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霊事警察 ~霊が見える刑事と、霊が怖すぎる刑事が挑む怪事件~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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COMBAT MASTER

警視庁には、表に出ない部署が存在する。

様々な凶悪事件に対し霊的アプローチを用いた捜査を行う――刑事部 霊事課 通称 霊事警察。

捜査一課の刑事・八神恭史郎は、ある日、霊が見える刑事「本条ひなた」とコンビを組まされる。

だが八神は、極度の怖がりだった。

人面犬事件、猟奇殺人、犯罪組織の暗躍

そして都市の闇で進む謎の薬物実験。

人間の犯罪と怪異が交差する事件に、凸凹コンビの捜査が始まる。


 ※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 ◇◇


 多くの目撃者とスマホで撮影された証拠もあり、各テレビ局はこぞって報道し夕方のニュース番組に間に合わせるため各社全力取材といった様相になっている。


 緊急の捜査本部が警視庁内に設置され、刑事部の相良刑事副部長 が指揮を執ることが決定した。


 捜査一課もほとんどが参加し、組対やマル暴、サイバー犯罪対策課など、2課、3課も連携しての捜査方針が決定している。


 捜査本部は日本国内に非合法の臓器売買ネットワーク並びに、移植組織が拠点を築いたと判断。

 警視庁の威信にかけてこの闇臓器移植売買組織を検挙し、壊滅させると記者会見が始まっていた。


 ISSに流れてくる情報を見ていた八神は、どこか他人事のようにこの事実を受け入れようとしていた。

 なんて時代になったんだというのが彼の正直な感想だ。


 本条ひなたと一緒に馴染みの所轄である京橋中央警察署へ傷害致死事件の支援に行っていた帰りだった。


 証拠固めのための情報支援として、ひなたが被害者から犯人が近所の若い男だと知らされたため聞き込みから戻っていた。


 「八神さん、警視庁前はマスコミもすごいことになってぽいですよ」

 「センセーショナルな事件発覚だったからな。

 鬼塚課長も必死に動いてるだろうが、俺たちは何をすることになるんだ?」


 「今回はうちらあんまり目立たないほうがいいんじゃないかな?」


 「そんな余裕はなさそうに見える」

 警視庁前にはパトカーのパトランプの明滅や多くのマスコミが炊いたライトで騒然となっている。

 八神は警官の誘導で覆面パトカーを地下駐車場へ入れると、捜査本部へ顔を出すことになった。


 警視庁内部も慌ただしく多くの警官たちが走り回りただ事ではない。


 「こんなの初めて見たかも」

 警視庁に広がる緊張感が肌に突き刺さるような感覚をひなたは味わっていた。


 八神は落ち着いているが、使命感と焦り、そして犯人たちへの怒りが広がり続けている。

 そして若干の高揚感。

 

 捜査の割り振りは既に知らされており、廊下ですれ違った佐々木が「先輩、また後で!」

 と気合が入っている。


 角倉も八神を見やると静に頷いていた。

 鬼塚課長が慌ただしく指示をしていたが、待つ間にも2人はISSで情報をアップデートしておこうとするが、残念ながら現状では目ぼしい情報はない。


 「八神!」


 会議室の中から声をかけてきたのは鬼塚課長だった。

 小走りに近寄る八神とひなたを見て課長はふぅとコーヒーを飲み干す。

 「待たせたな、課長室へ戻る。そこで話そう」

 「はい」


 早足で課長室へ戻ると鬼塚課長は改めて2人に状況を説明し始めた。

 時刻は既に20時になろうとしている。


 「警察の総力を挙げて捜査に当たってはいるが、未だに手掛かりすら出てこない。冷凍トラックを所有する配送会社はそんなトラックは存在していないと報告を受けており、裏付けもさせているがどうやら間違いない。

 そしてそのドライバーだがな、さきほど死亡が確認されたよ所持品がなく指紋も薬品か何かで焼かれていた。なんて念の入り様だ」


 「発見された遺体は8体、相当な数ですね」

 「身元はどうなっているんでしょうか?」


 ひなたの質問に鬼塚は申し訳なさそうに頷いた。

 「身元の特定ができそうなものはない。DNA鑑定で何か出ればいいが、角膜や眼球が無い遺体も多く、指紋は消され内臓はほぼ空。

 司法解剖も既に開始してもらっているが、歯の治療痕を隠すために全ての歯が抜かれ焼かれている」


 「なんだか人面犬殺人事件を思い出しますね。あの事件の犯人は結局自供し精神鑑定中ですが」


 「随分良い視点を持てるようになったじゃないか本条」

 「ありがとうございます」


 鬼塚に褒められたひなたは素直にうれしそうに微笑む。


 「現状、突破口がほぼない状態でな。捜査方針も聞き込みやジドリを行ってるが期待は厳しいかもしれない。そこでだ」

 

