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霊事警察 ~霊が見える刑事と、霊が怖すぎる刑事が挑む怪事件~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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手掛かり

警視庁には、表に出ない部署が存在する。

様々な凶悪事件に対し霊的アプローチを用いた捜査を行う――刑事部 霊事課 通称 霊事警察。

捜査一課の刑事・八神恭史郎は、ある日、霊が見える刑事「本条ひなた」とコンビを組まされる。

だが八神は極度の怖がりだった。

人面犬事件、猟奇殺人、犯罪組織の暗躍

そして都市の闇で進む謎の薬物実験。

人間の犯罪と怪異が交差する事件に、凸凹コンビの捜査が始まる。

 ※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。



 母親から塾までのルートを確認すると、もっともよく通るという道を教えてもらう。


 それは住宅街を通り抜けるようなルートで塾を結ぶ。


 途中に公園や特徴のある施設などはなく、一度で覚えるにはコツがいりそうな道順ではある。


 その時だった。急にひなたが立ち止まる。

 時刻は午後3時半。

 「ここだ。すごく強烈な念が残ってる……あ、袋をかぶせられたのかもしれない」


 八神は周囲を確認するがコンビニや店舗がないため監視カメラなどの情報は期待できないかもしれない。

 「視線を感じる。誰かに見られてるけど、これって」

 ひなたが周囲を見回すと、まるでその場所が分かっているかのように視線が合ってしまった。

 「八神さん向かいの家の二階から見てる人がいる」

 「そりゃ家の前にいたら気になって見るかもしれないだろ」

 「いえ、話聞きましょう」


 ひなたには確信があるらしい。

 玄関チャイムを鳴らすと、さすがに目が合って逃げられないと思ったのか男の声がインターホンから流れる。『はい』

 「警察です。昨夜ぐらいにこの周辺で何か気になることがあった、見たなどあったらお話を伺いたいのですが」


 八神とひなたがインターホンのカメラに警察手帳を提示する。

 『け、警察!? えっと、その、はい、分かりました』

 インターホンを切って1分ほどで現れた。

 

 それは若い男性だった。20になるかならないかぐらいで、ジャージを着ている。大人しそうな顔立ちで気が弱そうに見える。

 「えっと西住さんですね、昨夜の21時以降ぐらいで気になることとかありましたか?」


 「あの、その、う、上手く話せなくてすいません」

 「大丈夫、ゆっくりでいいですよ。初対面の警察に対して理路整然とうまく話せるほうがおかしいぐらいです」


 「あ、そう、そういうもんなんですね、えっと、実は昨日の夜21時ぐらいから家の前に白いバンが止まってて、あの、このあたりって空き巣被害とか、闇バイトの犯罪とかでお母さんがすごく心配してたからその、自作でウェブカメラを設置して警戒してたんです」


 「映像残ってる?」

 ひなたの食いつきにやや驚いているが、彼は頷いた。

 「あの、き、汚いですが、部屋のサーバーにあるので、見て、見てもらえたら、何か分かるかも、その多分 女の人を拉致したようなそんな風に見えて、でも通報するか迷ってるうちに時間経っちゃってそのごめんなさい」


 「事件を知らなかったのであれば、男女のいざこざに見える場合もあるから。でも教えてくれてありがとう」

 

 部屋に案内されるが几帳面で清潔な部屋だった。

 「綺麗じゃない。私の部屋より綺麗」

 彼は身分証としてマイナンバーカードを自ら差し出した。

 「西住良輔 19歳」

 八神がスマホでマイナンバーカードを撮影している間に、西住良輔は慣れた手つきでデスクトップPCを操作して該当動画を開く。


 「えっと再生しますね」

 比較的新しいウェブカメラのようで画質は思ったより良好だ。


 たしかに白いバンが不自然に止まっており、人影がちょうと白いバンと重なったところで何か動きがある。

 そしてドアが締められた後すぐに急発進している。

 「ナンバーは割り出せるかもしれないな」

 「えっと、画像解析かけて ナンバーは見つけてあります。でも陸運局で照会かけるのはお金かかるんで……」

 

