード!?」


 八神とひなたが驚くのも無理はない。

 あの画像解析で浮かび上がったそのままの姿をした男が現れたのだ。


 そしてひなたが軽く悲鳴を上げたのを八神は見逃さなかった。


「自己紹介をお願いできますか 主様」


 黒フードの男が目部下にかぶったフードを外しながら、下卑た笑みを浮かべていた。


 『よお 久しぶりだな。分かるか俺のことが?』

「どちら様? もしかして昨日犬のうんこを踏んで泣いてたやつか?」


 『ふんっまあこの姿じゃ気付かないのも無理はない。


 20年ぶり? になるのか、檜山《ひやま》くん』


「は? だから早く名乗れよ。もったいぶるな」


 『随分と檜山君はせっかちなんだな。俺だよ俺。


 戸河里《とがり》 正雄 だよ』


 八神は全身に氷水を浴びせられたようなショックを受けていた。

 なんとか正気に戻ろうと、平静を装うと呼吸を意識する。


 その時だった。ひなたが八神の手を握ってくれた。


 既に器用にハンカチをほどいていたひなたが「大丈夫、私がついてます」


 その声がどれだけ救いになったか。あの時の映像がフラッシュバックしていた自分に対して、すーっと心が落ち着きを取り戻していく。


「戸河里の死刑は執行された。

 そうか、戸河里の犯行を真似た模倣犯だったのか。

 罪もない女子高生を3人も殺した。


 女子高生連続殺害事件の容疑でお前を逮捕する」


 『こんなときまで刑事のマネ事かよ。

 俺が唯一殺害できなかった人間。


 それがお前だ。檜山恭史郎。

 突然パトカーが近づいてきてきたため、お前を刺してから逃走した。


 だがお前は生きていた。


 それが俺の未練。果たせなかった殺人。


 だから俺は お前をちゃんと殺して、奪ってから殺して


 神となる』


 ひなたは猛烈な霊圧を感じ思わず膝をついてしまう。


 霊能があるほどこの霊圧の濃密さ、邪悪さが分かる。


 そして全てが繋がった気がした。


「B5用紙ぐらいなら似合うと思うぞA4はさすがに高望みしすぎだ」


 『いいぜ減らず口。

 これからお前の大切なものをじっくり時間をかけて奪ってやる。

 刑事に大切ものって何だ? 足で捜査するってドラマで見たな?

 足か?

 それとも銃を撃つ腕か!?

 それとも目!?


 なんだ全部必要じゃないか』


 端正で色白な顔立ちをした男なだけに、話している内容のギャップが凄まじい。


 そして今まで椅子に座って事態を見ていた右手前の男が立ち上がる。

「そいつらを拘束しろ」

 銃を突きつけられているが、奪えばなんとかいけるかと覚悟を決めようとした時その男が何かをリモコンを操作した。


 そこにはスカイリング前の広場でライトアップを楽しむ親子や子供連れ、そして外用ストーブに当たりながらくつろぐカップルたちの姿が映し出される。


 リモコンを持っている男はいかにも傭兵風の装備を身に着け体格もかなり鍛えていそうだ。 「八神、抵抗するなよ? このスカイリング前のゴミ箱に爆弾を仕掛けてある。


 お前らが抵抗したら俺がボタンを押して爆発させる。


 いいか? 俺の意志で爆発させるぞ?」


「爆弾はゴミ箱だけか?」

「ああん? お前らが知ってどうすんだよ?

 ゴミ箱だけだぜ、地下の配線やらガス管水道管を避けて設置するのは面倒だったからな。


 まあ派手に吹っ飛ぶところを見たい気分でもある」


「なんて汚い奴らなの!」

 ひなたが耐えきれずに悔し泣きをしてしまっている。

「分かった。抵抗はしない。さっさと拘束しろ」


 それにひなたも大人しく従う。

「お前らいいか!

 その女はクライアントが使うから手出すな? いい女で犯したいのは分かるが、手出そうもんなら俺に殺されると思え」


 念を押された部下たちは八神とひなたを慎重に奥の部屋へと連行する。


「ぜったいぶっ殺す、いつかぶっ殺す!」

 ひなたの獰猛な反応に、部下の一人は目を合わさないようにしているから本当に怖いのだろうと八神は思った。


 さらに奥の部屋は異様だった。2本の柱があり奥の台座には様々な儀式用の供物や食材などが並んでいる。

「神道、古神道、東南アジアのシャーマニズム、一部ブードゥー、黒魔術の要素まで混じってるじゃない」


「ほう、良く知っているのだね。本条家の御令嬢」

「!?」

 そこには白いスーツをきた40代ぐらいでニット帽の男がナイフを手に立っていた。

 すると奥からまた久世が現れる。

お読みいただきありがとうございました。


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