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霊事警察 ~霊が見える刑事と、霊が怖すぎる刑事が挑む怪事件~  作者: 星乃渚(旧:鈴片ひかり)


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廃中学校

警視庁には、表に出ない部署が存在する。

様々な凶悪事件に対し霊的アプローチを用いた捜査を行う――刑事部 霊事課 通称 霊事警察。

捜査一課の刑事・八神恭史郎は、ある日、霊が見える刑事「本条ひなた」とコンビを組まされる。

だが八神は、極度の怖がりだった。

人面犬事件、猟奇殺人、犯罪組織の暗躍

そして都市の闇で進む謎の薬物実験。

人間の犯罪と怪異が交差する事件に、凸凹コンビの捜査が始まる。


 ※ この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。



 「これは普通の中学校で、廃校って言われないと分からないな」

 「もったいないですよね。どこかの企業が買い取ってくれるとかしたら、市の財政の足しになるかもですけど」


 資料にあった自殺現場、つまり3人が落下死したのは補修工事用の足場や資材置き場であったが今では撤去されている。

 わずかにブルーシートが一部残っているだけ。


 本条ひなた、はしばらくそこで立ったまま何かを感じているようだと、八神は背筋が凍るような思いで見つめている。

 

 「本条さん?」


 「えっと、現場だと考えがまとまるらしい。俺は屋上を見に行きたいんだが」

 「はい、向かいましょう」


 屋上までの階段を上がっていると、白石環が意外な話を振ってくる。

 「今回捜査一課があえて出向いたのって、他殺の可能性について確証があるからなんですか?」

 「いや確証どころか、調べてこいと言われているだけだよ」 

 「……八神さんはどう考えています?」

 「現場を確認してから総合的に判断するしかないだろう」

 「なるほど……」


 「君は何か思うところがあるのか?」

 

 突然立ち止まった八神を見上げる白石環は、しばしその端正な顔立ちを見つめてしまった。

 (まるで刑事ドラマの主人公ね)

 「えっと、恐らく高瀬陸の親類に総務省の官僚がいたようで、そこから警察庁経由で依頼が行ったのではと、その」


 「県警の上層部が失点に警戒していると?」


 「はい」


 「つまり君は俺たちの監視役という役割も担っていることになるな」

 「監視なんて、ただ自殺か他殺かが気になっているようです。責任問題になりかねませんから」

 

 「責任か、だが事件が発生してまだ30日経過していない。遺体は荼毘にふされたがそれは遺族への配慮という面から誤った判断とも言い切れない。こうやって捜査を受入れ入れているだけましだと思うぞ」


 「そ、そうでしたか!」


 「屋上行くぞ」

 「はい!」


 本条より素直で助かるというのが八神の感想だった。


 八神は校舎内に入ってからずっとスマホで撮影を続けていた。白石との会話時は録画を切っていたが屋上の扉は施錠されておらずそのまま出ることができる。


 西の空に赤みが差し込み夕暮れが近づいているのが分かる。

 

 「金網は破られているというより、工具で切断されていたのか」

 「彼らが自殺するためにやったようです」

 

 大型のニッパーやチェーンカッターのような専用工具に見える。

 慣れた手つきで人が飛び折れる程度の穴をあけている。

 ここから順番に飛び降りたのだろう。

 下が地面であったら、4階構造の屋上から飛び降りても生き残る可能性が高い。

 だが、今回は落ちた場所が悪かった。


 落ちた衝撃で手足の一部が千切れたり、体に突き刺さりそれが主な死因と考えられているほどだ。

 未だに地面に染みこんだ血の跡は消えない。


 八神が真っ先に感じたのは違和感だ。

 大学生といえば、楽しい盛りだろう。

 それが3人で集団自殺?

 

 何かトラブルに巻き込まれてその責任で?


 男女関係?


 思いつく動機を考えてみても、こみ上げるのは違和感と足元から伝わってくるような寒さとでも名状したくなるような仄暗さ。


 八神は屋上から下を見降ろす。

 どんな思いでここから次々に飛び降りたのか?

 まだ未来のある若者たちが。


 「この金網を切断した工具は見つかってるのか?」

 「いえ、そういった調査すら行われていません」

 「たしかに死因が3人共に飛び降りであれば、自殺という線で終わらせても仕方がないかもしれないが。かと言って他殺だとする証拠もない。

 難しい事件だな」


 「八神さんほどの刑事でもですか?」

 「俺を買いかぶってるようだけど、普通の刑事、いやまだまだ未熟者だよ」

 「そんなクアンティコ帰りの八神さんは県警でも憧れの存在ですよ! 今回の案内役も結構競争激しかったですからね」


 「競争? なぜ?」

 白石環は納得した。

 この人はいわゆる仕事馬鹿。


 こういった話にはあまり感心がないのだということも。


 「いえなんでもありません」

 「正直なところ、白石さんはこの事件についてはどう思っているんだ?」

 「ご両親から依頼があったのでポーズとしての捜査なのかと」

 「意外とドライなんだな」


 「ドライというか、他殺の可能性は多少なりともあったんですか?」


 「いやない。だが明日に友人たちから話を聞いて判断したい」

 「そうですか」


 その時、落下現場にしばらくいた本条ひなたがやってきた。

 「やっぱりそうか、う~ん」

 「どうした本条?」

 「えっと、それらしい証拠はないなぁと」

 「明日、白石さんがセッティングしてくれたので、友人たちから事情を聞きに行く」

 「はーい」

 ◇


 東京へ帰る道中、ひなたが霊視に関する内容を独り言のように話し出した。

 八神がいちいちびくつのが面倒なので、徹底無視の構えを見せるひなた。


 「つまりですね、自殺した霊って何度もその状況を繰り返すことが多いんです。あの場では屋上から何度も飛び降りを繰り返すってことになりますけど、3人ともそれがないんですよ」


 「……」

 「資材置き場に飛び降りるってかなり怖いと思うんですよね、それが3人ともためらいもなく。私、これは第三者が関わってる気がします」


 「それは他殺ということか?」

 「八神さんの見解は?」

 「霊視とかそういうことはこの際置いておくとしてだ、大学生男子が3人、なぜ同じ場所で自殺をする必要がある?

 動機が想像できん。

 彼らは一流の国立大に合格し、その後の人生も明るいものになりえたんだ。

 諦めるにしては早すぎる。恋の病とか一時的に思いつめた可能性もゼロじゃないだろうが。

 そして本条が指摘した、あの資材置き場へ飛び降りたという事実。

 いや、落下したという事実。


 外傷を隠すにはもってこいだとは思わないか?」

 

 「たしかに! それで帰りにラーメンは食べて帰るんですかね?? ね?」

 「お前とラーメンで語ることはない」


 「いい度胸しとるやないか」 

 「……」



お読みいただきありがとうございました。


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