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霊事警察 ~霊が見える刑事と、霊が怖すぎる刑事が挑む怪事件~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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36/43

えにし

警視庁には、表に出ない部署が存在する。

様々な凶悪事件に対し霊的アプローチを用いた捜査を行う――刑事部 霊事課 通称 霊事警察。

捜査一課の刑事・八神恭史郎は、ある日、霊が見える刑事「本条ひなた」とコンビを組まされる。

だが八神は、極度の怖がりだった。

人面犬事件、猟奇殺人、犯罪組織の暗躍

そして都市の闇で進む謎の薬物実験。

人間の犯罪と怪異が交差する事件に、凸凹コンビの捜査が始まる。

 ※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 麻衣子がひなたの髪をドライヤーで乾かしていると、隆之が険しい顔つきである提案をしてきたのだ。


「あの、朝になったら警察を呼んで骨壺を引き渡す予定ですが、その本条さん、ここまできたなら謝礼は十分にお支払いするので、除霊をしてもらえないだろうか?」


 麻衣子の手が止まった。

 ドライヤーの音が止まったこの静寂が肌に刺さるようだとひなたは感じた。


「……あなた、あなたがそうおっしゃるのは分かりますけど、私、実はずっと感じていたんです。悠馬と美咲が誰かと遊んでいるのを。

 気のせいだって言い聞かせて、でも。


 あの、こんなこと言うのはおかしいって言われるかもしれませんけど、あなたその」


「言ってみなさい。今夜は驚くことが多すぎてもう、これ以上は驚けないだろう」


「ではその、こうた君をどこかのお寺で供養してあげられないかしら? このままだとあまりにかわいそうで」


「……」

 さすがに隆之もそれは感じていたようだ。


「供養か。不幸な身の上だったようだ。

 しかも……悠馬と美咲を守ってくれたんだな」


 ひなたはあえて、助言をすることを控えた。


「もう一度おうちの中、見回ってみます」


 2人で話す時間を作るためでもある。


 ひなたが見回った限り、外にある呪詛シールの残滓以外に悪い気配はない。


 約30分ほど。


 隆之と麻衣子はひなたを待っていた。

「本条さん、妻とよく話あったのですが…… 恩人である こうた君を供養してあげたいと思います。

 本当にお世話になりました」


 2人が頭をさげてくれる。


「ご家族で決めたことでしたら。供養先は土地の関係もあるので近くのお寺に相談するのが良いと思います。歩いて10分ほどのところにあったようなので。

 それと――


 こうた君のこと ありがとうございます」


 ひなたは深く頭を下げた。

 官僚一家ということで色眼鏡で見ていた自分を少々恥じる。


 そして早朝、所轄署が来て事情を説明する。

 こうた君はしばらくこの家にいられるようで表情が明るい。


 黒瀬課長が所轄の警官に紛れてやってきた。


「またこいつが出たのか。対処法を教えておいてよかったよ」

「助かりました。事後の処理、任せてもいいですか?」

「うまく処理できているようだ。しかし、呪詛シールの出所気になるな。戻ったら樹里に掘らせてみる。何かが出そうではあるな」


 ◇


 目黒区柿の木坂近くの寺にて、こうた君の供養が執り行われた。

 寺側も御堂夫妻の慈悲深い心に感銘を受け、寺の僧侶たち総出でこうた君の冥福を祈り読経を行ってくれた。

 参列したのは御堂夫妻に悠馬君、美咲ちゃん。

 そして安西審議官や西園寺刑事部長 そして鬼塚課長までもが参加。


 鬼塚課長などはこうた君の境遇を聞いてから泣いており、意外と涙もろい一面があるのだとひなたは思った。


 そして八神は、ひなたによって解決されたので参列しているも、霊的な要因で解決されたということでどこか怯え気味だった。


 顛末としては、こうた君 という名前と心臓疾患という情報から母親が遺骨遺棄罪に問われ、さらに虐待死の可能性についても調査が開始された。


 何やら警察上層部からの指示もあったらしく、異例の捜査体制らしいが。


 あれ以降、御堂家は非常に落ち着いた生活が続いているようではある。

 だが、先日挨拶に行ったひなたは見てしまった。


 こうた君が身綺麗な恰好をして御堂麻衣子の料理する姿を優しく見つめ、帰ってきた美咲ちゃんと一緒に遊んだりする姿が。


「おい、それって成仏してないんじゃないのか? 大丈夫なのか!?」  

 そう八神は驚いていたが、ひなたは笑いながら答える。


「大丈夫です。こうた君、手厚い供養とみんなの思い、そして彼自身の優しい心根もあって座敷童になっちゃったみたいですから」


「ざ、ざしき わらし?」


「幸運を呼ぶ家霊ですね、これから御堂家はすごく発展していくと思いますよ」


「そ、そうか……でもいるんだろ? 霊が!?」

「座敷童ならいいじゃないですか」

「ち、近くにいないよな?」

「八神さんにおんぶして甘えてますよ」

「ひぃ!」


 慌てる姿がおもしろかったのか、悠馬と美咲が八神に組みついて遊び始める。


「始まりはどうしたことかと思ったけど―― 呪詛シールについては、徹底的に聴取しないとね。まあ貼った本人はそんな元気ないかもしれないわね。だって突然指先が壊死して右手の指を全て切断なんて、人を呪わば穴二つ……」



お読みいただきありがとうございました。


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