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霊事警察 ~霊が見える刑事と、霊が怖すぎる刑事が挑む怪事件~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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連続女子高生殺害事件

警視庁には、表に出ない部署が存在する。

様々な凶悪事件に対し霊的アプローチを用いた捜査を行う――刑事部 霊事課 通称 霊事警察。

捜査一課の刑事・八神恭史郎は、ある日、霊が見える刑事「本条ひなた」とコンビを組まされる。

だが八神は、極度の怖がりだった。

人面犬事件、猟奇殺人、犯罪組織の暗躍

そして都市の闇で進む謎の薬物実験。

人間の犯罪と怪異が交差する事件に、凸凹コンビの捜査が始まる。


 ※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 12月に入ってから始まった連続猟奇殺人事件。

 典型的なシリアルキラーとして世間も、そして警察も認知することになった。


 現在12月中旬になっても手掛かりが掴めず、マスコミやSNSでの風当りがさらにひどくなっている。


 現在、3件が関係性あるとされた事件は、連続女子高生殺害事件。


 そのため首都圏の女子高ではリモート授業に切り替えたり、部活動や塾を中止にするなどの措置が取られていた。

 それにより経済損失などもマスコミが騒ぎ立て、まるで悪いのは犯人ではなく警察かのような報道ぶりだ。


 本来であれば真っ先に八神ひなたコンビにお鉢が回ってきそうな事件ではあったが、霊視のほうは黒瀬課長が試していた。

 

 「あまりにも恐怖心が強かったのか、怖い感情が流れ込んでくるだけで言葉にならなかったのだろう。気の毒だ、本当に気の毒で、とても本条に霊視はさせられんし、現状では有効な情報は得られないだろう」


 黒瀬課長は昼食のそばも半分ほどしか食べられなかったそうで、かなり食らってしまっているようだ。

 ベテランでもこの通りで上からの命令ではどうすることもできず、ひなたは八神と一緒にジドリの応援に駆り出されていた。


 八神は地道なジドリ捜査が意外と好みらしく、疲れ知らずで周囲の人に話しかけていく。

 

 何より大きな変化は、マスコミ報道で叩かれまくった警察は捜査の指揮を警察庁の墨田管理官が直接とることになったことだろう。


 これにより実質的に八神とひなたは捜査一課の付属物的な扱いとなり、以前のようなひなたの霊能力に応じた自由な捜査が制限されてしまっていた。


 逆に八神は思った。今まで好きにやらせてくれていたことのほうが奇跡であり、それを見守ってくれた西園寺刑事部長や鬼塚捜査一課長の度量に頭が下がる思いだ。


 そのような状況のため、八神とひなたは思い切った捜査ができないことにややフラストレーションを蓄積しながら地道な捜査を行っていた。


 今日の昼飯はひなたのリクエストで近くにあった次郎系ラーメンであったが。

 「店の雰囲気悪っ!」

 「たしかに店員が感じ悪いな。次郎系初心者の客に対しての態度がひどすぎた。

 放っておいてもああいう店は淘汰されるんだろう」

 「ある次郎系の店長さんが言ってた言葉、胸に染みたなぁ。いつでもどのタイミングでも必ず初めての人がいるってことを忘れてはいけないって」

 「……今回の事件、絶対に初めてじゃないよな」

 「いきなりなんですか」

 

 八神は食後の習慣でもある缶コーヒーを自販機で買い、空を見上げる。

 もう一本はひなたが好きな濃いめの緑茶のボトルを買って投げて渡してきた。

 「手口がさ、あれは既に何人も殺している手口だ。初心者じゃありえない」 

 「そういう指摘もありますけどね、世に出ていない殺人事件をいくつもこなしてる?」


 「そういえば経産省の知り合いの官僚から何か連絡来たって言ってなかったか?」

 「ああ、御堂さんですね。

 私が解決! したお礼もですけど、気になることがあるというので鬼塚課長と繋げたんですよ」

 「なるほど。いやな、分からないことが多すぎて、何が分からないかがよく分からない」


 「それ私も。今回の捜査本部、何かずれてません? 一貫してないっていうか」

 「ここだけにしておけ。民間人に聞かれていると面倒だ」

 「そうですね」

 

 捜査一課に戻り、鑑識や科捜研、さらにはサイバー犯罪対策課の分析結果を確認する。


 角倉が何やら声を荒げている。

 「これだけ防犯カメラあって、みんなその時間だけ録画データないってありえねえだろ?」

 「安心しろ、すぐに俺が逮捕してやるぜ」

 伊集院忠夫が調子に乗っているが、角倉の怒りに火をつけただけだった。

 「だったらすぐ逮捕してこいや!」

 「ちょ、ちょっと待って、ごめんごめんて」

 

 「落ち着け角倉」

 「八神! お前何か情報持って帰ってきたんだろうな?」

 「収穫なし」

 「まじか! あっ本条さんのせいじゃないです、このむっつり野郎が悪いんですからね」

 「そうだぞむっつり」

 

 「忠夫、お前喧嘩売ってんのか?」


 このやりとりを本気で心配している人はこの捜査一課にいない。

 一種の精神均衡法的なやりとりなのだと本人たちも自覚している。

 話を聞いていた猪狩班長が疲れた様子で語りだした。

 「はぁ、サイバー犯罪対策課がハッキングの痕跡たどってるらしい。

 本部は猟奇殺人事件が複数犯、しかも組織犯罪の可能性なんてものはないという考えだからな」

 こんなやりとりをしていた矢先だった。

 佐々木が興奮しながらオフィスに飛び込んできたのだ。

 「忠夫先輩すごいですよ! 先輩が見付けたアナログのビデオテープ式の防犯カメラ映像からAI補正かけた犯人のものと思われる画像データできました!」


 「「「おおお!」」」


 すぐに墨田管理官に情報が伝わりISSに共有され、伊集院でかした! との声も大きかったが写っていたのは、黒のパーカーにフードを目深にかぶった若い男。身長は175cmぐらいでやせ型。


