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霊事警察 ~霊が見える刑事と、霊が怖すぎる刑事が挑む怪事件~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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銃撃戦

警視庁には、表に出ない部署が存在する。

様々な凶悪事件に対し霊的アプローチを用いた捜査を行う――刑事部 霊事課 通称 霊事警察。

捜査一課の刑事・八神恭史郎は、ある日、霊が見える刑事「本条ひなた」とコンビを組まされる。

だが八神は、極度の怖がりだった。

人面犬事件、猟奇殺人、犯罪組織の暗躍

そして都市の闇で進む謎の薬物実験。

人間の犯罪と怪異が交差する事件に、凸凹コンビの捜査が始まる。


 ※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

「ハル、こちらの位置は把握してるな?」

 <プレハブ方向に来てるのは、さ、3人です。左右に分かれて、うわわ 八神さんたちの位置に迫ってます>


 八神は近くにあったシートをひなたと三嶋にかぶせて覆うとCOMBAT MASTERを手に右側から迫る一人へ向かう。


 <あと3m 2,1>

 角から現れたチンピラ風の男の手首を捻じって拳銃を取り落とさせると、目の前に警察手帳を突き出す。


「警察だ 大人しく投降しろ」

「!」 

 チンピラは驚愕しつつもいきなり殴りつけてくるため、掴んでいた手を肩にかつぎながら思い切り背負い投げでコンクリートの床に叩きつけた。

「ぐげっ!」


 声にならない悲鳴を上げながら失神する男を放置し、逆方向から来た男たちの前に立ちはだかる。

 警察手帳を持って。


 正直、積み上げられた資材を利用し奇襲で撃ちまくれば、COMBAT MASTERの性能も活かして切り抜けられる可能性は高い。


 だが八神にはそれができなかった。

 警察官として、銃は最後の手段。

「警察だ。銃を捨てて投降しろ! 未成年誘拐の容疑で逮捕する」


 奴らは容赦がなかった。

 八神が警察官としての口上を言い終える前に銃を撃ってきたのだ。


 もちろんその挙動を見て素早く反応したので身を隠すことができたが、銃弾の雨が八神を襲う。


 プレハブ小屋の奥に積み上げられた各種資材はフォークリフトが運ぶ台であるパレットごとにブロック化されており、碁盤の目のような隙間を縫ってひなたと三嶋絹香とは反対方向に回避してく八神。


 このままでは一気に距離を詰められる。

 自分が捕まって殺されたら、すぐに三嶋絹香の捜索に入るだろう。

 ならば今、ここで銃を撃つことには明確な意味がある。


 そう決断した八神は滑るようにスライドする卓越した仕上がりのCOMBAT MASTERを構える。

 犯罪者集団の放つグロックの射撃が数秒止まったその瞬間を八神は見逃さなかった。

 距離を詰める足音が左方向から聴こえたため、ダンダン! ダブルタップでダークスーツの男の両太ももに命中。 

「うぎゃあああ!」

 慌てて起こそうとする連れの右胸に再びダブルタップの弾丸命中。思わずその衝撃で意識を失っている。そのまま太ももを押えて呻く男の鳩尾に肘を入れるとうまいこと失神してくれた。


 ゴム弾で急所ではないため死にはしないが、相当の痛みだろう。


「お前らちょけてんじゃねえぞ! 早く始末しろ!」


 号令が届き、奴らの動きが止まる。ハルによれば敵は残り4人。


 じりじりと距離を詰めてくる犯人グループたちだが、資材角に男が1人。

 素早く八神は円を描くように敵の前に躍り出るとそのままCOMBAT MASTERで男の太ももと右肩にそれぞれ2発ずつを叩きこむ。


 悲鳴を上げる男の銃を拾いつつ浴びせられる銃弾を掻い潜りながら、滑り込むように大きな鉄板が積み上げられた資材の陰に潜り込んだ。


 グロックの弾倉を抜き、スライドを引き抜き分解状態にして資材の奥に投げ捨てる。


 残り3人。


 結構時間を稼いでいるぞ、と自分を鼓舞していたがハルから再び声が聴こえる。


 <八神さん、サングラスかけた大男が本条さんたちが隠れてる近くに向かってます! 八神さんから西方向、左手3ブロック先!>


 八神はハルのナビゲートに感心していた。


 位置が手に取るようにわかる。八神は大男の位置に向けてCOMBAT MASTERを牽制として撃ってみた。

「ぐっ!」

 大男は左肩に当たって呻いていたが、射線を読まれてしまい右方向から撃たれてしまった。


 八神のワイシャツに赤い染みが広がっていく。

 脇腹を掠っている。縫えばどうにかなるレベルだとは思うが、人は怪我をし出血するだけで冷静な判断ができなくなる。

 それを理解している八神でさえ、判断力が低下したことを自分に言い聞かせた。


「当たった! 一気にぶち殺せ! 1人に一体何人やられてやがる、ってこいつの銃弾 実弾じゃねえぞ 非殺傷性のゴム弾か何かだ! 怯まず殺せ!」


 (ばれたか、だが俺は警官だ。お前らとは違って最後まで警官として行動してやる)

