霊視捜査
警視庁には、表に出ない部署が存在する。
様々な凶悪事件に対し霊的アプローチを用いた捜査を行う――刑事部 霊事課 通称 霊事警察。
捜査一課の刑事・八神恭史郎は、ある日、霊が見える刑事「本条ひなた」とコンビを組まされる。
だが八神は、極度の怖がりだった。
人面犬事件、猟奇殺人、犯罪組織の暗躍
そして都市の闇で進む謎の薬物実験。
人間の犯罪と怪異が交差する事件に、凸凹コンビの捜査が始まる。
※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
八神はそんなひなたと共に科捜研へと向かう。
そこには担当職員が待機しており、八神とひなたに挨拶をする
「八神さんお久しぶりです。今後窓口というか担当になった目黒です」
「八神です」
「本条です」
それぞれ握手をすると、さっそくと案内される。
「実は僕、八神さんと同期なんですよ。だからすごいなってずっと思ってて」
「目黒さんこそ科捜研で名が知れ渡ってるじゃないですか」
「ええ? またまたぁ。本条さん、えっとその、僕には話が通ってますけど、大々的には」
「分かってますって、観察力を高めるための自己暗示的な言い訳をする感じで」
「それでお願いしまっす」
目黒が遺体が安置されているロッカーから遺体を引き出した。
そこには黒い遺体袋があり、ジッパーが降ろされる。
「20代後半の男性、身長181cm 体重93kg 筋肉質で爪も綺麗ですが指紋は薬剤で焼かれています」
八神とひなたが手を合わせる。
「目黒さん、肉体労働、特に重い物を持ったり運んだりする仕事の可能性はありそうですね。しかもちゃんとした企業に勤めている。金髪ではなくタトゥーもないし、爪は短く切られている。証拠を残さないために犯人側が短くカットして洗浄した可能背もあるが」
「さすが八神さんです。私も同じ見解ですが、さすがにこれ以上は出ませんでした。ということで本条さん……」
本条ひなたは既に遺体と向き合い、目を閉じている
「目黒さん、離れて見守りましょう」
「はい……」
ひなたは身元不明の遺体と約1時間ほど向き合っていた。
その間に八神は目黒から報告書を見せてもらっていたが、見れば見るほど犯行グループに対しての怒りがこみ上げる。
「内臓はほとんど抜かれており、心臓と肺が無くなっている。眼球は摘出され、歯も全て引き抜かれていた。
人間のやることじゃない。
なんて機械的なんだ、感情が感じられない」
「まったくです。しかも同じような遺体が後7体も」
「人間てのはどこまで残酷になれるんだ」
「八神さん、残酷って感じられる存在が人間なのだとしたら、犯人たちは既に人間ではないのかもしれませんね」
「たしかに……その先にあるのは金儲けなのだろうが、その金で手に入れるナニカは、感情がまったく関与しないものなのか?
仮にその金で豪邸を買ったとして、その家で暮らしていて思い出さないのか?」
「わかりません……」
「いえ、目黒さんすいません。犯人を罵詈雑言で罵っても、どうにもならないというのに」
「分かりますよ八神さん。それにしても本条さんって、その本物 なんですかね? 疑っているわけじゃないんですけど」
「ほんもの だと おもうよ」
「?」
ひなたが戻ってきた時にはやや疲れが見えるような歩き方だった。
「何か飲むか?」
「あれ? 八神さん、気が利くじゃないですか。じゃあエビアン汲んできて」
「は?」
「フランスのエビアン。はよ」
「おい」
「ノリ悪いなぁ、じゃあスタバで何にしようかな」
「後で缶コーヒー買ってやる! んで何か分かったのか?」
「あの、目黒さんも聞いてていいの?」
「大丈夫です、鬼塚課長から話通ってます。じゃああっちの小会議室いきましょか」
椅子に腰を降ろすとひなたはとったメモを見ながら話を続ける。
「断片的な映像、痛みとかはなくただ眠かった。まだそんな微睡の中にいるような感覚が伝わってくるだけ。
多分だけど、眠ったまま麻酔かけられて臓器取られて、そのまま――」
「せめてもの救いは痛みが無かったということになりますか」
目黒の問いにひなたは頷いた。
「だからね、死んだって感覚がないから呼びかけに答えられないみたい。
それでも手がかりをなんとか霊視してみたけど、断片情報なんで参考にならないかも」
「いや、どんな情報でもいいし、それをお前のせいにしたりはしない」
「じゃあ……
氷のガシャガシャというかたくさんの氷が見える。
白くて重い箱を何度も運んだり、えっと車に乗せたり。台車?
なんだか黒いエプロンも見えたかな。
水の音も聴こえる」
「なんでしょうね、何かの工場でしょうか」
「これだけだと分からないな、他の情報はどうだ? 五感的な情報だ。
視覚 聴覚、触覚 味覚 嗅覚 気になる情報があると助かる」
「ん~そんなこと言われても……ん? そういえば 潮の香りが、ちょっとしたような?」
「もしかして! 白い箱って発泡スチロールの箱じゃないですか? 氷大量で潮の香りがするとなったら、もうあれしかないですよ 漁師さん!」
「なるほど、さすが科捜研はすごいな」
「目黒さんすごい!」
ひなたに褒められて頬を赤らめながら目黒は照れている。
「いやちょっと待ってくれ。この人、漁師にしては日焼けしていないな」
「そういえばそうかも」
「ああ、そういえば色は白いですね。イカ釣り漁船の漁師さん?」
「その可能性もゼロではないが、上半身の筋肉量は多いがそこまでじゃない。となると考えられるのは」
「漁港の魚市場で働いてる人とか?」
「それもありますね!」
「いいぞどんどん意見を出せば、本条の負担を減らせるな」
ひなたは少しだけ八神を見て背中をパンと叩いた。
「なんだいてぇな」
「早く考えて、次は何?」
「冷凍倉庫の作業員って線もありますよね」
目黒が提案した内容も一理ある。
「海産物を扱う倉庫なら潮の香がしても不思議じゃないな。他には……そういえば台車みたいなのって言ってたな」
「漁港とかで水揚げした魚を運んだりするときに使いそうですよね」
「台車っていうか、車っていうか。なんだろう 不思議な感じした」
「大きな台車ってやつかな? 現場では色んなタイプの台車がありそうですもんね」
「……それでカーブを曲がるのがその人好きだったような」
「カーブを曲がる? 台車? 違和感があるな……おい本条、ちょっと待て、これを見てくれ」
八神はすぐにスマホであるワードを検索し画像を表示させる。
「あっこれこれ こういうの」
「え? これってまさか」
「ああ、ターレだ」
「ってことはやはり魚市場か卸売り市場、ここから近いのは」
「「「豊洲!」」」
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