 「「そこで?」」

  

 「本条、お前の力で何とか、被害者の情報を得られないか? 辻褄合わせは後日なんとでもする。頼む!」


 「えっと霊視するってことですね、いいですよ」

 「助かる! 現在司法解剖が終わっているのは2体。東京監察医務院 から科捜研に搬送中だ。もう到着してる頃だろう」

 「えっと、課長、俺はいらないですよね? ジドリの応援に行きましょうか?」

 「いや、お前たちはコンビで動いてもらう」

 「分かりました」


 「それでだ、全捜査員に拳銃携帯命令が出ることになっている。お前らの分はこれだ」


 課長が机の上に置いたのはプラスチック製のケースが二つ。


 「まずは本条からだ」


 小さめのケースの中身を八神は知っていたが、その種類に思わず声をあげた。


 「SIG Sauer P365 !」


 「小型のセミオート拳銃で女性でも取り扱いしやすい仕様になっている。

 既にSPがSIGを導入していることもあって調達がしやすかった。

 さすがにニューナンブからの切り替え時期なので、女性用や小型携帯用としての運用データを取りたいらしいからお前さんに回ってきた」


 「こ、これ、私が携帯するんですか?」

 「そうだ。安心しろ、装弾数10発だが弾丸は非殺傷性のゴム弾にしてある」

 「そ、そうですか」


 ひなたはP365を手にしながらも、ひどく緊張した様子でその重さを噛みしめているようだ。


 「ケースに専用ホルスターを入れてあるからここで装備していけ」

 「あ、はい」

 ひなたはズボンのベルトを外してホルスターの取り付けを始める。


 「それでお前の番だ。開けてみろ」


 鬼塚課長がこの顔をしている時は大体悪戯心が顔を出している時だと八神は知っている。


 何かのドッキリかと覚悟していたら、中身を見て思わず八神は唸った。


 「TTI  COMBAT MASTER  じゃないですか!」


 「ふふふすげえだろ」

 「というか、課長頭おかしいんですか? しかもSTI  COMBAT MASTER!?」 

 

 「ちとマトリと色々あって、あちらさんが誤って調達したこいつを引き取ったわけだ。メンテナンス用の予備パーツもあるからお前はこいつを運用してデータを取れ。

 いずれSATでも導入するかもしれんからな」


 「……」

 「安心しろ、ちゃんと非殺傷性のゴム弾用マガジンと9mmパラペラム弾用のマガジンを両方用意してある。

 どう使うかはお前が判断しろ」


 「でも課長、えっと拳銃携帯には許可が」

 「それだがな、八神と本条は今日から正式に組んでもらうことが決定した。

 扱いは 準 機動捜査隊 扱い。

 つまり非常事態に対処する可能性が高いために常時拳銃の携帯が決まった。

 まああれだけ派手に捕り物続けてりゃ、上だって殉職されたら困るってなるだろ」


 「たしかにそういう事件が多かった気がしますけど」

 「八神さんこの銃、なんかめっちゃかっこいいですね。2色でなんか主人公感がやばいです」

 「なんだ本条は知らんのか? あれだ、ジョンウィックって映画あっただろ」


 「はい。たしか殺し屋が復讐するみたいな」

 「それでキアヌ・リーブスが使っていた拳銃だ。一丁150万ぐらいするらしいから無くすなよ」

 「無くしたら懲戒免職ものでしょうが……まったく。実はこいつの射撃訓練は結構あっちでしてたんで、うれしくはありますね」

 

 「八神さんあっちって?」

 「クアンティコの FBIアカデミーでの研修の合間にな。あっちの教官がガンマニアでかなり付き合わされたよ」

 「クアンティコってFBIアカデミーのことだったんですね! 八神さんすごいじゃん!」

 

 「お前は俺をなんだと思ってたんだ?」

 「びびり」

 「くっ 言い返せないのが悔しい」


 「がははは! うまくやってるみたいじゃないか。まあ本条もP365の射撃訓練やらされただろう」

 「ああ、データ収集って言われたけどあれってこういうことだったんですね」

 「銃の扱いについては八神もフォローしてやれ」

 「はい」

 「というところで科捜研から連絡が入った。じゃあ頼むぞお前たち」


 八神と本条は科捜研へと廊下を歩いていたが、ひなたはしきりに腰を触っている。

 「重さが気になるか?」

 「そうですね、やっぱり違和感が」

 「俺だってそうだ。でもP365は軽量化されてるからそこまで負担ではないと思うが、問題があったらすぐに言え」


 「問題っていうか、重いんですよ。銃ってやっぱり」 


 ひなたが言っているのはただ単に重量ではないことは八神も気付いている。

 むしろそういう重さを感じられる人間のほうが信用に値するだろう。


お読みいただきありがとうございました。


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