 「これ私のスマホに送ってもらえる? 元動画と解析映像」

 「わ、分かりました……」


 PC関連に強いため、ひなたの希望通りにまだ待機してくれていた樹里の元へ動画と解析データが送られる。


 すぐにひなたが樹里に動画と画像解析データについての検証を頼む。


 「ふう助かったわ西住君」

 「い、いえその」

 ひなたを見て照れているのがどうにも純朴で好感が持ててしまう八神。

 だがひなたから発せられた言葉は、意外なものだった。


 「君、いつから見えるようになったの? 子供の時からって感じじゃなさそうね」

 「え? え? う、うそ、お、お姉さんも? み、見え、あれが見えるんですか?」


 「そうね、あの白バンがいたところに黒い霧みたいなのがかかってるわね。あれは悪意の残滓」

 「ぼくんはちょっと暗いぐらいにしか分かりません」

 「じゃああそこの電信柱」

 「ああ、この辺をうろついてる50代ぐらいのおじさんが。上下スウェットの」

 「たいしたものね、じゃあ最近なの?」


 「えっと、はい。大学受験の一週間前ぐらいから急に見えるようになっちゃって……それから体調崩して受験も失敗しちゃって、それでずるずると今まで」


 「おい、怖い話はやめてくれ」

 「あら、八神さん、どうしたんですか? 足が震えてるじゃないですか」

 「びんぼーゆすりだ」


 「刑事さんでも怖いものってあるんですね、なんだかすごく安心したっていうか、ああ自分だけじゃないんだって気持ちになれた気がします」


 「こ、怖くなんてないし……こ、この部屋にはいないよな!? やめてくれよ!?」

 

 いかにも優秀そうな刑事が怖がっている様子が西住良輔には面白かったようだ。


 「見える人の相談に乗ってもらえるかもしれないから、困ったらここに連絡してみて」


 「は、はい」

 渡された名刺には名前と連絡先が書いてある。星月神社のことかと思ったが、どうやら違うらしい。


 『ひなた? Nシステムで追跡かけてみたけど、目出し帽とニット帽とマスクで顔の自動認識は無理だったわ。そして車両は盗難車。これは決まりね』 


 「樹里、どこまで追跡できている?」

 『追えたのは巣鴨周辺ぐらい。しかも既に10時間以上経過しているわ』


 「無事でいてほしいが、とりあえずこの件を所轄と共有しておいてくれ頼めるか?」

 『了解既に送ってあるよ……ねえ八神さん、今ピンと来たんだけどあなたのスマホに連絡来てない? それ結構重要な気がする。じゃあこれぐらいかな』


 「連絡? …… ああ、ハルからSNSのメッセージが来ていたな」

 「ハルって?」

 「ほら霧ケ崎の廃中学校であった配信者の」

 「ああ、あいつらね。で何ですって?」


 「えっと、なんだこりゃ樹里が言ってたから一応読み上げるが―― 八神さん! 最近目白近くの工事現場で謎の宇宙服を来た組織が暗躍してるって都市伝説あるんですけど何か知ってたら教えてもらえませんか!? あるんですよ、ちゃんとその動画が! ということらしい」


 「今度は都市伝説を追いかけてるのねあのおバカコンビって、あいつらと連絡取り合ってたの?」

 「いや一方的にこういう都市伝説系のネタを問い合わせしてくるんだよって、動画もリンクがこれか」


 思わず西住良輔も一緒に覗き込むが、それを見て八神とひなたは背筋に電極を押し付けられたような衝撃を受けた。


 「刑事さんこれってイベント用の大型トレーラーじゃないですか? でもなんでこんな恰好してるんだろう」

 

 「手術用の装備に見えるな」

 「これってまさか」


 動画は短く、手術用の装備やヘッドセットを身に着けているため宇宙服のように見えてしまったのだろう。

 八神はすぐにハルへ連絡する。

 

 「早く出ろ早く出ろ」

 「刑事さん、その動画こっちで解析してみますもらえますか?」

 「ちょっと待ってろ……」

 ドロップで一度ひなたのスマホに動画を渡した後、西住良輔のPCへ動画データを転送する。

 「あのバカ、いつもは連絡よこすくせに……あ、おいハル!」

 

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