 左首筋に火傷のような痕? が見受けられるほどの情報だったので、すぐに事態は停滞した。


 「本条は何か分かることあるか?」

 あの霊視嫌いの八神でさえ、ひなたに情報を求めている。


 霊事課に戻ってから、改めて事件について整理してみようと思った八神。


 「一件目 被害者は 森沢 小雪さん  神奈川の高校に通う女子高生。

 全国のピアノコンクールで何度か優勝するほどの腕前で、フランスへの留学が決まっていた。


 全ての指が切断された状態で市の文化会館前に放置されていた。

 死因は絞殺。薬物反応なし。

 失踪後 三日目に発見。


  二件目 石倉 真紀さん 埼玉県の高校に通う女子高生

 陸上短距離で何度も全国大会に入賞の経験がある。

 

 両足が切断された状態で市の陸上競技場で放置されいた。

 死因は絞殺。薬物反応なし。

 失踪後、三日目に発見。


 三件目 妹尾《せお》 千春《ちはる》さん  千葉県の高校に通う女子高生

 読者モデルからアイドルデビューを果たしたばかり。

 顔の皮膚が剥がされた状態で市のイベントホール前で放置。

 死因は出血性ショック並びに絞殺。

 失踪後 三日目に発見」


 七曲樹里《ななまがりじゅり》は、あまりに異様な事件の内容に渋い顔をしてお茶をすすっていた。


 ひなたは資料とにらめっこしながら忠夫が繋げた犯人の画像を見比べている。

 「なんだろう、何も感じないのはなぜ?」

 

 「むしろ影響受けすぎないか心配してたぐらいなんだが?」

 「感じなさ過ぎて逆に怖いぐらい。

 それにしても、この犯人何て呼ばれてるか知ってます?

 レイダー 強奪者 だって。

 

 女子高生の大事な才能を奪って殺すなんて。

 人じゃない。

 人であってほしくない」


 ひなたがどら焼きを頬張りながら八神の異変に気付く。


 「八神さん、大丈夫? 顔色良くないよ? ラーメン奢って」

 「おい、なんで唐突にラーメン奢ってになんだよ」

 「元気そうじゃん」

 「この事件、気付いてる奴は気付いてる。

 模倣犯の可能性があるってな」


 樹里がひなたのどら焼きを一個強奪すると、袋を開けながら疑問をぶつける。

 「ISSにちょっとだけ記載ありましたけど、あの日本犯罪史上最悪のシリアルキラー、あれですか?」


 「ああ、戸河里正雄《とがりまさお》。

 分かっているだけであいつによって殺された犠牲者は20人を超えると言われてる。


 そして俺のの両親と姉さんもな。

 だからさ、俺が捜査の本線から外されても鬼塚課長が受け入れたのは配慮してくれたからなんだろうって思いはある」


 ひなたは八神をじっと見つめながらあえて言葉にした。

 「八神さん、こういう情報てもっとクライマックスとか、崖の上での告白とかそういうシーンで言ったほうが絵になるんじゃないですか?」

 「おい 俺は船越栄一郎か」


 ひなたのこういう茶化しで救われている要素は多分にあると八神も自覚している。 

 「奴は死刑を執行されてもう何年も経つ。

 終わってるんだ。

 だからこそ模倣犯だか二番煎じだか知らないが、必ず逮捕してやるんだ。俺たち警察でな」

 

 「「俺たち警察でな!」」


 ひなたと樹里がハイタッチをしていた。

 冷やかしじゃない、2人とも女子高生が犠牲になっていることが許せないでいる。

 

 怒りは表現すればいいというものじゃない。

 うちに秘めて行動への力にしてやろうという気概を持て。

 

 黒瀬課長がよく言う言葉だった。

 

 「あっ、さっそくマスコミに犯人の画像が出回ってるからSNSでも話題になってる」

 樹里がさっそくリサーチを始めているが、眉をひそめて慌ただしくPCにかじりつく。


 「どうした樹里?」

 「あれ、目撃情報がいきなり出てきた。

 えっと、埼玉県三郷、千葉県稲毛、神奈川県横須賀が目撃情報多発してる。


 ・今日の朝駅前で見た。

 ・怪しかった

 ・稲毛海岸で見た、

 ・ドブ板通りで通行人と揉めていた。


 こういうのがたくさん? あれ? リアクション早すぎない? こんなもんなの?」


 「動き始めたな」


 樹里がデータを分析している間に出動準備を整えていると、鬼塚課長から呼び出しが来た。

 八神とひなたにだった。

 「ちょっと連絡済ませるんで一課で待っていてください」

 「おう」


 八神が出て行ったことを確認した樹里は、深くため息をつく。 

 「八神さん、戸河里の話ししてる時、平静を装ってたけど手が震えてた」

 「うん、前もそうだった。まだ、傷は癒えてなんていない。

 いえ、傷が癒えるなんてことは本当にあるのかな」


 「だからでしょ? ひなたはずっと言ってるもんね、いざという時に八神さんを支えられるようになりたいって」

 「あんな泣き出しそうな子供みたいに、目に涙を一杯浮かべながら戸河里のことを話す姿をもう見なくていいように。

 今回の模倣犯だか偽物をきっちり捕まえてやるんだから」

 「ってあんたも泣いてるじゃない」

 「うっさい……って樹里もじゃん」

お読みいただきありがとうございました。


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