 その矜持と覚悟が八神の心に火を点ける。


「うわっ! なんだ足を掴まれた! なんだうわっ! ぎゃはっ!」


 大声を上げて喚く男の両肩へ4発。ダブルタップを2回。

 走りながら資材の陰に隠れたが、射線方向から分かる。


 挟まれてしまった。


 残り3人だが八神は1人も殺してはいないため、回復して起き上がってくる奴がいるかもしれない。


 ハルからの連絡もない。恐らく死角なのだろう。

 夕暮れのビルの鉄骨から伸びる影が八神のいる資材置き場に差し込んでいく。


 まるで八神の未来に影が差したような気分にさせてくれる。

 せめてこいつらを行動不能にして本条ひなたたちの退路を作らなければ。


 いちかばちかで飛び込んでと覚悟を決める。

 ゴム弾の残りは3発。

 仕留めきれるか。


 じりじりと迫る気配に心臓の鼓動が連動するように早くなっていく。


 飛び出そうとしたその時だった。


 いきなりパトカーのサイレンが聴こえてくる。

 複数台のパトカーのサイレン。なんと心強いのだろう。


「ちっ! こっちは先生連れて脱出する! お前らはバンに乗れ!」


 仲間たちに助け起こされながら男たちが撤退していくが、迂闊に飛び出せない。


 奴らは近づいてこれないように何度かランダムに牽制射撃を繰り返している。


 バタンバタンと車のドアが閉まる音が聴こえていく。

 逃がすしかない、今は三嶋絹香の安全を確保することが最重要。


 様子を確認するため、プレハブ小屋まで戻り確認すると犯人たちが車で逃走するところだった。

 みすみす逃がすことになるとはと、断腸の思いで逃走の様子を見るしかない。

 そう覚悟した八神は奴らの本気に絶句した。


 先にセダンタイプのEV車が急発進で出ると、それを追うように黒いバンが出発したその瞬間。


 耳をつんざく轟音と共に黒のバンが爆発炎上した。

 中に乗り込んでいるはずの6人の男たちは飛び出してくる様子もなく、最初の爆発で即死してしまったのだということが分かった。


 切り捨てたのだ。

 こいつらは。


 八神はすぐにひなたの様子を見に戻ると、意識を取り戻した三嶋絹香が眠そうな目でどうしたの? とひなたに抱き着いている。

 それを見て優しく抱きしめながらひなたは声をかける。

「大丈夫、大丈夫だからね」

 そして埃で汚れたワイシャツ姿の八神を見て言葉を失う。

「八神さん、血が!」

「大丈夫、掠っただけだ。問題ない、それより本条、よく飛び出さずに堪えてくれたな。良い判断だった」

「でも、八神さん1人に全部押し付けちゃって、ごめんなさい」

「任務完了、俺たちは三嶋絹香さんを助けて守り切った。これでいいんだよ。いいか本条!

 俺たちの 勝ちだ!」


「……はい!」

 ひなたは泣きながら三嶋絹香を強く抱きしめる。

「え? え? 何があったのかな?ってなんか燃えてるし」


 その時走りこんできたのは何かの箱を抱えて走ってくるハルとカズだった。

「間に合ってよかったです!」

 手にしたは小型のスピーカーで、どうやらハルとカズは警察が間に合わないと判断してパトカーのサイレンを大音量で流してくれていたのだ。


「まったくお前ら、最高だ」

 八神は2人の肩をがっちり掴むと思い切り抱きしめ、2人の頭をぐしゃぐしゃに撫でる。するとようやく本物のパトカーがやってきた。


「八神さん 出血出血してる! 血、血! きゅ、カズ 救急車だよ! 救急車! って救急車のサイレン鳴らさないと!」

「あほか! サイレンだけでどうすんだよ!」


 2人のやりとりい思わず苦笑する八神は、改めて三嶋絹香に向き合い警察手帳を見せる。

「警視庁の八神です。あなたを保護できてよかった」


「……少し思い出してきました! 刑事さんたちが助てくれたんですね!」

「本当に良かった。ご両親もとても心配してたから、すぐに会えるように手配するからね」

「あ、あ、あ、ママ、パパ、ああ、そうだ、塾の塾の帰りに……うああああああああ!」


 ここで遅れてやってきた恐怖と安心からひなたに抱き着いて泣き出す三嶋絹香。


 ハルとカズも助けられたことに喜び わんわんと泣いた。


 トカゲの尻尾切りで6人も殺されてしまったことは、もうどうにもできない。

 責めたければそうしろと、八神は燃えるバンの煙を見つめながらCOMBAT MASTERを握った指を震える手で一本ずつはがしていく。

 そして気づけばひなたが、それを手伝ってくれた。


 彼女は普段八神をこれでもかとからかうが、こういうときは絶対にバカにしない女だった。

「八神さん、かっこよかったですよ」

「当然だ」


 だが八神は痛みと出血で思考力が低下していたこともあってか、気付いていなかった。

 本条ひなたのポニーテールが半分ぐらいの長さになっていたことを。


お読みいただきありがとうございました。


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