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霊事警察 ~霊が見える刑事と、霊が怖すぎる刑事が挑む怪事件~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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34/43

怪異

警視庁には、表に出ない部署が存在する。

様々な凶悪事件に対し霊的アプローチを用いた捜査を行う――刑事部 霊事課 通称 霊事警察。

捜査一課の刑事・八神恭史郎は、ある日、霊が見える刑事「本条ひなた」とコンビを組まされる。

だが八神は、極度の怖がりだった。

人面犬事件、猟奇殺人、犯罪組織の暗躍

そして都市の闇で進む謎の薬物実験。

人間の犯罪と怪異が交差する事件に、凸凹コンビの捜査が始まる。

 ※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。



 「えっと、変なこと聞いてすいません、気に障ったら謝りますので思い当たることがあれば教えてください」


 「構わない、解決に繋がるならなんでも聞いてくれ」

 「……人に恨まれるような、嫉妬されるような出来事、引っ越してから、引っ越しの前後でありますか?」


 隆之が黙り込む。

 あれだけ出世ならば、嫉妬をされない訳がない。

 ただそれは新居に来てからというのが、少々恣意的な意志を感じてしまう。


 「私もなるべく主人の足を引っ張らないように、人当たり良く恨みを買わないように過ごしています」

 「お子さんたちはとても素直で良い子たちですもんね。パパさんはどうです?」

 「パパさん!? えっと、君に言われると少々照れてしまうな―― まあ私は仕事柄嫉妬されたり、敵対する政治勢力の派閥から恨まれたりもするだろう。

 私は与党の政策チームへレクに行くことが多いが、非主流派から嫌な質問を受けることは間々あるよ」


 「でもそれって多かれ少なかれどんな仕事でも生じるものですよね」


 「そうなるな」


 麻衣子が入れてくれたコーヒーを飲み、時刻を確認すると23時54分。

 

 日をまたぐ時刻。


 聴こえていた呻き声が強くなり、廊下の壁をドンと殴るような音さえ聴こえてくる。

 「いつまでそうやって嫌がらせをするの?

 今なら話を聞いてやってもいいけど、言いたいことがあるなら出てきなさい」


 ひなたが廊下で叱るように大声で訴えると、一瞬呻きが止まるもすぐにダンダンダンと廊下を踏みつけるように歩く音が聴こえた。


 ひなたには腕や足、そういったものがすっと叩いて消えるが繰り返されているように見えていた。

 顔はぼんやり浮かんでいる程度で表情がよく分からない。


 「!?」

 ここでひなたは気付く。


 腕や足が出てくる方向、そしてリビングに響く異音などもある一定の方向からしか流れてこないことに。


 「まさか!?」

 ひなたが感じた違和感。

 嫌だと感じた廊下、階段下、下駄箱、リビング。

 一番探しやすい場所としてひなたは下駄箱に向かった。 

 すると中にある靴を取り出し玄関に並べ始める。

 「えっと本条さんどうされたんですか?」

 「大丈夫です、おかしくなってはいません、探しています。この怪異、異変を呼び寄せている原因を」


 ひなたは中に入っていた靴類を全部出し、それでも玄関に備え付けの天井近くまである下駄箱の中を隅々まで探し始めた。


 ポケットからスマホのライトで床に這いつくばるように奥の奥まで照らしながら探していると…… 

 それは不気味に下から2番目の段の天板に貼り付けてあった。


 この位置では普通に生活していたら気付くはずもない。


 ひなたは念のために持ってきておいた白い手袋でそれをはがしにかかる。


 「これって、まさかあの時の!?」


 ひなたの手にあったのは、不気味な人の形に切り取られた手の平に収まるぐらいの大きさの白い紙、いやシールだった。


 「なんだその不気味なシールは」

 御堂隆之が手に取ろうとしたので、ひなたは慌ててそれを制した。

 「触らないでください、これはかなり危険なものです。そして人の手によって貼られました」


 「ひ、人の手!?」

 「!」

 麻衣子が隆之にしがみついて震えている。

 「ママさん、あら塩と日本酒ありますか? 質が良いほどいいです」

 「に、日本酒なら品評会で賞をとったのがあっただろう?」

 「は、はい! あら塩も神棚用に買ってあります!」


 「では捨てても構わないようなお皿にあら塩を引いておいてください。あとコップに日本酒を」

 

 「わかりました!」

 「ゆっくりでいいので怪我に気を付けてください」


 隆之と麻衣子は2人して準備を始める。

 

 ひなたは残りの気になった場所について探し始めると、不気味なシールの念が掴めたのかあっさり見つけてしまった。

 そして用意してくれたお皿の上にそのシールを置く。

 

 「決してお皿にも触れないでください」

 「は、はい」

 「お、おい、なんだこれは!? あら塩が……変色していないか!?」

 

 ここまで強いとは。

 ひなたはこのシールの力の強さに鳥肌が立ってくる。すぐにスマホを取り出し操作をしていると、階段を登る音が聴こえてくる。


 「二階!?」

 ひなたは慌てて駆け上がると悠馬の部屋のドアがドンドンと叩かれ軋んでいる。


 「この子に手を出すな」

 ピタっと音が止むと同時に、中から悠馬の声が聴こえる。

 「ねえ、何かあったの?」

 「悠馬君、一階に降りるよ毛布を持っておいで」

 隆之はすぐに美咲の部屋に入り毛布でくるんで抱っこしてきた。


 良い父親だと思うひなた。

 リビングに全員揃うと、既に不気味なシール周囲のあら塩の変色が進んでいる。


 「私がこのお皿を持って外へ出ますので、みんなこのソファから出ないで。ここに結界を貼っておくので」


 「本条さんは!?」

 「このシール、呪符は家に作用して発動するようなので家から離して効力を弱めます」


 「あの、本条さん、無理をしないでくれ。

 何かあったら君の御両親に申し訳ない」


 美咲を抱っこしながら、つい娘的な存在まで心配してしまうこの人は良い人なのだと改めて思う。


 「私は本職なので安心してください」


 ひなたはお皿を持って外へ出ようとすると、玄関前に5,6体のかろうじて人の姿をしている霊体が通さないとばかりに通せんぼをしていた。


 「おい、死んだ人間が生きてる人間に迷惑かけんな?」

 

 ひなたの圧に思わず霊体がふらふらと揺れる。

 「もう一回いわなあかんか? 私なんつった? ああん?」


 びくっと5,6体の霊全員と震えた後、すーっと消えていく。


 ひなたお皿を持って外へ出ると、花壇の脇にあったまだ使っていないレンガを並べ積み始める。


 簡易的な風除けを作ったところで台所から拝借してきたライターで火をつけた。


 じゅぅと何か湿った物を燃やすようにしばらく火がつかなかったが、ある一点から着火剤でも用いたように燃え始める。


 燃え始めてからは早かった。10秒ほどで呪符シールは灰となってしまう。

 その灰と皿をビニール袋に放り込んでしばりあげる。


 「ふぅ、これでほぼ収まったかな。まあ呪詛を返した形になるから今頃どういう目にあってるか」


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